LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

『MORT D'UN POURRI』(4)

2005-08-29 | THE SOUNDTRACKS
右下の写真はフランス盤LPジャケットです。
日本盤LPのデザインと見比べて下さい。

CDの曲について補足説明します。                    

① Dans le Regard d'Alain Delon

⑧と全く同じドラムとベースのリズムにゲッツのテナーとピアノのアドリブが自由に展開し、
さらにロンドン交響楽団のエモーショナルなバックの音がかぶさります。
映画のムードに合わずゴージャスな印象を持つ曲の為、
映画では未使用となったものと思われますが大変素晴らしい曲です。

② Paris, Cinq Heures du Matin

LPとはゲッツのソロ演奏が異なる映画での未使用バージョン。
LP&映画バージョンはクールなソロから徐々に情熱的なソロへと移行しますが、
この未使用バージョンはいきなりホットなゲッツのブロウから始まり徐々にクールダウンして行きます。
  
④ Getz O Mania 

関氏ご指摘通り映画での未使用曲で、ボサノバ時代のゲッツを彷彿とさせる曲です。
ラストのピアノのソロが始まった途端にゲッツのソロもなく
終わってしまうのがちょっとあっけない気もします。

⑥ Un Homme dans la Ville 

曲名は『暗黒街のふたり』の原題からの引用と思われます。
この曲にはゲッツは登場せず、代わりにアコーデオンの物悲しいソロが主題を演奏し、
これまたロンドン交響楽団のエモーショナルな演奏がバックを彩ります。 
  
⑩ Elysee-Matignon 

⑧と同じくクラブでのシーンのバックで流れ、
華やいだ店内のムードを表すゲッツお得意のボサノバ曲。
このアルバムの中では唯一エレクトリック・ピアノとゲッツの共演が聴ける曲。

⑪ Solitude 

この曲もゲッツの演奏は無く、代わりにアコーディオンが主題を奏でます。
⑩と同じリズム隊がバックを固めているフュージョン・ミュージックの小品。 
 
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もともとスタン・ゲッツはミシェル・ルグランやクラウス・オガーマンと組んで
ウィズ・ストリングス物のアルバムが多いジャズ・ミュージシャンなので、
この『チェイサー』のサントラでのロンドン交響楽団との共演は
ゲッツにとっては得意分野であり、十分その実力を発揮してくれました。

ここでのゲッツの演奏はよく言われる“クール”というよりも
逆に“ホット”で腹の底からしぼり出すような情熱的なプレイを聴かせてくれます。
映画でのアラン・ドロンが感情を表に出さず常に冷静な役柄であることから
ドロンの内面の心理をゲッツのサックスが代弁する役割を見事に果たしています。

最後にロートネル監督の書いたライナーノーツの続きを。
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ある意味において、このスコアは新たな歴史を切り開いた。
映画史の中で最もお金のかかったレコーディングだからだ!(笑)
だが何と素晴らしい結果だろうか!

我々はゲッツと彼のリズム・セクション、そしてロンドン交響楽団とロンドンで数日間共に過ごした。
映画の35ミリフィルムを上映する20メートルのスクリーンに向かいながら
そこは信じられないような雰囲気だった。
スタジオの中の影、プロジェクターから発せられる光、机の上の電灯、そして生まれてくる音楽・・・

フィリップは神経質なほどの完璧主義者で、
ミュージシャンがへとへとになるまでテイクを繰り返した。
私は後ろで観客としてそのレコーディング風景を観ていた。
ゲッツはその伝説的な存在で私と私の撮ったフィルムの為にプレイし、別世界へといざなってくれた。
交響楽団を前にしてのその音色、そのユニークなフレーズ、・・・・

私は脊髄の奥まで身震いした。
そしてその音楽が映画にかぶさった瞬間の何と官能的であったことか。

フィリップの選択は全く正しかった。
ドロンの眼差しとゲッツの音色の間で真のマジックが生まれた。
サキソフォンはドロンの険しい顔を和らげ、そこに何か違ったものをもたらした。
やさしさや悲しみ、あるいはノスタルジーといったものを。
主人公がこの事件にあえて飛び込むのは
それは彼が過去に忠実であり、亡くなった友人との友情に忠実であったからだ、
と音楽で思わせてくれたのだ。
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『MORT D'UN POURRI』(3)

2005-08-28 | THE SOUNDTRACKS
CDのライナー・ノーツは
この作品の監督のジョルジュ・ロートネルが執筆しており、
舞台裏の大変興味深いエピソードが綴られています。
その中からこの作品にスタン・ゲッツが起用された経緯の部分をご紹介します。

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撮影が全て終了した後もこの映画にはもう一人マジシャンが存在した。
その男の名はフィリップ・サルド。

フィリップはいつものように私たちの編集作業に付き添いながら、
突然こう切り出した。
“なあジョルジュ、アラン・ドロンの眼差しをさらに豊かに表現させるには
バックの音楽に偉大なソロイストの音が必要じゃないかな。
できればテナー・サックスのプレイヤーがいいと思う。”

フィリップという男は全くおかしな奴で、
それにはスタン・ゲッツがいい、などと言い出した!
私たちはそれまで彼と面識は全くなく、どこにいるかさえ知らなかったが
私たちの仲間が彼をスウェーデンでつかまえてくれた。

ゲッツはパリに到着するとすぐにリドに行く途中にあるサルドの自宅に
音楽を確認しにやってきた。

私たちは熱狂して彼を出迎えた。
ゲッツは楽器のケースを開けると、
フィリップのピアノの伴奏に合わせてサックスでテーマ音楽を吹き始めた。
そしてゲッツの下した評決は“非常にセンシティヴなメロディだ!”

演奏するゲッツを見ながら私は彼の姿を映画に登場させようとふと思いついた。
そしてゲッツはこれに応じてくれた。

次の日私はフィリップの映写室の中で白いシーツで必要な場所を覆いながら
即興の撮影セッションを行った。

私たちはゲッツがオープニング・テーマの『 Paris, Cinq Heures du Matin 』
を伴奏なしのアカペラ演奏するのを撮影した。

このような経緯で、オープニング・タイトルの映像にゲッツは起用された。
『チェイサー』はスタン・ゲッツが音楽と映像と両方で登場した映画といえる。

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これを読んでいるとスタン・ゲッツの起用は
ドロンではなくフィリップ・サルドの発案であったことがわかります。
プロデューサーであるアラン・ドロンはこの過程には一切登場しませんが、
恐らくフィリップ・サルドを全面的に信頼していたことが伺えます。
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『MORT D'UN POURRI』(2)

2005-08-21 | THE SOUNDTRACKS
『チェイサー』サントラのフランス輸入盤CDです。

リマスターで音質も向上し、非常に満足のいく内容のアルバムです。
LP盤と比べて曲順がやや異なっているのと、映画での未使用曲や、
映画で使用されたもののLPに収録されていなかった曲が加えられています。

これらの曲について整理してみますと、

CDの曲順                     LPの曲順
① Dans le Regard d'Alain Delon ------未発表&未使用曲
② Paris, Cinq Heures du Matin -------A面(1)「パリ=夜明けの5時」
③ Valérie  ------------------------A面(3)「恋人バレリー」&A面(2)「思い出の数々」
④ Getz O Mania  ------------------A面(6)「ゲッツ・オン・マニア」
⑤ Montparnasse  -----------------B面(2)「モンパルナス駅」
⑥ Un Homme dans la Ville ----------未発表&未使用曲
⑦ En Souvenir de Maurice ----------A面(5)「待機」&B面(3)「カフェテリア」& 未発表曲
⑧ Mort d'un Pourri -----------------B面(1)「チェイサーのテーマ」
⑨ Les Aveux  ---------------------A面(4)「カー・チェイス」&B面(4)「告白」
⑩ Elysée-Matignon ----------------未発表曲
⑪ Solitude ------------------------未発表&未使用曲
⑫ Tout Est Tranquille --------------B面(5)「ロカンクール」&B面(6)「すべては静寂のなかに」
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『MORT D'UN POURRI』(1)

2005-08-20 | THE SOUNDTRACKS
Mort d'un pourri (1977)

『チェイサー』サントラ盤(日本盤LP)です。

数多くあるアラン・ドロン作品のLP、CDの中でも
この日本盤のジャケットのデザインは最も優れた物ではないかと私は思います。
写真、文字の配置、字体、文字と背景の色、全て完璧です。

1978年10月25日に発売されたこのアルバムは、
ロードショー誌第65回推薦サントラ盤として同誌にて詳しく紹介され、
LPの解説文は故関光夫氏が執筆しています。

関氏の解説文は前半が映画のストーリーの紹介で、
後半が曲ごとの映画での使用箇所が書かれています。
現代のようにビデオやDVDが普及されていなかった時代に、
映画のシーンと曲の使用部分とをぴったり一致させて解説できることのすごさを感じます。

この関氏の曲ごとの解説文に敬意を表して、以下に全文をそのままご紹介します。
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A面
(1)「パリ=夜明けの5時」
タイトルからフィリップの訪問まで流れる。

(2)「思い出の数々」
フィリップの依頼を聞いた後、グザビエが、
二人の思い出の写真を観ながら考える場面。

(3)「恋人バレリー」
フィリップの恋人バレリーとグザビエの出会い。
バレリーのフィリップを気づかう心情

(4)「カー・チェイス」
トラックに襲われるグザビエの車。無気味に近づいてくる感じである。

(5)「待機」
バレリーを車で待つグザビエ。しかし追跡者の監視の目が、
彼の動きを見張っている。

(6)「ゲッツ・オン・マニア」
高級クラブでグザビエは、フィリップの妻のクリスチアーヌとその恋人に会う。
ユベール・ロスタンの曲だが、映画の中の曲調とはやや違う。

B面
(1)「チェイサーのテーマ」
映画の第2テーマともいえるもので、
ゲッツを中心にピアノのアンドル・ラバーン、ベースのリック・レイヤーなどのコンボ演奏。

(2)「モンパルナス駅」
グザビエがバレリーと会う約束をした駅の中。
しかしここにも殺し屋の手がのびている。

(3)「カフェテリア」
フィリップの妻の恋人コラールは、文書で一儲けしようと、
グザビエを有力者に会わせる。

(4)「告白」
フィリップがグザビエにセラノ文書について語る。

(5)「ロカンクール」
フィリップは、文書を恋人バレリーのアパルトマンに隠したと言う。
その場所がロカンクール。

(6)「すべては静寂のなかに」
セラノ文書事件は終わった。
部屋の窓から夜明けのパリの街を見下ろすグザビエの淋しい顔。
「悪い奴らはすぐ戻ってくる。
しかし、死んだ友よ、みんな安らかに眠ってくれ」
彼は心の中でこうつぶやく。
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FROM MY SCRAP BOOK (11)

2005-08-17 | THE BRILLIANT PHOTOS
ロードショー誌の付録にあった『エアポート’80』公開記念ポスターより。

折りたたんでしまいこんでいたので折り目が付いてしまってたのですが、
出来る限り修復してみました。
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『TRAITEMENT DE CHOC』

2005-08-16 | THE SOUNDTRACKS
Traitement de choc (1973)

『ショック療法』のサントラ盤です。

音楽の担当はこの作品の監督でもあるアラン・ジェシアとルネ・コアリング。
ボサノバ、サンバ、アフリカ音楽のエッセンスがちりばめられた
夏に聴くには最適のエスニック・ミュージックのサントラです。

メロディが印象的なメインタイトルのボサノバや、
アコースティック・ギターで演奏される劇伴などなど
映画の内容とはとても似つかわしくない美しい音楽が聴ける
とても好きなアルバムです。



Comment (1)
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FROM MY SCRAP BOOK (10)

2005-08-14 | THE BRILLIANT PHOTOS
『危険なささやき』日本公開時に、
配給協力した企業グループが募った
アラン・ドロン・シネマ・クラブの会員向けに
送られてきた宣伝用プレス・シートから。

この写真は映画のパンフレットの表紙にも使用されています。
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PARIS MATCH (4)

2005-08-10 | THE MAGAZINES
昨日の続きです。

公演終了後の舞台裏に訪れた招待客たちと談笑するドロンの姿です。
クラウディア・カルディナーレとミレイユ・ダルクに挟まれてご満悦の様子です。
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PARIS MATCH (3)

2005-08-09 | THE MAGAZINES
昨年10月から今年の2月にかけて上演された
アラン・ドロンの舞台『Les montagnes russes』の
初日公演の様子を伝えた記事です。

観客のドロンに対するリスペクトが写真から伝わってきます。

尚この舞台、本年10月から12月に掛けてヨーロッパ各地で再演されます。
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MAKING OF “1 CHANCE SUR 2”(5)

2005-08-08 | BEHIND THE SCENES
『ハーフ・ア・チャンス』メイキング(フランス版)第5弾。

今回はドロンではなくベルモンドのアクション・シーンの撮影現場です。

終盤のクライマックス・シーン、マフィアの追跡から逃れるため
ベルモンドがドロン操縦のヘリから下ろされた縄梯子をつたって
自動車から飛び移るシーンの危険な撮影です。

過去数多くの作品でベルモンド(『パリ警視J』『プロフェッショナル』など)
とドロン(『危険なささやき』『ポーカー・フェイス』など)
二人と組んできたレミ・ジュリアンが指揮するカースタントチームの下、
ベルモンド(撮影当時64歳!)は昔と同じようにスタントマンなしで
撮影に挑み、見事に成功します。

撮り終えたベルモンドの周りにレミ氏やルコント監督たちが近づく中、
出番がなかったドロンもどこからか駆け寄って来てベルモンドを祝福します。
映画以上に感動的な素晴らしい場面でした。(思わず涙が出そうになります。)
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FROM MY SCRAP BOOK (9)

2005-08-07 | THE BRILLIANT PHOTOS
スクリーン誌より。
これは確か81年ごろの写真です。
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D'URBAN (5)

2005-08-06 | CM FILMS
1976年ダーバンCMより。

ある夏の午後、海岸沿いの家のバルコニーで
少女とタイプを打ちながら談笑するアラン・ドロン。
そして海岸を歩きながら迎えにきた母親に少女を送り届ける。

ドロンのCMには子供とのかかわりを描いているものが意外と多いです。
特にカペラの後期CMにその傾向が見られます。
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『LES AVENTURIERS』

2005-08-02 | THE SOUNDTRACKS
Aventuriers, Les (1967)

今のこの暑い季節になると必ず聴きたくなるのが『冒険者たち』の音楽です。
この映画も正式なサントラ盤は発売されていませんが、
写真の3枚のCDに映画からの数曲を聴くことができます。

CDのタイトルは写真の上から順番に

【A】FRANCOIS DE ROUBAIX 10 ANS DE MUSIQUE DE FILM
【B】フランソワ・ド・ルーベ・エディションⅡ
【C】フランソワ・ド・ルーベ アンソロジーVOL,1

聴くことのできる曲は以下の5曲です。

①Journal De Bord 航海日誌
 (映画のメイン・タイトル。口笛の音色が印象的な名曲。)
②Enterrement Sous-Marin 水葬
 (クリスチャン・ルグランのスキャット。レティシアの水葬シーンに流れる。)
③Les aventuriers 
 (ハモンド・オルガンとエレキ・ギターのソロが主題曲をリズミックに演奏。)
④Laetitia(Chante Par Alain Delon) 愛しのレティシア
 (ドロンの歌。日本版のエンディング)
⑤Enterrement Sous-Marin(version inedite) 
 (オリジナル・エンディング。ピアノとベース、オルガンだけの演奏)

そして上記の曲とCDとの組み合わせは

【A】③&②
【B】①②メドレー&④&③
【C】①&⑤

となっています。

映画の中で、パリに一人帰ったドロンがレティシアの思い出に浸りながら
展示会跡地を徘徊するシーンに流れた②のアレンジ違いの曲
(ルグランのスキャットの代わりに口笛のソロがメロディを奏でる曲)
が大変印象深い素晴らしい曲ですが、CD化はされていません。
早くCD化されないものかといつも映画を観るたびに思ってしまいます
Comments (2)
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Mazda Cappella (3)

2005-08-02 | CM FILMS
カペラCM第3弾です。

どこか田舎の道を愛車カペラでドライブするドロン。
ふと前を見ると前方を走るトラックの荷台から牧草が次々と道路に落下中。
それらをよけるために蛇行運転を繰り返しながら
トラックにようやく追いついたドロン、
運転手のおじさんに荷物のことを指摘する。

この第3弾までCMのバックで流れていたのは、
布施明の歌う「たまらなくテイスティ」なる題名の
歌謡曲でもなくニューミュージックでもない不思議な曲でした。
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