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十月の本棚 『結婚物語』

2004-10-07 23:38:00 | 新井素子
今回は、ちょっと古い本で申し訳ないのですが(というかいつも古い本ばっかりですみません*(汗)*)、学生時代に友達と電車の中で笑って読んでいた本。

新井素子の『結婚物語』をご紹介します☆

主人公の陽子さんは東京近郊に住む二十三歳。
大学を卒業して現在は実家で家族と暮らしながら物書き業をやっている。
もう一人の主人公正彦くんは大学を卒業後、東京で就職して現在はごく普通のサラリーマン。岡山に両親を残しての東京での一人暮し。

大学時代から付き合っていたこの二人が、お互いの意思を確かめあってついに結婚! と、いう話になったのだけれど、これがなかなか難問続出。

プロポーズの言葉は聞き逃すは(というか気付かなかった)、お父さんは娘可愛さのあまり意味のない引き伸ばし作戦を決行するは、お互いの家への挨拶、結婚式場の予約、新婚旅行に新居に引越し。役所の手続きに新しい生活と二人の前には問題が山積み。

結婚って、夢見てる時はいいけれど、実際やるとなったら結構うっとおしいんだよお~! と、作者が作中叫んでおります。

そう、このお話は、作者新井素子が実際に結婚するにあたり(本人は自分が結婚できるとは思っていなかったらしい)、遭遇した困難や経験した心労、気疲れ、そんなこんなの苦労話を、「結婚ってこんなに大変なんだぞ~」と世の未婚女性に思い知らせてやりたいがために書かれた、すご~くうっぷん晴らし的な小説なのです。

もちろん小説なので、大袈裟な箇所や極端な人物設定がされていたりはするのですが、文章のそこかしこに、作者の本音が垣間見れたりして可笑しかったり共感したり☆

初めて岡山の御両親に挨拶に行く時、緊張して眠れなかった陽子さん。岡山の家で出された大量のご馳走にすっかり満腹になってしまい(残すと悪いし)、ぐっすり眠り込んでしまった陽子さんは、とんでもない寝坊をしてしまい…(笑)

あちらの両親に気に入られようとする姿がいじましいんだか、ユーモラスなんだか。

誰も知らない八月の誕生石。

指輪を買いに来たはずが、買うべき誕生石を知らない二人。
結局売り場のおねえさんに教えてもらうのですが、八月の誕生石ってそんなにマイナーなの?

認知するしないでもめてる原因が子供でなくって数学で取り扱うところの「虚数」だったりするところはさすがに新井素子。

関東ローム層のことで喧嘩になり、結婚してもいないのにもう離婚の危機だったり。

あげくに「お嬢さんを僕に下さい」と言う一世一代の晴れ舞台のはずが、なぜか「お墓は僕が守らせていただきます」宣言になっちゃったりと、読みどころはいっぱい♪

それでもなんとかたどり着き、最後は感動の結婚式といくはずが、やっぱり最後の最後まで…☆

「誰がほんとのことなんて書くものか、フッフッフッ」と作者はあとがきで言ってますが、関東ローム層のことで喧嘩したのはほんとのことらしいです。

…いったいどんな夫婦なんだ?

この『結婚物語』。
実は上中下と三冊に分かれておりまして、それぞれ、「眠たい瞳のお嬢さん」結婚物語 上「正彦くんのお引越し」結婚物語 中「大忙しの二日間」結婚物語 下となっております。

古い本ですが、たまに本屋さんで見かけるので、まだ手に入ると思いますよ。

結婚している人、これから結婚する人、まだ予定もない人、興味もない人。全然参考にはならないとは思いますが、一服の清涼剤に、または、電車の中での息抜きに、こんなドタバタ結婚コメディーはいかがですか☆










新井 素子  著
角川文庫


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