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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

歴史のはざま、にて。

2011-10-17 23:30:20 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 おひさまポカポカ、
 年末までまだ間はあるけれど、大掃除日和ですね♪
 大掃除……誰かネーさの代わりにやってくれないかしら~?

「こんにちわッ、テディちゃでス!
 そうじィ、めんどくさいィッ!」
「がるる!ぐるぐるがるるる~!」(←訳:虎です!掃除はボクもパス~!)

 アトムくんみたいなヒューマノイド型お掃除ロボを
 どこかのメーカーさんに発明してもらいたいわ~と
 満杯の書棚を見上げつつ、
 でも、本日もこりずに読書タ~イム!
 さあ、本の重みで床がぬける悪夢にうなされる活字マニア同志諸氏よ、
 こちらを、どうぞ~!

  


 
          ―― 絵筆のナショナリズム ――

 
 
 著者は柴崎信三さん、2011年7月に発行されました。
 『フジタと大観の《戦争》』と副題が付されています。

 前回記事ではミステリ――フィクション作品を御紹介いたしましたが、
 こちらの御本はノンフィクション、
 アート評論に分類される作品と申せましょうか。

「でもォ、せんそうッ?」
「がるぐるるるぐる?」(←訳:戦争のお話?)

 御本の題名にもある、横山大観さんと、藤田嗣治さんは、
 20世紀の日本を代表する画家さんでした。
 藤田さんについては、20世紀ヨーロッパの画壇史に刻まれる画家さん、と
 ご紹介してもよいほどですね。

 そしてまた、
 彼らふたりは
 《戦争画》の画家さんでもありました。

「ふァ~? たいかんさんもォッ?」
「がるぐるるぐるがるる~?」(←訳:戦争画家さんだったんだ~?)

 戦意高揚を目的として描かれた絵画――戦争画。
 
 戦争画、と聞いて思い浮かべるのは、
 多くの場合、
 藤田嗣治さんの作品『アッツ島の玉砕』のような、
 《戦闘》を連想させる絵画でしょうが、
 実際にはもっと多様な作品が
 戦争画の役割を担っています
 (担わされた、というべきでしょうか?)。

 戦争画を制作したのも、
 日本の作家/画家だけではありませんでした。
 米国では、ディズニープロダクションをはじめ、
 アニメ工房がプロバカンダ作品を世に送り出しましたし、
 同様に、
 英国は反ドイツキャンペーンを、
 ドイツでは連合国を嘲笑するキャンペーンが実行されました。

 そう、戦意高揚作戦って、
 どこの国でもやってたこと、なんですね。

 日本でも、戦争画を描いたのは
 大観さんと藤田さんだけではなかったのですが、
 結果的に、目立ってしまったのは
 日本画壇の長老に等しい存在であった大観さんと、
 欧州で名声を得ていたがために
 故国日本では嫉妬・蔑視される状況にあった藤田さん、の二人……。

 いったいなぜ、
 どんなきっかけで、
 彼らは戦意高揚画に手を染める事態に到ったのか、
 何が彼らを後押しし、
 或いは強制したのか……?

「じだいのォ、ながれェ、でスかッ?」
「ぐるるるぐるがるがる?」(←訳:流行だったのかな?)

 著者・柴崎さんは
 ふたりの画家の
 《戦争》に対峙する姿を、
 詳しく調べ、追ってゆきます。
 さらには、
 『戦争画を描いた画家』という、消せぬレッテルに
 戦後の彼らがどう対応したか、も――

  《勝てば官軍》。

 読みながら、何度もこの言葉を想いました。
 歴史にイフ(もしも)は許されない、といいますが、
 想像せずにはいられません。
 戦争が起こらなかったら?
 開戦後の早い時期に講和を結んでいたら?
 大観さんと藤田さんの未来は、
 どう変わっていたのでしょうか。

「うむゥ~、えすえふにィ、なッちゃうゥ!」
「がるぐるがるがる~!」(←訳:もしもの世界だよ~!)

 アート論であり、
 20世紀美術史・歴史・戦後史を明らかにするこの御本は、
 アート好きさん、
 歴史好きさんにおすすめの快作です。
 長年の疑問が解けたぞ!と
 膝をうつ御方もきっとおられることでしょう。
 お読み逃がしなく!