LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

BIG GUNS (3)

2017-01-23 | THE 70'S CINEMA

フランス盤DVDライナー・ノーツより後半をご紹介します。

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野心的で大胆なプロデューサーであるアラン・ドロンは『ビッグ・ガン』の撮影を
イタリア以外の国で撮影することにためらいはなかった。
もちろん撮影の容易さを考えればパリで行うのが常識だが、
彼はリアリズムを追及するためにハンブルグやコペンハーゲンでキャメラの前に立った。
そんな時、あいにくある“組織”が圧力を加えてきたこともあった。
このようなジャンルの映画は何かとお金が必要になるのが常だった。
しかしそんなことはどうでもよかった。
アラン・ドロンは俳優として完全主義者であり、プロデューサーとして情熱の人であった。

--------------------中略-------------------------------------

1973年の時点でアラン・ドロンは最高というわけではなくとも
ヨーロッパの大スターたちの中の一人であった。
それゆえ彼と対等に渡り合える俳優を探すのは難しかった。
しかしながらプロデューサーとしてのドロンはいつもそのキャスティングで成功を収めていた。
今回彼はイタリアの若き女優カルラ・グラヴィーナを相手役に抜擢した。
赤い髪の彼女は当時イタリアで急速に国際的な成功を収めていた。
彼女はジャン・ルイ・トランティニアン(『刑事キャレラ10+1の追撃』)
ジャン・ポール・ベルモンド(『相続人』)、
ダスティン・ホフマン(『アルフレード・アルフレード』)
らと既に共演していた。
いずれアラン・ドロンとも共演することは当然予想されていたことであった。
“ヴィットリオ・ガスマンと共演して以来私は大スターたちとばかり共演してきたわ。
間違いなく今の私は運のいい女優よ。”
撮影時彼女はやや皮肉っぽくこう語った。
彼女のこれまで共演した男優たちの中でも、アラン・ドロンは男の中の男であった。
彼ら二人は俳優としての才能ばかりでなく人間としての信頼関係も築けていたに違いない。

同じようにロジェ・アナンはフランスのボス役に選ばれた。
彼はこの役のおかげで7年後に“大いなる許し(未公開)”で主役を演じるようになる。

リチャード・コンテはその逆である。
彼は1年前に“ゴッド・ファーザー”でドン・ブラジーニ役を演じており、
この『ビッグ・ガン』でもマフィアのボスを見事に演じている。

プロデューサーとしてのアラン・ドロンはこの『ビッグ・ガン』という作品が
フランスとイタリアの国境を分けずに両国でヒットするであろうことは予想していた。
さらに彼は新しい試みとして全ての撮影を二回に分けて行うことを
監督のドッチオ・テッサリと一緒に決めた。
最初はフランス語で、そして2回目は英語で行った。
このようにすることでアラン・ドロンはこの作品をイギリスやアメリカに配給することが可能だと確信した。
それらの国の観客は字幕スーパーやアフレコなどの映画は見ないことを承知していたからだ。

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最後の文章で「撮影が2回行われた」と書かれていますが、
DVDを観る限り、俳優の口の動きを見ていると英語を話しているようなので、
最終的に英語版が公開され、フランス語盤はドロン本人のアフレコのようです。
しかもドロンの英語は本人の声ではないので、
わざわざ別の声優がドロンの英語をアフレコしたようです。
どういう事情か分かりませんが英語圏での成功の為に、
完璧を期して敢えてそうしたのかもしれません。

アラン・ドロンはこの作品の前に『高校教師』『スコルピオ』『暗殺者のメロディ』と
本国フランス以外の国に敢えて自分の身を置いた作品を続けて発表していますが
いずれの作品も優秀な出来栄えであり、この時期、彼の「挑戦」は大成功したといえるでしょう。

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BIG GUNS (2)

2017-01-23 | THE 70'S CINEMA

フランス盤DVDライナー・ノーツより抜粋をご紹介します。

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“シシリー島にふたたび訪れての撮影はとても楽しい。
ここはルキノ・ヴィスコンティ監督の『山猫』を撮影したのと同じ場所で、
あれからもう10年が経ったんだ。”
1973年『ビッグ・ガン』撮影中のアラン・ドロンが語った。
彼はまたこの作品の共同プロデューサーも兼ねていた。

シシリー島では重要な場面が撮影されている。
彼が演じるトニー・アルゼンタはマフィアの組織に所属する殺し屋であるが、
また故郷の一市民でもある。

この物語は従来からあるこの類の犯罪ドラマの典型を引き継いでいる。

“トニー・アルゼンタの役はとても気に入っている。
彼は仕事の手際がよく厳しい人間ではあるけれども、
逆にシシリーの人たちと同じように気が優しく寂しがり屋でもある。
ドロンはこう語った。

シラキューズから20キロ以内の距離にある
3000人ほどの住人しか住んでいない小さな村Motamがこのロケの舞台である。
監督のドッチオ・テッサリは大半の野外撮影をこの村で行った。

とりわけ印象的なシーンは、映画のラストでトニー・アルゼンタが卑怯にも
信頼していた友人のルーカスから撃たれる場面である。
これは16世紀の装飾が施されたイエズス会の教会の前の広場が使われた。
この撮影の許可を得るのに地元の司祭との交渉に長い時間を要することはなかった。

なぜなら彼はアラン・ドロンのファンだったからだ。

したがって物語のテーマが暴力的なものであり
教会の原理、主義とは大きな隔たりがあったにもかかわらず
神父は何の問題も無く撮影許可を下ろしてくれたのだった。

そればかりではなく神父は結婚式のシーンで教会の内装を
そっくりそのままスタジオに再現することも許可を与えてくれた。

シシリー島でこのような恩恵を受けた俳優はアラン・ドロン以外にはいなかった。

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BIG GUNS (1)

2017-01-22 | THE 70'S CINEMA

2006年1月8日記事の画像と文章をリニューアルしました。

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2017年の1月からスター・チャンネルで始まった『アラン・ドロンがいっぱい』ですが、現在この『ビッグ・ガン』が放映されています。

ドロンさんの全盛期といえる70年代中盤に単身イタリアに渡って撮影した作品ですが、80年代までは日曜洋画劇場などでよくリピート放映され、日本のファンにとってはかなりなじみの深いドロンさんの代表作として知られている作品です。

(後年、彼の日本未公開作の2作品がこの題名にあやかって『復讐の~』『必殺~』などと、いかにもこの作品とのシリーズ作品であるかのように引用されたことはちょっと日本人のファンとして恥ずかしいところです。)

アデル・プロがフランス側の製作として関与していますが、スタッフ、キャストともにこれまでのドロンさんの作品には馴染みのないメンバーばかりで、彼のフィルモ・グラフィーの中ではかなり異色の作品といえます。

唯一ギャングのボスを演じた

とはいえドロンの役柄は“常に忙しく動き回る男”で、
かつ“表と裏の二つの顔を持つ男”といういつもの18番のキャラクターであり、
ストーリーにもメルヴィル作品のように首をかしげるような展開はなく
非常によくできた構成から成り立っている作品です。
この作品でドロンは両手で拳銃を自由に操ることができるスナイパーを演じていますが、
これは『レッド・サン』での左利きの特訓の成果なのでしょう。

日本で発売されているDVDはイタリア語と英語の吹替え盤ですが、いずれもドロン本人の声ではなく、
最近フランス盤DVDでドロン本人のフランス語の台詞を聞いて初めてこの作品を違和感なく観る事ができました。

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アラン・ドロンがいっぱい

2017-01-15 | THE INFORMATIONS
2017年に入ってから初の投稿となります。
遅くなりましたが、皆様本年もよろしくお願い申し上げます。

ファンの皆様におかれましては年明け早々から始まったスター・チャンネルの『デビュー60周年記念 53週連続放送
「アラン・ドロンがいっぱい」』をお楽しみのことと思います(現在『山猫』放映中です。)が、今のところ2月までしか放映作品の情報がなく、3月からいったいどういう編成になるのか期待が高まります。

私の手元にある市販されたDVDや、以前にテレビ録画した作品群から、今回の特集で放映されるであろう作品は(既に放映された作品を含めて)45作品ぐらいの予想はできているのですが、残りの7、8作品がどんなものになるのかが全くわかりません。

『真夜中のミラージュ』『ポーカー・フェイス』『最後の標的』『個人生活』などが放映されれば画期的なことですが、『さすらいの狼』『ジェフ』『栗色のマッドレー』『もういちど愛して』などに期待を抱くことは控えておきます(笑)

元日に放映された『アラン・ドロンのすべて』も素晴らしい内容でしたし、久しぶりに観た『仁義』も改めて作品の質の良さを再確認できました。
こうやって毎週ドロンさんの作品を改めて見返すことができるというのは大変幸せなことです。

さて近いうちに今年のイベントについての告知も行いますが、まずは21日のロミー・シュナイダーのイベントがいよいよ近づいてきました。
私も参加する予定で皆様との再会を楽しみに致しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。



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