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アラン・ドロン LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を多方面から考察し、またファンの方々との交流に重きを置いております。

CHANSONS DE FILMS/FRANCOIS DE ROUBAIX

2010-01-30 | THE SOUNDTRACKS
昨年11月にユニバーサル・フランスより発売された
フランソワ・ド・ルーベ作品集"CHANSONS DE FILMS/FRANCOIS DE ROUBAIX"より
ボーカリストたちのインタビューが記載さたライナー・ノーツのうち
ドロンさん主演作『冒険者たち』の共演者ジョアンナ・シムカスのものをご紹介します。

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"当時、私はフランソワがどれほど多く映画音楽の世界に革命を引き起こしていたかわかっていませんでした。"

ロベール・アンリコ(監督)と私は1966年から1968年にかけてかなり親密な関係にありました。
その間私たちは3本の映画を撮りました。その3本とは『冒険者たち』、『若草の萌えるころ』そして『オー!』です。
私は映画界にはモデルとして入ってきました。
ですので私は自分自身の本職が女優であるとは認識していませんでしたし、
ましてや歌手などとは決して思っていませんでした!
しかし、ロベールは私のキャリアについて、他のアイデアがあり、私にアドバイスと励ましを与えてくれました。
彼にとって私は彼自身の作品だったのでしょう!
ある時点で、彼の頭の中に、私は歌手を志すべきだという考えが生まれたのです。
そうすれば私にはより多くの可能性が生まれるであろうと。
それで私はフランソワ・ドルーベに会うことになりました。
ロベールはフランソワのことをまるで自分の弟のように接していました。
そこで私は『冒険者たち』のメインテーマを元にした曲で歌のレッスンを受け始めました:
"あなたたちはは正に冒険者たちだね。失うものも得るものも何もないよ。" 
私たちはフランソワとデモを私の声とギター演奏だけで録音しましたが、発表されることもなくそれっきりでした。

その1年後、『若草の萌えるころ』の為に、アンリコはふたたび挑戦しました。:
今回彼は私の為に2つの曲の歌詞まで書いていたのです。
その時私はフランソワの真の姿を目の当たりにしました。
私が”Loin” と “Le Monde est fou”のボーカルを録音している間,彼は天使のような忍耐力を示してくれました。
私が歌詞を間違ったり、キーを外してしまっても、彼はとても穏やかに私を叱責しながら、
まるでヒマラヤの現地人登山ガイドのシェルパのように私を導いてくれたのです。
後にプロの歌手たちと仕事をするようになって、フランソワはとてもつらかったのではないかしらと感じます...
できあがった作品はとてもまともできっちりしています。それは曲たちがとても美しく詩的だからです...
しかし、より経験豊富なシンガーたちのより多くのテクニックにかかると
曲そのものが何か違った次元のものになってしまったように感じるのです。

実は私がこれらの曲を再び聞いたのがかなり最近のことなのです。私の娘たちのおかげです。
私は過去にしがみついて生きていません。
その当時、私は映画のスクリーンに映る自分の姿を観ることに耐えられませんでした。 :
『冒険者たち』でさえ、公開されてから一度も見ていませんでした。
私は夫のシドニー・ポワチエと一緒に、2006年のカンヌ映画祭で回顧上映されたときに初めて観たのです。
公開されて 40年も経ってからですよ!
そしてその時私はフランソワド・ルーベのインスピレーションの力に感じ入りました。
彼は何とモダンだったんだと。
彼と一緒に働いている間、私は彼のことを友人として接してきました。:
当時私はフランソワがどれほど多く映画音楽の世界に革命を引き起こしていたかわかっていませんでした。"

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読んでいますとジョアンナ・シムカスの謙虚な言葉に大変好感が持てますし、
同時にフランソワ・ドルーベという人の繊細なお人柄がこちらにも伝わってきます。
彼の書くスコアに漂うどこか人々の心を癒すような響きは、
正に彼自身の心の奥底から湧き出てきた泉のようなものであるように感じます。
ドロンさんの傑作『冒険者たち』に採用された奇跡的なスコアは映画史に永遠に刻まれていくことでしょう。
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『LE CHOC』 (4)

2010-01-11 | THE SOUNDTRACKS
前回のライナー・ノーツ翻訳の後半です。(ただし『最後の標的』に関する部分のみです)

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1981年の終わり頃、『最後の標的』の編集作業中のロヴァン・ダヴィはこの作品に大いに幻滅を感じていた。:
"私は石のように沈んでいた。そこに幸いにも、フィリップ・サルドが私を救いにやってきてくれた。
いつものようにおしゃべりをしながら熱意をもってやってきてくれたんだ。
まるで音楽のスーパーマンのように彼は胸をはってこう言ったんだ。
「心配しないでいい。あなたの映画を救って見せる!」とね。”

作曲家も同じように彼らの最初のスクリーニングセッションを一緒にした直後のことを覚えている:
"私には非常に単純な野心があった。つまり私の立場はこうさ:
音楽によって『最後の標的』という作品を単なるテレビ映画にはさせないってね。
映画のテーマには特にこだわらない。:
劇的な場面においてスコアはその内容を深めるため、そこに特別なものを注入した。
こんな風なやり方で、私はロヴァンが受け入れ難い音楽を彼に受け入れさせねばならなかった。
他の言葉で言うと、何人かの素晴らしいソリストを一同に集めて、
ロックとジャズ・フュージョンとロマン主義の音楽の間でバランスのとれた型にはまらないスコアを認めさせるということだ。
私は近代的なドライブ感覚を持った精力的なものにしたかった。
メインテーマを聴いてみたまえ:
そこではLancelot du Lac (1974)の音楽からのモチーフを私は再び取り上げて、さらに発展させている。
ロックのリズムをバックに、ソリストは偉大なサックス奏者ウェイン・ショーターに演奏してもらったんだ。:

私は彼に砲撃するような音色でもってソプラノをプレイしてもらえないかと依頼したんだ。
民俗楽器からジャズ・ホーンへの予期せぬ置き換え...
その結果、他の楽器の音とは全く異なるサックスの音色が、
ドロンとカトリーヌ・ドヌーヴの叙情的なラブシーンと同じように暴力的でスリラー的な場面にもフィットする。

私にとって『最後の標的』の音楽は『夕なぎ』とCoup de torchon (1981)の音楽の最も直接的で偉大なブレンド作業と言える。:
ジャズロックのリズムセクションにはウエザー・リポートのミュージシャンたち、ロンドン交響楽団、
そしてソリストのウェイン・ショーターに参加してもらった..
これには巨大なリスクを伴うものだった。:
大衆を目的とした映画にこのようなオリジナルのサウンドを構築するのであるから。
それには誰の耳にもなじむ明確な曲が必要であり、しかも全く他では聞いたことのないものにする必要があった。"

後になっとみると、ロヴァン・ダヴィはこの荒海から救助してくれたことを思い出して感謝している。:
"彼の音楽において、フィリップは私と一緒に物語を語ってくれている。
彼は『最後の標的』という映画を本来あるべき位置に戻してくれたのだ。
そして私はロートネル作品との目に見えないつながりにも愛着を感じている。:
それは 5年前の『チェイサー』でのスタン・ゲッツとの関係だ。
我々はまたしてもドロン&サルドに相対している。
だが今度のサックス奏者は黒人のアメリカ人、ウェイン・ショーターだ。

そして、フィリップは、この映画の中にほとんど気づかない何か特別なものを新たに加えている。:
私の希望は映画界の根幹を揺るがすようなことを行って破壊することだった。
例えば、私はカトリーヌ・ドヌーブが演ずる役をブルターニュの七面鳥農家に働く女性にしたんだ!
もちろんそれはグロテスクなものであった。だがそれが私の望んだものであり、私はこの結果に満足しているよ。
フィリップはすぐさまそこに可能性を見てこう言ったよ、
"この音楽は君をはるか彼方の先に連れて行くことができるよ。
もっと拡大させるのさ...私は君の七面鳥農婦を女王にしてあげるさ!" 
彼は壮大な曲を追加した。
それはまるでヴェルサイユ宮殿の噴水のそばで演奏されるリュリのバロック作品のオーケストラとマンドリンの音色のようであった。
まず第一に、その音楽はシーンを救済している。
第二に、これはまさしく常識はずれなことだが、同時に天才的であり、これこそまさに我々がフィリップに期待するものなんだ!

それでも、私は『最後の標的』が好きだという人に未だに出会うことに驚いているんだ。
そういうときは私は彼らの感情を傷つけないようにこう答えるんだ。
"ごめんなさい。あの作品は私にとって最悪の映画だ!" ってね(笑)

しかし作曲家は監督とは少し異なる意見を持っている。:
"奇妙なことだが、『最後の標的』という作品は年月が経過するごとに熟成していっている。
それは伝説的なカップルの存在感にロヴァンの映画的な技法の信頼性が加わって強化された、
正に基本に忠実な映画作品だからだろう。
少なくとも当時ドロンが製作していた他のスリラー作品、
たとえば『ポーカー・フェイス』や『危険なささやき』にも十分匹敵する作品だよ。

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この作品が好きな私にとって最後のサルドの言葉は泣けます。

日本でこの作品がテレビ初放映された際に、
このサルドの音楽が全く別の三流の音楽に差し替えられてしまった事実を思い起こしますと、
このインタビューに書かれた、監督と作曲家との間の厚い友情を
土足で踏みにじる行為であったことがよくわかります。

それにしても1981年当時のウエザー・リポートのリズム・セクションと言えば
故ジャコ・パストリアスの名前を思い出さずにはいられません。
このアルバムにもし参加していたのであれば驚異的な事実です。

尚この作品については以前のこの記事をご参照ください。
LE CHOC 最後の標的 (1) (2) (3) (4)

またサントラについてはこちらです。
『LE CHOC』(1)(2)
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『LE CHOC』 (3)

2010-01-10 | THE SOUNDTRACKS
ご挨拶が大変遅くなりましたが皆様本年もよろしくお願い申し上げます。

今年の第1回目は、昨年11月にユニバーサルから発売された『最後の標的』サントラ盤のライナー・ノーツの翻訳です。
長いのでまだ前半しかできておりませんが取り急ぎご紹介します。

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"映画音楽という分野においてはフィリップ・サルドという作曲家ほど
監督に対して最善の話し方をする人物はいないであろう。"

"フィリップ・サルドにはこのような巨大な才能があるんだ:
彼と話していると自分は世界最高の監督で最も感性が鋭く知的なフィルムメーカーであるという気にさせてくれるんだ。
彼はその才能のおかげで、映画史の中でも最も美しいスコアを書くことができる。
率直に言って、これは最も心強いことさ。
なぜなら、映画監督というものは俳優たちも含めて、映画製作の過程において非常に多くの落とし穴を回避しなければならない:
時間と戦い、資金をやりくりしながら映画を終わらせていかねばならない...
それらのことにすっかりくたびれているときにサルドがやってくると、
まるで日焼け後にサンローションを塗ったかのように癒されるんだ。"

この言葉は、監督のロヴァン・ダヴィが1982年に初めてサルドと仕事を共にした作品『最後の標的』において
彼の重要な共犯者(=フィリップ・サルド)について表現したものである。
この映画を撮影するまでの10年間、彼らは友人同士であった。
それはちょうどサルドが初めてジョルジュ・ロートネル監督の作品(“La Valise”)に参加したときからである。
その作品でロヴァン・ダヴィは秘書兼アシスタント及び第2班の監督として働いていたのだ。

"ロートネル監督のスタッフたちとは"と、サルドが回想する。
"ロヴァンはまるで家族の友人のような役割を担っていたよ。;
私自身も、同じ役割を果たしていた。私たちはよく日曜日にヌイイで会っていたよ。
そこには監督のジョルジュと彼の妻のキャロラインが住む家があったんだ。
それはまるで家族の集まりのような感じだったよ。ジョルジュが中心となった緊密なサークルのようなものだった。
私たちはそこで生活や映画、新しいプロジェクトについて語り合っていた...
本当に恵まれた環境にいたよ:その集まりでは本当にお互いに熱く語り合ったんだ。
ロヴァンと私二人にとってそれは30代のシンボルだったよ。"

それから2年経ってロヴァン・ダヴィはジョルジュ・ロートネルの保護の元から離れて、
彼の最初の映画作品Ce cher Victor (1975)を監督する。
この作品は『女王陛下のダイナマイト』のベルナール・ジェラールが音楽を担当した残酷な喜劇であった。
そして1979年のドライで神経質なスリラーLa guerre des polices (1979)(警察戦争)が大ヒットして、
ダヴィに監督のオファーが相次ぐようになる。

"突然に、"とダヴィは回想する。"私は新しいスリラーの専門家として注目を集めることになったよ。
Leboviciからは私にメスリーヌの“L'Instinct de mort”を作るよう言ってきたし、
ムヌーシュキンは私に“Garde a vue”を依頼してきた...
だが私はすべてをことわっていた。
そんなとき (プロデューサの)アラン・サルドとアラン・テルジアンが別のプランを持ってやってきた:
"あなたはドロンと一緒に映画を撮ろう!"

私はドロンとは彼が『愛人関係』を撮っていたころに面識は会ったが、近寄りがたい人物だと感じていた。
しかし、プロデュサーたちは執拗にせまってきた。:
"ドロンとの仕事であなたは一段高いレベルに上がれるんだよ!"とね。
私は彼らの言葉を信じるしかない弱い立場に立たされていた..."

フィリップ・サルドはダヴィのこの気持ちを代弁する:
"率直に言って、この業界というのは怖い:
私はとても親切で慈悲深い心を持つロヴァンがドロンと一緒に働いている姿を想像することができなかった。
アラン・ドロンは映画界のモンスターであり、彼は監督たちを死ぬほど震え上がらせてきた。
ロートネルもそのうちの一人だったよ。
『最後の標的』について言うと、ドロンはカトリーヌ・ドヌーブと共演していたが、
ここだけの話だが、プロットはそれほど映画界を揺るがすほどのものではなく、また新しいものでもなかった。"

ロヴァン・ダヴィに公平を期すために、
彼がプロデューサーたちから渡された脚本(ジャン・パトリック・マンシェットの小説“La Position du tireur couche”を翻案としたもの)は、
おびただしいほどの譲歩によって毒を抜かれたものになってしまっていた。
"マンシェットは自由主義の小説家で、無政府主義者だが、彼の独創的なアイデアの一つ一つは、
ドロンの個性に適応させるために犠牲にしなければならなかった"とダヴィは主張する。
私は虚無的なスリラーという視点を持たなければならなかったし、
ちょうどこれまでドロンの伝説で構築されてきた人間味の無い作品の撮影に自分の身が置かれていることに気付かされた。
撮影はかなり劇的なものになった...
そして何度も私はそこから出ていこうとした。
プロデューサーたちに預かった鍵を返そうとしたんだ...
だがそのたびにドロンは私を戻してくれたんだ、しかも、素敵な言葉を添えて:
"頑張ってくれ、ロヴァン、我々には君が必要なんだ!"

我々は、とてもハイテンションな状態で撮影を終了させた。
私はメイン・タイトルの前のシーンのためにドロンとマラケシュにさえ撮影に出かけて行った。
そして私は、もう自分のものではないこのプロジェクトのためにこれ以上戦う気力は失せてしまった。"

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『BORSALINO & CO.』(2)

2009-12-23 | THE SOUNDTRACKS
クロード・ボリンの『ボルサリーノ』への帰還を記念しまして、
今回はクロード・ボリン・ビッグ・バンドの『パリ・スウィング』をご紹介します。
http://www.amazon.co.jp/Paris-Swing-Claude-Bolling-Band/dp/B00008O88B/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=music&qid=1261497424&sr=1-3

このアルバムはおもにシャンソンのスタンダード・ナンバーを
時にボーカリストも交えながら、ボリン率いるビッグバンドが
抜群のスウィング感を駆使した演奏を繰り広げる、
ボリンのジャズ・アルバムの決定盤といえる作品です。
(フランス国歌のスウィング・バージョンなども最高にいかしています。)

アルバムの全17曲のうちの2曲がボリンのオリジナル・ナンバーで、
1曲目の1998年クロード・ルルーシュ監督作品"Hasards ou concidences"
(邦題『しあわせ』)からのナンバーで幕を開け、
8曲目にいよいよ『ボルサリーノ』が登場します。

この6分55秒にも及ぶ"Borsalino Concert Version"ですが、
ボルサリーノの「1」ではなく「2」のアレンジと構成で演奏されていきます。
とはいっても開巻2分間はボリンのピアノ・ソロが続き、
ちょうど前回ご紹介のDVDでの演奏とほぼ同じメロディーを聴くことができます。

そのあとはアメリカ行きの豪華客船のラウンジでローラと踊るロッコ・シフレディのバックで流れた
映画のエンディング曲と同じようなピアノとビッグバンドの掛け合い演奏で
「ボルサリーノ・スウィング」が演奏されます。
それにつづいて「アール・デコ1935」ではサントラを忠実に再現したトランペット・ソロが展開され、
引き続き「ボルサリーノ」のテーマのエンディングへと連なります。

この演奏を聞いていますと、いつかこのボリン・バンドのメンバーで
「ボルサリーノ」からの曲のみで構成された「ボルサリーノ・ライブ・ツアー」を
日本で行ってもらいたいと本気で考えてしまいます。

皆様もぜひ彼らのライブ演奏を以下のリンクでお楽しみください。
YouTube - claude bolling big band theme de borsalino 2002
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『BORSALINO』(2)

2009-12-20 | THE SOUNDTRACKS
先日ご紹介した『ボルサリーノ』フランス語盤DVD特典映像に収録されている
音楽担当のクロード・ボリンのインタビュー映像をご紹介します。

私はこの作曲家の名前を昔から所有していたLPレコードの表記にしたがって
今日まで「クロード・ボラン」と書いてきましたが、
今回の特典映像の中で解説者として出演しているジャーナリストのステファン・ルルージュ氏の口から
「クロード・ボリン」というフランス語の発音を確認できましたので、
今後は彼の名前を「クロード・ボリン」と表記してまいります。

字幕なしのフランス語オンリーの映像ですので80%近くは何を話しているのかわからないのですが、
それでも自宅スタジオで行われたボリン氏の単独インタビューの映像を観ているだけで引き込まれていきます。
とりわけ彼がピアノに向かって即興であのテーマ曲を弾く映像は圧巻です。
映画の該当する場面を合成処理し、それに合わせるかのようにボリンのピアノが躍動的に演奏されていきます。

今回初めて生のボリンのピアノ演奏を目の当たりにして感じたのは、
これまで耳にしてきたサントラ盤でのラグタイム・ピアノの演奏は正にボリン本人の演奏だったということです。
以前の記事『BORSALINO & CO.』でご紹介した
「Borsalino Medley」の中で聞けるピアノのアドリブ演奏と同じフレーズをこのボリンの生演奏で聞くことができたからです。
当たり前といえば当たり前のことかもしれませんが、これは大きな収穫でした。

またボリンのコレクションとして、この「ボルサリーノ」の各国のレコードやカバー盤が映像で紹介されていきますが、
その中には日本で発売されたシングル・レコードもちゃんと映し出されています。
またヘンリー・マンシーニ楽団のカバー盤を手にとったボリンが
マンシーニに尊敬の念を示しているように語る場面も印象的です。
このときボリンは「アンリ・マンシーニ」と発音しています。

とにもかくにも永年このテーマ音楽の喪失感に忸怩たる思いを抱いてきた私にとって
ボリンの音楽に対してこのような敬意を払った特典映像を製作したスタッフたちに感謝の気持ちでいっぱいです。
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『SOLEIL ROUGE』

2009-04-02 | THE SOUNDTRACKS
今年の3月29日に亡くなられた映画音楽界の巨匠モーリス・ジャールの作品
『レッド・サン』のサントラ盤CDをご紹介します。
この作品は1995年に一度日本のSLCレーベルから世界初CD化として発売されていましたが、
(添付画像中段)これは全てモノラル録音でした。
その後ユニバーサル・フランスよりステレオ完全版が発売され現在に至っています。

アラン・ドロンさんの作品でモーリス・ジャールが音楽を担当したのは
『素晴らしき恋人たち』『パリは燃えているか?』『レッド・サン』『昼と夜』(未公開)と実に4作品もあり、
また息子のジャン・ミッシェル・ジャールも『燃えつきた納屋』の音楽を手掛けるなど、
ドロンさんとは意外と接点の多い作曲家でした。

今回ご紹介する『レッド・サン』の音楽は上記4作品の中でも最もジャールらしい作品です。
ジャール自身のインタビューが掲載されたライナー・ノーツの中で、
彼がコンセルバトワール音楽院在学中から特に興味を持っていたのが民族音楽のジャンルで、
映画音楽の作曲家となってからはシンセサイザーがまだなかった50年代、60年代において
この世界各地の民族楽器を随所に使用することによって大きな効果を発揮することができたと語っています。
この『レッド・サン』の音楽の中でも日本の琴やダルシマーなどの民族音楽と
オンド・マルトノとアコーディオンの演奏家がオーケストラに加わって参加しています。
これら西洋、東洋、中近東音楽の融合というのはジャールにとって
『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバコ』など一連のデビッド・リーン作品で成功しており、
『レッド・サン』もそれらの範疇に入れることのできる音楽と言っても差支えはないでしょう。

『レッド・サン』は撮影がほとんど終わって、もうあとは音楽をつけるだけの状態で、
プロデューサーのロベール・ドルフマンの紹介で監督のテレンス・ヤングがジャールに依頼してきたとのことで、
007の監督として有名ではあったけれども彼とはまだ仕事をしたことのなかったジャールは
結局ヤングの人柄に魅かれ彼の要請にこたえる形で引き受けることになったようです。
ジャールが初めて試写を観たこの映画の印象は「シュールレアリスティックだった!」とも書かれています。

この『レッド・サン』はジャールと日本との接点の始まりという意味でも意義のある作品で、
この後アメリカ資本のテレビ・ドラマ『将軍』の音楽も手掛けることになります。
この作品のサントラCDは昨年イントラーダ・レーベルから発売されていますが、(添付画像下段右側)
『レッド・サン』のさらに延長線上を行くかのように、
琴や尺八、三味線、和太鼓などの和楽器をオーケストラと共演させた見事な融合音楽を聞かせてくれます。
またジャールはその後も日本映画『首都消失』『落陽』の音楽も手掛けています。

偉大な作曲家モーリス・ジャール氏に対し謹んでご冥福をお祈りいたします。
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『NOTRE HISTOIRE』

2009-01-25 | THE SOUNDTRACKS
1983年にドロンさんが製作主演し、見事セザール賞主演男優賞を獲得した記念すべき作品
『真夜中のミラージュ』のフランス盤サントラLPをご紹介します。

このアルバムは日本でもなかなかお目にかかることができなかったのですが、
先日ようやくイタリアのebayで入手することができました。

本作の音楽はチェコの作曲家ボフスラフ・マルティヌーのクラシック音楽の作品が多数採用され、
そのほかにもベートーベンやショパンなどの既成曲も使われていますが、
本LPにはそれらの既成曲は一切収録されておらず、
あくまでERIC KEMRAYとLAURENT ROSSIによるオリジナル音楽のみが収録されいます。

収録曲は全部で6曲、そのうち2曲が別バージョンでの収録ということで、
実質的には4曲のオリジナル音楽のみをここでは聴く事ができます。

以下にそれらの曲について説明していきます。

①BLUE SERENADE

まずはこの映画の主題曲といえるバンドネオンの音色が印象的な曲で、
4曲の中でもやはり一番聴き応えがあります。
このどこかムード歌謡の雰囲気にも似た覚えやすいメロディーは
一度耳にしてしまうと頭の中でずっと回り続けてしまいます。

②DONATIENNE

つづいて恐らく①と同じバックトラックを使ってバンドネオンのアドリブ演奏が展開されるヒロインのテーマ曲

③BABY PLEASE COME HOME

さらに同じようなシンセのリズムをバックにけだるい女性ボーカルが聞けるアップテンポなダンスナンバー

④NOTHING'S BETTER THAN LOVE

映画の中盤、ドナシエンヌの隣の家で催される真夜中のダンス・パーティーのバックで流れ、
③と同じ女性ボーカリストによる美しいバラード曲。
ドロンさん演じる主人公がナタリー・バイ演ずるヒロインとつかの間のダンスに身をやつすシーンで流れるこの曲は、
もっと世に出ていてもおかしくないバラードの名曲です。


以上の4曲の後にBABY PLEASE COME HOMEとBLUE SERENADEの2曲の
アレンジ違いの2曲が追加で収録されています。

映画を見ていると前述のクラシック音楽と交互に聞かされていた為にあまり気づかなかったのですが、
これらオリジナル曲には80年代らしいシンセ・サウンドが全面的にフューチャーされており、
音楽的には『燃えつきた納屋』あるいは『LE PASSAGE』に近いものがあります。

またボーカル曲が全てフランス語ではなく英語の歌詞で歌われているところが、
映画が製作された時代を反映しています。
本作の後のドロンさんのヒット作『PAROLE DE FLIC』に至っては
その傾向がさらに進んでいくことになります。


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『SCORPIO』(2)

2008-11-03 | THE SOUNDTRACKS
今年の夏にイントラーダ・レーベルから突然に発売された『スコルピオ』サントラ盤です。

この作品については以前にご紹介しておりましたが、『SCORPIO』
今回発売されたCDは音質もリマスターされ、新たに未発表曲も8曲追加されており、
サントラ・ファンには聴きごたえがあります。

曲のタイトルも今回刷新されているためにどの曲が新しいのかわかりづらいので
以下にまとめてみました。カッコ内は以前のCDの曲名と曲順です。
ご参考にしていただければと思います。

1.Main Title (=1.The Parisian Connection)
2.Target Zim (未発表曲)
3.In the Aircraft (=3.On the Plane from Paris)
4.Reflections of Cathood (=2.Reunion in Washington)
5.C.I.A. Tail (=5.A Wag of a Tail)
6.Susan's Apartment (=12.Flowers)
7.I Have to Go Deep (=6.Hello and Farewell)
8.Two Ways to Walk (=4.Two Ways to Walk)
9.I Picked You Up (未発表曲)
10.The Big Wheel (=7.The Vienna Wheel)
11."Un Dia de Julio" (=8.The Lincoln Brigade)
12.The Imperial Vaults (=9.The Imperial Vaults)
13.In the Greenhouse (=11.Encounter in the Winter Garden)
14.Zharkov Wags His Tail (=10.The Russian Wags His Tail)
15.Into the Underground (=13.Hide and Seek )
16.Cocktails at Heck's House (未発表曲)
17.The Thief (未発表曲)
18.Zharkov Bites His Tail (未発表曲)
19.Nothing But Enemies (未発表曲)
20.Boiler Room (未発表曲)
21.Miff Dives (未発表曲)
22.All Fall Down (=14.All Fall Down)

今回初めて聞いた未発表曲の中で個人的に気に入っているのは9、と20です。
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『LA PISCINE』(2)

2008-07-23 | THE SOUNDTRACKS

ライナー・ノーツ後半をご紹介します。

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クリスチャンヌ・ルグラン、ミッシェル・ルグランとステファン・グラッペリのトリオによる
胸を張り裂くような悲しく抒情的な曲“Des Souvenirs En Regrets”、
即興のコーラス演奏が挿入される“Blues Pour Romy”、
犯罪に手を染めたカップルの曲“Suspicion”、この曲の最初の4音階は
すでに『おもいでの夏』の中でその輪郭が描写されていた。

また『太陽が知っている』ではロスで録音された2曲のファッショナブルな曲にも注目すべきである。
その2曲、"Run,Brother Rabbit,Run "と“Ask Yourself Why”は、
歌詞をアラン&マリリン・バーグマン夫妻が執筆しており、
彼らとミッシェル・ルグランとは『華麗なる賭け』の主題歌で実りある関係を築いていた。

映画にほとんどの曲が採用されなかった代償として、
いくつかの曲たちが映画から解き放たれ、独立した形で今も生き続けている。
ミッシェル・ルグランがフィリップス・レーベルでボーカル・アルバムを録音したときに、
作詞家のEddy Marnayが“Ask Yourself Why”にフランス語の歌詞をつけ(“OU BIEN QUOI”と改題されている。)、
ポップ・ナンバーの“Dans La Soiree(Les Baladins Du Siecle D'aujourd'hui)”にも歌詞を追加している。

しかしながらこの映画の最大の成功はメイン・タイトルであった。
バーグマン夫妻の魔法のペンにより歌詞が付けられ“One at a Time”となったこの曲は、
リナ・ホーンやジャック・ジョーンズ、シャーリー・ホーンなどのボーカリストたちにカバーされ続けた。
ルグランの音楽にあまり詳しくない人たちでも彼のレパートリーの中でこの曲を知っている人は多いが、
『太陽が知っている』のテーマ曲がもともとの発祥であることを知る人はほとんどいない。

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前回ご紹介したライナー・ノーツよりも前段の部分で、
ジャック・ドレー監督は脚本の執筆段階からこの作品の音楽には
当時まだ一面識もなかったルグランに音楽を担当してもらうことを
すでに想定していた、と書かれていました。
それだけ期待の膨らんだルグランの音楽にパリのスタジオで接した時の
ドレー監督の落胆というものはいかばかりのものであったかと想像に難くないのですが、
出来上がった映画を観てこのサントラCDを聴いてみますとやはり違和感があります。
このCDはルグラン先生が映画を観て感じた彼の個人的なインスピレーションを感じるものだ、
と割り切って聴くのが正しい聞き方なのかもしれません。

ライナー・ノーツ後半に記載されていた各曲のカバーが聞けるアルバム・ジャケットを
添付の画像にご紹介しています。
個人的には右下のルグランのアルバム“Michel Plays Legrand”の中に収録されていて、
アルトゥーロ・サンドバルの静かなトランペット・ソロが展開される
“One at a Time”の演奏がお洒落なカバーとして気に入っています。

なお今回の『太陽が知っている』世界初CD化に際しては、
日本におけるルグラン研究の第一人者である濱田高志氏のご協力もあったようで、
添付画像の見開きジャケットの「協力者」たちの名前の中に彼の名前が見られます。
以下のサイトにご本人の興味深いコメントが書かれています。
          ↓
http://loveshop-record.com/readymade/essay/hamada_takayuki_2.html
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『LA PISCINE』(1)

2008-07-22 | THE SOUNDTRACKS

皆様お久しぶりです。
そして暑中お見舞い申し上げます。
このような熱い日々にはぴったりの映画『太陽が知っている』のサントラ盤が
6月にフランスのユニバーサル・レーベルで発売されました。
これまで公開当時に日本でLPが発売されたのみという幻の作品であった本作が
CDとして世界初のリリースとなったわけですが、
今回から2回に分けてこの作品について取り上げたいと思います。
今回はまずこのCDのライナー・ノーツから本作に関する部分の前半をご紹介していきます。

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1968年、ミッシェル・ルグランは妻と子供たちとともにカリフォルニアの陽光の下にいた。
彼は新鮮な仕事を求めていたのだ。
当時もう衰退期に入りつつあったヌーヴェヴァーグの数々の映画で彼は実績を積み、
さらにはジャック・ドゥミー監督の「ロシュフォールの恋人たち」で華々しい成功を収め、
いよいよハリウッド進出というリスクに挑んでいたのであった。
だが新天地での成功にはそう時間はかからなかった。
ノーマン・ジュイスン監督の高度に洗練されたスリラー『華麗なる賭け』の偉業により
ミシェル・ルグランは初のアカデミー賞を受賞していたのだった。

ジャック・ドレー監督が『太陽が知っている』の音楽を依頼しにロスまでやってきたとき、
ミッシェル・ルグランはこのチャンスを大いに喜んだ。
それは彼がアメリカに旅立ってから初めてのフランス映画からのオファーであったからだ。
「この作品に対する私の記憶は非常に詳細であると同時にあいまいでもある。」
作曲家はこう笑って答える。
「私はロスで脚本を読み終えて、すぐにフランスへ飛んだよ。
行った場所はサントロぺの近くのラマチュールで、そこで映画のロケ撮影が行われていたんだ。
そして撮影が終わったばかりのフィルムを見て私はとても魅了された。
閉ざされた扉の奥で展開されていく現代の悲劇、邸のそばにはプールがあり、
感情のはざまで狂おしく錯綜する4つのポーンの間で繰り広げられる人生のチェス・ゲームが展開されていた。
アラン・ドロンとモーリス・ロネが演じる主人公たちの間には
昔の遺恨を表面上は隠しながら次第に競争心が増大していくのだ。

「私は私自身と姉のクリスチャンヌの二人の声を使ったメイン・テーマを作曲した。
それはまるでドロンとロミー・シュナイダーという、
痛ましい破たんした二人のカップルを声で表現したようなものであった。
私たち二人のコーラスは永遠の荘重さを幅広く表現し、また宗教的な荘厳さも同時に併せ持っている。
さらには不快感をも生み出し、無言の温かく包みこむような感情を表そうとする音楽だ。
メイン・タイトルは正に静けさと官能のテーマである。
そのあとコーラスの調子はわずかに悪くなり、ハーモニーは曇り、不調和が表面に現れる。
私の興味は火山が今にも噴火しようとし、すべてを流してしまうのを表現することだった。」

一部をフランスで、一部をアメリカで書き上げられた『太陽が知っている』のスコアであるが、
1968年12月にパリのDavout Studioでまず録音された。
コーラス隊と何人かの高度な技術を持ったソロイストたち(バイオリンのステファン・グラッペリ、
オルガンのエディー・ルイス、ピアニストのモーリス・ヴァンデールなど)が結集され、
作曲家自身が組み立てたメカノのおもちゃのような魅力的なオーケストラを
ジャック・ドレー監督が初めて目にしたとき、
彼の頭の中に生まれた疑念は、すぐさま心配事へと変わっていった。
「ドレーはセッションの間、文字通り自分の立場を失っていた。」
ミッシェル・ルグランは思い起こした。
「彼がスタジオで耳にしたものは彼を驚かせた。
曲そのものに対してではなく、むしろ曲の扱い方に対してであった。
彼は繰り返し私に聞いてきた。
“なぜコーラスを使うんだ?どこからこんな発想が出てきたんだ?”ってね。
私は彼を説き伏せようとした。そして説明したんだ。
撮影が終わったシーンに後から付ける音楽は
どんなものだって明らかにリアルなものにはなりえないんだってね。」
さらに私はこう言った。
「ジャンヌ・モローが『死刑台のエレベーター』の中で歩くシーンに
マイルス・デイヴィスのトランペットの音が聞こえてくるだろう?
でもスクリーンの上でジャンヌの隣に彼はいないじゃないか。」
だがこの言葉にもドレーの心に大きな変化は起こらなかった。
ジャック・ドレーはこう考えた。
この音楽が導く方向性はあまりにも過激(急進的)であり、
彼自身の映画に対する考えや美学からはあまりにも極端すぎるものであると。
とにかくドレーは豊富な抒情的なセンスを併せ持つ映画作家ではなかった。
むしろ彼は鋭くて厳しくて、かつ氷のように冷たい
『太陽が知っている』のような主題の映画に完全に適する作家であった。

「彼は静かで常に慎み深い男であった。そして彼が感情を表に出すところを私は見たことがなかった。
私について言えば、彼の作った映画のシーンからはあまりに遠くに反抗してしまっていた。
私は高く飛んで行ってしまっていたんだ。」

ミッシェル・ルグランは一部彼のオーケストレーションの規模を縮小し、
スタジオに戻って、今度はコンボ演奏に編成し直した。
この変化にも拘らず、ジャック・ドレーは音楽と映像をミックスする際、
ルグランの曲のほとんどを結局は採用しなかった。
時間にしてせいぜい20分、12シーンに広げただけであった。
それでもこの20分には作曲家に内包するものを垣間見ることができた。
そこには人のモラルを探究するような物語から犯罪の物語に滑り落ちていくこの映画のストーリーに対して、
作曲家の熟練の技によるスコアが寄り添っていたのだ。

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後半の各曲の解説に続きます。
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『BORSALINO & CO.』

2008-05-18 | THE SOUNDTRACKS
クロード・ボランの音楽がついた「ボルサリーノ1」を数十年ぶりに観た直後に、
この「ボルサリーノ2」を改めて鑑賞してみたところ、
高校生時代に私が抱いた「2」の鮮やかな記憶が一気に呼び覚ませられました。
すり替えられた「1」の音楽によって「1」ばかりでなく「2」までもが
私の頭の中では今日まで違った印象の映画になってしまっていたのです。
それほどまでに映画音楽というものは映画作品全体に影響を及ぼしているものなのだと
再認識するに至った次第です。

今回は前回「ボルサリーノ1」から引き続いて、
それぞれの曲の使用箇所で判別できたものを記載していきます。
曲順は前回通りCDアルバムからのものです。

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(14)Borsalino and Co.: Roch Attaque
マルセイユに帰還したロックが警部の車に乗り込み、ボルポーネとの会談を依頼する

(15)Arts Deco 1935
ロックが経営するクラブでバンドが演奏する曲。 

(16)Folie Czardas 
ローラの誕生日のお祝いのセレモニーの後クラブの中でかかる曲

(17)Borsalino Swing 
エンディングの場面、ローラと客船の中でダンスを踊るシーンからエンド・クレジットにかけて流れる。
テーマ曲の躍動感あふれるビッグ・バンド・アレンジが素晴らしいです。

(18)Fernand 
行方不明のロックを部下のFernandが捜し歩くシーンと
精神病院からロックを救出し港から船に乗って逃亡する場面。

(19)Rose Night 
ボルポーネ一家が経営するクラブで流れている曲。

(20)Le Retour de Roch 
前半は前作のテーマ曲(1)のアレンジをそのまま受け継いだスロー・バージョン、
後半は(8)のオーケストラ・バージョン。
当時発売されたLPには収録されていなかった曲で使用箇所は確認できませんでしたが、大変印象に残る曲です。

(21)Delice Viennois 
ボルポーネ一家が客船の中で繰り広げるパーティーの中で演奏されている曲。

(22)Select Society 
同じくボルポーネ一家が経営するクラブで流れている曲。

(23)Le Retour de Borsalino 
警察署内でボルポーネと直接対面して宣戦布告したロックたちの行動のバックに流れる曲。

(24)Alcazar Parade 
ロックの経営する演劇場でコメディアンが登場する際の入場曲。

(25)Prends-Moi Matelot [Instrumental] 
ロックが経営するクラブで演奏される曲で(8)のバリエーション曲。

(26)Borsalino Medley [Inedit] 
「1」と「2」からの様々な代表曲が数小節ずつメドレー形式でつなぎあわされた未発表曲。
この曲がいったいいつ録音されたのかは不明ですが、
音から推察すると「1」「2」と同じバンドのメンバーが演奏しているのは間違いないようです。
この曲だけ聞いても「ボルサリーノ・サーガ」のエッセンスを全て感じ取ることができる名曲です。
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『BORSALINO』

2008-05-09 | THE SOUNDTRACKS
先日私のBBSにお越しくださったブロンディーりおな様のおかげで
とうとう念願の『ボルサリーノ』日本語吹替盤を見ることができました。
ブロンディーりおな様、誠にありがとうございました。

野沢那智と山田康雄コンビの絶妙な吹替演技の素晴らしさもることながら、
私にとっての最大の喜びはあのクロード・ボランの音楽付きで
この作品を数十年ぶりに観ることができたことです。

本国フランスでも未だDVD化されない本作のあのオリジナル・テーマ音楽の素晴らしさは
フランス映画史の中でも最も耳になじんだ映画音楽のひとつと言っても
過言ではありません。

今回はそのサウンドトラックにつきまして、
曲ごとに映画で使用されたシーンが確認できたものについて書いていきたいと思います。
(ただし日本語吹替盤での曲の使用場面は、時にオリジナル盤のそれとは異なることがありますが
ここではそのことはないとの前提で書いていきます。)

またここでの曲順は市販されているCDアルバムと同じものです。

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(1)Borsalino: Theme
言わずと知れた本作の代表曲ですが、
映画の中ではこのバージョンが何回も繰り返し登場します。
前半でボクシング選手をスカウトしに波止場にカペラたちがやってくるシーン、
ライバルの魚市場に仲間たちで押しかけ騒ぎを起こす場面、
成功した二人が仲間と共に車2台で池に泳ぎに出かける場面。
その後二人が大物になるにつれて少し鳴りを潜めますが、
いったん仲違いした二人の誤解が解けて仲直りする場面に
再びこの曲が鳴ったときの感動はこの作品のハイライトといってもいいでしょう。
そして悲しいラスト・シーンの後のエンド・クレジットでこの曲が流れてくると
そのバックに展開される二人の映像とも相まって映画の感動が増幅されます。

(2)Arts Deco 1925
ラスト・シーン間近、ロックの邸宅で記念パーティが開かれたとき
バックでディキシー・バンドが演奏する曲

(3)La Planque
使用箇所不明です。

(4)La Reussite
この曲も一度聴いたら耳から離れないとびきりの名曲で、
映画の主要な場面で何回も流れ(1)を補完するような第2テーマ音楽です。
具体的には先の魚市場でカペラが車の荷台から猫を出して混乱をさらに増長させる場面、
マルセイユの片方のボス、ポーリーを撃退して
大物の仲間入りを果たした二人が坂道を下りながら街中を闊歩する場面、
もう片方のボス、マレーロも駆逐し、
とうとうマルセイユの大親分となった二人がまるでスターのように民衆から迎え入れられる場面、
など主に二人の成功を描写する音楽です。

(5)Escalade
「1」のアルバムの中では唯一のサスペンス曲で、
カルファンとボート漕ぎから帰ってきたベルモンドがポーリーの手下たちにいためつけられるシーン、
ダンサーの復讐のためにマレーロの一味に襲撃された二人が街頭に出て銃で応戦するシーン
の計2回流れます。

(6)Tango Marseillais
ミシェル・ブーケ演じる弁護士リナルディの邸宅で開かれるパーティーのシーンで
ベルモンド演ずるカペラがリナルディの妹と踊るタンゴの曲。

(7)Les Roses
ニコール・カルファンとベルモンドが花屋の前でやりとりする場面に流れるユーモラスな曲

(8)Prends-Moi Matelot
カペラに疑われて去って行かれたロックが孤独にさいなまれながら
自分の経営するバーで耳を傾けるオデット・ピケが歌うシャンソン曲。
ただしCDには「1」ではなく「2」からのミッシェル・バックの歌うバージョンが収録されています。

(9)Generique
映画のオープニング、刑務所から出所してきたロックが歩きながら仲間に出迎えられて
自分が逮捕される情報をたれ込んだダンサーの店にやってくるまでを
フルバージョンで聞くことができます。
ビデオ化された映像には音楽担当のクロード・ボランの字幕がものの見事にカットされています。

(10)Lola Tango
(6)と同じくパーティーのシーンのバックに流れるタンゴの曲。

(11)Les Annees Folles
使用箇所不明です。

(12)Exoticana
使用箇所不明です。

(13)Borsalino Blues
(2)に続きラスト・シーン間近、ニースに向けて旅立ち宣言をするカペラと
その言葉に困惑するロックとの会話のバックに流れるテーマ曲(1)のスローバージョン。
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『FLIC STORY』

2008-02-17 | THE SOUNDTRACKS
『フリック・ストーリー』の音楽が聴けるアルバムは
今のところ前回ご紹介したアルバム"Les Musiques De Claude Bolling"
のみとなっております。

もともとこの映画には劇伴をあまり聞くことはできず、
これはトランティニアン演ずる凶悪犯人がピアフを愛聴するという設定から、
あえて派手なアクション音楽を鳴らすことは控えたからではないかとも受け取れます。
またこのCDの最後には"Epilogue Et Generique Fin"という曲が
ドロンさんのラスト・シーンのナレーションと共に収録されていますが、
実際の映画の中ではこの曲は一切流れてきません。
どういう事情でこうなったのかはわかりませんが、
メイン・タイトルのイメージを保つためにあえてボツにしたのかもしれません。
それぐらい印象に残る名曲です。

最後にCDのライナー・ノーツから
クロード・ボランのインタビュー後半の部分をご紹介します。

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「フリック・ストーリー」のファースト・ショットを観て、
私はこの作品が典型的な推理小説の映画(ポリシエー)だと感じた。
映画はとてもシリアスな雰囲気を持っており、
強い意志を持ったボルニッシュ刑事(=ドロン)が
民衆の最大の敵であるビュイッソン(=トランティニアン)を容赦なく逮捕する物語だ。
私はこの作品の音楽には庶民的なアコーディオンの音色を使いながらも、
そこに少しばかりミステリアスな調子を漂わせることによって、
戦前のパリの憂鬱な雰囲気を表現しようと試みた。

こうやってそれぞれの作品がこのアルバム一枚に集まったことで、
アラン・ドロンとジャック・ドレーとのコラボレーションの特色が現れている。
そしてこれらの作品を経験したおかげで、
私たちの間には厚い友情と信頼の関係が築かれていったのだ。
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『DOUCEMENT LES BASSES !』

2008-02-11 | THE SOUNDTRACKS
『もういちど愛して』のサウンドトラックが聞けるアルバム、
"Les Musiques De Claude Bolling"をご紹介します。

このCDは、音楽を担当したクロード・ボランが
アラン・ドロンさん、ジャック・ドレー監督二人と組んだ、
『ボルサリーノ』『ボルサリーノ2』『もういちど愛して』『フリック・ストーリー』
の4作品の音楽の中からセレクトされた曲たちのコンピュレーション・アルバムです。
さらにこのアルバムには曲と曲の間に映画の中の台詞が効果的に挿入されており、
発売された当時、ファンにとってこれほどありがたいアルバムは他にはありませんでした。

『もういちど愛して』の音楽は、
映画の中で主要な舞台となる教会音楽をベースとしながらも、
映画前半は主な音楽がパイプ・オルガンで演奏されていたのが、
後半はハモンド・オルガンが主旋律を奏でるようになり、
主人公の心の移り変わる様が音楽でもって表現されているようでした。

アルバムのライナー・ノーツにはクロード・ボランのインタビューが掲載されており、
今回は前半の部分をご紹介します。

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アラン・ドロンと出会ったことは、私にとって映画の世界で最も素晴らしいものであった。
彼とジャック・ドレー監督の為に何作品かのスコアを書けたことは、
私にとってとても幸運な出来事であった。
作曲家にとって、一人の俳優の成長の過程に付き添い、
彼の新しいフィルムに音楽で色を染めていく作業というのは、
とても魅力ある仕事であった。

アランとジャックと私は『ボルサリーノ』で初めて一緒に仕事をし、
続編の『ボルサリーノ2』ともども、音楽の観点からいってそれは正に挑戦であった。
私は彼ら二人にこの映画のオリジナル・スコアは、
撮影当時流行していた音楽ではなく1930年代の雰囲気のあるものを選択するよう説得した。
そして映画が描いた時代の精神をなぞって、より本物のようでいて、
しかしながら現代的なアプローチと感性でもって作曲することが私に委ねられたのだ。
そして私は現代的なスタイルで、しかしなおかつ1940年代以前の香りを持つ曲つくりに専念した。
いくつかの曲は不安感をもたせるようなものではあったが、
暗黒的な雰囲気の曲はこの2本の作品のスコアには選択しなかった。
それに対してこのテーマ曲の機知にあふれた部分にはある種「明るい心」を表し、
映画の中の主人公たちの事件における暴力性とは対称的なものにしたのだ。

『もういちど愛して』はこれとは全く違う精神で作曲されている。
ドロンは観客の期待を裏切るような役柄で、結婚問題に悩む神父を演じている。
ここでもまたギャグとコミカルな効果が映画の根底に流れてはいるが、
この作品には神秘的なものを漂わせた宗教的な音楽でもってテーマを強調するほうがよいと私は考えた。
パリのサン・トゥスタシュ教会のオルガン奏者ラファエル・タンビエフが
素晴らしい演奏を繰り広げるトッカータ曲である"MELODIE DU REVE" は、
バロック音楽の香りを残しながらもポップなフィナーレを迎える曲だ。
"Le vent"はブルターニュ地方の荒地の上を飛ぶ風の神アイオロスを呼び起こすような
ジャジーなボーカルが奏でるポエムのような曲である。

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次回『フリック・ストーリー』紹介の記事に続きます。
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『ASTERIX AUX JEUX OLYMPIQUES』

2008-02-04 | THE SOUNDTRACKS
いよいよ1月30日にフランスで公開されたドロンさんの映画最新作
“ASTERIX AUX JEUX OLYMPIQUES”のサントラ盤です。

アルバムの1曲目から4曲目までは映画の中で使用されたと思しき
英語の歌詞で歌われるヒップ・ポップ・ミュージックが並びます。
これらは恐らく若年層の観客を意識してのものだと思いますが、
ここではすっ飛ばして5曲目からご紹介します。

5曲目からのスコア・ミュージックを担当しているのは
フレデリック・タルゴーンという作曲家で
私は不勉強で彼についてはよく知りませんでしたが、以下リンクの
フレデリック・タルゴーン(Frederic Talgorn) のプロフィール - allcinema
を読みますと、90年代にはインディ・ジョーンズのTVシリーズの音楽を担当しています。

今回のこのアルバムには、そのインディ・ジョーンズ・シリーズ映画版の作曲者
ジョン・ウィリアムスを彷彿とさせる、非常に壮大で、かつ躍動感に溢れた
シンフォニック・スコアを全編に亘って聴かせてくれます。
演奏は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなど数多くの映画音楽に参加した
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団がクレジットされています。

特にこの映画はオリンピックでの競技が主題となっているためか、
ジョン・ウィリアムスが作曲したロス五輪やアトランタ五輪のテーマ曲のような
勇壮なファンファーレがアルバムの中で何回も頻繁に鳴り響き、
さらには『フック』を思わせるようなファンタジー色も随所にブレンドされています。

ドロンさんの映画復帰作に、このような豪華絢爛たる音楽が鳴り響くことになろうとは
今から10年前には考えられないことでしたが、
これはこれでお祭り映画に相応しいと納得して聞くことができるアルバムです。
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