goo blog サービス終了のお知らせ 

私的図書館

本好き人の365日

九月の本棚 『銀河帝国の興亡』

2005-09-10 18:29:00 | SF

最近、知的興奮を感じたことはありますか?

化学の実験で、金属の燃える色の違いに驚いたり(マグネシウムは派手に燃える!)。

歴史の授業で意外な事実に出会ったり(遠山の金さんの実家はうちの近所♪)

虫眼鏡で太陽の光を集めて黒い紙をこがしたり(火事には気を付けましょう)

カミナリや雪でさえも、面白くっていつもながめていました!
小学生の頃、「知る」ことはとっても楽しみな事のひとつでした☆

双子のへその緒はどうやってつながっているのか?
北極星はどうして動かないのか?

ピラミッドの謎とか、聖書の暗号とかも大好き!
大人になってもついついそういう物に惹かれてしまいます☆

小説を読んでいても、そうした謎をはらんで展開していく物語に出会うことがあります。

特に好みなのが、その世界そのものの存在からして謎に包まれている、ファンタジーや、SF物♪

その中でも、特にわたしのお気に入りはこの作品。

さて、今回ご紹介するのは、SFの不朽の名作として名高い三部作。

アイザック・アシモフの『銀河帝国の興亡』1~3です☆

アシモフ博士といえば、映画にもなった『アイ、ロボット』などのいわゆるロボットシリーズが有名ですが、やはり代表作はこっちの作品でしょう。

時は、人類が太陽系から銀河に進出した遥かな未来。
地球も、そこが人類発祥の地であったことは忘れ去られ、もはや名前さえ知られていない。

広大な宇宙に広がった人類は、数百万の恒星系を従える「銀河帝国」を樹立し、政治、経済は発展し、その繁栄の中で科学技術は驚くべき進歩を遂げる。

だが、どんなに巨大な帝国にも、やがて滅びの時はやってくる…

盛者必衰の理。
一万二千年にも及ぶ繁栄を謳歌した銀河帝国にも、その時が近づきつつあった…

そして、そこに登場するのが心理歴史学者(サイコ・ヒストリー)、ハリ・セルダン!

このおじさん、もうとっくに死んでいて、何十年か、または何百年かごとに、過去の映像と共に現れて、メッセージを残していく。

そこには、銀河帝国の滅亡後、三万年と(彼の)予想する無政府状態から抜け出し、一千年以内に、混乱を収め、次の新しい国を建国させるヒントが隠されている、らしいのです。

一人一人の人間の行動を予測することは困難だが、数万人、数億人の集団心理は統計学によって予測できる。

こんなあやしげな心理歴史学によって立てられた「セルダン計画」。

ほんとうは、みんなのために帝国が滅んだ後の混乱を、少しでも早く収拾させようという、セルダン博士の善意の計画のはずが…

時には誰もセルダンの映像を見ていない時代(タイマーで自動的に再生されてる)もあるみたいで、誰もいないところで一人語るセルダンが悲しい。

それでも、忘れられても、疑われても、どんどん突き進むセルダン博士(>_<)

なんたって、まだ銀河帝国があるうちから「やがて滅ぶ」って言ってるんだから、評判も悪いわな。

ところが、歴史はしだいに、セルダンの予測した方向に向かい始めます。
そして登場する、セルダンが「セルダン計画」を実行するために設立した二つの<ファウンディーション>という組織。

一つ目には、多くの科学者や技術者が集められ、いわば科学の「箱舟」として、衰退していく帝国の中でやがて勢力を広げはじめます。

そしてもう一つ、<第二ファウンディーション>は、セルダンが”星界の果て”と暗示しただけで、誰もその所在地をつきとめられない。

やがて、各地で帝国の支配に反旗をひるがえす太守が現れ、崩壊していく銀河帝国。

追い詰められ、自分達に取って代わろうとする<ファウンディーション>に対し、帝国の最後の攻撃が開始され…

はたして「セルダン計画」は真実なのか?
どこまでが計算されていて、どこまでがセルダンの”予測の範囲内”なのか?
セルダンの予測を超えた変異体、ミュータントの出現が、銀河帝国に及ぼす影響は?
そして、”星界の果て”にあるという<第二ファウンディーション>は実在するのか?
その正体は?

次々と謎が明らかになり、歴史の歯車がかみ合った時の興奮!
SFの要素をふんだんに盛り込みながら、読者をグイグイ引き込んでいくストーリー!
読んだ後、「そうか、そうだったのか!」と叫びたくなりました☆

三部作、すべて時代も主人公も違うのですが、糸を操っているのはまぎれもなくセルダン(もしくは作者のアシモフ)博士☆

中年の市長や貿易商人、新婚夫婦に14歳の少女と、登場人物みんなが、セルダン博士の”あいまいな”予測に右往左往。
なんたって、へたな知識を与えると、そのために予測が狂ってしまうらしいので、知りたいことは自分で確かめるしかない!

セルダン博士、けっこう役立たずだったりして…死後何百年も後の世界を、こんなに心配してるのにねぇ(^_^;)

どんでん返しに、裏のまた裏を読む展開!
最後まで気の抜けないストーリーにどっぷりはまってしまいました♪

わたしの持っているのは、創元推理文庫版ですが、いまならハヤカワ文庫で「ファウンディーション」シリーズとして出ているので、そっちのほうが手に入りやすいかも。

この三部作の他、「ロボット」シリーズとつながっていく展開で、読者を驚かせた、その後の「ファウンディーション」シリーズもすでに刊行されています。

でも、やはりおすすめは、この三冊かな☆

ぜひ、あなたも知的興奮、味わってみませんか?









アイザック・アシモフ  著
厚木 淳  訳
創元推理文庫