▼戦後80年を振り返れば、生活環境はとてつもなく良くなっているのを実感する。敗戦時をゼロだとすると、今の生活環境は、100点どころか1000点と評価してもいいくらいだ。
▼数え上げればきりがないが、私の生まれた北海道の漁村(昭和30年代に人口約4000人)は、道路など泥んこ道だった。
▼いつの間にか村中の道路が全て舗装され、馬車の代わりに自動車が走っていた。子供の頃は自家用車なんてもっての外と思っていたが、ほとんどが車を持つ便利な時代になった。
▼気が付けば赤とんぼも、100メートルも飛ぶ「殿様マバッタ」もいなくなった。自動車で遠くまで買い物に出かけ、気が付けば地元の商店は、大災害にでもあったように壊滅した。
▼人口減・高齢化(現在700人)で、運転免許も返納し、自家用車も手放し、公共交通網も次第に縮小され、間もなく明治時代の人口(500人)に戻りつつある。
▼一方都市部は人口が増え、社会インフラの整備で、生活環境は良好になったかに見えるが、たまに都市部に出かけると、高齢者には危険なゾーンが増えているような気がする。
▼明大教授で詩人でもある中村和恵は、都市部と田舎の二重生活をしながら「都市の閉塞感」を感じている。そして『人は人生で何をしたいか』をこのように述べている。
▼【成功とは名声を得ることなのか。使命感を持って何かを達成することなのか。それもあり。でもじつはほとんどの人にとっては、安心できる場所で適度な人間関係を楽しむことなのでは。そんなことにようやく気がついた】と言う。
▼【どんなに危険回避プランを練っても、すべての事象は偶発的。たまたまいる場所で満足して生きる。そのために必須なのは、毎日通えるご近所なのかもしれない】と。
▼とはいうが、田舎も隣近所の付き合いが希薄になっている。寒い冬は外に出ないで、じっとテレビばかりの生活だ。
▼中村教授は毎日通える場所は、郊外よりむしろ都心部にあるという。最近見つけたのは明治創業の魚屋さんだ。江戸時代の長屋みたいな町で、次々お客さんが訪れる。詩人はそこを‟最良のインフラ”と称す。
▼これは北海道新聞に掲載された「中村和恵の考えるヒント」というものだ。詩人中村の目線は人間は『安心できる場所で適度な人間関係を楽しむ』ことではないかという指摘をしてくれた。
▼私は数年前から函館市社会福祉協議会より「地域福祉コーディネーター」の役割りをいただいている。「00塾」と呼ばれる小さな地域での、主に高齢者の「居場所づくり」だ。
▼今や参加者が18名となり、地元の小学校より中学校より、生徒数?が多くなった。月一度の開催だが、昼食をはさんでの計4時間程度のプログラムを自分が担当する。
▼皆さん楽しんでくれているようだが、私も事前の調べものや準備であっという間に1か月がやってくる。充実感もあるが結構疲労感もある。
▼詩人中村和恵の視点は、主催する本人が疲れては「安心する居場所づくり」ではないということを指摘する。
▼「主催する自分も楽しめる居場所づくり」こんなテーマで、今年の我が塾の運営を大きく変化させてみようと思う。
▼庭に出てみた。春らしいぬくもりのある陽光を浴び、数百もの福寿草が黄金色に輝いている。