私的図書館

本好き人の365日

七月の本棚 3 『カスピアン王子のつのぶえ』

2004-07-18 08:35:00 | ナルニア国物語
こんな経験はありませんか?

それを口にしたら、孤立するかも知れないとわかっているのに、自分の心の声が強くこう言っているのです。

「それを言わなければいけない。たとえその人に嫌われようと」

さて、「ナルニア国物語」の第二弾は、王子カスピアンを助けてまたまた四人のきょうだいが大活躍!
失われたナルニアを取り戻すために子供たちが繰り広げる冒険いっぱいの物語。

『カスピアン王子のつのぶえ』のご紹介です☆

大きなお城に暮らす王子様。カスピアンは、ナルニアの前の王様だったお父さんが亡くなってから、跡を継いだ叔父のもとで、王子としてなに不自由なく暮らしていました。

キレイな着物やたくさんのオモチャ。豪華な食事や召使達に囲まれた生活も、決して嫌いではないのですが、話し相手のいないカスピアンは乳母や先生の教えてくれる昔話や伝説に夢中になります。

ものいうケモノや、フォーンや小人。半人半馬のセントールや木や水の精。大昔のナルニアに住んでいたというそれらの人々を、ひと目見てみたいと願うカスピアン。
しかし王である叔父は、そんな子供だましの話は、口にすることもならぬと禁止してしまいます。
いったいナルニアに何が起こったのでしょう?

一方、イギリスに住むペベンシー家の四人のきょうだいは、寄宿学校に帰るために、駅のプラットホームで汽車の来るのを待っていました。
ナルニアの冒険から一年。誰もが「ナルニア」のことより、再び始まる学校生活のことで気がめいっている時、ふいにナルニアへの扉が開きます。

作者のルイス先生も、イングランドの寄宿学校に通っていた経験があるので、この”気がめいった”気持ちには、実感がこもっています☆

ラテン語や代数の退屈な授業を抜け出して、こんな別の世界の冒険に旅立てたら、そらゃあ素敵ですよね♪

前回に増して、登場人物も種類(笑)が増え、ストーリーの巧みさも上回っていますが、「ナルニア国物語」の魅力はそれだけじゃありません。

ルイス先生は、今回も冒険だけを子供たちに課したわけではありませんでした。

信じる心とはいったい何でしょうか?
自分を信じる心。
人を、この世界全体を信じる心。
きっと、きっとこの世界はいいものであるはずだから…

自分の信念に絶対の自信のある人なんていやしません。不安に襲われたり、ゆらぐこともあるでしょう。ひとに嫌われたくない。面倒なことは避けたい。なるべく穏便に済ませたい。そんな感情に包まれて、言うべき言葉を飲み込んだり、するべき行為をしなかったり。


「ああ、アスラン。」
「わたしのせいだと、おっしゃるんじゃないでしょう?」
「…そんなふうに、見つめないで…ああ、いいます。わたし、やればできたはずでした。」


四人の中で一番小さいルーシィが、兄や姉達が信じないこと、賛成しないことが分かっていながら、必死で説得する姿には、気高ささえも感じてしまいます。
しかも、もし誰もついてきてくれない時は、たった一人でも行かなければならないと、幼い胸に決意しているのです。

ルーシィ~♪

前作『ライオンと魔女』では誘惑に負けてしまったエドマンドも今回は大活躍!

人間って、考えることが複雑になったぶん、自分に対する言い訳もうまくなってしまったみたいですね。

はたして、カスピアン王子と子供たちは、失われたナルニアの国をよみがえらせることができるのか?

そして、時を越え、場所を越えて現れる偉大なライオン、アスランとはいったい何者?

しだいに明らかになるナルニアの世界の謎と、胸躍る冒険の数々を、どうぞお楽しみに♪

ナルニア大好き☆











C・S・ルイス  著
瀬田 貞二  訳
岩波少年文庫