LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

LE PORTRAIT DE L'AMOUR (ダーバンCM音楽集)

2015-04-29 | THE SOUNDTRACKS
本日は「昭和の日」ですね。ドロンさんのファンの方々にとって昭和の思い出といえばこのCMになるのではないでしょうか。

ダーバンのCMの音楽を一枚にまとめたLPレコード『『LE PORTRAIT DE L'AMOUR』』についてのご質問を先日メッセージからいただきましたので、今回改めてここにご紹介したいと思います。

このLPレコードは1980年にドロンさんのダーバンCM10周年を記念してリリースされたもので、それまでにもEPレコードで発売されていた楽曲を一枚にまとめた超お買い得盤でした。

と申しましても、1980年当時のドロンさんの人気は下降線をたどり始めたころで、このLPの発売もあまり注目されることはなかったように記憶しています。
(ドロンさんが熱狂的に迎え入れられた77年の来日時にリリースされていたらもっと大きなヒットアルバムになっていたかもしれません。)

それでも当時高校生であった私にとって安くない買い物でしたので、今となっては思い切って買っておいて本当によかったなと思えるお宝レコードです。

CMの音楽集といえば山下達郎CM全集が有名ですが、達郎氏の場合、放映されるCMの長さと映像に合わせてピッタリ収まるように周到な工夫が施されているのに対して、このダーバンの音楽は、CMの長さや映像は一切関係なく、それぞれ1曲1曲がまるで映画の主題曲のようなドラマチックなメロディーとアレンジで成立していることが大きな特徴です。

しかも毎年1曲づつ、同じ俳優がその映像に出演してきた、という現代では考えられない壮大なプロジェクトであったなと今改めて感じます。

このことは小林亜星氏自身の筆によるライナーノーツにも書かれており、その部分を抜粋して以下に記します。

「ご存知のようにCFは長くて1分くらいのものなのですが、私のライフワークにしたいという希望を聞き入れて戴き、我がままに、好きな長さの曲をその都度作曲し、それをドロンのCFのBGMに使ってもらうという形で、仕事をしてきました。

そんなわけで、71年から80年に亘る計10曲は、全て何の制約もなく、私の信ずる音楽、生涯かけて作りたいと思っていた、ポップ・オーケストラの音楽を、好きなように作曲させて戴くことができたのです。
これは正にダーバン社のご理解の賜物であると感謝いたしております。

思えば70年代は、我が国のみならず世界の経済も、急成長からオイルショック、伸び悩みへと、大きな転換を経験した時代でした。こうして10年間の曲を並べて聴くと、その年々のそうした陰りみたいなものも感じられるような気がします。と同時に、これらの曲は、10年間の私の人生の道標でもありました。」

最後に収録曲目をご紹介します。

1  セーヌの詩(ダーバン’71)
2  夢みる心(ダーバン’72)
3  さすらいの旅路(ダーバン’73)
4  夜をのがれて(ダーバン’74)
5  真夜中のバラード(ダーバン’75)
6  愛の肖像(ダーバン’76)
7  ジタンの香り(ダーバン’77)
8  ラスト・ダンス(ダーバン’78)
9  アデュー・モナムール(ダーバン’79)
10 愛のワルツ(ダーバン’80)

作編曲:小林亜星 
4のみ作曲:小林亜星 編曲:筒井廣志
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L'OURS EN PELUCHE

2013-10-18 | THE SOUNDTRACKS
前回に引き続きレアなサントラ盤発掘のご報告です。

なんと1993年の未公開作品『L'OURS EN PELUCHE』のサントラが以下のiTunes のサイトからダウンロード購入がいつのまにか可能となっていました。

iTunes - L'ours en peluche (Bande originale du film)

これまでこの作品のサントラはCDとして発売されたという情報が全くなく、せっかくのロマノ・ムスマラの音楽もこのまま闇に埋もれてしまうのかと残念に思っていたのですが、こうやっていとも簡単に手元で聴ける様になるとは、本当にいい時代になったものです。

重厚なオーケストラの演奏をバックにトランペットが印象深いメロディーを奏でるメイン・タイトルはどこかモリコーネを思わせる美しい曲で、このメロディーをいろいろなアレンジで随所に散りばめながら最後までいっきに聴かせてくれる、私にとってこれは久しぶりにサントラらしいサントラ盤でした。

この作品本編については以下の記事に詳しく記していますのでご参考にしていただければと存じます。

L'OURS EN PELUCHE (1) (2) (3)

余談ですが画像にあるドロンさんの娘を演じている女優さん、今のアヌーシュカによく似ていますね。
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FABIO MONTALE

2013-10-08 | THE SOUNDTRACKS
もうお目にかかることはないだろうとあきらめかけていた映画のサントラに出会う喜び、というものを久しく味わっていなかった今日この頃ですが、いろいろ探していると出てくるものですね。

今日ご紹介するのはまさかの『アラン・ドロンの刑事物語』(原題"Fabio Montale")のサントラ盤です。

iTunes - Jannick Top & Serge Perathoner - Good Mood for Jazzy Souls


ただし、これは正式なサントラ盤ではなく、この作品の音楽を担当したJannick Top & Serge Perathonerの二人の名義で発売されているジャズ・アルバム"Good Mood for Jazzy Souls"です。

とは言うものの試聴していただければすぐおわかりのように、中身はドラマで使われている演奏と全く同じもので、特に1曲目は第2話の冒頭のシーンに流れるメインタイトル曲ですし、5曲目はドラマをご覧になった方にはきっと強く印象に残っているはずのバラードナンバーです。

14曲すべてが劇中で使われたものかどうか、今の段階でそこまでは確認できていませんが、"FABIO MONTALE"の舞台となったマルセイユの街に漂う独特な乾いた、それでいてメランコリックでジャージーな雰囲気を存分に堪能できること間違いなしの超お勧めのアルバムです。
(ただしジョン・バリー風のあの主題曲は残念ながら収録されていません。)


さてドロンさんですが、いよいよ昨日からジュネーヴの劇場で舞台のツアーがめでたく開始されました。
共演者で娘のアヌーシュカ・ドロンのtwitterには、この舞台に向けての本読みの様子やリハーサル風景の写真が随時アップされています。

Anouchka Delon

また「Anouchka Delon」と書いてtwitter上で画像の検索をしますと昨日の舞台のカーテンコールの隠し撮り写真を観ることができます。
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『THE CONCORDE AIRPORT'79』

2012-11-24 | THE SOUNDTRACKS
本日は『エアポート’80』のサントラ盤をご紹介します、
と申し上げたいところなのですが、残念ながらこれまでこの作品のサントラ盤はLPもCDも存在していませんでした。
わずかに本国アメリカで公開当時に発売されたと思しきEPレコードが存在するのみであったようです。
くわしくはジュリアンさんのこちらの記事をご覧ください。
コンコルド&ドロン登場も失速したかな… 『エアポート’80』 - ジュリアン サントラがいっぱい - Yahoo!ブログ

そして今回ご紹介するのは先日発売されたラロ・シフリンのベストアルバム“MY LIFE IN MUSIC”です。
何と4枚組みのこのアルバムの最後のDISK4に『エアポート’80』のライブ演奏バージョンが収録されているのです。
LALO SCHIFRIN: MY LIFE IN MUSIC -- SCREEN ARCHIVES ENTERTAINMENT

これは2007年4月にパリで開かれたコンサートからのライブ音源で、
この日の模様は一度CD化されていたようですが、私は全く知りませんでした。
Le concert à Paris 2007: LALO SCHIFRIN: Amazon.fr: Musique

したがいまして今回こういう形でこの曲が再ディスク化されたことは大変喜ばしいことです。
純粋なサウンドトラックとは言えませんが、演奏内容は若干テンポが遅くなっているものの、
実際の映画の演奏とアレンジは全く同じで、十分に満足できました。
しかも曲のフィナーレのあとパリの観衆の人たちの拍手が聞けた瞬間は、この曲が永年好きだった私にとって感慨もひとしおでした。

ラロ・シフリンが担当したドロンさんの映画はこの作品以外に『危険がいっぱい』と『泥棒を消せ』の2本がありますが、
前者はサントラ盤からメインタイトル、後者はジャズコンサートのライブ演奏がそれぞれ収録されていました。

ドロンさん映画以外の作品からは、
マックィーンの『シンシナティ・キッド』、『ブリット』
ポール・ニューマンの『暴力脱獄』
ロバート・レッドフォードの『ブルベイカー』
ブルース・リーの『燃えよドラゴン』(リーの叫び声のない演奏のみのバージョン)
ジャッキー・チェンの『ラッシュ・アワー』
さらにシフリンとは切っても切れない間柄のクリント・イーストウッドの一連の作品、
『ダーティー・ハリー』シリーズ、『戦略大作戦』、
『マンハッタン無宿』(初CD化)、『シノーラ』(初CD化)『白い肌の異常な夜』(初CD化)
などが収録されており、
改めて彼のフィルモ・グラフィーの豪華さを堪能できる、ファンにとって見逃せない1枚であることも付け加えさせていただきます。
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Une Journee ordinaire (2)

2012-01-18 | THE SOUNDTRACKS
Hélène Grimaud plays the "Adagio" from Mozart's Piano Concerto no.23


昨年のドロンさんの舞台"Une Journee ordinaire"の最後の終幕時に流れるモーツァルトのピアノ・コンチェルト23番です。
実際に舞台で使われたのはこの演奏よりもう少しテンポは速かったように思いますが、
観に行かれた方々にとっては記憶を呼び起こすことができるのではないでしょうか?

添付の画像は舞台でドロンさんと共演したElisa Servierの以下の公式サイトからのものです。
Elisa Servier, le site officiel.
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『ZORRO』

2012-01-16 | THE SOUNDTRACKS
昨年末にリニューアルされて再発売された『アラン・ドロンのゾロ』のサントラ完全盤をご紹介します。

本作は以前1991年にCAMレーベルからCD化されていましたが、(ZORRO
そのアルバムに収められていた12曲に加えて今回はさらに未発表音源が18曲収録されてます。

元々この作品はドロンさんの映画音楽群の中でも、極めてオーソドックスな仕上がりで、
サントラの王道を行くアルバムではないかなと以前から思っておりましたが、
今回こういう形で未発表音源が大量に陽の目を見たことは喜ばしい限りです。

今回のこれら18曲は基本的には既発の12曲のアレンジ違いのものばかりですが、
これまで耳になじみのある曲が少し趣向を変えた形で次から次に聴こえて来る為、
既発のアルバムをお持ちの方々にとっても新鮮な喜びを味わうことが出来ます。

おそらく映画の中で使用されたバージョンがそのまま収録されているものと思われますが、
録音状態も悪くはなく、高音部が伸びやかな為、むしろ既発の12曲よりも音質は優れているように感じます。

こういう「完全版」という形でドロンさん作品のサントラが再発売されていく流れが今後も続いていくことを期待したいです。

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iTunes PLAYLIST " LE REGARD D'ALAIN DELON"

2011-11-09 | THE SOUNDTRACKS
iTunes Store LE REGARD D'ALAIN DELON

iTunesで購入可能なドロンさん関連の音楽をプレイリストにしてみました。
上記リンクからご覧ください。(曲順などは今後も随時更新していくと思います。)

11月8日のドロンさんの誕生日から配信スタートとなっているこちらも注目です。
これまでLPでしか聞けなかった音源が高音質で視聴できます。
               ↓
iTunes - Best of Alain Delon Collector (Le meilleur des annes 80) -
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UNE JOURNEE ORDINAIRE

2011-09-11 | THE SOUNDTRACKS
ドロンさんの舞台”UNE JOURNEE ORDINAIRE”で使われていたモーツァルトの曲をいつもコメントを下さるyamaji様よりご紹介いただきました。
観に行かれた方々にとってこの上ないプレゼントです。
またご覧になっていない方々にとっても舞台の雰囲気を連想していただくことができるのではないかとい思います。

yamaji様、誠にありがとうございました。

Mozart K.136 Divertimento in D 1st mov. Allegro
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Oscar Benton-Bensonhurst Blues

2011-02-27 | THE SOUNDTRACKS
Oscar Benton-Bensonhurst Blues


『危険なささやき』主題歌「ベンソン・ハースト・ブルース」のライブ演奏です。
歌っているのはオスカー・ベントンですが、初めてその姿を見ました。
もっと泥臭いイメージの人を想像していたのですが、とても洗練された感じの方ですね。

Bay Parkway wonder
You're such a success
Your pretty secretary, ha
She say you are the best
Your face always smiling
say you sure paid your dues
But I know inside
You've got the Bensonhurst blues

Those custom-made ciggies
that you offer to me pretend
and pretend to care about my family
And those pictures on your desk
All them lies that you abuse
Do they know you suffer
from the Bensonhurst blues

Your grandmother's accent
still embarrasses you
You're even ashamed
of the French you once knew
You're part of the chance now
They break you making the news
But I know inside
you've got the Bensonhurst blues

But thanks for the lesson
Cause the life that I choose
won't make me feel like living
with the Bensonhurst blues

And don't, don't try to write me
And don't bother to call
Cause I'll be in conference
Merry Christmas you al
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『LA PISCINE』(3)

2011-02-26 | THE SOUNDTRACKS
アマゾンのフランスから昨日到着したのがこの『太陽が知っている』のサントラ盤です。

以前ユニバーサル・フランスからCD化されたのを購入済みですが、
もしかしてこのときに収録されなかった曲が入っているのだろうかと期待して買ってみました。

しかし残念ながら曲リストを見るとCDに収録されたものばかりでして、
しかもこれ私てっきりCDだと思っていたら何とLPレコードだったのです。

というわけで新たな音源は発掘できませんでしたが、
このジャケットのデザインは素晴らしい出来栄えです。
題名の"La Piscine"の文字がプールの水面に写っているようになっているところが見事ですね。

部屋の飾り物として大事にしたいと思います。
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『TROIS HOMMES A ABATTRE』

2010-11-13 | THE SOUNDTRACKS
アラン・ドロンさん主演で、ジャック・ドレーが監督し、クロード・ボリンが音楽を担当した5作品を集めたベスト・アルバム

"Les Musiques De Bolling Pour Les Films De Delon Mis En Scène Par Deray" をご紹介します。

このアルバムは以前にご紹介した"Les Musiques De Claude Bolling"のリニューアル盤ともいえる作品ですが、
前回と違って各作品で聴けた映画の中のドロンさんたちの台詞は一切収録されておらず、あくまで音楽中心で、
『ボルサリーノ1&2』以外は音質もリマスターされて格段に向上しています。

さらに今回嬉しいことに前作では1曲も収録されていなかった『ポーカー・フェイス』から4曲を聴くことができます。
これだけまとめてこの作品の音楽が聴けるのは恐らく初めてのことと思います。
それぞれの曲について簡単に説明しますと

【1】Générique 
この映画のメイン・タイトルに使われているナンバーで、初めて聞いたときはオーソドックスで地味な曲のように思いましたが、
何度となく聴いているうちにこのメロディーに潜む厳しさとやさしさと哀しみの混在の魅力にやみつきになってきます。

【2】Menace
バロック音楽を取り入れた劇伴で、殺人事件に巻き込まれていく主人公の不安な気持ちを描写しています。
この曲は恐らくLP時代にも発表されておらず、世界初CD化です。

【3】Poursuite Voitures
カー・チェイス・シーン用にクロード・ボリンが用意したアクション曲で、
ボリンはここであえてバロック音楽を取り入れることで斬新な効果を狙ったのですが、
監督のジャック・ドレーはこのまま映画に採用することを良しとせず、結局最初の数秒間のみが使われて、
その後のカー・チェイス・シーンは現実音のみでサスペンスの効果を高めることが選択されました。(ライナー・ノーツより)

アクション場面で作曲家が用意したバロック調の音楽が監督の気に入られずに結局ボツになったという話は
スティーブ・マックィーンの『ハンター』でのミッシェル・ルグランのエピソードを思い出しました。

【4】Béa
これも世界初CD化の曲で、映画のラスト直前、主人公とヒロインが再会する平和なシーンに流れるハリウッド映画のようなナンバーです。

以前にこのブログでご紹介しましたフィリップ・バルビエさんとFacebookでやりとりするなかで教えていただいた情報ですが、
この作品のカー・チェイスのシーンにミレイユ・ダルクが一瞬カメオ出演しています。
私も確認してみて初めて知りました。一瞬の後姿だけでわかりにくいのですが、皆様も一度ご確認いただければと思います。
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『NOUVELLE VAGUE』(5)

2010-10-18 | THE SOUNDTRACKS
アラン・ドロンさんとジャン・リュック・ゴダール監督との唯一のコラボ作品『ヌーヴェルヴァーグ』に採用された音楽を
『NOUVELLE VAGUE』(1)(2)(3)(4)にてご紹介しましたが、今回はその続きです。

以前にも書きましたが、この作品の正規のサントラ盤はECMレーベルから発売されていますが、
このアルバムは俳優の全ての台詞から効果音に至るまでを2枚組のCDに収めたもので、
音楽のみを個々に聞いていきたいと思えば、もう一度一枚一枚のアルバムを買わないといけないという
サントラ・ファン泣かせの代物でした。

私は今頃になってなんだと言われそうですが、最近になってようやくiTunesの良さに目覚めまして、
この機能を生かして(?)、『ヌーヴェルヴァーグ』の音楽もアルバムを買わずして1曲ずつ購入することができました。

というわけで今回ご紹介するのが以下の3曲です。

(掲載画像のジャケット写真左側から順に)

(1)Werner Pirchner の "Sonate vom rauhen Leben PWV 19: 1. 3 bars moll / 3 bars dur / 4 bars"
(2)Meredith Monk の "Do You Be?"
(3)Patti Smith の "Distant Fingers"

それぞれの曲が使われた場面はジャケットの下の2枚のキャプチャー画像をご参照ください。

(1)はこの映画の題名通り「波」を表した、ただしそれは夏の海岸に打ち付けられる明るい「波」ではなく、
静かな湖面に揺らぐ暗い「波」を表現する音楽です。
この場面はドロンさん扮する前半の弱い主人公と強いヒロインとの心のすれ違いを
左右に動くキャメラとこの音楽で表現するというゴダールの映画的な技法を満喫できるシーンです。

(2)は(1)の直前のシーンにほんの数秒だけ流れる、まるで獣の鳴き声のような不思議な音楽です。
はたしてこれは「音楽」といえるのか、「声」のパフォーマンスいう方がぴったりとあてはまるような音です。

YouTube - Meredith Monk - 1/8

(3)はパンク・ロック界の女王パティ・スミスのナンバー、今聞くととてもポップな曲ですね。
使われたのは皆さまもおわかりのように冒頭のドロンさんの登場場面でした。


これら3曲と以前にご紹介した曲たちは、ジャンルを超えてクラシックからロック、ジャズ、オルタナティブに至るまで
どれもバラバラなものが選曲されてるにも関わらず、なぜかとても統一感があることに気付かされます。
ゴダール監督はやはり天才なのでしょう。このような素晴らしい音楽を私たちドロン・ファンに届けてくれたゴダールに感謝!です。
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『PAROLE DE FLIC』(3)

2010-06-06 | THE SOUNDTRACKS
アラン・ドロンさんが1985年に主演した"PAROLE DE FLIC"(テレビ放映題名『復讐のビッグ・ガン』)のサントラ盤LPをご紹介します。

このアルバムの情報はこれまで日本では皆無に等しい状態で、
しかも映画本編の中で聞こえてくる音も『私刑警察』と同様に(音楽担当は同じPINO MARCHESEが担当しています。)
ショッキングなシーンに鳴るこけおどし的なブリッジ音楽の印象しか耳に残っていないため期待はしていなかったのですが、
こうやって改めてアルバム全体を聴いてみますと意外にこの“燃える”スコアにはまってしまいました。

『私刑警察』ではトゥーツ・シールマンスのハーモニカの音色がアルバム全体のキーポイントとなっていましたが、
本作ではドロンさん演じる主人公が事件が起こるまで悠々自適に暮らしていたアフリカの音楽がモチーフとしてあり、
そのための素材としてパーカッションとコーラスが随所で重要な役割を果たしています。

収録曲は以下の通り22曲もの楽曲が並びますが、(曲名の後のカッコ内は英語訳です。)
①のドロンさんとフィリス・ネルソンのデュエット曲、
及びドロンさんのトレーニング場面で流れる⑫のみがボーカル曲で、残りは一部コーラス入りのスコア曲が並びます。

特に印象的なのが映画のプレ・タイトルからタイトルバックに流れる②で、
ディープ・フォレストを思わせるような打ち込み音をバックにアフリカン・コーラスとパーカッションが心地よく配置されています。
④も②と基本的に同じ楽器構成で、アフリカの村で漁船に乗っているドロンさんのバックに流れる音楽です。

⑧は娘を殺した犯人アベルから追いかけられる場面に流れるアクション曲、
つづいて⑨はそのアベルから逃れ泥まみれになってホテルに帰ってきた主人公と後輩の女刑事がバーで会話する場面に流れる曲、
⑪は主題曲のアコースティック・ギター・バージョンで主人公と女性刑事のひとときのラブ・シーン、
そして⑬は犯人グループの一人が勤務するビルの建築現場に現れた主人公との格闘場面のバックに流れます。

といったようにほとんどの楽曲がドラマの進行通りに並べられたアルバムですが、
中には映画で採用されなかった楽曲も一部あり、
例えばドロンさんが運転する車が水中に突っ込む場面を想定したと思われる⑯のオペラまがいの曲はさすがにボツとなっています。

1 "I Don't Know"
2 Sequnce afrique: Bar et combat
3 Containers
4 Depart peche (=Check fishing)
5 Cinq fusils (=Five rifles)
6 Telegramme (=Wire)
7 Mamma en pleurs (=Mamma crying)
8 Pour suite Abel
9 Piano bar
10 Cimetiere (=Cemetery)
11 "I Don't Know" instrumental
12 "Get Outa Town"
13 Chantier-buildings (=Yard-buildings)
14 Separation Rainer Pratt
15 Keep cool
16 Poursuite voiture (=Further car)
17 "Get Outa Town" instrumental
18 Garage Salem
19 Dynamite/Salem
20 Le clown Bingo
21 Confession Rainer
22 "I Don't Know" instrumental

いずれにしましてもドロンさんのファンの方々にとってこれはなかなかの拾い物アルバムであることは間違いありません。
ジャケットの劇画チックなドロンさんの姿には少々、というよりかなりの違和感を覚えますが・・。
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『Ne reveillez pas un flic qui dort』(2)

2010-05-30 | THE SOUNDTRACKS
『私刑警察』サントラについての第2回目です。

この音楽を担当しているのはPINO MARCHESE という人で、私は勉強不足でよく知りませんが、
本作は彼にとってドロンさんとジョゼ・ピネイロ監督のコンビの第1回目の作品
『復讐のビッグ・ガン』に次いでの連続登板になります。

全編をシンセサイザーで作った重厚というよりはいささかこけおどし的なショック音楽、
ゴワーン!、ドキューン!,といったバック・トラックで全編覆いつくされながらも、
ドロンさん扮する主人公グランデル警視のテーマ曲といえるメロディーを
前回ご紹介しました通り、ジャズ・ハーモニカの巨匠トゥーツ・シールマンスが演奏しています。

トゥーツは全曲で演奏しているわけではありませんが、
彼の作り出すハーモニカの音色が極めて印象深いため、
他の楽曲群は完全に隅に追いやられてしまっているのが大きな特徴です。
特に『現金に手を出すな』の主題曲「グリスビーのブルース」に似ているようで
実は全然違う曲である本作のテーマ曲「Ne réveillez pas un flic qui dort」(A面1曲目)の完成度が高いです。
この曲は本編では映画のエンドクレジットのバックに流れます。

またB面1曲目にアップテンポなアレンジでのボサノヴァ・バージョンもありますが、
これは恐らく映画では未使用と思われます。

A面4曲目「GRINDEL JENNIFER」もトゥーツの演奏が印象的なナンバーで、
映画の中ではグランデル警視の初登場シーン、恋人のジェニファーと戯れる場面のバックで流れる曲ですが、
前回も書きましたように映画の中では音量が小さくほとんど聞こえていません。

一方相棒で部下のペレが殺害されたことを知ったグランデルが怒りと悲しみに打ちひしがれるシーンに流れる
A面3曲目「LA MORT DE PERET」におけるトゥーツのソロは映画でも聞き取ることができました。

最後にトゥーツ・シールマンスがこれまで参加した映画音楽について。

クインシー・ジョーンズが彼を重宝して起用してきたことはあまりにも有名ですが、
具体的にはスティーブ・マックウィーンの「ゲッタウェイ」、ショーン・コネリーの「盗聴作戦」、
なかでもマイケル・ジャクソンも参加したミュージカルの「ウィズ」でのバック演奏で特に重要な扱いを受けています。

もうひとりトゥーツをソロでよく起用したのがジョン・ウィリアムスで、
スピルバーグの「続・激突 カージャック」、ジェームス・カーンの「シンデレラ・リバティ」は特に有名です。
具体的なクレジットの表記はありませんが、ウィリアムスの一連の西部劇音楽として、
ジョンウェインの「11人のカウボーイ」、マックウィーンの「華麗なる週末」、
ブランド、ニコルソン共演の「ミズーリ・ブレイク」、バート・レイノルズの「キャット・ダンシング」
などのアルバムにもトゥーツのソロではないかと思われるハーモニカの音色が聴けます。

その他ジョン・バリーの「真夜中のカーボーイ」の主題曲も有名ですが、
「私刑警察」前後の80年代半ばから90年代初めにかけてトゥーツはアメリカのみならず
世界中で引く手あまたの活躍で、フランスではウラジミール・コスマの「salut l'artiste」
ジャン・クロード・プチの「愛と宿命の泉」、フィリップ・サルドの「道化師ドロボー・ピエロ」など、
また日本では高倉健、ビートたけし共演作「夜叉」にも登場し、一部作曲にも参加しています。

これら錚々たる作品群に参加したソロイストがドロンさんの主演作品にも参加していたという事実に
あらためて喜びを感じることができたのがこの「私刑警察」というアルバムでした。
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『Ne reveillez pas un flic qui dort』(1)

2010-05-03 | THE SOUNDTRACKS
1988年のアラン・ドロンさん主演作品『アラン・ドロンの私刑警察』
Ne rveillez pas un flic qui dort (1988)のフランス盤サントラLPをご紹介します。

この作品は公開当時に劇場で観ましたが音楽の印象があまりなく、
その後テレビ放映されたりビデオ化された映像を見てもやはりサントラの存在感に乏しかったのですが、
今回初めてこの音源を入手して一通り聞いてみて感じたことは、
いたって真面目にサントラ製作がなされていたのだなということでした。

ではいったい何が原因でこれだけ印象の薄い結果となってしまったのだろうかと、
フランス盤のDVDを購入して改めて見直してみて気付いたのは、
「正確な音が鳴っていない。」ということでした。
つまり映画で流れている音楽そのものの音量が小さいのです。
さらに1曲づつがシーンにおいて細切れに使われていることも印象を薄めている原因です。
もう少し音楽に対する編集者の理解力が高ければ、この作品の印象も変わったものになっていたはずです。
先の『ボルサリーノ』や『最後の標的』での音楽すり替え事件ほどの罪(?)は大きくないですが、
それでも大変もったいないことだったなと悔やまれます。

と言いますのも、このサントラには何とジャズ・ハーモニカの巨匠トゥーツ・シールマンスが
全面的にフューチャーされているからなのです。
我らがドロンさんの作品にトゥーツが参加していたという事実には本当に驚かされました。

次回はもう少し詳しくこのアルバムについてご紹介いたします。
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