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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― なつかしの、星影 ―

2017-08-06 21:56:52 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでスゥ!
 はちおうじィまつりィ、へいまくゥ~!」
「がるる!ぐるるがるる!」(←訳:虎です!平和のうちに!)

 こんにちは、ネーさです。
 今日は、8月6日……朝方は広島からのTV中継を見ながら、
 昼間はお祭りに集うチビっ子たちの歓声を聞きながら、
 平和であることの意味を考えさせられる一日でした。
 涼しい夜風が吹いてきた夜は、
 さあ、ちょっとリラックスして、読書タイム♪
 本日は、こちらの版画集を、どうぞ~!
 
  



          ―― 巴水の日本憧憬 ――



 画は川瀬巴水(かわせ・はすい)さん、文は林望(はやし・のぞむ)さん、
 2017年3月に発行されました。
 大正~昭和にかけて活躍した版画家
 川瀬巴水さん(1883年~1957)の作品に、
 作家・国文学者であり、
 巴水さんの作品のコレクターでもある林さんが解説文を付した
 とても贅沢なアートブックですよ。

「すこしずつゥ~、すこしィずつゥ~…」
「ぐるぅーるがっるるる!」(←訳:メジャーになってきた!)

 一時期、日本では巴水さんの名は忘れられ、
 むしろ国外での評価が高く、
 外国語版の画集が刊行されている、という状態だったのが、
 最近ではずいぶんと事情が違ってきました♪

 拙ブログの2017年最初の展覧会情報は
 巴水さんの版画展でしたし、
 こうして立派な画集の発刊を御紹介できるようにもなって、
 私ネーさ、ホントに嬉しいわぁ♪

「いいえッ、まだまだァ!」
「がっるぐるるる!」(←訳:もっと広めたい!)

 そうなのよね、そこで
 林望さんの出番です!

 巴水さんの版画作品は、どれも素晴らしく、美しい。

 美しいんですけれど、ただ、
 悲しい欠点も抱えています。

 それは、巴水さんの作品に描かれた日本の風景の殆どが、
 既にもう無い、という事実――

「かわべのォ、おふねもォ~」
「ぐるがる~」(←訳:雪の村も~)
「ゆうやけのォ、のはらもォ~」
「がるぐるるるる……」(←訳:もうありません……)

 とうの昔に失われてしまった風景の意味を、
 そこに咲いていた小さな花々たちの存在を、
 名文家・林さんは丁寧に語ります。

 巴水さんが描いたのは、
 大正の頃の日本ですが、
 空を背景にそびえる大樹に、
 水面に影を落とす木製の深川橋に、
 それぞれどのような物語がこめられていたのか、
 そこに暮らした人びとの営みはどうであったのか。

「ふゥ~!
 あんまりにもォ、かけはなれてェまス!」
「ぐるがるるぐるるる!」(←訳:同じ国とは思えない!)

 もはや巴水さんの作品の中にしか
 居場所を見つけられない風景たち。

 私たちがいま見ている風景もまた、
 数十年、いえ、数年が経てば、
 やはり消えてしまうのだろうかと、
 寂しくも思いますけれど。

 ……いや、もしかしたら。

 この“物語のような景色”は、
 いつか再び、戻ってくることもあるんじゃないか。

 完全に甦らせることはムリでも、
 ちょっぴり、かつての姿に近付けることは
 出来なくもないんじゃないか。

 そんな風に妄想したりもいたします。

「できるゥ、かなッ??」
「がるるるぐるる!」(←訳:出来ますように!)

 温暖化なんていう言葉がない時代の、
 巴水さんの目に映った
 懐かしくも晴れ晴れとした夏雲の夕空を、
 どうか皆さまも、
 ぜひ、この御本で♪