私的図書館

本好き人の365日

『おおかみこどもの雨と雪』

2012-07-26 20:17:04 | 映画

回転寿司で食事をしていると、隣の席の小学生くらいの男の子に話しかけられました。

「いま何皿目ですか?」

まったく見ず知らずの男の子です。

「え、6皿目かな?」

「お寿司以外の皿は何皿ですか?」

「え、1皿?」

男の子のお母さん(らしき女性)は「もう、そんなこと聞かないの!」と恐縮してみえました。

その男の子は物怖じしない性格らしく、お店の人に「お寿司を握る人は何ていうんですか?」と訊いてみたり、その答えが「板前さん」だと知ると「なぜ板前っていうんですか?」とたたみかけたり、「このお店の従業員は何人ですか?」とまるで経営コンサルタントか株主ばりの質問をあびせていました。

質問を受けるパートの女性も苦笑い。

私も最後に会計をしようとすると「何皿ですか?」と再び訊かれたので、「8皿だよ」と答えると「勝った!」と勝手に勝敗を告げられました。

お母さんが「もう、これはお母さんと二人ぶんでしょ」と男の子の計算方法を注意すると(注意するとこそこかい!!)男の子は「大人の男の人と比べるんだからこれでいいの」と彼独自の主張で張り合っていました。

いっておきますが、その日たまたま隣に座っただけのまったく見ず知らずの親子です。

 

…ぼうや、オジさんは本当はもっと食べられるんだけど、貧乏だからこれ以上は食べないで我慢しているんだよ。

 

とさすがに真実は告げませんでしたけどね(苦笑)

いやぁ、子育てって大変ですね♪

 

7月21日に封切られた映画、細田守監督のアニメーション作品。

『おおかみこどもの雨と雪』

を観て来ました☆

 

なんだかすっごく共感してしまって、涙があふれてきて困りました。

おおかみ男と恋をして、二人の子供を産んだ若い女性が、一人で子供を育てることになります。

おおかみの血を引く子供たちは、何かのひょうしにすぐおおかみに姿を変えてしまう…

一見コミカルな描写ですが、世間の目を逃れて暮らす息苦しさ、誰にも相談できない孤独は、ただでさえ大変な子育てに加えて主人公に重くのしかかり、しだいに彼女を、家族を追い詰めていきます…

夜泣き、洗濯、食事の用意。

病気になっても出生が出生なだけに簡単には医者に診せられない。

大変な苦労の末、周りの目を逃れて田舎のボロ屋を借りて住む決断をする母親。

そこに現れる田舎の人々。

すぐそばに山が、自然があるという環境。

子供たちが通うことになる学校での人間たちとのふれあい。

「先生」

オオカミとして生きるのか? それとも、人間として生きるのか?

 

おおかみ男と恋をして、二人のおおかみこどもを育てる主人公「花」の声を女優の宮崎あおいさん、おおかみ男の声を大沢たかおさんが演じてみえて、とても生き生きと、深みのある演技で物語に奥行きを与えていました。

画面を所狭しと走り回るおおかみの姿をした子供たちもいい♪

おおかみこどもというファンタジーのような要素はありますが、描いているのは親と子の関係、母親になるということと、子供の自立、そして巣立ちです。

 

 私が守ってやらなくちゃ。

 どこかで泣いてやしないか…

 どこかでお腹を空かしてやしないか…

姿を消した子供をさがす花の気持ちがグサグサと心に刺さってきました。

生まれた時にその目も開いていない顔をながめて思ったこと。

 この子はどんな大人になるのだろう…

 どんな人生を歩むのだろう…

 大きくなるまで、しっかり見守ってやらなくちゃ。

 

もう、それなのになんで花一人に背負わすんだよ!?

男ってなんて勝手なの!!

と、映画を見ていて何度も思いました!

ま、本人もやむにやまれぬ事情があったんでしょうけれど、それにしても勝手すぎる!

 

果たしてこの母子はどんな決断をするのか?

母子が移り住む田舎の農夫で、頑固なジイさんを演じた菅原文太さんがジブくていい役なんです!

細田監督の出身地で、映画の舞台となった富山県の自然もとっても美しく、CGも使った植物や風の描写は見事でした。

特に水(涙)の描写は注目です。

しかも、そんなにこだわっているのに、ストーリーも登場人物の存在感も邪魔せずに、ひっそりと、しかししっかり描きこまれていたのはさすが!

監督のこだわりを感じました。

 

 元気で! しっかり生きて!

 

子育ての経験のない私でも共感できて涙をボロボロこぼしましたから、きっとどんな人にも共通する「何か」にしっかり訴えかける映画なんだと思います。

前作『サマーウォーズ』のようなエンターテイメントを狙った作品ではありませんが、人間に焦点をあて、しっかり描きこまれた人物像には映画という枠に耐えられる完成度がありました。

ともかく、細田監督、私の感情をゆさぶってくれてありがとう☆

正味2時間、泣いたり笑ったり、感動したり、忙しかった~♪

私にとって、感情に訴えてくる「何か」を持っている映画が、いい映画なんです!

そういう意味では、間違いなくいい映画でした。

あぁ、面白かった☆

 



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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
子育て (春庭)
2012-07-28 07:53:55
回転寿司屋の坊や、元気に成長してほしいです。というのも、この質問攻めの好奇心の塊は、それをよしとする指導者にめぐりあえば、どんどん好奇心を発揮して伸びていけるけれど、「子どもは大人しく教室の椅子に座って自分の指導に従うべきだ」と考える教師の教室に入ったら、「学習障害」児として扱われるかもしれません。一斉指導の邪魔になるからです。

おおかみこどもたちも、おかあさんをはじめ、周囲の人に恵まれて育つようですね。見るのが楽しみです。

私が自分だけで見たのでは気づかないこと。アニメの仕事をなさったことのあるホークさんならでは、水の表現、という鑑賞ポイントをおしえていただきました。
見るときは、目をこらしてみます。
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巣立ちの時、母は… (toliton)
2012-07-28 15:59:20
ホークさんへ

「グスコーブドリの伝記」の時に予告を見て、とても楽しみにしています。

今、まさに、我が子たちも巣立ちの時を迎え、それぞれ、自分は何者として生きるべきかの選択に迫られています。

高2の末娘は、毎週、大学や専門学校のオープンキャンパスに出かけていています。

21歳の長女は夢を叶えて、大躍進中!なかなか実家に帰れない多忙な毎日を送っています。

23歳の社会人2年生の長男は、いよいよ自分でマンションでの一人住まいが始まります。ますます音信不通になりそうです。

さて、私は、残りの人生をどう生きて行こうか。でも、やりたいことの前に、まだやりかけのことと、やり残していること、やるべきことが未分類、未整理のまま山積み状態です。

ただ、ある日突然人生を強制終了しなきゃならなくなった時に、死ぬことは無念でも、その瞬間までの生き方には後悔しないようにしたいなあ。
やるだけの事はやった。と思って逝きたいと思います。
だから、自分でも呆れるくらい、毎日精一杯頑張っています。
ブドリのように。

PS.さっき送った方のコメント、NOタイトルで送信してしまったので、削除願います。
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いまだ子育て中です (momosuke)
2012-07-28 23:10:18
いくつになっても我が子は我が子で、突き放してみたり、引き戻してみたり、ええ年した娘がまだ家にいます。
しかたないから、よそ様の子育てを観察してみたりするのですが、母も大人になりきれていないから仕方なしです。

どれだけ「感動」があるか、ですよね、本も映画も。
ありがとう、いつも「感動」を教えてくださって~
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春庭さん、ありがとう☆ (ホーク)
2012-07-29 01:21:55
そうですね、私は微笑ましく感じましたが、みんなと一緒のことが求められる社会では異端児あつかいされかねないかも知れませんね。
それはかわいそうだなぁ。
でも案外天才児になるかも知れませんよ。エジソンもアインシュタインも学校の勉強は苦手だったって聞きますから!
「おおかみこども」、紹介したい場面はまだまだたくさんありますが、ご覧になった時の楽しみにとっておきますね。
TV放送が楽しみです。
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トリトンさん、ありがとう☆ (ホーク)
2012-07-29 01:45:18
「グスコーブドリの伝記」もご覧になったんですね!
そう、「おおかみこども」はまさに巣立ちの映画でした。
お子さんたちはそれぞれしっかり自分の道を歩いていらっしゃるようで頼もしいです。
でも親としたらいくつになっても心配ですよね。
トリトンさんが「おおかみこども」を見てどんな感想を書かれるのか読んでみたいです。
男の子が一人暮らしを始めたら、ますます音信不通になるだろうということだけは、私にも断言できますけどね(苦笑)
日記を拝見して、トリトンさんの情熱と頑張りに、私も頑張らなきゃ! と励まされています。
私もできるだけ後悔はしたくないから。
頑張った者だけに見えるものってありますよね。
スポーツでも、勉強でも、仕事でも。
具体的に言葉にすることはできませんが、最後の時にはその景色が見えていたいです。
抽象的でごめんなさい。
「おおかみこども」、母親だけでなく、子供たちの葛藤や苦しみもよく描かれていて、涙がポロポロこぼれました。
いい映画でした。
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ももすけさん、ありがとう☆ (ホーク)
2012-07-29 02:02:45
帰れる家があってお子さんたちは幸せですね。
私の家でも、兄妹そろってもうかなりいい歳なのに、いまだに親に心配かけたりしています(苦笑)
こればっかりはなかなか「もう二度と心配かけない」と言い切れないところが情けないです(笑)
「おおかみこども」、いい映画でしたよ。
観る人の感情をゆさぶるなんて、やっぱり映画ってすごい、と思いました。
本も同じですね。
こういう作品があるから、映画を観るのも本を読むのもやめられません♪
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映画 (ナタリー)
2012-07-29 11:58:11
「オオカミのこども」ご覧になったのですね。
沢山ハンカチが必要でしたでしょ(笑)

母親の身になって読んだので、本でもつい涙で地が読みにくくなりました。

映画は見られませんが、ホークさんのお話しでちゃんと見たと思います(笑)

お隣の坊や、かわいいこと。
見ず知らずの大人に話すことのできないこどもが多いですもの。
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ナタリーさん、ありがとう☆ (ホーク)
2012-07-29 23:54:26
ハンカチ持参で観て来ました!
涙が自然にポロポロ落ちてくるんですよね。
私もどちらかというと母親である「花」に感情移入していたかも知れません。
とってもいい映画でした♪
回転すしで隣に座った男の子。
とても楽しい体験でした。
子供って、大変だけれど、面白いですね☆
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おおかみ子どもの雨と雪 (toliton)
2012-08-02 21:04:27
ホークさんへ

見てきましたよ!

水の表現、しっかり見てきました。

涙も、雨も良かったです!!

あの廃屋をよみがえらせ、畑を耕す花に脱帽!

ラスト、花と雨の別れのシーンに私のハンドタオルはぐっしょりでした。

でも、一番泣けたのは、彼との再会の二人のやり取りでした。そのシーンを思い出すたび、お風呂で涙が止まりませんでした。
花が、うらやましくて、うらやましくて、うらやましくて・・・・。
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トリトンさん、ありがとう☆ (ホーク)
2012-08-02 23:45:10
見ましたか!
畑を耕すシーンはすごくリアルでしたね!
農家の私が見ても納得の汗と泥の汚れ具合でした!
菅原文太さんの頑固ジイさんもよかったです♪
花と雨の別れのシーンは泣きますよね~
一番ハラハラしたのは、「雪」と「雨」の最後の姉弟ゲンカのシーンです。
あと「雪」が車の中で泣いてしまうシーンでもグッときました。
そうそう、彼との再会のシーンも。
「よくやった」ってほめてもらうところがよかったです!
大沢たかおさんの声がこれまたシブイんですよね。
お風呂で思い出すほどトリトンさんの印象に残ったんですね。
あのシーンは「花」のキャラクターにとってもなくてはならないシーンですよね。
「花」の心からの笑顔がすごく印象に残っています♪
涙や風、自然現象の方の雨や咲いている花の描写も見事でした。
すっごく感情をゆさぶられました。
私も観れてよかったです。
いい映画でしたね☆
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