テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ パリの波間に ~ 

2024-03-26 22:05:30 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 よそうゥではァ~あしたッ?」

「がるる!ぐるるがるるるぅ?」(←訳:虎です!本当に咲くかなぁ?)

 

 こんにちは、ネーさです。

 冷たい春の嵐が吹き荒れるここ東京の、

 今年のサクラ開花予想日は、延びに延びて、

 明日27日……?

 あんまり期待し過ぎないようにしなくちゃね~と心掛けつつ、

 さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪

 

 

 

        ―― パリの『敵性』日本人たち ――

 

 

 著者は藤森晶子(ふじもり・あきこ)さん、

 2023年12月に発行されました。

 『脱出か抑留か 1940-1946』と副題が付されています。

 

「ううゥ、すごいィ~きんぱくかんッ!」

「ぐるがるるぐっるる……?」(←訳:この表紙はいったい……?)

 

 御本の表紙を大きく占めているのは、

 或るモノクローム写真。

 

 ↑上の画像からも分かりますように、

 ゆうに数十年は昔の、古い写真です。

 

 著者・藤森さんがこの写真と出会ったのは、

 英国・ロンドンの帝国戦争博物館、

 その写真資料室を訪ねたときのこと。

 

 藤森さんが調べようとしていたのは、

 第二次世界大戦の末期、

 ドイツの敗北によって

 パリが解放された後に撮影された写真でした。

 

 《ドイツ兵の恋人》――

 ドイツ軍の兵士を恋人に持ち、

 ”親独”と見做されていた女性が、

 群衆の手で頭を丸刈りにされ、あるいはむりやり髪を切られ、

 解放後のパリの街路を

 追い立てられるように歩く姿。

 

 そんな写真を探して、

 連合軍の従軍カメラマンが撮影した写真資料のコレクションを

 調べてゆくと、

 『フランスの民間人』

 と分類された箱があって……

 

 一枚の写真が、藤森さんの手を止めさせます。

 そこには。

 

「むゥ~んッ? このひとォ~…」

「がるるる?」(←訳:誰だろう?)

 

 フランス人に連行されているのは、

 『東洋人のおじさん』?

 

 おじさんの妻かと思われるフランス人の女性も

 横に写っている?

 

 この『民間人』で『東洋人のおじさん』は

 いったい何者なのか。

 状況は。姓名は。連行された先は。

 そして……『おじさん』の、その後の人生は。

 

 心揺さぶられた藤森さんは、

 厚く重い歴史の扉を押し開けることになりました。

 

 ドイツ軍の侵攻が迫る1940年5月、

 在仏日本大使館に促され、

 マルセイユからの海路でフランスを脱出してゆく日本人たち。

 彼らとは反対に、

 フランス残留を選んだ者も200名以上。

 

 『おじさん』は、残留者の中の誰かなのか?

 

「てがかりィはァ~」

「ぐるるがる!」(←訳:書類の記録!)

 

 『おじさん』を探す“記録調べ”の旅は、

 戦争後のパリで

 『敵性』のレッテルを貼られた人々の記録と

 真摯に向き合う旅でもありました。

 

 ひとり、またひとり、

 浮かんでは霞んでゆく

 パリ残留を選んだ日本人たちの、心の波。

 波の狭間のどこかに

 『おじさん』はいるのか。

 

 困難なテーマに、

 著者・藤森さんは誠実に挑みます。

 近代史好きな活字マニアさん必読、

 いえ、全活字マニアさん必読の歴史ドキュメント作品を、

 世界各地の戦火が止まぬ今こそ、

 皆さま、ぜひ。

 

 

コメント
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