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海野弥兵衛信孝日記(19) - 駿河古文書会




(松の樹上のセッコク、上が北面。下が南面)

松の樹上のセッコクが今年も満開になった。松の木に咲いた花のようである。今は亡きYさんが、20年ほど前に、我が家の庭の松に、一株のセッコクを水苔といっしょに括り付けてくれた。松の木を手入れしてくれるおじさんも、それだけは触らない。年々成長して、今では幹をぐるりと巡って、どこから見ても花が見えるようになった。養分を松の木からもらっているわけではない。雨と空気だけで、こんなに元気に育っている。Yさんも空から見ているだろうか。

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信孝日記の続きである。

十九日
一 政吉儀、よんどころなく、差し支えこれ有り候に付、口坂本村へ差し遣し候の儀、今十九日、差し延ばし候事
一 羽鳥好斎様方へ、幸便これ有り候に付、井川より持参びんかき遣わし候事
                        使い、源吾さま
  但し、久兵衛様へ差し上げくれ候様、伝言申し遣わし候事
一 口坂本村与四兵衛、難波屋へ来る、もっとも長助忰、庄太夫、三人にて来り候事
  但し、与四兵衛と品々相咄し、江戸行の儀、得と申し談じ候事
一 庄太夫、長助忰、両人片羽町宿へ止宿致させ申し候事
  但し、宿払いの儀、差し出し遣わし候段、申し聞き置き候
一 廿四文、莨

廿日
一 庄太夫、昼頃より出で立ち、帰村いたし候事
一 鍬壱枚、兼ねて申し付け置き候処、出来候事
  但し、井川上屋敷へ相送る           使い、庄太夫へ遣わす
一 鍬へらの儀、庄太夫へ申し付け、口坂本村より井川上屋敷へ、右鍬一同相送り候様、申し渡し候事
 右鍬代、三百七十弐文なり、かじや金右衛門方、三月廿五日、相払い候
                         使い、いねばば(婆)
一 井川上田村宗門帳、その外例年の通り、諸帳面下石町久蔵、持参候、もっとも養父より手紙添え、例年の通り、印形いたし相渡し候事
一 十八文、半紙

廿一日
一 自分儀、認めものいたす
一 夜に入り、羽鳥藤兵衛様、難波屋へ来る、もっとも面会相咄し候
  但し、洞慶院一条の儀に付、得と相咄し候事

廿二日
一 与四兵衛儀、いよいよ明日、江戸表へ出で立つに付、書面並び書状相渡し候事
  但し、今度出府願い筋の儀、得と申し聞き候事、その外それぞれに申し付け候事
一 金子弐分、与四兵衛へ相渡す、もっとも、その外、金三分、渡しこれ有り候事
  但し、右金三分の儀は、口坂本村山地金、同人受け取り来たり候分なり
一 江戸表にて、調(ととの)えもの、その外、よんどころなき方より頼まれ候品々とも、与四兵衛へ得と申し付け候事
一 安部家、それぞれへ進物肴、左の通り相渡し候事
  一 奥津鯛五枚、朝倉へ
  一 同断 ―― 福嶋へ
  一 同三枚                   〆
  一 沖きす弐枚 〆て五枚、渡辺万右衛門殿へ


奥津(興津)鯛(おきつだい)は、静岡県興津地方の沿岸(駿河湾)でとれるアマダイのこと。今でも現地では有名で、食べさせる料理屋もある。「安部家」がどこにあったのか。駿府ならば問題ないが、江戸だとどのように運んだのだろう。話では奥津鯛は江戸でも有名で、駿府からの進物によく使われている。干物ではないかという話も出たが、生だったという。腐っても鯛ではないが、先方へ渡ったときには、現代的感覚では傷みが来ているようなものも、普通にあったという。

子供のころ(昭和20年代)、井川でも海の魚の刺身を食べたという、会員もいて、奥津鯛だけで、随分話題が広がった。生魚を遠隔地へ運ぶ方法は工夫があったのだろうと思う。若狭から京に行く鯖街道など、どのように送られていたのだろう。

一 目かご壱け
   代
一 草深利右衛門荷持の者、兼ねて申し付け置き候処、今廿二日来り候に付、左の通り
  一 米三斗弐升
      内
    半荷、井川上屋敷
    半荷、同下屋敷 四月分也
    右の通り相届け候様、申し付け相渡し候、もっとも賃銭、八百文相払い候
   外に
    追って、井川上屋敷より持参、びんかき賃銭、四十八文相払い候
  一 米三斗弐升、呉服町米安にてとる
    代金壱分弐朱と百文
      但し、両に八斗弐升かえ
   右代金三月廿九日相払い済ます
※ 両に八斗弐升かえ - 相場で単価が決まる米代金で、一両当り八斗弐升に交換することをいう。
一 かます弐つ土佐屋よりとる
  代
一 夜に入り、羽鳥藤兵衛様より手紙来る
  但し、洞慶院一条の事に付、明日、参上致すべき様、申し来る、もっとも、兄連名なり
※ 洞慶院一条 - 「洞慶院の一件」といった意味だが、この日記にも何度も出てくるが、どんな問題だったのか、不明である。
一 廿四文、莨
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