函館市から太平洋と並行して走るのが、ROUTE278だ。市内から車で1時間ほどドライブしたところが、北海道NO1のサーフ・スポット、銚子ビーチだ。
その海沿いにあるのが、私たち夫婦で営業している、小さなレストラン「サーフ・サイド」だ。1984年に北海道で最初のサーフィン大会をこの海岸で開催した。アマチア全道選手権大会や、北海道初のプロの大会も行ってきた。
店の前には広大な太平洋が広がり、護岸の前にベンチが一台置かれている。そのベンチには海から上がったサーファーや恋人たち、一人で海を眺め思索にふける人たちが座る。
先日、午後の3時頃40代後半と思われるカップルが店を訪れた。ご夫婦でないことは一目で理解できたので、接客担当の私は食事の説明だけはしたが、あとは声をかけなかった。
二人は食事がおいしかったと礼を言い店を出たが、車でベンチの方に向かった。店には海岸が見えるカウンターに、私の知り合いの男性が食事をしていた。
車から降りた二人はベンチに座った。風もなく気温も快適で、真っ青な海が二人を歓迎するかのようだった。
すると女性が男性の肩に腕を回しキッスをした。店からはそのシーンが、はっきり見えた。知り合いの男性と私は、あのベンチが二人の心を一つにしたようだねと話した。
裏山の緑は萌え、太平洋の広大な自然の中でのキッスは、潮風がちょっぴり混じった甘美なものだったに違いないと、私たちは勝手に想像した。
5月の北海道函館東海岸、銚子ビーチ。大海原と一台のベンチ。そのベンチが演出した、まるで映画のワンシーンのような出来事だった。
見ているだけでもいいベンチですが、こんどはまたとびっきりいい仕事しましたね。
オーナーの知らない間にいろいろなドラマがあるのかも。
『イッヒ・リーベ・デイッヒ』といったかは、聞こえませんでしたけど。そんな光景を眺めながら、おじさんは勝手な妄想にふけっています。