5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

4分間のピアニスト

2007-12-12 21:44:13 | 映画・テレビ

ドイツ映画「4分間のピアニスト」(原題 Vier Minuten)を観る(Movix三好)。午後の予定を決めかねてWEBで見つけた映画である。ドイツ語の映画を観るのは本当にずいぶん久しぶりである。音楽映画の要素もありそうだったのでバスで出かける。例によって客席はがらがら10名だけの鑑賞となった。



ドイツアカデミー賞の作品賞と主演女優賞が与えられた2006年のドイツ映画。ハンナー・ヘルツシュブルング(ジェニー)とモニカ・ブライトブロイ(クリューガー先生)が好対照で熱演を見せる。監督はクリス・クラウス、脚本も彼が新聞記事で読んだ刑務所でピアノを教える80歳の老女教師の実話をもとに書き下ろしたのだという。



映画は小さなグランドピアノが自動車道路を運ばれて刑務所の門をくぐるところから始まる。バックグラウンドはガンガンのロックサウンド。以後もピアノの打楽器的な使い方をしたロッキーな音と、モーツアルトに始まって、ベートーベン、シューベルト、シューマンへと続くドイツロマン派の優雅なピアノ曲が対比的に現れ使われている。



ピアノの才能ある若い女囚とこれも優れたピアニストだった女教師の二人の過去をプロットの軸にして、二人の反目から思慕へ、無関心から理解への流れを追って最後の4分に繋ぐというプロットである。二人の過去には、ドイツ映画らしく、大戦、ナチ、ファシスト、同性愛、近親相姦など、彼の国の社会的・歴史的事象がちゃんと使われている。



映像中の道具使いで眼を引いたのは、先ず、ピアノである。ラスト前のシーンもクリューガー先生の退任と一緒に刑務所から運び出されるピアノが中心だし、最後のクライマックス、ジェニーが引きまくるシューマンの協奏曲の破壊的な4分間のインプロビゼーションシーンも主役の半分はピアノとピアノ音である。凶器となるピアノ、運道具となるピアノも描かれているのは、監督のこだわりだろうか。



さらに、フルトヴェングラーの額、蛾の屍骸、鮫の泳ぐパソコンの壁紙などが、主人公二人の個人史や気持の襞を表すものとして使われている。デジタルサウンドのピアノサウンドはダイナミックレンジが広く、本物以上のエフェクトだが、中でもシューベルトの即興曲が綺麗に耳に届いた。クレジットによると、演奏者はどうやら日本人の若手女流らしい。日本のクラシックファンをターゲットの一つにしたプロダクションなのかもしれない。



シューマンのインプロビゼーションはグランドピアノを俯瞰するカメラアングルで撮られている。ヘルツシュブルングのフィンガーワークはほとんどプロの技としか見えない。映像の編集がすばらしいのだろう。音のズレがないことも見事に効果的である。



映画のKeywordは「使命」だろうか。クリューガー先生が変わらず暴力的なジェニーをコンクール最終戦に出させるために云う言葉である。どれだけ世の中が自分に厳しく、つらくあたろうとも、「あなたが生きる為の使命はピアノを弾くこと」。モニカ・ブライトブロイの男のような顔がすばらしく美人に見えた。






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