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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

自由民主党の「旧綱領」には、「公共の福祉を規範とし、福祉国家の完成を期する」と書いてあった

2009-01-06 19:03:42 | 政治/行政/地方分権
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昨年12月30日のブログで、次のように書きました。

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スウェーデンと出会って35年、私は先月初めて 「スウェーデン社会民主党(社民党)党綱領」を読む機会を得ました。そして、そこに描かれていることの多くが、みごとなまでに現実の社会で実現されていることを知り、感動しました。
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ところで、「党綱領」とは何でしょうか。その定義をネット上で探してみました。

①読売新聞の「用語解説」に、次のような解説がありました。
党綱領とは
政党の基本的立場や目標、基本政策などを示したもの。具体的には、党規約などで活動や組織を定めることが多い。共産党など革新政党の綱領は存在理由、運動方針などを示したものが多い。

②「ヤフーの知恵袋」に、次のような解説がありました。
党綱領これは何と読むのですか
「とうこうりょう」です。その党の基本的な性格・位置づけ・根本精神を定める党規範です。国家でいえば憲法のようなものです。「マニフェスト」は本来「綱領」の意味です。それを日本で最近使用するに際して本来の意味とズレた日本的使い方をしたため、「政権公約」と訳しなおしています。
歴史的には、ドイツ社会民主党が階級政党から国民政党に転換した「バート・ゴーテスベルク綱領」などが有名です。日本の各政党にもそれぞれあります。

今の私たちにとっては、この2つの解説だけで十分でしょう。


それでは、 「日本の今」を築いた自民党の「党綱領」には何と書かれているのでしょうか。それを調べた結果が昨日のブログです。
ここで参照したのは「新理念」や「新綱領」で、小泉純一郎総裁のもとで、立党50年の党大会が開かれた2005年11月22日に策定されたものでした。

それでは、自民党の「旧理念」や「旧綱領」とは何だったのでしょうか。試しに自民党のHPに初めてアクセスしてみました。

「党基本情報」の「立党宣言」をクリック、いとも簡単に私が求めていた「旧綱領」が出てきました。制定されたのは昭和30年(1955年)11月15日と記されています。

旧綱領を見て、大変驚きました。私の予期に反して、書かれている内容が、次のように実に簡単だったからです。これが自民党の綱領だったのかと。そして、1955年から2005年までの50年間の自民党の「党規範」であったのかと。

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昭和三十年十一月十五日
一、わが党は、民主主義の理念を基調として諸般の制度、機構を刷新改善し、文化的民主国家の完成を期する。

一、わが党は、平和と自由を希求する人類普遍の正義に立脚して、国際関係を是正し、調整し、自主独立の完成を期する。

一、わが党は、公共の福祉を規範とし、個人の創意と企業の自由を基底とする経済の総合計画を策定実施し、民生の安定と福祉国家の完成を期する。 
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そして、もう一度、おどろいたのが「綱領」の最後に「・・・・・民生の安定と福祉国家の完成を期する」と書かれていたことです。現在の日本の社会に私たちが抱くイメージとこの党綱領はあまりに落差が大きいのではないでしょうか。

初めて触れた「スウェーデン社民党の党綱領」の格調の高さと、その内容の多くが実現されている現実に感動した私は、この自民党の「旧綱領」に驚きを禁じえませんでした。自民党は「福祉国家の完成を期していた」のですか。

福祉国家が完成されるどころか、現実の日本は今、米国とともに「非福祉国家」とみなされているではありませんか


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自民党をはじめ、野党の政治家は軽々しくも、「政治は結果が大事だ!」などと言いますが、日本の政治家は現状をどう認識し、21世紀前半社会をどのように創って行こうとしているのでしょうか。今後、自民党政権が続く場合には、その時の「道しるべ」となるのは2005年11月22日に小泉純一郎総裁のもとで制定した「新理念」と「新綱領」なのでしょうか?

自民党のHPの「党基本情報」の「基本方針」をクリックすると、「新理念」「新綱領」「立党50年宣言」を参照することができます。自民党は50年ぶりに「党綱領」を新しくしたことにより、日本をどのような方向に導こうとしているのでしょうか。

 




「自由民主党の党綱領」と「スウェーデン社会民主党の党綱領」の大きな落差

2009-01-05 06:17:14 | 政治/行政/地方分権
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昨年12月30日のブログで、スウェーデン社民党の党綱領に示された「環境認識」を紹介し、今年1月1日~4日のブログでは、その「環境意識」に基づいて、スウェーデンが21世紀前半にめざすべき「グリーンなスウェーデン福祉国家」に関する記述を紹介しました。

今にして思えば、この「グリーンなスウェーデン福祉国家」こそ、私のブログの主題となっている「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)だったのですね。

日本の自民党の38年にわたる長期単独政権がつくりあげた「経済大国」日本とスウェーデンの社民党の44年にわたる長期単独政権がつくりあげた「福祉国家」スウェーデンの「現状」についてはネット上をはじめ、国内外にたくさんの活字資料や映像情報がありますので、ここでは両国の「21世紀前半社会に向けたビジョンの相違」の大きさを改めて再確認しておきましょう。


関連記事
21世紀前半社会:ビジョンの相違② 日本のビジョン「持続的な経済成長」(2007-07-26)

混迷する日本② 臨時国会閉会 21世紀の新しい社会をつくる法律ができない(2008-01-16)

100年に一度の経済危機? 未曽有の経済危機? 今年の国会で成立した法律は?(2008-12-29) 


せっかくの機会ですから、日本の自民党の「新理念」と「党綱領」を見ておきましょう。いずれも小泉純一郎総裁(元小泉首相)のもとで、立党50年の党大会(2005年11月22日)で採択されたものです。

関連記事

自由民主党の基本方針:新理念、新綱領、立党50年宣言

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自由民主党の「新理念」
●わが党は、すべての人々の人格の尊厳と基本的人権を尊重する、真の自由主義・民主主義の政党である。
●わが党は、自国の安全はみずからが守るという、気概と使命感をもち、正義と秩序を基に世界平和を希求し、その実現に貢献する政党である。
●わが党は、貧困・疾病・環境など人類が直面する課題の改善に貢献し、地球規模の共生をめざす政党である。
●わが党は、常に長期的・国際的視点に立ち、日本の方向を定め、改革を断行し、また、直面する課題に対しても安易な迎合に堕することなく、強い責任感と実行力をもって対処する責任政党である。
●わが党は、先人達が築き上げてきた日本の伝統と文化を尊び、これらを大切にし、その発展をめざす政党である。
●わが党は、政治は国民のものとの信念のもとに、都市・地方の幅広い支持のうえに立つ国民政党である。

自由民主党の「新綱領」
●新しい憲法の制定を
 私たちは近い将来、自立した国民意識のもとで新しい憲法が制定されるよう、国民合意の形成に努めます。そのため、党内外の実質的論議が進展するよう努めます。
●高い志をもった日本人を
 私たちは、国民一人ひとりが、人間としての普遍的規範を身につけ、社会の基本となる家族の絆を大切に、国を愛し地域を愛し、共に支え合うという強い自覚が共有できるよう努めます。そのために教育基本法を改正するとともに、教育に対して惜しみなく資源を配分し、日本人に生まれたことに誇りがもてる、国際感覚豊かな志高い日本人を育む教育をめざします。
●小さな政府を
 私たちは、国、地方を通じて行財政改革を政治の責任で徹底的に進め、簡省を旨とし、行政の肥大化を防ぎ、効率的な、透明性の高い、信頼される行政をめざします。また、国、地方の適切な責任分担のもとで、地方の特色を活かす地方分権を推進します。
●持続可能な社会保障制度の確立を
 私たちは、思い切った少子化対策を進め、出生率の向上を図り、国民が安心できる、持続可能な社会保障制度を確立します。
●世界一、安心・安全な社会を
 私たちは、近年の犯罪の急増やテロの危険性の高まりに対し、断固たる決意をもって闘うとともに、災害に強い国づくりを進めることにより、日本を世界一、安心・安全な社会にします。
●食糧・エネルギーの安定的確保を
 私たちは、世界の急速な変化に対応するため、食糧とエネルギー資源を確保し、経済や国民生活の安定に努めます。特に、食糧の自給率の向上に努めるとともに、食の安全を確保します。
●知と技で国際競争力の強化を
 私たちは、わが国の質の高い人的資源と技術力を基礎に、新しい産業の育成にも力を注ぎ、国際競争を勝ち抜くことのできる、活力と創造力あふれる経済の建設をめざします。
 特に、日本の中小企業の活力を重視し、また、最先端技術の基礎的、独創的な研究開発を推進し、知と技によって支えられる科学技術立国をめざします。
●循環型社会の構築を
 私たちは、自然も人も一体という思いから、地球規模の自然環境を大切にし、世界の中で最も進んだ持続可能な循環型社会の構築をめざします。
●男女がともに支え合う社会を
 私たちは、女性があらゆる分野に積極的に参画し、男女がお互いの特性を認めつつ、責任を共有する「男女がともに支え合う社会」をめざします。
●生きがいとうるおいのある生活を
 私たちは、ボランティア活動や身近なスポーツ・芸術の振興、高齢者や障害者の社会参加を促進し、生きがいとうるおいのある生活をめざします。そのため、NGO・NPO諸団体をはじめ、あらゆる団体との交流を深め、また、まじめに働く人たちの声を大切にします。
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私は、昨年11月に初めて読んだ「スウェーデン社会民主党綱領」に書かれていることと現実のスウェーデン社会を見てその誠実さと実現度の高さに感動し、それならば比較のためにと、日本の「自由民主党の党綱領」に興味を覚え、期待しながら今回初めてアクセスを試みました。

結果は上記のとおりで、あえて、コメントするまでもないと思いますが、3年前に採択された自由民主党の「新理念」や「新綱領」からは「21世紀の新しい日本社会のイメージ」がまったくといってよいほど湧いてきません。先に紹介した「スウェーデン社民党の党綱領」の内容とは比較のしようもありません。

私は自由民主党の「新理念」と「新綱領」を読んで、以前、京都大学教授の中西輝政さんが雑誌『VOICE』に書いておられた「自民党も民主党も現状維持政党だ」という見解を思い出し、納得しました。


関連記事

進化してきた福祉国家⑨ 「現実主義の国」対「現状追認主義の国」(2007-08-31) 
 
日本の社会を構成する「主なプレーヤー」の問題点(3) 経営者、政治家、そして官僚(2008-10-03)


グリーン・ニューディール(米国)、緑の日本、そして、緑の福祉国家スウェーデン

2009-01-04 07:46:36 | 政治/行政/地方分権
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元旦の毎日新聞が「日本版 緑のニューディールを」という社説を掲げました。「新モデルを求める」という小見出しをつけて、米国のオバマ次期大統領が「グリーンニューディール」を、韓国のイ・ミョンバク大統領は「グリーン・グロス(環境成長)」を打ち出した。日本もまた、日本版の「緑のニューディール」に踏み出すべきだと考えると。

朝日新聞は今日の社説で「温暖化防止 『緑の日本』担える政治を」と書いています。朝日の社説は「世界へ向けて『緑の日本』というメッセージをいかに発信するのか、そうした戦略が問われている」というお決まりのフレーズで結ばれています。

また、いつものパターンで、騒々しくなってきました。今日は、「グリーン・アメリカ」や「緑の日本」より10年以上前に「緑の福祉国家」というビジョンを掲げ、かなりの成果を達成しているスウェーデンの戦略を次の書評から読みとって、 “緑の日本”を構築する際の方向性とヒントを考えてみてください。


関連記事

書評;週刊エコノミスト



「希望の船出から11年」-経済も、福祉も、環境も・・・・・(2008-04-25)



スウェーデン社会民主党党綱領 「グリーンなスウェーデン福祉国家」-③

2009-01-03 10:50:47 | 政治/行政/地方分権
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今日は「スウェーデン社会民主党党綱領」に記載されている「グリーンなスウェーデン福祉国家」の3回目(最終回)です。

グリーンなスウェーデン福祉国家 -その3
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環境面で持続可能な発展を実現するための調整は、経済成長のための強いインセンティブをつくりだす。なぜならば、そのおかげで、資源節約型のテクノロジー、環境面で調整された新しい乗り物や輸送手段、エネルギー生産の新しい形態の需要が生まれてくるからである。

新しい住宅や職場の建設や立て直しに際しては、持続可能性のための要請を満たしていく必要がある。

こうした事情からして、戦略的な環境政策によって、経済的、社会的、環境的発展を結合させていくと同時に、企業のなかでの実践的な技術開発を促進していく必要がある。これらを達成していくためには、開発投資、法的整備、多様な経済政策手段が最も重要である。

環境政策が効果を発揮するためには、国際的な協力が必要である。豊かな世界は貧しい国々に対して、農業や産業における新しい環境融和的なテクノロジーを供給していく責任があり、それもこうした協力の一部である。豊かな国々は、最大の資源消費者であり、同時に生産、消費パターンを変革していく新たな責任を有する。
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関連記事

緑の福祉国家10「新しいビジョン」を実現する行動計画(2007-01-20) 

緑の福祉国家62 「政策評価」のためのチェック項目(2007-06-21) 

エコロジカルに持続可能な社会「緑の福祉国家」の3つの側面(2008-12-23) 



スウェーデン社会民主党党綱領 「グリーンなスウェーデン福祉国家」-②

2009-01-02 09:07:39 | 政治/行政/地方分権
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今日は「スウェーデン社会民主党党綱領」に記載されている「グリーンなスウェーデン福祉国家」の2回目です。

グリーンなスウェーデン福祉国家ーその2
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環境保護の要請に対する配慮は、初めから生産プロセスに組み込まれていなければならない。自然資源はもっと有効的に使われなければならない。エネルギー生産も調整される必要がある。

生物の多様性は保護されなければならない。農業政策は、環境面で持続可能な農業や安全な食物を求める要求に応え、また動物が自然の環境で、痛みや苦しみから守られて生きることができる倫理的畜産の提起に考慮して設定されなければならない。

輸送システムは、公共輸送に重点を置くように再組織されると同時に、また、燃料消費量の少ないエンジン、代替燃料、よりよい洗浄技術を発展させるための投資が要求される。

気候に影響を及ぼすガスの排出を削減することは優先事項である。

排出物や廃棄物というかたちをとおして環境に影響をおよぼすすべてのものは可能な限り削減されなければならない。

スウェーデン産業の強さはエネルギーの供給に依存しており、またスウェーデンはその地理的位置からして、暖房、照明、輸送のために大量のエネルギーが必要である。しかし、エネルギーの使用には、環境的な配慮による制約がある。

原子力は廃止していかなけれがならないし、同時に化石燃料の使用は減少させられなければならない。 

このような複数の目標を実現するには、代替エネルギーを開発していくと同時に、エネルギーの消費の総量を抑制するより効率的な方法を発達させる投資が前提となる。よりエネルギー節約型の生産プロセスが、また、地域や家庭を暖房する最もエネルギー効率のよいシステムが開発されなければならない。 
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社会民主党党綱領に掲げられた「グリーンなスウェーデン福祉国家」の考え方は具体的な政策案となって、行政府から国会へ提出され、審議の結果採決されて、国の政策となります。その政策の概略を次の関連記事で知ることができます。

関連記事
緑の福祉国家51 持続可能な農業・林業① 食料自給率(2007-05-21) 

緑の福祉国家61 都市再生(都市再開発) ディーゼル燃料、バイオ燃料(2007-05-31) 

緑の福祉国家12 「気候変動」への対応①(2007-01-23) 

緑の福祉国家22 エネルギー体系の転換① 原発を新設しない・脱石油(2007-04-22)




スウェーデン社会民主党党綱領 「グリーンなスウェーデン福祉国家」-①

2009-01-01 09:10:54 | 政治/行政/地方分権
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新年あけましておめでとうございます。

1年前、つまり、昨年1月1日の私のブログで何を書いたのか、ここをクリックすることから始めてください。

昨年11月3日のブログで紹介した米コロンビア大学ジョセフ・スティグリッツさんは朝日新聞のインタビュー記事で、「新自由主義の終わり」「グリーンなアメリカ」を主張し始めました。この記事を読んだ後、スウェーデン社会民主党党党綱領を読むとほとんどすべての面で「スウェーデンの先進性」が理解できます。

スウェーデン社会民主党党綱領における「環境認識」 
については一昨日のブログで紹介しましたが、重要なことですので、もう一度掲載しておきます。 
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労働運動の発展:平等観の拡張
1970年以降、環境政治や平等問題が社会民主主義の政策においてより重要な要素になってきた。環境論議は、非搾取的な経済を求める社会民主主義の古典的な要求と連動している。また、平等を進める政策は、社会民主主義の包括的平等を志向するイデオロギーから、当然発展してくるものである。こうした二つの議論は、社会分析をさらに深化させることにもなった。

a 環境
民主主義の状況と経済を分析するにあたっての中心的問題は依然として労使間での権力と資源の分配の問題である。しかし、環境問題が示しているのは、民主主義的な経済もまた搾取的になりうるということである。それはどのような場合かと言えば、経済が今日の福祉のために生み出す資源のその量的な側面だけが目標として掲げられ、自然資源のうえでどれほどのコストがかかったのか省みられない場合である。環境面での要求は、所有のあり方を問わず、また生産の帰結がどのように配分されるかにかかわりなく、経済権力をめぐる議論にもう一つの重要な次元を付け加えるものである。

環境政策はさらに、再分配にかかわるまた別の政策原理、すなわち世代間の再分配という原理も含んでいる。今日の世代は、自らの福祉のためだからといって、来るべき世代の生活の基盤となる資源や物的環境を疎かにする権利はない。こうした観点からすれば、社会民主党は環境政党でもある。

以下省略
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関連記事
年度末に当たって、改めて「環境問題」とは(2008-03-31)


以上がスウェーデン社会民主党党綱領に示された「環境認識」です。このような「環境認識」に基づいて、社民党は21世紀前半にめざすべき「新しい社会」の構築を模索してきました。その大筋がこの党綱領に書かれています。それでは、今日から同党党綱領に記載されている「グリーンなスウェーデン福祉国家」の記述を3回に分けて紹介します。


グリーンなスウェーデン福祉国家―その1
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地球の資源を賢く活用することは、人類の未来のための条件である。もし来るべき世代が、フレッシュな空気できれいな水のある、自然豊かで、多様な生物種に満ちた世界に生きたいと願うのであれば、経済発展は、環境的持続可能性との調和を図らなければならない。

しかし今日、自然資源とエコシステムは、長期的にみた持続可能性の限界を超えて使われており、これを止めないならば環境的崩壊の危険もある。環境的に持続可能な発展への調整が不可避であるが、これは世界社会全体の責任であり、また社会民主党にとってはあらゆる国際的なつながりのなかで追求するべき目標である。

当面求められるのは、資源節約型で効率的な生産、エネルギーシステム、輸送システムを採用していくことで、これは社会的公正を求める要求とも一貫するものである。そのためには今日用いられている資源の量を大幅に削減する必要があるが、このことは今度は、生産および消費のパターンを変えることになる。

新しい経済的合理性、社会計画における新しい方向性が求められていくし、個人が資源の使用にかんして、責任を負っていくことが求められる。
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関連記事
現行の経済成長は50年後も可能か(2007-02-23)

「新しい経済発展の道」をめざして(2007-03-11)

エコロジー的近代化論の問題点(2007-03-15)



スウェーデン社民党党綱領に示された「環境認識」と私が理解した「スウェーデンの行動原理」

2008-12-30 11:16:19 | 政治/行政/地方分権
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今年もあと一日を残すだけとなりました。私は1973年以来、スウェーデンと日本の環境問題とその対応を同時進行でウオッチしてきました。2007年1月1日から始めたこのブログも新年には3年目に入ることになります。

スウェーデンと出会って35年、私は先月初めて「スウェーデン社会民主党(社民党)党綱領」を読む機会を得ました。そして、そこに描かれていることの多くがみごとなまでに現実の社会で実現されていることを知り、感動しました。私が35年間苦労して理解したスウェーデンとその環境政策とその成果(このブログでは、63回にわたって書き続けた「市民連続講座:緑の福祉国家」)がこの社民党の党綱領の中に「グリーンなスウェーデン福祉国家」のタイトルで大筋が描かれていたのです。これは私にとって大発見でした。安心と安全な社会は民主主義の国では政治家と官僚と国民が協力してつくるものなのですね。
 
私が参照した「スウェーデン社会民主党党綱領」は北海道大学大学院法学研究科教授・宮本太郎さんの訳によるもので、その全文が社団法人 生活経済政策研究所発行の『生活研ブックス16』(2002年12月10日発行)に「ヨーロッパ社会民主主義論集(Ⅳ)」として収録されています。
今日は今年最後のブログですので、「スウェーデン社会民主党党綱領」に書かれている「環境」の部分を紹介しましょう。

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労働運動の発展:平等観の拡張
1970年以降、環境政治や平等問題が社会民主主義の政策においてより重要な要素になってきた。環境論議は、非搾取的な経済を求める社会民主主義の古典的な要求と連動している。また、平等を進める政策は、社会民主主義の包括的平等を志向するイデオロギーから、当然発展してくるものである。こうした二つの議論は、社会分析をさらに深化させることにもなった。

a 環境
民主主義の状況と経済を分析するにあたっての中心的問題は依然として労使間での権力と資源の分配の問題である。しかし、環境問題が示しているのは、民主主義的な経済もまた搾取的になりうるということである。それはどのような場合かと言えば、経済が今日の福祉のために生み出す資源のその量的な側面だけが目標として掲げられ、自然資源のうえでどれほどのコストがかかったのか省みられない場合である。環境面での要求は、所有のあり方を問わず、また生産の帰結がどのように配分されるかにかかわりなく、経済権力をめぐる議論にもう一つの重要な次元を付け加えるものである。

環境政策はさらに、再分配にかかわるまた別の政策原理、すなわち世代間の再分配という原理も含んでいる。今日の世代は、自らの福祉のためだからといって、来るべき世代の生活の基盤となる資源や物的環境を疎かにする権利はない。こうした観点からすれば、社会民主党は環境政党でもある。

b.平等(略)
c.エスニシティ(略)
d.差別(略)
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以上は、「スウェーデン社会民主党党綱領」から抜粋したものですが、以下は私の35年にわたるスウェーデンの環境政策のウオッチの過程で、私自身が発見し、理解した「スウェーデンの行動原理」です。これは大変普遍性の高い原理で、閉塞感溢れる現在の日本でも応用可能だと思います。

さらに付け加えれば、
●スピード
●透明性
●包括的(総合的、ホリスティック・・・・・)
●システム思考

ということになるでしょう。これらはいずれも日本に欠落している特性です。

新年のブログはスウェーデン社会民主党党綱領に記された「グリーンなスウェーデン福祉国家」をご紹介することから始めましょう。
 

それでは、皆さん、よいお年を。

100年に一度の経済危機?、未曽有の経済危機? 今年の国会で成立した法律は?

2008-12-29 12:18:40 | 政治/行政/地方分権
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今日はまず、次の図をご覧ください。去る2月25日に閉幕した第170回国会で成立した法律を報じています。第170回は、今年9月24日に召集された「臨時国会」で、会期は12月25日までの93日間(当初は11月30日までの68日間)でした。



次の2つの図は第169回国会で成立した法律と条約を示しています。第169回国会は、今年1月18日に召集された「通常国会」で、2008年1月15日に閉会した第168回国会「臨時国会」からわずか3日の間に召集された。会期は、6月15日までの150日間が予定されていたが6月21日まで延長されました。




第168回国会は、2007年9月10日に召集された臨時国会で、会期は、2008年1月15日までの128日間でした(当初は昨年11月10日までの予定で、その後12月15日まで延長され、最終的には年を超えて今年の1月15日まで再延長されました)。



今年の国会は極めて変則的でした。今年の国会の具体的な成果を示す「成立した法律」を上に掲げましたが、皆さんに注目していただきたいのは「改正」と冠した法律が圧倒的に多いことです。


21世紀も20世紀と同じような「経済成長」をめざすのであれば、これは非常に合理的なやり方と言えます。しかし、50年後の社会が今の社会を拡大・延長した方向にありえないとしたら、とるべき行動は違ってくるはずです。


既存の法律が社会の変化に耐えられなくなったとき、その骨格部分は変えずに、不都合になった箇所だけ現状に合わせるような「改正」を施すだけでは「現状肯定」にすぎないと思います。20世紀型の社会を21世紀型の新しい社会に変えていくことにはならないでしょう。また、「継続審議」とは要するに、 「先送り」ということでしょう。


皆さんは日本のこの現象をどう考えますか。私は日本社会が「現行社会(20世紀型社会)」の維持に精一杯で、「21世紀の新しい社会である持続可能な社会」に向けた行動がほとんど無きに等しい状況にあるのだと思います。

20世紀の社会と21世紀の社会は質的に異なることを政策担当者や政治家は意識し、行動に移さなければなりません。ちなみに、スウェーデンは21世紀を迎えるにあたって10年かけて環境関連法の見直しを行い、21世紀の新しい社会の構築のために「環境法典(Environmentl Code)」(1998年成立、99年1月1日施行)を成立させたのです。



関連記事

混迷する日本② 臨時国会閉会 21世紀の新しい社会を作る法律ができない(2008-01-16)

混迷する日本⑨ 「持続可能な社会」への法体系が未整備な日本、環境分野も(2008-01-23)

21世紀前半にめざすべき「持続可能な社会」の構築への法体系が未熟な日本(2007-12-19)


もう一つのスウェーデンに学べ② 予算編成の新しいシステム

2008-12-28 12:35:13 | 政治/行政/地方分権
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昨日のブログで、神野直彦さんが「スウェーデンの年次報告書の作成」に触れ、このような作業が日本の地方財政の改善に役立つ、と提案されていることをご紹介しました。

これは私の認識では、下の図に示したように、スウェーデンが21世紀前半の社会を想定し、1996年に実施した「新しい予算編成システム」に関することだと思います。

そうであれば、12月16日のブログで取り上げた「危機の時代 どうする日本」という中央公論(2009年1月号)の特集記事に「スウェーデン型社会という解答」 をお書きになった藤井 威さんの著作「スウェーデンスペシャル Ⅰ 高福祉高負担政策の背景と現状」(新評論 2002年6月10日 発行)のp146~149にかけて、このことが「(2)予算プロセスの改革」と題して簡潔にまとめられておりますので、その部分をご紹介します。



関連記事

財政再建に成功したスウェーデン①(2007-08-11) 

財政再建に成功したスウェーデン②(2007-08-12)

もう1つのスウェーデンに学べ 「地方財政の進路選ぶ地図」

2008-12-27 13:05:12 | 政治/行政/地方分権
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私は2006年2月に 『スウェーデンに学ぶ持続可能な社会-安心と安全の国づくりとは何か』(朝日新聞社 朝日選書 792) を上梓しました。そして、この本の「おわりに」で、次のように書きました。


「スウェーデンをまねしろ!」というのが本書のメッセージではありません。21世紀のグローバルな市場経済の荒海を、先頭を切って進む「スウェーデン号」の「行く先」と「操船術」を真剣に検証してほしいというのが、本書を書いた第1の目的です。国際社会の動きにたえず振り回されている感がある日本の「21世紀前半のビジョンづくり」のために――。スウェーデン号は精巧なコンパス(科学者の合意)と強力なエンジン(政治家主導の政府)を搭載した新造船で、最新の海図(自然科学的知見)をたよりに、みごとな操船術(社会科学的知見と実現のための政策)を駆使して、最終目的地である「緑の福祉国家」をめざします。

1996年9月17日、乗員・乗客884万人を乗せたスウェーデン号は、「21世紀の安心と安全と希望」を求めて周到な準備のもとに目的地である「緑の福祉国家」へ向けて出港し、現在、順調に航行を続けています。 航行中予期せぬ難問に遭遇し、場合によってはグローバル化の荒波に呑み込まれ、沈没してしまうかもしれませんが、順調に行けば、目的地に到着するのは2025年頃とされています。

人類の歴史のなかで私たちが初めて直面する「少子・高齢化問題」や「環境問題」への対応に、「共通のコンパスと最新の海図」がないまま、国民が国の将来を憂い、不安と焦燥感からそれぞれの立場で「できることから始める」のはたいへん危険です。よかれと思ってやったことが、全体として、経済学者がいう「合成の誤謬」を招きかねないからです。


この「あとがき」の中で、航行中予期せぬ難問に遭遇し、場合によってはグローバル化の荒波に呑み込まれて、沈没してしまうかもしれませんがと書きました。現在進行中の「米国発の金融危機に端を発したグローバル経済の危機」 (マスメディアでは“100年に一度の経済危機”とか“未曾有の経済危機”などと、最大級の表現が使われています)は、まさにここで言う「予期せぬ難問」と言ってよいでしょう。

「精巧なコンパスと最新の海図」を装備し、強力なエンジンを搭載した新造船「スウェーデン号」がこの大難関をどのように乗り切るか、そのみごとな操船術によって、目標値である「緑の福祉国家」に到達できるだろうとは思いますが、底知れぬ「津波」のエネルギーの前に不安も多いにあります。


昨日の日本経済新聞が22~26ページにわたって全面広告の形で「自治体公会計ディスクロージャー広告特集」を組んでいます。26ページには「08年度公会計改革首長部会・研究部会報告」と題して「自治体アニュアルリポートのあり方を議論」という記事があります。この公会計改革研究会の座長は東京大学教授の神野直彦さんです。



この記事の22ページに、神野直彦さんの「地方財政の進路選ぶ地図 スウェーデンに学べ」があります。スウェーデンは地方自治の分野でも世界のリーダーです。


神野さんがおっしゃる「スウェーデンに学べ」とは私の理解では、スウェーデンの21世紀前半のビジョンである「緑の福祉国家」の社会的側面の進化を意味しています。このことについては、明日、説明を加えたいと考えています。 

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「エコロジカルに持続可能な社会」(緑の福祉国家)の3つの側面(2008-12-23)

変革 米国に到来、 Change has come to America.

2008-11-06 14:22:38 | 政治/行政/地方分権
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このブログで私が主張してきた「政治が決めるこれらかの50年」も、オバマ米次期大統領の登場によって、いよいよ現実味を帯びてきました。



スウェーデンは環境問題を、人間社会を支えている「自然」に生じた大問題と考えてきました。

ですから、人間を大切にする「福祉国家」のままでは、環境問題には耐えられないことに気づいたのです。 そこで、人間を大切にする「福祉国家」を、人間と環境の両方を大切にする「緑の福祉国家」へ転換していこうとしています。



12年前の1996年9月17日、スウェーデンのペーション首相(当時)は、国会での施政方針演説で、つぎのような主旨のビジョンを語っています。

XXXXX
スウェーデンは「生態学的に持続可能性を持った国」をつくる推進力となり、そのモデルとなろう。人間と環境の両方を大切にする「緑の福祉国家」へ転換なくしては、今後の社会の繁栄はあり得ないものである。
XXXXX


この演説は、「福祉国家」スウェーデンを4半世紀(25年)かけて「エコロジカルに持続可能な社会(緑の福祉国家)」に変える決意を述べた初めての画期的な演説です。これまで長年にわたって前提としてきた20世紀型の「経済の持続的な拡大」との訣別を宣言している、と見ることも可能でしょう。そして、その成果はすでにこのブログでも紹介してきました。

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5月11日のシンポジウムから(2008-06-08)

「希望の船出」から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・(PDF)(2008-04-25) 

「将来不安」こそ、政治の力で解消すべき最大のターゲット(2007-06-23)

★政治が決めるこれからの50年(2007-01-05)



陰りを見せ始めた人類史上最強の経済大国「米国」にも、新しい指導者が誕生しました。次期大統領バラク・オバマ氏の主張は「Change(変革)」です。

Change has come to America.

Yes, we can.

この絶妙なフレーズに加えて、まず、オバマ氏の大統領選挙「勝利演説」の要旨を、続いて、これまた素晴らしいマケイン氏の「敗北演説」の要旨をご覧ください。



両氏の演説は実に感動的で、期待するに十分です。テレビを通じて語られた感動が、さらに文字を通じてしっかりととらえることができます。両氏の演説の全文(日本語および英語)をインターネット上で読んでおきましょう。

オバマ次期米大統領の勝利演説全文(和訳)「アメリカに変化がやってきた」 

オバマ次期米大統領の勝利演説全文(英文) 

マケイン候補敗北宣言全文 (和訳)「次の大統領に全力で協力する」 

マケイン候補敗北宣言全文(英文) 

日本の社会を構成する「主なプレーヤー」の問題点(4) 官僚と縦割り行政

2008-10-11 13:05:25 | 政治/行政/地方分権
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前回のブログ「日本の社会を構成する『主なプレーヤー』の問題点(3)」に対して、読者の方から次のような質問をいただきました。 

>縦割り行政を変えることが構造改革の第一歩であると先生は主張されていますが、マスコミなどを見ていても、それほど問題にされていないように見えます。僕自身もあまりその問題性がピンとこないのですが、理解を深められるようなポイントを教えていただきたいのですが。


私は20年以上前から、スウェーデン(政治主導の議会制民主主義)と日本(官僚主導の議会制民主主義?)の行政組織に基づく「国家の意思決定の相違」を指摘してきました。スウェーデンは「国家目標や重要な政策の達成のために各省庁をはじめとする行政組織をいとも簡単に政治的に統廃合や新設、改編を行いますが、日本では大変な困難を伴います。たとえば、このブログ内では、次の関連記事をご覧ください


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「環境省」から「持続可能な開発省」へ、そして2年後、再び「環境省」へ(2007-01-08)

環境基本法成立から14年 不十分なので、このままでは私は反対だ!(2007-12-07)



次の2つの図を比較検討してみてください。最初の図は前回のブログで掲載したものですが、再掲します。


そして次の図をご覧ください。

2004年6月1日付の朝日新聞は、「ガス削減議論足踏み」という大きな見出しを掲げて、「8審議会、調整がカギ」と報じています。8つの審議会の背景には、内閣府、国土交通省、環境省、経済産業省、農水省、総務省のそれぞれの思惑がからんでおり、「京都議定書」の否定論まで取り沙汰されているそうです。そして、京都議定書から10年以上たった現在、実態は悪化することはあっても、一向に改善の方向に向かってはいません。

これらの状況はかねてより多くの人が指摘しつづけ、私も「 環境基本法案等に関する衆議院環境委員会公聴会(中央公聴会)」で指摘した「行政の縦割構造」の結果ではないでしょうか。

8つの審議会の調整がむずかしいのは、「行政の縦割構造」の問題に加えて、8つの審議会やそれらの審議会を構成している委員の間に、温暖化問題に対する基本的な共通認識が不十分なために足踏み状態が続いているのだと思います。

「行政の縦割構造」
は、20世紀のように、環境問題を想定していなかった「経済の持続的拡大」という国家目標のもとでは、たいへん有効に機能してきましたが、21世紀のように経済の方向を「拡大」から「適正化」へ向けて転換をせざるおえない状況では、ことごとく足かせとなります


この伝統的な「行政の縦割り構造」をそのままにして、いくら新しい政策を策定しても実効性が伴わないことは明らかでしょう。総ての現象はそれぞれにつながっているからです。それゆえに、構造改革の第一歩は「行政の縦割り構造」を変えることだと私は思います。

そして、「行政の縦割り構造」の弊害は

①国としての合意形成が十分にできないこと。 
このブログでも再三取り上げてきた環境分野における経産省と環境省の対立などはその具体的な実例です。
②難しい案件の「先延ばし(先送り)」と「骨抜き」

という形で顕在化してきます。

日本の社会を構成する「主なプレーヤー」の問題点(3) 経営者、政治家、そして官僚

2008-10-03 07:22:51 | 政治/行政/地方分権
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9月29日のブログで、15年前の作家の堺屋太一さんの「経営者、政治家そして官僚」に対する見方を紹介しました。まとめると次の図のようになります。


この堺屋さんの見方に賛同したコラムニストが1993年9月23日の日本経済新聞で、「とくに官僚15年という指摘は鋭い」として、官僚に苦言を呈しています。是非読んでみてください。


このブログで、あえて15年前のコラムを取り上げたのはここに書かれていることは15年前のコラムニストの主張であっても、私には今なお、2008年の10月3日現実のように見えるからです。皆さんのご感想はいかがでしたか。

もし、ご同意いただけるとしたら、「スウェーデンの判断基準」で環境・エネルギー分野をウオッチしてきた私には日本の現実は、経営者・政治家・官僚の“三位一体”で、国際社会の大きな変化の中で15年間足踏みを続けてきたか、あるいは、誤った方向に踏み出してしまったか、もしかするとやや後退してしまったのかもしれないという懸念があります。

次の図をご覧ください。


ここに示されている状況は6年前の2002年の状況ですが、それよりほぼ10年前に上のコラムニストが書いた「官僚に対する苦言」の状況とほとんど変わりませんし、6年後の2008年の今現在の状況ともほとんど同じだと私には思えます。つまり、日本の政治・行政システムはほぼ15年間、現状維持(この場合は15年前の状況を維持)を続けてきたといえるのではないでしょうか。

次の図は、2000年に都庁の有志によるある研究会で私の講演の後、当時の管理職から出てきた発言です。私は8年後の今でも、この発言は的を射ていると思います。いかがですか。

再び、政治家に戻りましょう。堺屋さんは「政治家は10年、実際の世の中の変化から遅れるものだ」とおっしゃっておられます。
次の図は7年前の2001年に中西輝政・京都大学教授が書いた論文に書かれている教授の「日本の政党に対するお考え」と私の「認識」を比較したものです。私も中西さんと同じような印象を持っています。



そして、今日最後の図は「成長論しか言えない経済学界」の話です。コメントは必要ないでしょう。


9月29日の所信表明演説の「就任に当たって」の最後の部分で、麻生・新首相は次のように述べています。

X X X X X
・・・・・
わたしは、悲観しません。
わたしは、日本と日本人の底力に、一点の疑問も抱いたことがありません。時代は、内外の政治と経済において、その変化に奔流の勢いを呈するが如くであります。しかし、わたしは、変化を乗り切って大きく脱皮する日本人の力を、どこまでも信じて疑いません。そしてわたしは、決して逃げません。
・・・・・X X X X X

私はこの30年間、特に1990年以降、日本の経営者、政治、官僚、そして日本人の環境問題やエネルギー問題に対する考え方を中心に、「日本の経済成長」という概念にさまざまな疑問と懸念を感じ、その一端をこのブログに書いてきました。私の考え方が杞憂であれば幸いです。

混迷する日本⑮ 国民生活の混乱回避法案

2008-01-29 20:40:56 | 政治/行政/地方分権
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私はこれまでに、「日本は21世紀前半社会に向けた法体系が未整備だ」と言ってきましたが、いま議論となっている3月末に期限切れを迎える「ガソリン税の暫定税率」などを5月末まで2か月延長する議論を目の当たりにしますと、この国はいろいろな議論はしているけれども、やはり「21世紀の社会を20世紀の延長線上で考えている」としか考えられません。

ですから、21世紀の社会を意識した大幅な法体系の変更は考えられず、必要に応じて新しい法律をつくることはあっても、多くの場合は既存の法律の改正にとどまることになります。

今回の「国民生活の混乱回避法案(いわゆるつなぎ法案)」はその発想といい、法の内容といい、法整備の準備行動などまさに、20世紀の状況の維持ということにほかなりません。



関連記事

混迷する日本⑨ 「持続可能な社会」の構築への法体系が未整備な日本、環境分野も(08-01-23)

混迷する日本② 臨時国会閉幕 21世紀の新しい社会をつくる法律ができない(08-01-16)

21世紀にめざすべき「持続可能な社会」の構築への法体系が未整備な日(07-12-19)


ここでも、「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則が有効であることはいうまでもありません。



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混迷する日本⑦ 「日本はもはや経済一流」とは呼べない、太田弘子・経済財政担当相

2008-01-21 16:56:06 | 政治/行政/地方分権
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一昨日のブログで、福田首相の施政方針演説をとりあげました。昨日は福田首相の昨年10月1日の所信表明演説と今年1月18日に行われた施政方針演説を比較して、私の関心事である環境・エネルギー分野で、わずか4か月足らずの間に大きな変化があったことを指摘しました。所信表明演説と施政方針演説の位置づけについては、次の図をご覧ください。


首相が行うのが施政方針演説、続いて財務相が行うのが財務演説、外相が行うのが外交演説、経済財政担当相が行うのが経済演説、そして、これらを合わせて「政府4演説」というのだそうです。1月18日に召集された第169回通常国会では政府4演説が行われましたが、同日の朝日新聞には首相の施政方針演説(全文)と財政相の財務演説(要旨)、外相の外交演説(要旨)が掲載されておりました。掲載されていた財務演説(要旨)と外交演説(要旨)は次の通りです。

経済財政担当相による経済演説は掲載されておりませんでしたが、1月19日の朝日新聞が次のような興味深い記事を掲げています。


関連記事

日本の2006年の名目GDP:世界の10%を割る(07-12-28) 

日本の一人当たりGDP OECD30カ国中18位、そして・・・・・(07-12-27)

この記事に対する私の感想は、何をいまさらという感じがします。今回の財政演説では、財務相は「主要先進国の中で最悪の水準となっている」と語っていますが、8年前の2000年の経済白書は「現下の最大の課題は巨額に達した財政赤字で、持続可能とは言えない」と述べ、政府として財政が破たん状態に近いことを初めて公式に認めたと報じられていたからです。

この経済白書は堺屋太一さんが経済企画庁長官だった時の経済白書ですから、そのあとを引き継いだ竹中平蔵・前経済財政担当相の任期中に事態が徐々に悪化していたことはまちがいありません。今回の財務演説では「11年度における国・地方の基礎的財政収支の黒字化」について述べられていますが、この件も実現が危ぶまれています

最近の日本は、経済も、政治も、社会も、そして環境も、「偽」という文字がちらつくような印象をぬぐい切れません。


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