「おぽッ?
きょうのォ、いッさつはァ、えほんッ!
なのでスねッ、ネーさ?」
はい、そうなんです、テディちゃ。
本日ご紹介いたしますのは、絵本、なんですよ。
さあ、こちらを、どうぞ!
―― くまとやまねこ ――
文は湯本香樹実さん、絵は酒井駒子さん、
’08年4月に発行されました。
国際的にも高く評価されている湯本さんと酒井さん、
おふたりが創り上げたのは……『子ども向け』の一言では括れない、
凍てついた冬の苦痛と、
あたたかな春の希望が混在するかのような、
ひとつの絵ものがたりです。
「うむゥ?
えほんなのにィ、
いろがァないィのでスねッ?」
表紙の画と同じく、
この絵本にはほとんど《色》がありません。
酒井さんの描く絵の色は、白と黒ばかり……。
それも当然、なのでしょうか。
何故なら、くまくんは、
悲しみに浸っているのです。
友人が、かけがえのない親友が、
なくなってしまいました。
昨日まで元気だったのに、
ことりくんは、もう動かない――
喪失の痛みが、くまくんから光を奪ったのか、
この世界に、他の色は見当たりません。
「あァ、まッくらでス……
くらくてェ、
さみしくてェ、
どうしたらいいのかァ、わからないィのでス……」
色のない、
暗い家の中で、
ただひとり、流す涙。
このとき、くまくんに必要なものは
何だったのでしょう?
あきらめ?
割り切り?
それとも怒りや怨み?
いいえ、そうではありません。
くまくんのもとへ、
色彩は意外な、
しかし、あるべき形で戻ってきます。
亡くなったことりくんも望んだに違いない、
明々とした光をともなって。
「しろくろだけどォ、
もうッ、しろくろだけじゃァ、ないィのでスゥ!」
現在、とても評判を呼んでいる御本です。
本屋さんの絵本コーナーに行けば、
白黒のこの表紙画が、
静かに、
もの思わしげに、
新たな読み手さんを待っていることでしょう。
「ちょこッとでェいいからァ、みてみてッ!」
絵本好きさんに、
すべての本好きさんに、おすすめです!