
「ひィッ!
こわいィ、ごほんはァ、ぱすッ!でスよゥ、ネーさ!」
落ち着いて、テディちゃ。
これは怖い御本じゃありませんよ。
オバケも妖怪も幽霊も出てきませんから、安心して下さいな。
「……あゥ~?」(←不信の眼差しです)
さあ、あらためまして、御紹介いたしましょう!
本日の一冊はこちらで~す!
―― 東京『夜』散歩 ――
著者は中野純さん、’08年11月に発行されました。
副題に『奇所、名所、懐所の《暗闇伝説》』とあります。
「うゥッ、やぱりィ、こわそゥ……」
早とちりはいけませんよ、テディちゃ。
著者の中野さんは東京各地の怪奇伝説を掘り起こそうなどとは
考えておられません。
歩こう!
暗がりの中に、身を置いてみよう!
中野さんが追い求めるのは、夜=闇がもたらす変化です。
「えェ~ッ、くらいのはァ、こわいィのでスよゥ~」
そうです。真闇は、おそろしい。
どうしようもなく怖い、と中野さん御自身も書いています。
けれど、或るコツを摑むと……
不思議と恐怖が薄らぎはじめる、のだそうです。
「こつッ??」
そう、そのコツとは……休憩、です。
闇に戦いを挑んだりはしない。
がむしゃらに突っ込んだり、
慌てて逃げるのでもない、
立ち止まって、ひと息ついてみる――
そうやって、中野さんは数々の暗がりを踏破してきました。
本所の七不思議、
麻布の七不思議、
青山霊園……
「お、おばけッ、でなかッたのでスかッ」
オバケさんに連れ去られることもなく、
中野さんの暗闇紀行は、
都心の暗がりから、
郊外の暗がりへと拡大してゆきます。
私たち多摩っ子には馴染み深い、
高尾山の暗がり、
多摩湖畔の森の暗がり、
東京と神奈川の境に残る絹の道の暗がりへ。
「あうゥッ、こわいものォしらずゥ、でスうゥッ!」
暗いと、ひとはどう変わるのでしょう?
中野さんによれば、
一生懸命ものを見るようになる
視覚を含めたあらゆる感覚が鋭敏になる
昼間は見落としていた風景の魅力を発見できる――
暗いけれど、冥(くら)くはありません。
そこは豊かな、深海のような空間です。
「で、でもォ~」
まぁだ疑うのなら、
暗闇でもユーモアを決して忘れない
ナイトハイクマスター中野さんと一緒に、
夜の東京散歩へ、はいっ、出発!
とりわけ、鉄道ファンさんに歩いていただきたいのが、
もうすぐ無くなってしまうという
拝島駅の『日本一の踏切道』です!
夜のひとり歩きはやっぱりアカンという御方は、
昼間にでも、ぜひ~!
「おさんぽォまにあさんッ、
が、がんばッてェくださァいッ」