来客があると、松はすばやく姿を消す。お客が帰って完全に
静かになるまで絶対に姿を見せない。最近その程度がどんどん
ひどくなって来ているような気がして心配なのである。
お正月、娘一家と夫の姉が訪れ、にぎやかに夕食を共にしたあと
帰宅。だが、2階に隠れているはずの松がいつまでたっても降りて
こない。
翌朝になっても隠れたまま、とうとうその日一日行方不明だった。
それが1月3日のこと。
そして、今日は1月4日である。何とか朝ごはんだけは食べたものの、
そのあとは再び2階に上がってどこに潜んだのやら。まさか具合が
悪いわけじゃないわよね、と一昨年の大騒動が頭をよぎる。
猫の隠れ場所を探すのってホントはルール違反なんだけど、やむに
やまれず狭い家の中をあっちこっち探し回るダメな飼い主。
見つかったのは彼女の定番の隠れ場所で、すっごくイヤそうな
顔をされちゃった。ゴメン。
30分前までつながっていたブラウザが突然エラー表示になった。
無線中継器の電源をいったん抜いてから差し直してみる。これは、
以前サポートセンターの人から教えられた方法で、リセットすると
生き返ることがあるらしいのだ。
ところが、今回はうまく行かない。何度やってみても復活しない。
試しに夫のパソコンを調べてみたら、ちゃんとネットにつながる。
つまり無線の不具合ではないってことね。
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それではと、私のパソコンの設定を確認した。ひょっとしてと思った
通り、WI-FI がオフになっていた。これなら自分で解決できる。
サポートセンターに質問せずに済んだから、相談料1900円が
節約できちゃったわ。
それにしても、いったいどうして? 私が自分で操作したのでない
ことは確か。ドーラのせいかもしれないと思いつく。ついさっきまで、
パソコンのキーボードをドーラの巨体がすっぽりと覆い隠していた
ことを思い出しました。
ドーラ------体重5キロ台を何とか維持したい
10数年ぶりに、クリスマスツリーを物置から引っ張り出して飾って
みた。猫を飼い始めて以来、我が家のツリーはお蔵入りのまま
だったのだが。
猫は、家の中のあらゆる場所に出入りし、昇り降りも自由自在。
おまけに好奇心旺盛と来ているから、ツリーなんぞを立てた日には、
たちまちひっくり返されるに違いないと思いこんでいたからだ。
しかし、意外や意外。猫たちのリアクションの余りの薄さに拍子抜けで
ある。松の態度は見事なほどに「我関せず」。ドーラはしばしツリーの
周りをウロウロしていたが、オーナメントをひとつ前足で引っかけて
落としただけで、興味を失った。
その代り、孫のタロウが大喜びである。まあまあ飾った甲斐はありました。
夕食どき、いつものように私の横にはドーラが寝そべっている。
何がしたいというわけではなく、ただ、そばに居たいというだけの
ことらしい。
お味噌汁を温めるため席を立った。戻ったのは、ほんの数秒後だ。
思わず「あっ!」と声が出る。皿に1匹残っていたシシャモが消えて
いるではないか。横にいたはずのドーラの姿も見えない。
テーブルの向かい側に座っている夫も気づかないほどの、まさに
電光石火の素早さでドーラがかっさらっていったに違いない。
盗み食いは松ちゃんの十八番だと思っていたのに、今回はドーラが?
北海道産、上等のほんまもんのシシャモだったんだぞ~。
コレコレ
↓
松の抜歯処置をしてもらう日。そろそろ出発しようとキャリーバッグを
取り出した。2,3日前なら、体力激減の松をバッグに押し込むのは容易
だったのだが、フードを食べて多少なりとも元気を回復した松ちゃん、
おいそれとは捕まらない。
押入れ、戸棚、机の下、果てはカーテンボックスの上にまで駆け上って
逃げ回る。夫と私はそんな松を、ドタバタと追いかけ回す羽目に。
とにかく抱っこされるのが大嫌いな猫なのよね。
何とかキャリーバッグに納まりはしたけれど、飼い主不信は頂点に達し
ちゃっているに違いない。表情はすっかりふてくされている。でも、心を
鬼にして病院へ。
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病院から手術が無事終わったという電話があり、まずは胸をなでおろす。
入院は2,3日とのこと。明日は面会に行こう。もっとも、猫って飼い主の
面会を喜ぶものなのだろうか。特に松の場合は恨まれていそうで、ちょっと
気おくれ。
運悪く、大型連休真っ只中に発覚した松の異常事態。年中無休の動物病院へ
駆け込んだ。無休どころか夜間の救急体制も整った24時間対応の大きな病院
だった。
内科、外科というのはわかるけど、腫瘍科、循環器科、脳神経科などが特設
されているのには、へぇ~とびっくり。看護師さんの問診、担当医の診察と
続き、検査もテキパキ。血液検査、X線検査、さらにはエコー検査までやること
になった。
全身麻酔で抜歯処置をするには、全身状態をしっかり診ておく必要があると
いう。何しろ、数日間ぜんぜん食べていないからねぇ。
ありがたかったのは、自分から食べようとしない猫に食ベさせるやり方を
実地で教えてもらえたこと。練り状の特別フードをシリンジで吸い上げ、猫の
口の中へピュッと放り込む方法を看護師さんがつきっきりで指導してくれた。
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よし、これで手術日までの3日間、松のお腹に多少なりとも食べ物を入れる
ことができるぞ、と勇んで帰宅したのだが、甘かったなあ。
身動きできないほど衰弱していた松だったが、病院で抗生剤だの栄養剤
だのを注射してもらったおかげで、動けるようになっちゃった。そうなると
捕まえるのがすごく大変。押入れの奥とか、本棚の隅っことか、机の下とか
に潜り込んで出て来やしない。
仕方ないから無理矢理私もその場所に入りこみ、不自然な格好で松の口を
開けさせるという仕儀に。シリンジのフードは、松の口へは入らずに、あらぬ
方角へ飛び散っていく。
松に異変である。
食欲だけは人並み外れていた松が、ピタリと食べなくなった。
一日中、隠れ場所から出てこなくなった。すでに4日経つというのに
ほとんど飲まず食わずなのだ。
何より驚いたのは、病院へ連れて行こうと手を差し伸べたら、おとなしく
抱っこされたこと。 松は抱っこされるのが大嫌いだったはずなのに。
食べていないんだものね、弱り切っているんだ。
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連休明けを待っている余裕はない。年中無休の動物病院へ行った。
血液検査も尿検査も異常は無し。ただ、歯がダメになっていた。歯槽膿漏
が進行して複数の歯がグラグラしていたのだ。かなりの数の抜歯が必要
だと言われた。
そうなのよね、口臭が気になってはいたのだ。かかりつけのクリニックに
相談もしていたのにね。飼い主として怠慢だった。
手術は1週間後なんだけど、それまで松の体力が持つのかどうか…
さあ寝よう、と部屋に入ったところで、さて困った。ドーラと松が
ベッドの上にうずくまっている。こちらに視線を向けはしたが
微動だにしない。
こういうとき、ネコ飼いはどうするか。彼らを追い払うという選択肢は
もともと存在しないので、取るべき道はふたつだ。
なるべく猫たちのじゃまにならないよう自分の体をベッドの端っこに
すべり込ませるというのがひとつ。もうひとつはベッドを諦めて床で
寝るという選択。
私が選んだのは後者である。たまには床もいい。
私のベッドの上は、ドーラが気に入っている居場所の
ひとつ。だが、おしりの緩い彼女は時々その上で粗相をする。
とっても困る。
せめて羽毛布団への直接の被害は避けたいと思い、
カバーをかぶせた。母が生前、昔の着物地をはぎ合わせて
作った大きな布である。
色とりどりの布地の海に、ドーラの三毛が美しく映え、
まんざらでもない飼い主。
時々は松ちゃんも
「箱の中に猫」の図は珍しくもないが、中身が松となると
ちょっと驚く。新しい箱が登場した途端まず飛び込むのは
いつもドーラの方だからだ。
この箱はいささか小ぶりだったせいか、ドーラは見学に回り
松ちゃんがちんまりと納まった。ジャストサイズだね。
ドーラ「今日のところはお姉ちゃんに譲る」
ふと振り返ると、背後のベッドにいつのまにか松がちんまり。
私がいる場所にひとりで堂々と姿を現すなんてめったに
ないことだ。しかもカメラを向けても逃げ出さないねぇ。
記念すべき一枚
夕方になって気がつく。「そういえば今日はまだ松の姿を見ていない」
こんなことはしょっちゅうである。ドーラと違って、人目を避け身を隠す
ことが習性になっている松は、常に新しい隠れ場所を発掘しているのだ。
最近のお気に入りはここ。ちょっと見ただけでは分からない。
気配を消しているしね。
テーブルの下をのぞくと……。でも、見つかったと知るや次の瞬間には
どこかへ姿をくらましてしまうから、飼い主は見て見ぬふりをするのです。