環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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緑の福祉国家7 21世紀へ移る準備をした「90年代」④

2007-01-17 07:12:26 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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★「環境法典」の制定(98年6月)
新しいビジョンを実現するためには、新法の制定と既存の法体系の改正や廃止が必要となります。1月5日のブログでお話したように、スウェーデンは「予防志向の国」です。問題が起きてから対処するより、事前に策を講じて、問題を未然に防ごうとする傾向があります。したがって、環境関連法もこれまで、「人間の活動は基本的には汚染活動である」と認識し、「問題を起こす可能性があるものは何か」という予防的視点でつくられてきました。

69年に制定された環境保護法は、「環境に有害な活動」を規制する包括的な法律で、20世紀のスウェーデンの環境法体系の中心をなすものでした。この法律も98年成立の「環境法典」に統合されました
 スウェーデンの現行環境関連法である「98年の環境法典」(Environmental Code)制定への準備は、89年5月に国会に設置された「環境法体系を見直すための委員会」に始まります。ですから、新環境立法の制定までにおよそ9年が費やされたことになります。 

93年2月の国会委員会報告に基づいて、政府は既存の15本の環境関連法を一本化するために、「類似のルール」を「共通のルール」で置き換え、数多くの規定を削除して、97年12月4日に整合性のある「環境法典制定法案」を国会に上程しました。

この法案には「1972年にストックホルムで開かれた第一回国連人間環境会議から25年たった現在、つぎの25年間、新しい環境法典のもとで『持続可能な開発』をめざす」と書かれています。この環境法典の制定作業も当然、「緑の福祉国家」に向かう過程の一環あることはいうまでもありません

ついで、政府は既存の法律に環境法典の概念を盛り込むため、98年3月12日に「土地利用」、「林業」、「建設」、「道路」、「航空」、「原子力」など社会基盤(インフラ)の整備にかかわる49本の法律の改正案」を国会に上程しました。

「環境法典制定案」と「インフラにかかわる49本の法律の改正案」はともに98年6月3日に採択され、成立し、99年1月1日から施行されました。 

この図は環境法典に統合された「15の旧環境関連法」を示したものです。スウェーデンの環境関連法体系は60年代以降につくられた多くの法律からなっていました。スウェーデンでは従来から、「環境問題は企業の責任負担」という考え方が徹底していますから、「環境に有害な活動を行なおうとするもの(企業)」は、さまざまな法令で決められた規則に対応しなければなりません。

しかし、旧環境法体系では、どんな活動が法律上「環境に有害」とされていて、そのような場合、どのような対応策を講ずれば許可が下りるのかが、あまりにいろいろな法律にまたがって定められているため、事業者にとっても政府の担当者にとっても、はなはだわかりづらくなっていました。この環境法典で環境法規が一本化されたので、こうしたわかりにくさを解消し、実効性を高めるために、かなり改善されました。

環境法典を特色づける、汚染者負担の原則(PPP)、最良技術(BAT)利用の原則、有害性の低い物質への切り替えの原則、予防原則(人間および環境への被害を防止するために慎重な態度をとる原則)の考え方はどれも、ここに至って突然あらわれたものではなく、60年代から、さまざまな個別の事柄に対して、個別の法律で決められていたことです。

なお、スウェーデン環境法典の条文の和訳本が昨年8月に関東弁護士連合会から公表されています




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