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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― 輝く繭の王 ―

2010-02-01 23:03:48 | ブックス
 ぶるるっ!寒い~週明けとなりましたね。
 こんにちは、ネーさです。

「こんにちわッ、テディちゃでス!」
「がるるっ!」(←訳:虎ですっ!)

 週明けの月曜日といえば、何かとバタバタ慌ただしいのが相場でしょうか。
 でも! この御本の主役さんのバタバタはちょっと違います。
 その羽の動きは、奇跡の羽ばたき!
 観る者を魅了して止まない驚異の勇姿!
 さあ、本日はこちらを、どうぞ~!


 
                  ―― モスラの精神史 ――


 
 著者は小野俊太郎さん、’07年7月に発行されました。
 ↑画像でお判りのように新書なのですが、
 写真なども掲載され、大充実!の研究書です。

「けんきゅうッてェ……もすらちゃんのッ?」
「がるるーる!」(←訳:蛾の怪獣だ!)

 大怪獣、モスラ。
 いったい著者さんはモスラちゃんのどこを研究するのかしら?
 そう思いつつ冒頭ぼ数ページを読んでゆけば
 ……ええっ?!?
 と目を疑ってしまう驚きの事実が記されています。
 
 映画『モスラ』には原作がありました。
 その作者さんは、
 中村真一郎さん、
 福永武彦さん、
 堀田善衛さん、
 という、超一流の文学者さんたち!
 
 『発光妖精とモスラ』――これが、御三方が共同執筆した小説の名です。

「ほほゥ!
 もすらちゃんのォ、おとうさんはァ、ぶんがくしゃさんッでスかッ!」
「がるるる~?」(←訳:モスラはお坊ちゃまなのか~?)

 中村さん、福永さん、堀田さんの専攻はフランス文学であり、
 互いに気の合う詩人仲間でもありました。
 そんな文学者さんがなぜ、
 スペクタクル映画の原作を手掛けることになったのか……?

 著者の小野さんは、ジャン・コクトーさんの影響ではなかろうかと
 推察しています。
 コクトーさんは映画『美女と野獣』を自ら監督しているほどですから、
 3人のフランス文学者さんにとって、
 映画は必ずしも無視すべきもの、排斥すべきものではありませんでした。
 御三方と映画は、むしろ、とてもちかしいものであったのでしょう。

「ふむむゥ!
 もすらちゃんのォおじいちゃんはァ、ふらんすじんさんッ?」
「ぐるー!」(←訳:国際派だね!)

 原作『発光妖精とモスラ』に織り込まれた様々な暗喩、
 それが映画化される過程でどのように弱められ、改変され、
 しかしそれでもなお、《モスラ》の中に残されたもの、
 消しきれなかったものとは何なのかを、
 著者・小野さんはひとつひとつ解明、解析してゆきます。
 
 モスラが紡ぎ出す糸は、
 文学、映画、音楽、絵画、漫画やアニメーションまで、
 20世紀のクリエーション全域を結びつける揺るぎない線であるのだと、
 証明してゆくその語り口は……鮮烈!
 見事です!

「ではァ、はくしゅをォ!
 ぱちぱちぱちィ!」
「がるるるー!」(←訳:ブラボー!)

 それにしてもね、テディちゃ、虎くん、
 この点も驚きなんですけど……
 『モスラ』は大ヒットしたのに、
 3人の原作者さんの懐へは一文のお金も入ってこなかった、のだそうです。

「まままッ、まさかッ!」
「がる!」(←訳:嘘でしょ!)

 映画会社の『契約のまずさ』が原因、だったんですって。
 それでも騒ぎ立てたりしないのが、
 御三方の御三方らしさ、といえましょうか。

「でもォ、えいがふぁんはァ、わすれないィのでスよッ!
 もすらちゃんのォ、おとうさんたちをォ!」
「がるるる~がる!」(←訳:記憶と記録に残そうぜ!)

 すべての活字好きさんにおすすめしたい、すてきな御本です!
 どうぞ皆さま、ぜひ!

 では最後に、小美人たちが歌うあの有名な歌の訳文を、
 ちょこっと御紹介いたしましょう。
 (インドネシア語の詞の原作者さんは、
  田中友幸さん・本田猪四郎さん・関沢新一さん、
  作曲は古関裕而さんです)



 モスラよ
 永遠の生命 モスラよ
 悲しき下僕の祈りに応えて
 今こそ 蘇れ
 モスラよ
 力強き生命を得て 我らを守れ 平和を守れ……

 平和こそは
 永遠に続く
 繁栄への道である――