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日本の歌のCDを聴く

2009-10-23 17:18:44 | 音楽
 音楽を聴くのはもっぱらクラッシックが中心だが、これまで年代によって夢中になる分野が変わるので、多岐にわたって聴いている。4月からは、あるきっかけから日本の歌を聴くようになり、気がつけばこの間だけでCDが20枚ほど増えている。
 音が気に入っているので、昔の家具のような大きなステレオに、CDを聴く付属品を接続している。そのために100枚収納できるので、聴きたいCDを選択して聴ける。

 日本の歌、この場合子どもの歌(唱歌、童謡も含む)、日本歌曲である。放送等では叙情歌という呼称をする場合が多い。歌うのは、子どもの歌系の歌手(眞理ヨシコ、芹洋子、安田祥子・由紀さおりなど)、ダークダックスなどグループ、オペラやリードを歌う声楽家も多くの人が歌っている。とくに声楽家は、甘美な声でメロデーラインをしっかり聞かせてくれる。
 ところがわたしがこの間収集したCDには、これまでの日本の歌に対するとらえ方を変えるほどの歌を聴くことができた。クラッシックで習練した声で、曲の解釈を丁寧にして表現する歌である。
 CDなので同じ人が20曲ぐらい連続したのを聴くと、歌によってメロデーが違うのだが、だんだん曲の違いが薄れ、とかく同じように聴こえるようになることが多い。

 わたしが今傾倒して聴いている声楽家のひとりは、福島明也である。CDは「歌は美しかった・ラジオの時代」で、戦前の国民歌謡、戦後のラジオ歌謡を歌っている。音域が広く柔らかくたっぷりした声量で、バリトンの声の幅を持った表現を聞かせてくれる。イタリア留学をしていたこともあり、わたし流に言えばイタリア系の声である。
 曲は戦前のものは「朝だ元気で」「隣組」椰子の実」などで、ラジオ歌謡は「山小屋の灯」「さくら貝の歌」「山のけむり」「雪の降る街を」といったものである。ちなみに氏は、今年のN響の「第9」のソリストである。

 次に小松英典(バリトン)である。氏は歌の解釈の掘り下げが深く、とくにピアニッシモの声が美しく丁寧な表現をする。曲は「椰子の実」「ゴンドラの唄」「おぼろ月夜」「「出船」「あわて床屋」「カチューシャの唄」などである。
 日本の歌はメランコリーなものが多いが、その表現の勘所を押さえている感じである。これはドイツリード専門にしていることと関係があるのではないか。

 さらに河野克典(バリトン)がすごい。CDは「この道-ふるさとの歌」だが、持っている声量を出し切らないで、柔らかい声で余裕を感じさせる表現をしている。歌のフレーズでピアニッシモにもっていく表現が、なんともいわれずよいのである。曲は「荒城の月」「赤とんぼ」「この道」「初恋」「ふるさと」といった、よく知られたものだ。国民的歌になって郷愁を誘う「ふるさと」が、明るく格調高く表現されているのに、発見があった。
 氏はドイツリードのCDをいくつか出しているが、「冬の旅は」を聴いたが、ドイツ人が歌っているといってもよいぐらいなのに、驚いた。「冬の旅」はかつてドイツ人のものでは、ディスカウ、ホッター、ヘルマンプライを聴いている。この3人の中ではヘルマンプライが好きである。

 このようにみてくると、日本の歌はメランコリーなものが多いので、ドイツリードを専門にしている人が、作品の深いところを表現するようである。
 なお、日本歌曲コンクールが第20回となっている。そのようなことが、声楽家がヨーロッパの発声と歌をベースに専門性を高めながらも、日本の歌を正面にすえて取り組むようになり、質の高い表現をする人を増やしているのではないだろうか。