私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

夏のなき 秋来る方を・・・・流店

2009-11-07 09:52:09 | Weblog
 今日のテーマ「炎熱を烘る夏のなき」ですが、この「烘」るという字はどう読むとお思いですか。・・・・・・・「あぶる」と、読ますのだそうです。「共」には、大きいと云う意味があるのだそうです。それだけ言うと、もうその意味はくだくだと説明する必要はありません。
 それにしても、漢字は、調べれば調べる程、その奥の深さだけではなく、摩訶不思議さを通り越して、漢文字独特の何とも言えない匂いみたいなものまで感じられ、今更なのように感心しています。大した民族ですね。漢字を作りだした中国人は。
 
 この「あぶる」は、他に、「炙る」「焙る」とも書くのだそうですが、火と共にいるようなうだる暑さの夏を表現するのに、これぐらい適した字はほかにないと思います。

 ちょっと余談が長引きましたが、本題に入ります。
 「流店(りゅうてん)の水」と十勝の一つに数えられている「流店」を詠んだ歌も、また、沢山作られています。
 その代表的な歌を、まず、初めに。言わずもがなの綱政侯の御歌です。

    かげ清く 流るヽ浪に 夏のなき
            秋くる方を みなかみにして
 
 “夏のなき秋”をです。炎熱を烘(あぶ)る夏の最中、爽涼たる流店、そこに憩う人たちはみな清風が快通してくる方、そうです。秋か?と、さえ思わすような風に誘われるように、吹く風に体を向けて、人々が座っていることよ。その風と一緒に、そこいらを清らかに流れる水紋の、何と穏やかなにして静かなことだろうか。
 これぐらいの意味だと思います。


  

 なお、この他、多くの詩歌でも取り上げられています。

 貴島磯麿や黒田 慎は、綱政侯の歌の「夏のなき」を本歌取り風に取り入れて、次のように詠んでいます。
 
   ・水無月の てる日のそらも この殿は
              水と風とに 夏なかりけり
   ・園のうち めくる清水を せきいれて
              夏をよそなる やまかげのいほ

 その他、岡 直蘆も
   ・ゆく水を せきもいれつヽ すヽしさの
              名にながれたる いほはこのいほ
 と詠んでいます。 

 この他  
 「珊々床下鳴環珮」、「牀下水泓々」などと、この「流店」を流れる瀬韻の清らかさを褒め称えた漢詩も見られます。