波打ち際の考察

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波屋山人

バラの名前

2011-07-23 22:29:55 | Weblog
教育テレビでフランスの小村ジェルブロワのことが報じられている。
かつて廃村のようになっていたこの町に画家がやってきて、
オールドローズを植えたことがもとになり、現在はオールドローズの美しい村として
有名な観光地になっているらしい。

ぼくの育った山沿いの集落にオールドローズを植えるのもわるくないな。
そんなことを夢想する。

実家の庭にもバラの木はあったけど、品種名は知らない。
大輪の赤い花を咲かせるバラには大きなトゲがあって、
幼少時の自分がトゲに刺されて涙ぐんでいたことを思い出す。

ぼくは花が巨大化した園芸品種にはあまり魅力を感じない。
花と葉と茎のバランスに自然なものを感じる、原種に近い植物が好きだ。
バラだってチューリップだってリンドウだって、原種の小さな花に凝縮された美しさを感じる。

そういえば何年か前に「趣味の園芸」誌の編集者とオールドローズの魅力について語りあったこともあるけど、残念ながらぼくはオールドローズについてあまり知らない。

何しろ、オールドローズの品種名を知らないのだ。
カタカナの、なじみのない名前を覚えるのは苦手。
小ぶりなオールドローズの、環境と調和した色彩は魅力的に感じるし、
映像で見れば、「ああ、この花は知ってる。ガーネット色にそそられるんだ」とか
「赤色を支える黄色がまたしぶい色をしてるんだ」とか「この、もどかしい感じに
広がっている花弁の白色に心うばわれるよ」などと適当なことを言うのかもしれないけど、
花の名前を知らない。

もし、松下奈緒とか檀れいとか臼田あさ美とか小嶋陽菜などと言った名前を知らない人が、
あの清楚な日本女性はいいな、と感じたとき、その人のことを知りたいと思うだろう。
名前を知れば、その人のことを少しは理解している気になってしまう。
名前を知っているか知らないか、それだけの違いにすぎないのに。

だけど、名前を知っていれば妄想もしやすい。
名前という記号をもとに、自分の思考の一端に組み込むことができる。
美しさにおどろいでも、名前を知らないと「あの花は美しかったな」と思い出すことしかできない。

ほんとうは、名前を知っているからといって、相手のことを理解しているとは限らない。
容姿と名前と、外向けの態度しか知らないのに、
思考パターンも好き嫌いも癖も体質も気性も知っている気分になってしまうのは、
名前のせいだ。

言葉はおそろしい。
ついつい、「美しい」とか「幸せ」とか「平和」とか「民主主義」とか「正義」とか
口にしてしまうけど、ぼくらはどのくらいそれらの言葉の示す構造を把握しているだろう。

見知らぬ美しいものに興味を示す開拓者や冒険者、クリエイターたちは
今日も言葉にならない世界に向き合って、何かを記録しようともがいているのだろう。
そういう姿勢は、好きだな。


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