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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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混迷する日本⑥ 福田首相の変心? 「持続可能社会」から「低炭素社会」へ転換

2008-01-20 11:50:45 | 政治/行政/地方分権
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昨日のブログは少々わかりにくかったかもしれません。そこで、今日は改めて昨日のブログでお伝えしたかったことを、「福田首相の変心?」と題してもう一度おさらいをしておきます。

次の図の左は福田首相が安倍前首相を引き継いだ時に行った所信表明演説(2007年10月1日)です。右は福田首相が今国会の冒頭に行った施政方針演説(2008年1月18日)です。


           下の図を拡大する              下の図を拡大する

私が皆さんにお伝えし、考えていただきたいのは2つの演説の赤枠で囲った部分の相違です。次の2つの図をご覧ください。上の図は2007年10月1日の所信表明演説の赤枠で囲った部分です。下の図は2008年1月18日の施政方針演説の赤枠で囲った部分です。



上の2つの拡大図を比較すると、わずか4か月足らずの間に「持続可能社会」がなくなって、「低炭素社会」が登場していることがお分かりいただけるでしょう。そして、次の図をご覧ください。この図は昨年5月29日に、中央環境審議会21世紀環境立国戦略特別部会が提言した概念図です


日本は現在の「持続不可能な社会」を「持続可能な社会」へ転換していかなければなりません。ですから、この図を私の環境論からあえて好意的に解釈すれば、 「持続可能な社会」が21世紀にめざすべき社会であって、持続可能な社会低炭素社会的側面(地球温暖化への対応のために化石燃料の消費量を極力抑えた社会)、循環型社会的側面(廃棄物の排出が少ない社会)、そして、自然共生社会的側面(自然が豊かな生産力を維持している社会)の3つの側面のからなっていると解釈すべきなのです。

そのように理解すれば、福田首相の「低炭素社会」持続可能な社会の一成分である低炭素社会的側面に重点をおくということになります。福田首相は「循環型社会や自然共生型社会の側面はすでにこれまでに手がつけられている、だから、低炭素社会の側面は自分がやらなければいけない」とお考えなのかも知れませんね。あるいは、G8の洞爺湖サミットが半年後に迫っているので、とにかくこの「低炭素社会」という課題に絞ろうということかもしれません。

でも私には、このような発想で「持続可能な社会」が構築されるとは思えません。「持続可能な社会は3つの側面を持っている、だから、それぞれ3つの側面が完成すれば、持続可能な社会が完成する」という考えは20世紀の伝統的な考えであるフォアキャスト的な考え方です。21世紀に有効なバックキャスト的な考え方では、先に「持続可能な社会の望ましい姿」を描きます。そして、望ましい姿を描いたら、それを実現するために「低炭素社会」の側面はどうするべきか、つまり、どのようなエネルギー体系に変えなければならないのか、「循環型社会」の側面は、つまり、生産物はすべて廃棄物になるのですからどのような産業構造に変えなければならないのか、そして、「自然共生社会」の側面は、つまり、どのような生態系を維持すれば私たちの生活の安全と安心が守られるのかを考えることになります。

このようにフォアキャスト的発想でつくる「持続可能な社会」とバックキャスト的発想でつくる「持続可能な社会」とはまったく完成図が異なるはずです。フォアキャストでつくった「持続可能な社会」は、その意図するところと違って、「持続不可能な社会」である可能性が高いことになるかもしれません。

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混迷する日本⑤ 福田首相の施政方針演説: 「持続可能社会」はどこへ行ったのか?

2008-01-19 18:52:46 | 政治/行政/地方分権
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昨日、私は福田首相の施政方針演説をテレビで注意深く聞きました。首相が21世紀のキーワードである「あの言葉」を何回とり上げ、どのような文脈で説明するかを期待しながら・・・・

ところが、私の期待はまったく裏切られ、この演説の中でこの言葉は1回も聞かれませんでした。聞き洩らしたのかと思い、新聞で確認するとあろうことか一言も使われていないことがわかりました。その代り、異なる概念の言葉が5回も使われていました。私が期待した言葉というのは「持続可能(な)社会」という言葉で、概念が異なる言葉とは「低炭素社会」という言葉です。

そこで、今日もまた、私の環境論の根底にある「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則について、勉強することにしましょう。教材はもちろん昨日の朝日新聞夕刊に掲載された首相の施政方針演説(全文)です。



赤の網をかけた部分は環境問題に関する部分(「低炭素社会への転換」の部分は後で拡大して示します)です。小泉首相の施政方針演説所信表明演説、そして安倍首相の施政方針演説所信表明演説の中の「環境やエネルギー」に比べると、今回の福田首相の施政方針演説では「環境やエネルギー」の登場する頻度が高いことがわかります。水色の網をかけた部分は「持続可能」という言葉を示しています。「持続可能」という言葉は「社会保障制度の持続性」と「持続的な経済成長」というように、限定的に使われています。青の網をかけた部分が「低炭素社会」という言葉です。5回出てきます。私が期待していた21世紀にめざすべき新しい社会の方向性としての「持続可能(な)社会」という言葉はゼロ福田首相の10月1日の所信表明演説では4回も登場したというのに・・・・


次に「低炭素社会への転換」の部分を拡大します。

最初に赤の網をかけた部分「地球環境問題は21世紀の人類にとって最も深刻な課題です」とあり、私の基本認識と一致します。私の知る限り、このように述べたのは公式の演説では福田首相が初めてではないでしょうか。「我が国が有する世界最高水準の環境関連技術」という言葉には異論がありますが、青の網を掛けましたように、4か所に「低炭素社会」という言葉が出てきます。しかし、「低炭素社会とはどのようなものなのか、どうすれば実現できるのかなどをわかりやすくお示しできるよう、有識者による環境問題に関する懇談会を開催することとしています」と述べていますので、「低炭素社会」という極めて新しい概念がまだ出来上がっていないことを示唆しています。

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皆さんはお気づきになったでしょうか。新聞一面を覆い尽くすおよそ1万2000字のこの演説の中に一言も出てこなかったのは「持続可能な社会」だけではありません。日本のマスメディアや環境NPOが大好きな「循環型社会」という言葉もまったく出てこないのです。

次の図をご覧ください。

福田首相はこのような図があるのをご存知ないのでしょうか。福田首相の施政方針演説の草案作成にかかわった側近の政治家、官僚、学者はいかがでしょう。10月1日の福田首相の所信表明演説で、福田首相は「持続可能社会」を4回も繰り返しました。この図にははっきりと、 「21世紀環境立国戦略に示された統合的取り組みの概念」 (私はこの図の表現がよくないと思います。図だけが一人歩きしますと誤解を招きそうな気がします)とあります。 

日本は現在の「持続不可能な社会」を「持続可能な社会」へ転換していかなければなりません。ですから、この図を私の環境論からあえて好意的に解釈すれば、 「持続可能な社会」が21世紀にめざすべき社会であって、持続可能な社会は低炭素社会的側面(地球温暖化への対応のために化石燃料の消費量を抑えた社会)とか循環型社会的側面(廃棄物の排出が少ない社会)とか自然共生社会的側面(自然が豊かな社会)の3つの側面のからなっていると解釈すべきなのです。そのように理解すれば、福田首相の「低炭素社会」は持続可能な社会の一成分である低炭素社会的側面に重点をおくということになります。福田首相は「循環型社会や自然共生型社会の側面はすでにこれまでに手がつけられている、だから、低炭素社会の側面は自分がやらなければいけない」とお考えなのかも知れませんね。

でも私には、このような発想で「持続可能な社会」が構築されるとは思えません。「持続可能な社会は3つの側面を持っている、だから、それぞれ3つの側面が完成すれば、持続可能な社会が完成する」という考えは20世紀の伝統的な考えであるフォアキャスト的な考え方です。21世紀に有効なバックキャスト的な考え方では、先に「持続可能な社会の望ましい姿」を描きます。そして、望ましい姿を描いたら、それを実現するために「低炭素社会」の側面はどうするべきか、つまり、どのようなエネルギー体系に変えなければならないのか、「循環型社会」の側面は、つまり、生産物はすべて廃棄物になるのですからどのような産業構造に変えなければならないのか、そして、「自然共生社会」の側面は、つまり、どのような生態系を維持すれば私たちの生活の安全と安心が守られるのかを考えることになります。

このようにフォアキャスト的発想でつくる「持続可能な社会」とバックキャスト的発想でつくる「持続可能な社会」とはまったく完成図が異なるはずです。フォアキャストでつくった「持続可能な社会」は、その意図するところと違って、「持続不可能な社会」である可能性が高いことになるかもしれません。

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21世紀環境立国戦略の策定に向けた提言(平成19年5月29日 中央環境審議会21世紀環境立国戦略特別部会)

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福田首相は、安倍前首相が掲げた「21世紀環境立国戦略」はしばらく棚上げ、あるいは放り出してしまったのでしょうか。私にはこの国はますます混乱するばかりに思えてなりません。皆さんはいかがですか。




昨日の福田首相の施政方針演説に示された決断が将来の日本の状況を原則的に決めてしまうというのが、私の環境論の経験則です。21日から始まる国会の代表質問で、与野党の質問者が昨年10月1日の福田首相の所信表明演説と今回の施政方針演説の相違を詰めることができるかどうかが私にとっては関心のあるところですが、与野党の関心は別のところにあるのでしょう。
 


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混迷する日本②  臨時国会閉会 21世紀の新しい社会をつくる法律ができない

2008-01-16 13:16:46 | 政治/行政/地方分権
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昨日のブログで、2006年2月に上梓した「スウェーデンに学ぶ『持続可能な社会』 安心と安全な国づくりとは何か」(朝日新聞社 朝日選書792)の「第5章 経済成長はいつまで持続可能なのか」を「今年2008のメイン・テーマ」として考えていくことにします、と書きました。今日はもう一つ「今年2008のメイン・テーマ」に加えることにしました。それは私の本の「第6章 予防志向の国」という視点です。第6章の要約で次のように書きました。

xxxxx
スウェーデンと日本の違いは、 「予防志向の国」と「治療志向の国」、言い換えれば、「政策の国」「対策の国」といえるだろう。スウェーデンは公的な力で「福祉国家」をつくりあげた国だから、社会全体のコストをいかに低く抑えるかが、つねに政治の重要課題であった。そこで、政策の力点は「予防」に重点が置かれ、「教育」に力が入ることになる。

一方、これまでの日本は、目先のコストはたいへん気にするが、社会全体のコストにはあまり関心がなかったようである。90年代後半になって既存の社会制度からつぎつぎに発生する膨大な社会コストの「治療」に、日本はいま、追い立てられている。 
xxxxx

まず、次の図をご覧ください。

私のこの認識を具体的に検証してみましょう。昨日、1月15日に第168臨時国会が128日間の会期を終え、閉会しました。この国会で政府提出の14本の法案と議員提出の12本の法案が可決成立しました。上の図の私の主張を支持する絶好の資料が、今日の読売新聞に掲載されています。次の2つの記事をご覧ください。



なんと成立した26本の法律のうち、20本が改正法ではありませんか。新法の6法のどれをとっても20世紀の日本を21世紀の新しい日本に導いていく目的の法はありません。

大変な時間を費やした「新テロ対策特別措置法」はまさに現状維持のための法律ですし、「薬害C型肝炎被害者救済法」は典型的な治療的志向な法律です。その他の4本の法律も現状維持の法律の域をでません。

20世紀の社会と21世紀の社会は質的に異なることを政策担当者や政治家は意識し、行動に移さなければなりません。ちなみに、スウェーデンは21世紀を迎えるにあたって10年かけて環境関連法の見直しを行い、21世紀の新しい社会の構築のために「環境法典(Environmentl Code)」(1998年成立、99年1月1日施行)を成立させたのです。


関連記事
 
21世紀前半にめざすべき「持続可能な社会」の構築への法体系未整備な日本(07-12-19)



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国と地方の役割分担②  主役の変更:国から地方へ

2007-12-18 07:48:30 | 政治/行政/地方分権


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スウェーデンの環境政策が変化しはじめたのは、実は80年代に入ってからのことです。それ以前は、環境政策の主な目標は、地域と地方に影響を及ぼす主な固定発生源からの排出をモニタリングし、汚染物質の排出量を低減することが中心でした。それであっても当時としては先進的で、いくつかのスウェーデンらしい方法はあったものの、具体的な対応策では日本の環境対策とそれほど違いはありませんでした。

80年代後半になりますと、環境政策は交通、農業、製品、原料などの日常の経済活動から拡散された排出に対応するようにシフトしてきました。

さらに90年代に入りますと「持続可能な開発」、さらには「持続可能な社会」の実現をめざして、問題が起こる前に発生源で問題を解決する手段(予防原則)を見出すことにいっそうの力点を置く政策がとられるようになってきました。

20世紀の国づくりでは想定外であった「環境問題への対応」が、 「21世紀の国づくりの大前提」としてはっきり意識されるようになってきたわけです。

90年以前の環境問題への対応は主として“トップ・ダウン”の観点から行われてきましたが、今後はおそらく国内では“ボトム・アップ”の観点からの取組みが一層重要になるでしょう。その理由は大型の固定発生源からの環境汚染が現在では少なくなり、代わって、私たちのライフスタイルを変え、天然資源の浪費を抑えることが益々重要になってきたからです。

この変化は「個人の役割」を受け身から積極的な役割に変えると共に、「市町村の役割」を増大させることになるでしょう。持続可能な社会の実現には、国内政策についてはこれまでの役者(国会、中央政府)から、これからの役者(地方自治体、特に市町村および住民、特に個人)に役割の重要さが移行してきます。

この移行をスムーズにするために「地方主権」の更なる強化が必須です。このような明確な認識から、スウェーデンでは1992年1月に「新地方自治法」が成立し、地方自治体の権限がさらに強化され、市町村は必要とする「行政局/庁」を自由に設置することができるようになりました。 

エネルギー資源の制約から、将来、「再生可能な自然エネルギー」の導入が非常に期待されていますが、その場合にも、自治体の役割は特に重要となります。21世紀型のエネルギー・システムの中心となると考えられる再生可能な自然エネルギーは本質的に分散型エネルギー・システムに適したものだからです。

96年末までに全国288のすべてのコミューン(市町村)が、持続可能な開発をめざす行動計画「ローカル・アジェンダ 21」を策定しました。ロカール・アジェンダ 21というのは1992年の「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)で採択された「地方自治体向けの行動計画」です。スウェーデンは地球サミットで採択された合意を忠実に行動に移しています。

北欧のエネルギー事情に詳しい飯田哲也さんの著書「北欧のエネルギーデモクラシー」(新評論 2000年3月15日発行)の29ページに掲載の図をお借りします。


国の政策は地方自治体と住民の協力により、具体化されます。地方自治体と住民の協力こそが現実的な問題解決の基本であるという考えです。                                                    

まさに、環境問題に関心のある方なら大好きな
Think globally, Act locally
の標語どおりです。



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国と地方の役割分担①

2007-12-17 23:40:24 | 政治/行政/地方分権


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スウェーデンは少ない人口(2007年10月31日現在 917万人)にもかかわらず、世界で最も非中央集権的な基礎自治体(288のコミューン=市町村)があり、日常生活に密着した各種の責任を担っています。スウェーデンには環境問題のみならず、ほかの多くの問題の解決に、地方の自主的決定、独立が必要だとする確固たる認識があります。このような認識に基づいて、スウェーデンでは、国、地方の役割分担がはっきりしています。

地方自治体への権限移譲は環境問題を含む多くの分野でつぎつぎに導入されてきましたが、これはスウェーデンの伝統的な「個人の民主的な権利」を確保すると同時にスウェーデンの基本的人権を構成する「自然享受権」を保障するためのものです。



この図は訓覇法子さんの著書「スウェーデン人はいま幸せか」(NHKブックス 平成3年4月20日 発行)の55ページに掲載されている図をお借りしたものです。スウェーデンでは、1992年に「新地方自治法」が成立していますので、この法律がこの図に示された「国と地方の役割分担」にどの程度影響を与えたかは、定かではありません。しかし、日本が長い時間かけて議論し、いまだに解決に至っていない「国と地方自治体の役割分担」が、スウェーデンではすでに15年以上前に明確になっていたという証にはなるでしょう。 


福祉問題の専門家、山井和則衆議院議員と斎藤弥生さんによる『スウェーデン発 高齢社会と地方分権――福祉の主役は市町村』(ミネルヴァ書房、1994年)に、スウェーデンの中央政府と地方自治体との関係をたいへんわかりやすく説明した、「ダイヤモンドモデル」と「砂時計モデル」があります。 

ダイヤモンドモデルは、広域行政(州レベル)が最も大きな権限を持っています。ヨーロッパでは、スイスやドイツがこの型に当たります。スウェーデンは、砂時計モデルに最も近い国です。



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「環境基本法」成立から14年⑪ 中央公聴会での質疑応答を終えた私の感想

2007-12-16 04:35:53 | 政治/行政/地方分権


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14年前の中央公聴会で私とバトル(?)を繰り広げた柳田委員(当時の民社党衆議院議員、もと鉄鋼会社のサラリーマンと議録で述べています)の主張と私の主張のどちらに合理性があったかは、もう10年前に決着がついています。 

私の懸念は10年前にすでに現実の問題となっていたのです。中央公聴会で「このような新法をつくるよりもまずなすべきは行政の縦割りにメスを入れるべきだ」とした私の主張を再確認する事態が生じていたのです。次の図をご覧下さい。説明は不要でしょう。


中央公聴会の公述人は私のほかに、清水汪さん(農林中金総合研究所理事長)、安田八十五さん(筑波大学社会工学系助教授)、内田公三さん(経団連常務理事)、猿田勝美さん(神奈川大学外国学部教授)、梶山正三さん(弁護士)、篠原義仁さん(弁護士)、高木邦雄さん(尚美学園短期大学教授)の7名でした。

この中央公聴会で「政府提出の環境基本法案」に賛成の立場から意見を述べた環境庁OBの清水汪さんは「私は、中央公害対策審議会の委員を仰せつかっておりますが、自然環境保全審議会と合同で新しい『環境基本法制のあり方について』という答申づくりに参加した者の一人として……」と前置きし、この法案に対して次のような意見陳述を行いました。

X X X X X 
……このような観点から見ましたとき、政府案は、審議会の答申を最大限尊重し、地球サミットの成果を念頭に置いて、これまでの環境政策の経験を踏まえ、その継続性を保持するとともに、新たな課題に十分答えることができる内容となっており、適切なものであると考えます。 …… 
X X X X X

同じ資料を参考にし、しかも、ご自身がおっしゃるように環境庁のOBとして、また、中央公害対策審議会の委員として、この法案の策定までの経過を御覧になられてきた方の認識と理解が、これだけ私と異なるとは私にとってこの公聴会への出席は新鮮な驚きでした。 


この公聴会に対する もう一つの驚きは会の冒頭の委員長の挨拶です。議録から原文のまま引用します。   

○原田委員長 これより会議を開きます。内閣提出、環境基本法案、内閣提出、環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関する 法律案及び馬場昇君外二名提出、環境基本法案の各案について公聴会を行います。   

この際、御出席の公述人の皆様に一言とご挨拶を申し上げます。公述人各位におかれましては、ご多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。各案に対するご意見を拝聴し、審査の参考にしたいと存じますので、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。   

なお、御意見は、清水公述人、安田公述人、内田公述人、小沢公述人の順序で、お一人十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。    
念のため申し上げますが、発言をする際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、公述人は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、まず、清水公述人にお願いいたします。 

型どおりの挨拶とはいえ、「公述人は委員に対して質疑をすることはできないことになっております」とはどういうことなのでしょうか? まさに一方交通です。文字通り、“公聴会”だからなのでしょうか? 議論のないところに、理解はありえません。 

関連資料
第126回国会 環境委員会公聴会 第1号(議事録全文)









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「環境基本法」成立から14年⑩  中央公聴会での質疑応答―その4:柳田議員とのバトル(?)

2007-12-15 07:26:56 | 政治/行政/地方分権


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○原田委員長 柳田稔君。

○柳田委員まず最初に、小沢公述人にお伺いをしたいのでありますけれども、「この法の制定により、環境問題が改善の方向に向かうとは到底考えられない。」だから反対だというふうな結論であります。

私は逆に、先生が望んでおるような、ここまでできれば、例えばスウェーデンの先ほど言った環境コードですか、までできればそれはすばらしいものかもわかりませんけれども、現段階でこの環境基本法をつくっていって、さらに、先生も書いてあるとおり「法律には国民を間接的に教育してしまう効果がある」ということですから、国としてもこういうふうに環境に対して大変関心を持って前に進めるんだ、そういうふうなことも出てくるんではないかと思うので、私は、なぜ反対されるのか、まだ少しわからないのでありますけれども、いかがでしょうか。

○小沢公述人 反対というか、あるよりない方がいいかと問われれば私はあった方がいいという程度の話でして、つまり実効があるかどうかという点を考えたときに、もう少し環境問題ということを真剣に考えてやればもっと別なものができるであろう、こういうふうに私は思うわけです。

それはなぜかといいますと、今私が聞いている範囲では、この法律ができたときになくなるものは何かというと、公害対策基本法がなくなる、それで、そのほかのものは残るというわけですね。つまり、公害対策基本法のもとでできた大気汚染防止法とか水質汚濁防止法とか、そうゆうたぐいは残るわけです。そうしますと、過去の行政の対応と、つまり法律というのは生きているわけですから、変わらないではないか。もし許認可事項をやるとしても、今までの大気汚染防止法に沿ってやるのでしょうし、水質汚濁防止法に沿ってやるわけです。あるいは廃棄物もそうだと思います

そうだとすると、私の認識では、二十年前よりも今の環境の状態は一部のものを除いて悪くなっている、こうゆうふうに考えているわけです。ですから、従来と同じ法律が生きていて、それを早く変えるというなら別ですよ。早く変えるということがあれば、そうですけれども、既存の法律として生き続け、それに基づいて行政が判断をする、アセスメントもそうです、そういうことになれば、汚染物質はふえてしまうじゃないか、そういう意味で反対だと言うわけです。

 ○柳田議員 また、小沢先生に質問でありますけれども、基本法、これで環境を守るのだという理念を我々は打ち出すわけですね。これが国会で成立し、そして行政がこれに基づいて動き出す。となれば、ほかのいろいろな法律についても基本法にしたがって徐々に改正していかなければならない。理念も何もない、基本法も何もないのに改正しろというのは無理な問題で、まずこれをつくって、それをもとにしていろいろな法律も改正していこうというのが行政の手腕でもあるし、また、そうせざるを得ないとも思うのです。

だから、あるかないか問われればあった方がいい、私もそう思いますけれども、もっといろいろな面の具体策はこれから本格的にやろうということなので、まあ、反対とおっしゃらずに、まだまだ不十分であるという程度ぐらいかなと思うのですが、いかがでしょうか。

 ○小沢公述人 可及的速やかに成立してほしい、こういうふうに法律案には書いてございます。したがって、私はそれは反対だと言っているわけです。今おっしゃったように、こういうものができて徐々にというよりも、なるべく早い時期にほかの法律が変わっていくということが明確であれば、私はあえて反対は致しません。

ただ、私がこの際申し上げたいことは、現実問題を考えますと、こういう新法をつくるというよりももっと効力があるのは、いわゆる、行政の縦割りというところ、ここにメスを入れるべきだと私は思います。私は、環境問題は実は社会システムの問題だ、特に我が国を考えたときには社会システムの問題だということを基本的に考えております。

ここにも書きましたように、環境基本法をつくっても、それがほかの省庁が抱えている法律に影響を及ぼさないようであれば、これは意味がないと私は思う。なぜかといいますと、人間の活動すべてが実は環境の負荷にかかわるものであります。そういう認識に立てば私の主張していることは全然不思議ではないと思います。

 ○柳田委員 この基本法は多分いろいろな省庁にまたがります。だから、環境庁がどうのこうのという以上に縦割り行政が、これ一つとっても相当変わってくるのではないかという気もしますので、これを通していろいろな面で、これを基礎にして変えていこうという気持ちもありますので、小沢公述人には御理解賜ればと思います。 

次に安田先生にお尋ねしたいのであります。

○安田公述人 答弁(省略)○柳田委員 安田公述人への質問(省略)
○安田公述人 答弁(省略)
○柳田委員 内田公述人への質問(省略)
○内田公述人 答弁(省略)
○柳田委員 清水公述人への質問(省略)○清水公述人 答弁(省略)

○柳田委員 ちょうど時間になりました。大変いい御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げます。本当にどうもありがとうございました。

原田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
午後零時四十三分休憩

以下省略

さて、私の記憶が定かではないのですが、“間違っていたらごめんなさい”と居直って記憶をたどると、この「環境基本法案」は時間切れ(?)で廃案となり、次の国会に再提出され、可決成立しました。再提出された法案には「6月5日(?)を世界環境の日とする」という条文が「廃案となった環境基本法案」に追加されただけでした。

何のための公聴会であったのか、公述人の多数が法案に賛成の立場で臨んだ公聴会で「このままでは実効性に乏しい。エコロジーの視点からもうすこし考える必要がある」という理由で反対の意思表示をした私としては拍子抜けな気持ちでした。

あらためて、12月7日のブログ「環境基本法成立から14年② 不十分なので、このままでは私は反対だ!」 に掲げた新聞記事を掲載しておきます。






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「環境基本法」成立から14年⑨  中央公聴会での質疑応答―その3:情報公開、海外での企業の倫理規制

2007-12-14 10:03:01 | 政治/行政/地方分権


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○原田委員長 次に、寺前巌君。

○寺前委員 清水公述人、小沢公述人への質問(省略)
○清水公述人 答弁(省略)

○小沢公述人 情報の公開につきましては、先ほどお話ししましたように、スウェーデンの場合はもう二百年ぐらいの歴史があります。これは、先ほどお話ししましたように、国民が、自分たちのことは自分で決定したい、そのために、行政が一番情報を持っている訳ですから、とりたい、そういう非常に強い熱意が二百年以上前にあって、それが今社会に定着しているということであります。

スウェーデンでは、基本的には行政の持っている情報は公開されていて、ただし、民族関係とか、プライバシーに関するものとかあるいは安全保障に関するものについて、あるいはもう少し事例があったかもしれませんけれども、そういうものについて除かれている。原則的に公開されていて一部制限するものがある、そういう形であります。 

それから、水俣の話が出ましたけれども、私は、直接この水俣の話としてお話しするのではなくて、環境問題が起きた場合の日本とスウェーデンの情報公開の決定的な違いを一例挙げて申し上げたいと思います。 

これは、例えばダイオキシンのような国際的に環境に有害な物質というのが発見された場合に、スウェーデンでは、どこから出たかということを国民が非常に気にするわけです。そして、どこから出たかということがわかればそこに対策をすればいい、そうすれば安心できる、こういう風にスウェーデン人は考えるわけであります。

ところが、我が国の新聞報道を見ておりますと、ダイオキシンが出た、出た場所を公表すると国民があるいは市民が不安になる、だからやらないんだということが数年前の新聞に書いてありました。不安だから公開して、その所在を知って対策を政府が打つから安心していられると考えるのと、公開するといろいろ不安が出るという、これは考え方の違いであろうと思います。

○寺前委員 内田公述人への質問(省略)
○内田公述人 答弁(省略)
○寺前委員 清水公述人、安田公述人への質問(省略)
○清水公述人 答弁(省略)
○安田公述人 答弁(省略)
○寺前委員  清水公述人、小沢公述人への質問(省略)
○清水公述人 答弁(省略)

○小沢公述人 私は、それはできることだろうと思います。スウェーデンはほかの国に比べてそれがもう少しできるであろう、こういうふうに思うわけです。それはなぜかといいますと、スウェーデンという国は福祉国家という標題を掲げて、そして人の健康というもの、それから人権というものを国の中心に据えているわけです。   

ですから、自分の国の人間とそれから他国の人間との間にそれほど大きな差を認めていない。一般論ですけれども、もちろん例外はあると思いますけれども。そういう意味で、相対的ではありますけれども、自分の国の法律の中にしっかり人間というものを入れて、人間が大切なんだという視点に立てば、そういう法律ができるでしょうし、事態は変わると思います。

○寺前委員 終わります。
・・・・・明日へ続く






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「環境基本法」成立から14年⑧  中央公聴会での質疑応答―その2:環境教育、エネルギー政策

2007-12-13 06:18:50 | 政治/行政/地方分権
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○大野(由)委員 安田公述人への質問(省略)
○安田公述人 答弁(省略)

○大野(由)委員 では、小沢先生にも、スウェーデンの環境教育を例に引きながらお願いいたします。

○小沢公述人 私は、環境教育については一言言いたいことがあります。
それは、日本で今考えている環境教育というのはどうも目的的な環境教育だと思うわけです。重要な環境教育というのは、私たちが生きていくために何が必要なのかということを教えるのが教育だと思います。日本では教育を、環境教育、消費者教育、産業教育というふうにみんなぶつぶつに切ってやります。これは明らかに目的的なものであります。こういう環境教育はほとんど意味がない、私はこういうふうに考えます。 

先ほど私は法律に教育的効果があるというお話をいたしました。今日のこの議論を聞いていて、それをつくづく感じました。実は、今起きている環境問題なんというのはずっと昔から続いてきていることであります。それをたまたま私たちは、日本の公害対策基本法という法律で、公害はこういうものだというふうに思っていた。そうしたら、新しく地球環境が出てきた。ところが、スウェーデンでは公害なんというものはないわけですから、最初から環境ということが彼らの頭にあるわけです。つまり、日本では法律があったために、公害というものはこういうものだという認識ができちゃった、つまり、認識が遅かったということが原因だろうと私は思います。
 
それからぜひ見ていただきたいのは、この絵の中に「環境政策の策定手順」という図が書いてあります。この中に四角がたくさんあって、政府の下にいろいろな団体の名前が出ていますね。産業界とか労働組合とか、消費者団体とか。わかりますか、一番最後のページです。政策をどうやってつくるかということが書いてあります。

それで、ここの中に、これはたまたま環境政策ですけれども、スウェーデンの政府がつくった報告書はこういう利害を伴うところに必ず送られるわけです。そういたしますと、例えば環境の場合には、消費者団体のところにもレポートが来るし、労働組合のところにも環境のレポートが来るわけです。これがもし税制の政策の場合には、やはり労働組合に今度は税制がいく。そのように、国の政策を決めるときには、関連団体に必ず報告書がいくということになります。

そうしますと、例えば労働組合は、労働組合のことばかり考えるのではなくて、環境のことが来れば環境の勉強もする。税制の話が来れば税制の勉強もするということで、こういうシステムができているために、産業団体もトータルに勉強ができる、こういうことです。 

したがって私は、これも教育の一環だろうと思いますし、それから法律も教育の一環だろうと思うし、学校教育もそうだと思います。

○大野(由)委員 最後に小沢先生に、スウェーデンのエネルギー政策について伺いたいと思うのです。 
ご存じのように化石燃料は地球の温暖化という大変な弊害をもたらすし、水力発電も自然破壊になる。原子力発電も、温暖化の面ではクリーンと言われているわけですが、非常に廃棄物の問題等々がございます。スウェーデンは原子力発電を廃止する政策を一応打ち出しておりますが、現実にはどういう方向で今進んでいるのか、時間が余りございませんので、手短にお答えいただければと思います。

○小沢公述人 お答えいたします。 
スウェーデンは原子力発電で約半分の電気をつくっておりますし、水力で半分の電気をつくっております。それから、化石燃料では電気はほとんどなし、数%でございます。その中で原子力発電を二〇一〇年にゼロしよう、こういう目標で進んでおります。 

それはなぜかといいますと、一つは、将来原子力に負うた場合に果たして十分な電気が得られるか。つまり具体的に言いますと、プルトニウムにいかないとだめなわけです。しかし、プルトニウムを使った原子炉がうまくいくかどうか、スウェーデンはこれに疑問を持っております。したがって、原子力に依存しないエネルギー体系をつくろう。

それはなぜかといいますと、化石燃料も将来の資源の埋蔵量の関係から制限があるらしい。原子力については今のようなお話で、ちょっとスウェーデンは見込みを持っていない。そういうことになりますと、どうしても自然エネルギーを使ったようなエネルギー体系に変えなければいけない。原子力が二〇一〇年までに非常にうまく多分動くでしょうから、その動いている間にそちらにかける予算を再生可能なエネルギー体系の開発に向ける。そうして、エネルギー体系を今までの集中型から分散型のものに変えていく。こういう努力をしないと、持続可能な、開発のために必要なエネルギーが結局供給できなくなるおそれがある。こういう視点に立っているのだろうと思います。

○大野(由)委員 ありがとうございました。・・・・・明日に続く






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 「環境基本法」成立から14年⑦  中央公聴会での質疑応答―その1:環境計画、アセスメント、情報公開

2007-12-12 11:04:09 | 政治/行政/地方分権


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○高橋委員長代理 これより公述人に対する質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細田博之君。 
○細田委員 清水公述人、内田公述人への質問(省略)
○清水公述人 答弁(省略)
○内田公述人 答弁(省略)

○細田委員  最後に、小沢先生からも御反対の立場で、この法律の問題点をいろいろ書いたりまたおっしゃたわけですけれども、私はこう思うのです。一九六〇年代から七〇年代は、いわゆる排出基準であり、企業の責任であり、公害規制の問題ということが最大の問題であった。また八〇年代になりますと、やはり総合的な地域の問題としてアセスメントその他のアプローチを一生懸命やってきた

そして、九〇年代に入ると、グローバルな視点、国際協力の視点というふうに変わってきて、それらがいずれも必要なくなったというのではなくて、いわば発展的に議論が進んでくるということだと思います。

ですから、小沢さん がおっしゃっていることも今後の、例えばエコロジーの視点とかその先のことをおっしゃっているような気もしますから、この法案が一〇〇%完全でないという御指摘はよくわかるわけですけれども、この基本法というもの自体も、法律でございますし、時代の考え方を反映したということでございますから、その点は私どもは、この基本法が完全なものであるとして今後改正しないとか不磨の大典であるということでなくて、とりあえず現段階で見ると最善のものとしてまず国民に提起し、教育も行い、また関係の法制も整備し、国際的に協力する、こういうふうに私自身は思っております。

時間がなくなりましたから御答弁いただかなくて結構でございますけれども、所感を申し述べさせていただきます。どうもありがとうございました。

○高橋委員長代理 時崎雄司君。
○時崎委員 安田公述人への質問(省略)

[高橋委員長代理退席、委員長着席]

○安田公述人 答弁(省略)
○時崎委員 内田公述人への質問(省略)
○内田公述人 答弁(省略)
○時崎委員 清水公述人への質問(省略)
○清水公述人 答弁(省略)
○時崎委員 再度、清水公述人への質問(省略)
○清水公述人 答弁(省略)
○時崎委員 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

○原田委員長 大野由利子君。
○大野(由)委員 内田公述人、小沢公述人への質問(省略)
○内田公述人 答弁(省略) 

○大野(由)委員 では、小沢先生、お願いします。 

○小沢公述人 環境計画につきましては、私が最初にお話ししましたように、環境の保全という概念がこの資料からは私にはわかりませんので、それがどういうものかわからないというのが本音でございます。

それから、アセスメントにつきましては、私は日本のアセスメントを考えたときに、アセスメントをする項目というのは、既存の法律、例えば、公害関係の大気汚染防止法とかそういう法律が決めている汚染物質、それから条例が決めている汚染物質、つまり日本の法令の中にあるもので押さえているわけです。しかし、これでは極めて不十分だろうと私は思います。

なぜかといいますと、国が決めているアセスメントの項目というのは過去に健康被害等があって、それの治療のために決めたものでありますから、将来を考えなければいけないアセスメントには、ないよりはもちろんいいわけですけれども、十分かと言えば、私は不十分だろうと思います。

それから情報公開について言えば、これは環境のみならず、すべてについて情報公開が必要であろうと私は思います。ちなみに、スウェーデンの場合には、二百年以上前から情報公開があります。それはなぜかといいますと、いいか悪いかは別にして、国民がみずからのことはみずから決定したい、そのためには行政機関が持っている情報を公開すべしということがありまして、すでに二百年前から定着しております。 

差上げましたものの中に、大阪万博のスカンジナビア館の絵が出ております。これも実は、二十年前にこういうパビリオンをつくって、ここに「「プラス」と「マイナス」」と書いてありますが、産業活動、我々の活動が広まれば当然、プラス、いい面もあるけれども、マイナス、悪い面も出るよ、だからそのバランスをとりなさい、こういうことを言っているわけです。

つまり、スウェーデンの視点でいけば、地球環境とか公害という分け方はないわけです。彼らはずっと昔から環境と言うこと一本できました。たまたま日本は公害があり、それが今度は地球環境ということになっただけであって、これは私は、きょう一番最初に申し上げました、日本の法律の教育効果ではないかと思うわけであります。・・・・・明日に続く





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「環境基本法」成立から14年⑥  中央公聴会での意見陳述―その4(最終回):環境問題の本質

2007-12-11 07:47:11 | 政治/行政/地方分権


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私は、今提出されている法律については、もっともっと議論する必要があると思いますので、その議論をするときの多少材料になればと思いまして、この私の資料の後ろの方に幾つかの絵をたくさん載っけておきました。この中で言いたいことはたくさんありますけれども、環境への負荷というのについてちょっとお話をしたいと思います。 

今起こっている環境の問題の本当に重要な点は何かといいますと、私は、人体への負荷が高まる、こういうことだろうと思います。この「環境への人為的負荷」という題をつけた絵を見ていただくとわかりますけれども、環境には、交通だとか産業活動だとか農業だとかエネルギーの使用だとか、そういうものが負荷を与えております。そして、戦争こそ最大の環境問題だというのがスウェーデンの認識であります。そして、その負荷が大気とか水とか食物を通じて私たちの健康にはね返ってくる、こういう状況が環境問題の一番重要な点であります。

そして、それをもう少し具体的に書いたのが、その下の「人体への負荷」という絵でございます。私たちの人体には様々な負荷がかかっております。例えば、私たちはどう頑張っても、光を浴び、空気を吸い、水を飲み、動植物しか食べられない。我々人類の二百万年の歴史の中で、この機能は全然変わっていないわけです。しかし、この二百年ぐらいの科学技術の発達によって、汚染物質が大分環境に出てきて、それが我々に負荷を与えている、こういう認識がやはり必要だろうと思います。

特に、持続可能な開発などということを考えるときには、こういう認識がないといけないと思います。このことは余りにも私たちは今までに考えてこなかった。考えてこなかったけれども、二百万年続いたわけです。しかし、今これが危ないんだということに気がついた、これが環境問題の本質だろうと私は思います。 

そして、あとはこの絵を見ていただくとわかると思いますけれども、私がもう一つここで言いたいことは、この図の中に「今日の決断と将来の問題」というタイトルをつけたのがあります。今私たちが悩まされている環境問題というのは、実は今に原因があるのではないと思います。数十年前に決断したことが、現在の環境問題として顕在化している、こういうふうに私は理解をいたします。そのように理解しますと、今日決断したことは数十年先の問題を決めてしまう。これは別に難しい問題でも何でもないわけです。

したがいまして、今私たちが必要もないとんでもない構造物をつくったとすると、その構造物が、当然寿命があるわけですから、三十年、四十年生き続けるわけです。そうしたときに、たくさんのごみを排出し、電気を使うというようなことになると思います。 

したがいまして、私が言いたいことは、今決断すると言うことは、先を十分に読んで決断すべきである。特に、不動産を利用して、建造物を立てる、あるいは製造設備をつくる、こういう場合にはそういう認識を十分にする必要があるだろうと思います。 

ちょうど時間になりましたので、これで私のお話を終えたいと思います。ぜひとも私は大議論をやりたいと思いますので、どうぞたくさんの質問をしてくださることを願っております。

どうもありがとうございました。(拍手)

高橋委員長代理 
ありがとうございました。                         
以上で公述人のご意見の開陳は終わりました。

X X X X X


中央公聴会で与えられた15分の私の「意見陳述」 を4回に分けて掲載しました。その趣旨はそれぞれ、次のとおりです。

第1回:法律には、国家、自治体、司法、国民などの活動をいろいろな形で縛る側面があると同時に、国民を教育する効果があること。日本の環境法体系の中に「エコロジーの視点」が欠落していること。

第2回:「環境保全」という言葉の意味が明確でないこと。

第3回:この法案の最大の欠陥は「既存の開発型の法律群」に影響を与えなさそうこと。日本とスウェーデンの「環境問題に対する認識」には20年の落差があると思われること。

第4回:環境問題の本質(「人為的負荷の増大」と「人体への負荷の増大」)。「今日の決断」と「将来の問題」。

明日からは、委員との「質疑応答」の場面です。





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「環境基本法」成立から14年⑤  中央公聴会での意見陳述―その3:この法案の最大の欠陥

2007-12-10 04:29:16 | 政治/行政/地方分権


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私は、この法案の最大の欠陥は何かといいますと、既存の、つまり今ある開発志向型の法律群、例えばリゾート法とか都市計画法、そういうものに対してほとんど影響力がないような感じの法律だと思います。私たちがエコロジーの視点から考えれば、今の環境問題を招いている多くの原因は何かといいますと、これは人為的なものでございます。リゾート法とか都市計画法とか、そういうものに基づいてつくられる構造物、その使用が環境問題を起こしているわけであります。したがって、そういう認識があれば、当然そこに影響の出るような法律をつくるべきであろう、こういうふうに私は思います。

我が国の環境行政の中で、本当に環境がよくなっているんだろうか、環境の状態はどうなのかということについてちょっと触れたいと思います。 

私の認識では、日本で環境の状況がよくなったというのは、二酸化硫黄の大気中の濃度と一酸化炭素の大気中の濃度、それから水質汚濁防止法が決めております8種類の有害物質の公共用水域中の濃度、これが国が決めた基準以下におさまっている、私は、極論すればこれだけだろうと思います。そのほかの問題は大変悪くなってきている。

これは日本だけではなくて、世界全体がそうであります。私たちは、過去に政府も、あるいは企業も大変な努力をして、大変なお金を投じてきましたけれども、その結果が今私が申し上げたとおりなんだろうと思います。 

そうしたときに、一方、ちょっとスウェーデンのお話をいたしますと、スウェーデンと日本の間には、私は約20年の環境に対する意識の落差があると思います。

そして、この四角に書きましたように、21世紀の初頭に我々が直面するであろういろいろな問題に対応するための法律をつくるんだ、ちょうど新しい法律をつくるという点では、今の我が国と同じだろうと思います。そして、すでに、私がここに持ってきましたように、政府の調査委員会がこういう厚い報告書をつくりました。これが、ここで言う環境コードと呼ばれる新しい環境立法の柱になるそれの政府の答申、こういうことになるわけであります。日本とスウェーデンの違いは何かといいますと、私はこの別紙のほうにちょっと書きましたように、予防的な視点で環境問題を考えるか治療的な視点で考えるか、こういうことに尽きるだろうと思います。予防的な視点という方が、社会コスト全体的にみていかにコストが安くなるかということは環境庁の調査でもはっきりわかっていることでありますし、世界のいろいろな事例がそれを示しているわけであります
 
スウェーデンの環境保護法というのは1969年にできまして、我が国の公害対策基本法というのは1967年にできました。今から見れば、20年前の法律であります。しかし、そこには、この資料を差し上げておきましたように、表の1というのがあります。見ていただきたいと思いますが、内容がまるっきり違っています。スウェーデンの環境保護法は、まさにアセスメントの法律であります。これは環境に対する認識の違いからこういう差が出てくるのである、こういうふうに思います。






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 「環境基本法」成立から14年④  中央公聴会での意見陳述―その2:「環境保全」の意味が明確でない

2007-12-09 04:59:54 | 政治/行政/地方分権


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それで、環境基本法に対する私の基本的な個人的な見解を申し上げたいと思います。それでは、いずれにしましても、私は案をいただいているわけですから、それについて簡単にコメントをしたいと思います。 

まず、内閣が提出した環境基本法案というものがございます。これについてはいろいろなことがありますけれども、私は一つに絞って話をしたいと思います。  

なぜかといいますと、例えば「環境への負荷」というのに、定義では「人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。」「環境の保全上の支障」とは何か。これが私にはよくわからないわけであります。それから、「地球環境保全」というところにも「環境の保全」という言葉が出てまいります。いろいろなところにこの環境保全という言葉が出ておりますけれども、それがどういうことを指しているのか、よくわからないわけであります。それから「公害」というところでは「環境の保全上の支障」という言葉がやはり出てきます。

しかし、公害というのは既に公害対策基本法で私たちは十分学習しておりますから、この定義を読んでも、大体公害というのはこういうものだ、こういう理解があるわけです。しかし、環境についてはほとんどわからない、こういう気がいたします。したがいまして、私はこの定義のことについて「環境の保全」とは何かという疑問を呈したいと思います。 

それから、三番目の疑問としましては、環境基本計画をつくる、こういう話があります。しかし、そこには「環境の保全に関する基本的な計画」、これを環境基本計画だということになっておりますので、この「環境の保全」という意味がわからないと、どんな計画を具体的にやろうとしているのか、全くわからないわけであります

       [委員長退席、高橋委員長代理着席]
 
もう一つ、内閣が提出した法律案の中に、環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案というものがあります。これは私は別に異議はありません。これは最低の作業をしているだけの話です。今まである環境関係の法律の字句等の調整をやるわけですから、これは別に私は異議はありません。

それから第三番目の法案といたしまして、社会党提出の法案があります。これは、もとになった内閣提出の法案自体が、私にとっては非常にわかりにくい法案である上に、この社会党のものは市民の声がいくつか入っている、そういう感じに私には受け取れるわけです。

しかし、いずれにしましても、この両法案、エコロジーの視点という観点からいきますと、極めて私は不十分だと思いますし、今後の方向性がどうかということも、これでは私はわからないのではないか、こういう感じがいたします。したがいまして、私は、この法案にはもっともっとエコロジーの視点を入れて議論し、つくる必要があるだろう、こういうふうに思います。・・・・・明日へ続く





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「環境基本法」成立から14年③  中央公聴会での意見陳述-その1:エコロジー的視点が欠落している 

2007-12-08 08:25:59 | 政治/行政/地方分権


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私の考えをもう少しご理解いただくために、少々長くなりますが、この公聴会での「私の意見陳述の部分」「委員との質疑の部分」を環境委員会公聴会議録第1号(平成5年5月13日)から転載しておきます。14年たった今、改めてこの議録を読み返すと「現在の知識で修正したい部分」や「可能であれば修正しておきたい部分」(発言をそのまま文字化していますので)も少々ありますが、このブログの目的は14年前に私が何を考え中央公聴会に臨んだのかを記しておくことですから、以下の記述はすべて議録の原文のままです。細かいことにこだわらず、私の意見の趣旨を読み取っていたがければ幸いです。まずは私の意見陳述の部分からです。 

原田委員長 
ありがとうございました。 
次に、小沢公述人にお願いいたします。



○小沢公述人 小沢でございます。
私は、スウェーデン大使館という職場で環境とエネルギーの仕事を長いこと担当しておりました。私がきょうお話しすることは、私は日本の環境の状況を多少とも知っておりますし、それからスウェーデンの状況も多少知っております。そして、それらの考えをもとにして、私がきょうしゃべることは私個人の見解でございます。 

私は、基本的に、今起きているいろいろな環境問題がありますけれども、何が現在の環境問題で、一番重要な問題かといいますと、環境の酸性化と廃棄物の問題だろうと思います。地球環境問題といいますと、九つぐらいずらずらと挙がってきますけれども、それらは相互に関連しております。 

私は最初に、この環境基本法を議論する前に、二、三あらかじめのコメントをしておきたいと思います。 

まず第一は、日本あるいはスウェーデン、どこでもそうですけれども、いわゆる法治国家と呼ばれるところでは法律というものが、社会の仕組みを構成する重要な要素になっておりますし、それから国家の機能とか自治体の機能、司法の機能あるいは国民の活動、こういうものをいろいろな形で縛るということがあります。これは日本の公害関係の裁判の話を見ていればよくわかることでございます。したがいまして、新しい法律をつくるときには、その法の立て方とか制定する時期とか法の内容ということに非常に重きを置いて考えなければいけないと思うわけであります。法律には、そういう縛ることのほかに、実は国民を教育するという効果が私はあると思います。 

私は日本の環境行政を眺めたときに、あるいは日本の環境立法を眺めたときに、基本的な欠落する点があると思います。 

それは一つは、我が国の環境政策あるいは環境立法の中にエコロジーの視点が欠如している、この最も重要なことが欠如している、これが私は非常に問題ありだと思います。顕在してきた、我々の目の前に見えてきたものに対して反応するということのために、余りにも現実の本質を見きわめる時間がない、これが私は非常に重要なポイントだと思います。

したがいまして、日本の環境の分野で活躍している専門家がどういう方が多いかといいますと、大体が工学部を出た方とか医学部を出た医者とかあるいは経済学者とか、こういう方たちが環境の専門家としておられるわけです。そこには科学者というものが欠落しているのではないか、私はこんなような気がいたします。 

それからもう一つは、この最大の問題である環境問題に対して社会の仕組みとか今までの習慣を変更する、こういう作業をどうもやらない傾向がある。しかし、ここをいじることが解決の糸口だろう、こういうふうに私は思うわけであります。 ・・・・・明日へ続く





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「環境基本法」成立から14年② 不十分なので、このままでは私は反対だ!

2007-12-07 15:16:07 | 政治/行政/地方分権


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私は1993年5月13日の「環境基本法案等に関する衆議院環境委員会公聴会(中央公聴会)」に出席を求められ、公述人の一人としてこの法案に意見を述べる機会を与えられました。

なお、この中央公聴会の議論のすべてをインターネットで見ることができます。

関連資料

第126回国会 環境委員会公聴会 第1号








当時の私の意見の要旨は次のようでした。



もう少し、説明を加えましょう。

●これらの法案はきわめて不十分である。内閣提出の「環境基本法案」も社会党提出の「環境基本法案」もそのベースとなる「環境問題に対する基本認識」が極めて乏しいため、この法の制定により、環境問題が改善の方向に向かうとは到底考えられない。

●ここに提示された両環境基本法案の最大の欠陥は、他省庁がかかえる既存の開発志向型の法律群(例えば、リゾート法、都市計画法など)にほとんど影響を及ぼさない点にある。今日の環境問題を招いているのは「数多くの開発志向型の法律に基づく経済活動の拡大」であることは自明の理である。

●環境基本法が成立した場合、環境基本法が「公害対策基本法」に置き換わるが、公害対策基本法の下で制定された大気汚染防止法、水質汚濁防止法など既存の法律がそのまま残るので、行政の許認可の根拠法は実質的には変わらない。 公害対策基本法の下で制定された既存の法律がそのまま施行されるのであれば、経済活動の拡大に伴って 、環境は悪化することはあっても改善されることはないであろう。

●今日の環境問題を招いているのは、数多くの開発志向型の法律に基づく経済活動の拡大であるから、両法案とも“審議の上、速やかに可決されることを期待する”とあるが、私は反対である。   



日本で「環境基本法」が制定されたのは1993年で、1992年の「地球サミット」(国連環境開発会議、UNCED)、同年の国連環境計画(UNEP)の「世界環境報告」発表の翌年の1993年でした。それから10年後の2003年9月12日付の朝日新聞は、「鈴木環境相は12日の閣議後記者会見で、公害対策を中心とした環境基本法を、積極的な環境の再生と改善のための枠組みに転換することを視野に入れた検討を開始する考えを明らかにした」と報じています。この後どのような進展があったのか、今のところ明らかではありません。

このことは14年前に、私がスウェーデンの環境政策の専門家として、衆議院環境委員会中央公聴会に公述人として招かれたときに指摘したとおり、日本の環境基本法が1969年の「公害対策基本法」の域を抜け切れず、現実の変化に対応できていない不十分な法律であったことを示唆するものだと思います。

関連記事

私の環境論7 「環境問題」は「公害ではない」(1/17) 


つまり、厳しい言い方をすれば、不十分な環境基本法の下で多額の予算を費やし、多くの国民を巻き込んだ日本の14年の行動が図らずも実を結ばなかったばかりでなく、相対的には環境の改善にはつながらなかった、事態は“1993年以前より悪化した”と言えるのではないでしょうか。






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