国外の銀行なのであまり気にしていなかったが、クレディ・スイスはすでにかなり追い込まれていたようだ。(むしろシリコンバレー銀行よりも経営実態は深刻であったのかもしれない。)
巨額な赤字決算と、劣後債(AT1債)による資本調達(2.2兆円)といういびつな資本構成、これでは破綻も時間の問題という感じだ。何時かはやらねばならなかった事なのかも知れない。
あまりに急で巨大金融機関だったからかもしれないが、2.2兆円のAT1債の支払いをしないという当局の力技の解決策は、今後の劣後債の市場性を失わせることになるだろう。新規発行も困難になるのではないか?新たな火種とならないか懸念する。
<ざっくりな経緯>
もともと、同社は2022年12月期連結決算の最終損益で72億9300万スイスフラン(1兆円強)の赤字と2期連続の赤字が続いていた。顧客からの預入資産も流出し、今後の経営の柱ともくろむ富裕層向けビジネスの成長も見通しづらい状況となっていた。
3月10日シリコンバレー銀行経営破綻
シリコンバレー銀行などの経営破綻を受け、クレディ・スイス・グループ株も15日に過去最安値を更新した。
15日に筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクが追加投資しないと伝わったのが追い打ちをかけた。14日に過去の財務報告の内部管理に「重大な弱点」があったと発表したばかりだった。
スイスの金融当局は同日15日、事態の沈静化に向けて「必要な場合はクレディ・スイスに流動性を供給する」と表明したが信用不安は止まらなかった。
クレディ・スイスは16日、スイス国立銀行の資金供給枠から最大500億スイスフラン(約7兆1000億円)を調達する計画を発表し、信用不安の沈静化を図った。
19日、スイスの金融大手UBSによるクレディ・スイス・グループの買収が決まった。
同行の顧客預金の流出という逼迫した事態があり、金融危機を封じるべくスイス当局は買収合意に向けて両行に強く働きかけた。日米欧の中央銀行もドル供給の強化を急いだ。
買収額が30億スイスフラン(約4260億円)相当となる株式交換で実施することとなった。
続いてクレディ・スイス・グループは19日、同社が発行した劣後債の一種である「AT1債」について、約160億スイスフラン(約2.2兆円)分の価値をゼロにすると発表した。株式より低リスクとされる社債での異例の巨額損失発生となる。投資家心理が悪化して、世界の社債市場での売りに波及する可能性もある。UBSによる買収の一環としてスイス当局の指示の下(その他ティア1債)を無価値化すると発表した。