goo blog サービス終了のお知らせ 

アラン・ドロン LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を多方面から考察し、またファンの方々との交流に重きを置いております。

『LE CHOC』(2)

2008-01-31 | THE SOUNDTRACKS
映画音楽の作曲家の中には以前自分がある作品の為に作った曲を
別の映画でも使いまわしをするケースというのがたまに見受けられます。
例を挙げていいますと、クインシー・ジョーンズが以前『マッケンナの黄金』の為に書いた
テーマ曲のさわりの部分をミュージカル『ウィズ』でそのまま使用したケースなどがあります。

フィリップ・サルドも“こういうこと”をよくする作曲家で、
古くはドヌーヴ主演『ひきしお』の音楽をアレンジはあまり変えず
サビのメロディのみ若干変えて『個人生活』で使っています。
またイヴ・モンタン主演クロード・ソーテ監督の『ギャルソン!』の音楽も、
2004年作品"Les soeurs fachées"でほぼ同じメロディとアレンジで録音し直されています。

前置きが長くなりましたが、ドロンさんとドヌーヴが共演した『最後の標的』も
1986年のアメリカ映画The Manhattan Project (1986)の中で
原曲と全く同じメロディで、アレンジを変えて使われています。
そしてこの音楽がアメリカでCD化されており、今回ここにご紹介します。

このアルバムにはサルドがアメリカで仕事をしていた頃の3作品の音楽が収録されており、
上記の作品からも6曲が聴けます。
この6曲の基調にあるメロディは、『最後の標的』でのラブ・テーマとして
映画の中で繰り返し使用されていた曲からのもので、
『最後の標的』が未だCD化されていない今日では、
このアルバムをその代替品として楽しんで聴いております。
元のアメリカ映画の方は恐らく今後も一生観ることはないと思いますが。
Comments (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『PAROLE DE FLIC』(2)

2007-12-30 | THE SOUNDTRACKS
『PAROLE DE FLIC』の記事でご紹介したエンド・タイトル曲
"I DON'T KNOW"が収録されているフィリス・ネルソンのベスト・アルバム
"I LIKE YOU"をご紹介します。

このアルバムに収録されている"I DON'T KNOW"は前半部分が一部カットされた
ショート・バージョンになっています。

1999年に発売されたこのアルバムには、同じく『復讐のビッグ・ガン』から
主人公が復讐に乗り込むディスコの中で流れている曲
"MOVE CLOSER"も収録されています。
このミディアム・スロー・ナンバーはいかにも80年代というアレンジですが、
メロディはとても美しいなかなかの名曲です。
パティ・ラベルのようにも聞こえるフィリス・ネルソンの歌声も魅力的です。

この映画では他にも(オリジナルか既成かは不明ですが)
異なるジャンルからの音楽が多数使用されており、
エンド・クレジットに書かれたそれらの曲を以下に記します。

①ABELE DANCE   Manu Dibango
②BIEN DANS LA VILLE  G.P.S.
③SHINE ON DANCE  Carrara
Carrara - Shine On Dance(Live Festivalbar 1984) @1st YouTube Video
④LET THE NIGHT TAKE THE BLAME  Lartaine Mac Kane
⑤TRISTAN et ISEULT  Richard Wagner
⑥UNA VITA SENZA LACRIME  Nino de Angelo

⑤は主人公がカー・チェイスの末に川に車ごと飛び込むシーンに
バックに流れていたクラシック曲ですが、
ちょっと気取りすぎの演出のように感じました。
Comments (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『LE JOUR ET LA NUIT』

2007-09-14 | THE SOUNDTRACKS
アラン・ドロンさんの1996年主演作品で日本未公開作
LE JOUR ET LA NUITのサントラ盤です。

音楽を担当しているのは巨匠モーリス・ジャールで、
ドロンさんの作品では『素晴らしき恋人たち』『パリは燃えているか?』『レッド・サン』に次いでの
4作品目となります。

上記2作品のスペクタクルな仕上りとは異なり、
ジャールの代表作品である『ドクトル・ジバゴ』にも似た作風が展開されるこのアルバムは
映画の舞台であるメキシコの民族音楽も絡めながら
波の上を船で漂っているかのような夢幻のムードを併せ持ったものになっています。

もともとフランス人であるジャールは60年代からハリウッド映画の作品を数多く手がけており
フランス映画を担当するのはこの作品が数十年ぶりになったようですが、
監督であるベルナール・アンリ・レヴィからの要請によるものと思われます。

いずれにしても作品の出来上がりが芳しいものではなかったとしても
音楽が超一流であることはドロンさんの作品群の大きな特徴です。

ジャケットのデザインもなかなか優れたものになっています。
Comments (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『L'HOMME PRESSE』

2007-08-26 | THE SOUNDTRACKS
『プレステージ』サントラ盤です。

この作品は日本公開当時にシングルEP盤が発売されたのみで、
以降アルバムが発売されたことはありません。

収録されているのは以下の3曲です。

①プレステージのテーマ
恐らく映画のメインタイトルとして使用されたバージョンで
単調なピアノのリズムをバックにメインのメロディが
ハープシコード、フルート、オーケストラの順番に演奏されていきます。
後半になるとオケの雰囲気がいっそう悲劇的になったかと思うと
最後はアコースティックピアノ、ハープシコードの順に
エンディングへと向かう不思議な曲です。

②時間よ走れ!
オーケストラをバックにゆるやかなオーボエの音色が美しいこの曲も
後半は①と同じメロディがピアノの演奏で繰り返されます。

③熱く燃えて
オーボエのバックのオーケストラの演奏が初めワルツのリズムを奏で
この調子で軽快に続くのかと思いきや
やがてメインのメロディがハープシコードとピアノで演奏され
エンディングに向かいます。

3曲とも非常に地味な演奏でドラマチックな響きも全くありませんが、
ドロンさん演じる主人公の激しい言動のバックにこれらの曲が流れると、
この男の人生のむなしさが強調されてくる効果をもたらしています。

ちょうど『チェイサー』でのエモーショナルなスタン・ゲッツの演奏の効果と
正反対のものがあると感じました。

なお以上の3曲の他にこの作品には
Les Meilleurs Bandes Originales Des Films De AD
でご紹介した曲がリリースされています。
Comments (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Les Meilleurs Bandes Originales Des Films De AD

2007-05-01 | THE SOUNDTRACKS
やたらと長ったらしいタイトルですが、
これはドロンさん主演映画のサウンドトラックのベストの決定版として
1983年に発売されたフランス盤LP3枚組みです。

このアルバム、学生時代に買いそびれてしまい
私にとってトラウマになっていたのですが、
昨年ようやく入手することができました。

詳しい曲目は以下のサイトに出ておりますので
こちらをご覧下さい。
Les Meilleurs Bandes Originales Des Films D'Alain Delon

今回はこれらの楽曲の中からこれまでCD化されていない曲について
私が初めて聞いたナンバーも含めてご紹介します。

①まず何といっても驚きは
私の大嫌いな作品(お好きな方、すみません)『LE TOUBIB』のテーマ曲です。
音楽はフィリップ・サルドが担当していますが、
前半の物悲しいアコーディオンの演奏から始まり
叙情的なオーケストラに引き継がれていく展開が誠に美しく、
これほどまでにいい音楽だったのかと私にとっては嬉しい発見でした。

②次に『ポーカー・フェイス』から4曲。
これまでメイン・タイトルのみCD化されていましたが、
その他は未だCD化されていません。
その中でも映画の終幕近く主人公が恋人を迎えに来た場面で流れる"BEA"は
まるでハリウッド映画のようなオーケストラの旋律が大変美しい名曲です。

また主人公の身代わりにドア越しで撃たれた友人の仇を討つ為に
部屋から飛び出すシーンに流れる"POURSUITES VOITURES"は
ストリングスの演奏だけで、打楽器を全く使わずに
主人公の怒りを表現するアクションスコアとして非常に個性的な曲です。

③さらに珍しい音楽が『暗黒街のふたり』から"RETOUR A LA VIE"です。
これは妻を交通事故で失い、独身となってしまった主人公が
休日に自宅で流すラジオから流れてくる音楽として使われています。
トランペットとサックスのツー・ホーンズがソロをとり、
後の『チェイサー』でゲッツのバンドが演奏する曲にも通じる
粋なモダンジャズ・ナンバーです。

④最後に『プレステージ』から"GÉNERIQUE"です。
これは日本で発売されたEP盤のサントラにも収められていなかったナンバーで、
映画のどの部分に使用されたか定かではありませんが、
オーケストラの演奏がこの物語の結末を暗示する役目を大いに果たしている
ドラマチックなナンバーです。

同時に発売されたベルモンドのベスト盤の紹介記事はこちらです。
Les Meilleurs Bandes Originales Des Films De JB
Comments (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『LE PORTRAIT DE L'AMOUR』

2007-04-23 | THE SOUNDTRACKS
ダーバンのCMの音楽を全て収録したLPレコード、
『LE PORTRAIT DE L'AMOUR』(=愛の肖像)
をご紹介します。

このレコードはちょうどダーバンのCM10周年記念として
1980年に発売されました。
(したがいまして最終年度1981年の音楽は残念ながら収録されていません。)

同じメーカーのCMを同じ俳優(ドロンさん)が10年間演じ続け、
さらにバックに流れる音楽も同じ小林亜星氏が毎年担当するという、
今では考えられないような偉業がここには記録されています。

毎年1曲づつ順番に計10曲収められたこのアルバムは、
さすがに始めの頃と後半では時代の流れを感じるものがありますが、
1970年代の豊かな文化の薫りが漂う名盤です。

全ての曲が名作ぞろいなのですが、
やはり後半(レコードで言うとB面)のメランコリックで哀愁あふれる曲群が
今聞いても古さを感じさせず、私のお気に入りです。
Comments (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『SUR LA ROUTE DE MADISON』

2007-02-16 | THE SOUNDTRACKS
『マディソン郡の橋』の舞台で使用された音楽の一部をご紹介します。

(写真右下の画像は“LE LION"からのものですが、
劇中キンケイドとフランチェスカの最後の別れのシーンに酷似しています。)

この舞台のオリジナル曲はちょうど舞台が始まる瞬間、
『橋』の絵が描かれた緞帳のバックにほんの数十秒流れますが、
これが大変メロディが印象的な名曲です。

それ以外は主に幕と幕の間にほんの数秒間、
それぞれのシチュエーションのイメージに合わせた既成曲が約10曲採用されています。

残念ながらサウンドトラック盤は劇場でも発売されていませんでしたので、
帰ってきてから調べ上げてようやく判明したのが以下の3曲です。

まずは
①チェット・ベイカーの“Embraceable You”(写真左上)より
1曲目“The Night We Called It a Day”
これはフランチェスカとキンケイドの最後の別れのシーンの前か後かに流れた、
この劇でも一番印象に残る曲で、
劇全体のテーマ曲として聞いてみても十分通じるムードを持っています。
ライブで聴いていて選曲者のセンスの良さが伝わってきました。

次はフランチェスカとキンケイドのラブ・シーンのバックに流れた曲。
②フランク・シナトラの“Where Are You”(写真右上)より
7曲目“Autumn Leaves(枯葉)”
このシャンソンの名曲の英語バージョンをクライマックスのシーンに持ってきたことで、
この劇が舞台はアメリカでもフランス人の手によるものだという
彼らのプライドのようなものを感じ取ることが出来ました。

またこのアルバムには①“The Night We Called It a Day”も収録されていますが、
豪華なオーケストレーションのアレンジが特徴的なシナトラ版ではなく、
敢えて小編成のバンド演奏のチェット・ベイカー版を採用していることも、
選曲者の粋なこだわりを実感できます。

最後は
③ステファン・グラッペリの“Afternoon in Paris”(写真左下)より
10曲目“Autumn Leaves(枯葉)”
シナトラのエモーショナルなボーカルによる『枯葉』の後を引き継ぐように
幕が下りた後に流れてくるアップテンポなリズムによるこの『枯葉』が、
その間に二人の愛が高まっていく様子を暗に示す効果をもたらします。

他にもまだまだ印象深い曲がたくさんあるのですが、
これから観に行かれる方でどの曲がどこで流れたと判別できた方は
ぜひこちらまでご一報いただけるとありがたいです。
Comments (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『Le Professeur』

2006-12-11 | THE SOUNDTRACKS
アラン・ドロンが1974年に主演した『高校教師』のサントラ盤です。

音楽を担当しているのはイタリアの巨匠マリオ・ナッシンベーネ
Mario Nascimbeneで、
この作品ではアメリカのジャズ・トランペッター、メイナード・ファーガスンが
ソロイストとして大きくフューチャーされています。

ファーガスンの起用があまりに話題になるので忘れられがちですが、
ジャンニ・バッソのテナーサックスの音色も深い余韻をもたらしてくれます。
ファーガスンの演奏は今聴くと少し大げさすぎるなような気がして
私などはむしろこのサキソフォンのソロの方を好んで聴いてしまいます。

このCDは1995年秋にSLCレーベルから発売されたものですが、
阪神大震災からの復興に向けて日々仕事に打ち込んでいた私にとって
大いに励みになった思い出深いアルバムです。
(ジャケットのドロンのイラスト、似てなさすぎで笑ってしまいますが)
Comments (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『Melodie en sous-sol 』

2006-12-09 | THE SOUNDTRACKS
先月フランスのユニバーサル・レーベルから発売された
『地下室のメロディ』のサントラ盤です。

正確にはアンリ・ベルヌイユ監督作品でミシェル・マーニュが音楽を担当した、
①『冬の猿』と②『地下室のメロディ』の2作品の音楽が収録されています。
いずれの作品もジャン・ギャバン主演で、①はジャンポール・ベルモンド、
②はアラン・ドロンがそれぞれ共演しています。

ライナーノーツによりますと、この作品のマスター・テープや作曲者自身による楽譜は
1969年5月のスタジオの火災により焼失してしまっており、
そのコピーを探し回ったところプロデューサーの元に残っていたものが発見され
ようやくアルバム化が実現したとのことです。

2曲目"Palm-Beach"は誰もが一度は耳にしたことがある非常に有名な曲ですが、
その覚えやすいメロディとスィング感抜群の編曲と演奏はとても都会的で洗練されており、
いかにも粋なフレンチ・ジャズといった趣きのある名曲です。

私が一番聞きたかったアルバム初収録の4曲目のメイン・タイトルは
今から10年以上前にホンダのプレリュードのCMのバックに使用されていた記憶がありますが、
(あれはビデオの音源をそのままダビングしたものだったのでしょうか。)
2曲目のアレンジをさらにワイルドにしたもので、
ブラス・セクションとパーカッションの掛け合いが見事な演奏です。

ライナーノーツにはほかにも興味深いエピソードが書かれていましたので、
その抜粋をいくつかご紹介します。

-----------------------------------------------------------

当初ギャバンの共演相手はドロンではなくジャンルイ・トランティニアンが予定されていたが、
ドロンがこの企画を知りプロデューサーのジャック・バールに売り込み、役を射止めた。
その際ドロンは(これは有名なエピソードですが、)出演料をもらわない、
その代わりにフランス以外のいくつかの国での配給権をもらうという条件を提示した。

ラスト・シーンは当初別のものが用意されていたが、あまりインパクトがなく、
撮影現場で急遽変更され、あの有名なロングシーンとなった。
このシーンにはオーディアールのセリフは一切なく、
バックにはミシェル・マーニュの音楽がセリフに代わる役割を務めた。
その音楽にはギャバンとドロンが演じるキャラクターたちの心の中、
つまり不安、希望、危機感を的確に描写することに成功した。

本作は公開後フランス、日本、ロシア、アメリカで大成功を収めたが
監督と作曲家の関係はこの作品を最後にきっぱりとなくなった。
その原因はベルヌイユ監督がマーニュのある種エキセントリックな人間性に
ついて行けなくなった為であった。

------------------------------------------------------------

Comments (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『LE CLAN DES SICILIENS』

2006-10-18 | THE SOUNDTRACKS
アラン・ドロンとエンニオ・モリコーネの唯一のコラボ作品
『シシリアン』サントラ盤です。

この頃のモリコーネはアンリ・ヴェルヌイユ監督の作品を立て続けに担当しており、
(『サンセバスチャンの攻防』『華麗なる大泥棒』『エスピオナージ』
『恐怖に襲われた街』)これらはいずれも名作ばかりですが、
中でもこの『シシリアン』の音楽は群を抜いて優れたものと言えます。

あのピヨーンピヨーンと鳴る音が印象的な1曲目の「ド根性ガエルのテーマ」
ではなくて「シシリアンのテーマ」は、
メインの旋律が一貫して曲の最初から最後まで流れる中、
バックのストリングスやドラムの音が変化していくことで、
主人公たちの悲しい運命や愛憎を感じ取ることが出来る珠玉のバラードです。

リノ・ヴァンチェラ扮する刑事たちとドロンとの追跡劇のバックに流れる
アップテンポのアクション曲も耳に残る名曲ですが、
2曲目の“Snack Bar”が地味ながらも華麗なラウンジ曲で私のお気に入りです。

モリコーネ自身このアルバムがいたくお気に入りのようで、
近年の来日コンサートでもテーマ曲がセット・リストに加えられていたようです。
残念ながら私はそのライブに足を運ぶことは出来ませんでしたが。
Comment (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『NOUVELLE VAGUE』(4)

2006-08-13 | THE SOUNDTRACKS
映画『ヌーヴェル・ヴァーグ』に採用された音楽より、
今回ご紹介するのはパウル・ヒンデミットのアルバム
"Hindemith: Symphony
'Mathis der Maler'/Trauermusik/Symphonic Metamorphosis"
です。

ここからは
②Mathis der Maler/Grablegung
③Mathis der Maler/Versuchung des heiligen Antonius
④Trauermusik
の3曲が映画の中の重要なシーンで使用されています。

尚、写真のCDの演奏が映画に使用された演奏なのかどうか定かではないのですが、
映画での音とさほど変わらない演奏を聴くことができますので、
ここで取り上げることにしました。

まず②ですが、
映画の前半、ロジェとエレーヌお互いの心が徐々に離れていく屋敷の庭での会話のバックに
まるで陽炎のように静かに流れてきます。
後半では、湖で沈んでしまいそうになるエレーヌをリシャールが助け上げ、
陸に上がった二人が広大な庭を歩くシーンのバックに流れます。

③は前半の湖のシーンにおいて、エレーヌがロジェを船から落とし、
彼がおぼれて沈んでいくのを船の上からただ見ているシーンのバックで
かなり長時間鳴り続けます。
映画の中ではこのシーンにしか流れない為、非常にインパクトがありました。
この間アラン・ドロンの溺れる演技をカメラは執拗に捕らえ続けますが、
ロジェの哀れな最後は目に焼きついて離れない強烈な印象を観客に与えます。

④は「葬送音楽」という題名がそのまま当てはまるような、
映画の中盤でロジェがエレーヌと船で湖の沖合いに出て行くシーンで流れます。
後半ではリシャールに助けられたエレーヌが屋敷から出て行くまでのバックに流れます。
最初はロジェの葬送、最後はエレーヌの葬送、といった意味合いが曲の背後にあることは明らかです。

(2)でご紹介したDino Saluzziや(3)でのDavid Darlingのそれぞれの曲も含めて、
ヒンデミットの③以外はいずれの曲もロジェのパートとリシャールのパートの両方に顔を出しており、
映画自体が前半と後半とで対をなした構成になっていることが、
音楽の選曲の仕方を辿ることでさらに深く理解することができました。

(尚ヒンデミットの音楽は上記の曲以外にも以下のアルバムから数曲採用されています。)
ECM New Series 1330

3回に渡って『ヌーヴェル・ヴァーグ』の音楽を解析してみましたが、
これら以外にもまだまだ映画で採用された音楽は数曲あります。
全部やっていると長くなってしまいますので、
ここではこの3枚でひとます終わりたいと思います。
Comments (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『NOUVELLE VAGUE』(3)

2006-08-12 | THE SOUNDTRACKS
映画『ヌーヴェル・ヴァーグ』に採用された音楽より、
今回ご紹介するのはDavid Darlingのアルバム"Journal October"です。ECM 1161

このアルバムからは
③Far Away Lights
⑥Clouds
⑦Solo Cello
⑧Solo Cello and Voice
以上4曲が映画の中の重要なシーンで使われています。

まずは③ですが、
放浪するアラン・ドロン扮するロジェが初めて画面に登場するシーンのバックに流れます。
ここでは後方から走ってくるトラックのクラクションの音とチェロの音がかぶさる音響の演出が大変印象的です。
そしてラスト・シーン直前、ドロンがプロ・テニス・プレイヤーの素振りを真似るシーンから
エレナと旅に出発するシーンに再びこの曲が登場します。

⑥はロジェが湖に沈められた後、それまでの晴天から突如曇天に変化し
波立つ湖のバックにこの曲が不気味に流れます。
このあたりのゴダールの演出はルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』のそれにも通じるものを感じます。
さらにここでは一瞬切断された魚の首のアップの画像も挿入され、
『太陽がいっぱい』での魚市場のシーンのオマージュとも取れる演出も見られます。

⑦は前半エレナの所有する工場でのシーン、
ドロン扮するロジェが彼女の会社の経営陣から無視されながらも
エレナに付き従う場面に工場の金属音にかぶさってこの曲が静かに流れてきます。

⑧はDavid Darling自身のボイスとチェロの演奏がハーモニーを奏でる不思議な曲で、
映画の中では、エレナの会社の経営陣の中に突然割り込んで入ってきた
リシャールという得体の知れない人物を特徴づける効果をもたらしています。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『NOUVELLE VAGUE』(2)

2006-08-11 | THE SOUNDTRACKS
映画『ヌーヴェル・ヴァーグ』に採用された音楽より、
今回ご紹介するのはDino Saluzziのアルバム"Andina"です。ECM 1375
Dino Saluzziはアストラ・ピアソラの後を継ぐバンドネオンの名手と言われている方のようです。

このアルバムからは
②Winter
③Transmutation (Romanza and Toccata)
⑧Andina-Toccata (My Father) -Huaino (...My Small Town) - The End (...And
以上3曲が映画の中の重要なシーンで使われています。

まずは②ですが、これはこの映画の主題曲と言っても過言ではないほど印象に残る曲です。
映画の冒頭、メイン・タイトル・クレジットのバックに、
そして中盤、アラン・ドロンが二役で扮するレノックスの双子の兄弟が屋敷に登場するシーン、
最後のレノックスとエレナが二人で屋敷を後にして旅立っていくシーン、
という3つの節目の場面において聴くことができます。

また次回ご紹介するDavid Darlingの"Far Away Lights"という曲と
この曲とをゴダールはセットとして映画の冒頭とラストのシーンで採用しています。

③は前半のレノックスとエレナが口論するレストランにおいて
給仕のチーフから叱り続けられたウェイトレスが突然お客様の前で
「金持ちの為に仕事をするのはうんざりだ。」と演説する不可思議な場面に流れます。

⑧はレノックスがエレナによって湖にて溺死した後、
新レノックスが登場する場面に流れます。
池のほとりにたたずむアラン・ドロンの影が水面に写り、
その上を花びらが吹雪のように舞う幻想的なシーンで流れる
この牧歌的で繊細なバンドネオンの調べは、
直前の殺人シーンの陰惨さと対をなす見事な効果を生み出しています。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『NOUVELLE VAGUE』(1)

2006-08-10 | THE SOUNDTRACKS
Nouvelle vague (1990)サントラ盤CDをご紹介します。

この映画の音楽はECMレーベルの創始者であるマンフレート・アイヒャーが
監督であるジャンリュック・ゴダールに自身のレーべルの作品のうちの数枚を
聴かせたことから始まったようです。
ECM New Series 1600

その中からゴダールが感銘を受けた作品が実際に映画の中で使われたもので、
サントラ・アルバムにはこれらの曲が全て収録されています。
さらにここでは音楽だけではなく、
映画の中での音響や俳優のセリフに至るまで全ての音が収録された
他に類を見ない長編作品としてECMレーベルより発売されました。

こういう形でのサントラの在りようというものに若干疑問は感じつつも、
ライナー・ノーツには各シーンで使用された曲名と演奏者が記述されており、
それらの作品を個々に掘り下げて聴いていくことにより
ゴダールが感じたインスピレーションを追体験することができます。
(これをECMの販売戦略とまでは言いませんが。)

次回からは主要なアーティストの作品と映画での使用部分について
3回に分けてご紹介していきます。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『LE BATTANT』

2006-08-06 | THE SOUNDTRACKS
Le Battant (1983)サントラ盤LPです。
私が所有しているのは写真のドイツ盤ですが、フランス盤も内容は同じようです。

音楽を担当しているのはChristian Dorisseという人ですが、
その後のキャリアも全くないことから謎の人物です。
LPのジャケットと映画のメインタイトルのクレジットにはこの名前とは別に
わざわざ「音楽監督」という肩書きでミシェル・コロンビエの名前が見れますが、
私は(あくまで推測ですが)二人は同一人物ではないかと思っています。
無名の一度きりの新人が担当したとは思えないほど音楽の中身が充実しているからです。

特にメイン・タイトルの主人公の孤独を表す愁いを帯びた単純明快なメロディは
シンセと口笛とアコースティック・ピアノが織り成すハーモニーが誠に印象深く、
さらに中盤からは断続的な重いドラムの音が加わることによって
映画全体に漂うムードにぴったりの作品となっています。

クラリスとナタリー(アンヌ・パリローが扮する)という二人のヒロインに対して、
それぞれ異なったメロディのテーマ曲が設定されいるのもこの作品の大きな特徴で、
これらはピアノのソロやストリングスとの共演などによる異なるアレンジで数回登場しますが、
いずれも一度聴いたら忘れられない美しいメロディを聴くことができます。

ただし、アルバム構成が主にこの3曲のバリエーションの繰り返しばかりで、
ちょっとワンパターンすぎるのが玉にキズといえます。
Comments (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする