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のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

祈り

2011年03月12日 23時10分09秒 | 日常生活
心の中を渦巻いている祈りや願いが
うまくことばになりません。
今回の地震・津波による災害で、
私は自分の想像力のなさを実感しました。

徐々に被害の全容が見えてきている中、
そして、これからがもっともっと大変なのだということが理解できつつある今
私にもできることはあるはずで、何ができるんだろうと考え続けています。
そして、想いや願いをうまく言語化できないまま
「どうか」「どうか」と祈り続けています。

力不足

2011年03月10日 23時33分29秒 | 日常生活
ひっさびさに職場飲み会へ参加しました。
お隣の部署主催だったため、参加メンバとの距離感がいまひとつ掴めず
「このメンバで呑んで共通の話題なんてあるのかしらー?」
「それよりも何よりもこのメンバだと
 一体、どなたが主導権を握るのかしら?」
と不安いっぱいで参加しました。
が、そんな不安を吹き飛ばしてくれた楽しい飲み会でした。

現在、業務で非常にお世話になっている本部長ともゆっくりお話ができ
そのおかげで、現在の業務や私たちの部署に対する本部長の期待も伺え
なんとなくモチベーションもアップ。
なるほどねー。そういうスタンスで業務に臨むことを期待されてたのねー。
と今更ながらに(現在の業務に携わって既に4ヶ月・・・。)刺激を受けました。

とは言え、昨日の飲み会の主役は完全に我が後輩の新人さんでした。
ナチュラルテンションでビールをかぱかぱと呑み続け
「あ。そっちのビールも飲んでいいですか?」
とテーブルの端のビールを狙い、手酌で自分のグラスにビールを注ぎ、
「このビールは私が責任を持って飲み干しますから。」
と律儀に宣言し、飲み会の合間に突如発生したちょっとした沈黙に対して
「くっそう。なんだ、この沈黙。」
と的確に突っ込み、「もう立派な大人だよね。」と
大人の女性宣言を期待するおじ様方に対しては
「オトナって実在するんですか?オトナって蜃気楼みたいなものなんですよ。
 みんなオトナにならなくちゃ、オトナじゃないとって焦ってるけど
 ホントのところ、オトナなんてどこにもいないんですよ。」
と哲学的な言葉で煙に巻き、独自の後輩ワールドをいかんなく発揮。

すごいなー。
前々から思ってたけど、ホントに話してて飽きないなー。
見てるだけでも相当に面白いなー。
と感心しながら、後輩ウォッチングを楽しみました。

後輩さんがまったく自覚なく大活躍してくれたおかげで
私は周囲に気を配ることなく、自分勝手に楽しくお酒を楽しめました。
もっとも、後輩さんも他の方のグラスはあまり気にしてなかったような。
女性の少ない部署だから、なのか
私たちにそーゆーことを期待しても無駄だよね、と周囲の方々が
早々に諦めてくれているのか(おそらく確実に後者)
入社以来、新人的立ち回りで飲み会に参加したことがありません。
そういうストレスと無縁で飲み会に参加できているって
きっと社会人としては非常にラッキーなことなんだろうなぁ。
諦めてくださっている周囲の方々に心の底から感謝です。

と、感謝の念をかみ締めていると、飲み会終盤で
お隣の部署の部長と先輩さんから情熱的に、にこにこ上機嫌で
感謝の念を伝えられました。
「もう本当に本当にありがとうっ!!
 やっぱりね、オンナノコが参加してくれるとそれだけで
 飲み会の雰囲気が全然違うよね!こういう飲み会がしたかったんだよ!!」
「こういう華やかな飲み会をうちの部署でできるなんて
 思ってもなかったよ。本当にありがとうっっ。」
「やっぱりね、男性と女性とじゃ、話の切り返し方が全然違うよね。
 俺はずっと、こういうぽんぽんと会話が弾む中で呑みたかったんだよ。」


・・・あのー。
ワタクシたち、(あ。一緒にしちゃった。)自分で言うのもなんですが
「華やか」という言葉とはまず間違いなく縁がないんですけど。
というか「オンナノコ」という言葉とも縁がないというか。
「ぽんぽんと会話が弾む」?え?いつ?会話って弾んでましたっけ?
私たちのあのマイペースさで?
周囲にもまったく気を配ってないあのテンションで?
と、伝えられた感謝の言葉に戸惑い続ける後輩と私。

解散後。
後輩とふたりでバス停に向かいながら
ぽつりぽつりと本日の反省を呟きあいました。
「なんか。なんか申し訳なかったよね。
 あんなに「女性」というだけで喜んでもらって。
 気を使ってもらいすぎだよね。」
「もっと、こう女性らしい華やかさを身につけられればよかったですよね。
 『きゃぴ』みたいなものとは無縁ですよね。」
「うん。『きゃぴ』どころか『くっそう』って叫んでたしね。」
「あんなふうに言ってもらうと、申し訳なさ倍増ですね。
 もっと何かを身につけなきゃ、と痛切に思いますよね。」

この後輩さんと知り合えてよかったな、と心から思いました。
なかなか似た温度感の後輩さんには出会えないと思うのです。
うん。私の部署にやってきてくれたのがこの後輩さんでよかった。

2月の読書

2011年03月08日 22時52分15秒 | 読書歴
10.まほろ駅前多田便利軒/三浦しおん
■ストーリ
 東京のはずれに位置するまほろ市の駅前にある便利屋「多田便利軒」に舞いこむ
 依頼はどこかきな臭い。今日の依頼人は何をもちこんでくるのか。痛快無比な
 便利屋物語。
■感想 ☆☆☆
 読書友達から「面白いよー」と薦められていた三浦さんにようやく出会えました。
 読書ライフの9割を図書館に頼っているため、なかなか「読みたい」と思った
 作品に出会えません。で、三浦作品。お奨めどおりさくさくと気軽に読み進め
 られました。主人公コンビ、多田と行天の優しすぎるだめんず二人組がいとおしく
 微笑ましく。ただ男性二人の友情にしてはお互いに頼りすぎているような、
 こういった友情が「今」という時代にあっているのかも、と思わないでも
 ないような。瑛太さんと松田龍平さんで映画化決定だそうです。
 ・・・うーん。ふたりとも私のイメージとは違うなぁ。

11.ひとりぐらし/谷川俊太郎
■内容
 詩人、谷川俊太郎さんによる随筆集。
■感想 ☆☆☆☆
 感想はコチラにまとめました。

12.「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として/子安美智子
■内容
 読者とともに名作『モモ』を読みながら、エンデとシュタイナーが紡ぎだす
 雄大な思想的宇宙へと、私たちをいざなうシュタイナー教育入門書。
■感想 ☆☆☆
 子安さんの「ミュンヘンの中学生」でシュタイナー教育について知り、
 そのおおらかな思想による「考える」教育のすばらしさに憧れました。
 その「シュタイナー教育」の世界観を通して読む児童書「モモ」の解説。
 ただ、「シュタイナー」の思想の根本が説明されていないため、初めて
 シュタイナーについて知る人にはとっつきにくいのではないかと感じました。
 私も若干、混乱中。「シュタイナー」は思想であって宗教ではないと
 認識していたのですが、この作品を読んでいると若干、宗教っぽいというか
 神秘的思想のような印象を受けました。改めてシュタイナー関連の本を
 読み返したいかな。

13.阿川佐和子のガハハのハ
■内容
 小学生の頃、家族で毎週末テント生活をしていた本上まなみ、高橋尚子の
 名前に惚れて指導を始めたという小出監督、亡き勝新太郎との生活を振り返る
 中村玉緒。「週刊文春」好評対談から選りすぐったベスト版第3弾。
■感想 ☆☆☆☆
 阿川さんの明るい人柄による楽しい対談集。何度読んでも大好きです。
 彼女の人とのコミュニケーションを見ているだけで、私も元気が出てきます。
 笑顔や明るさって大切なんだな、としみじみ思わされる1冊。

14.つくも神貸します/畠中恵
■ストーリ
 お江戸の片隅でお紅と清次の姉弟ふたりが切り盛りする損料屋「出雲屋」。
 鍋、釜、布団と何でも貸し出す店だが、なぜかこの店の蔵に仕舞われっぱなしで
 退屈しているのは、それらの道具についている妖たち。気位高く、噂大好きで
 おせっかいな彼らは貸し出された先で騒動まで拾ってきて・・・。
■感想 ☆☆☆☆*
 義理の姉弟ふたりがお互いを思いやったり、お互いを思いやり過ぎてすれ違ったり
 そのやりとりに心があったまる。まさに「畠中テイスト」の作品。きっと、心が
 疲れた時、やさぐれたときにきっとまた読み返したくなると思う。

15.まんまこと/畠中恵
■ストーリ
 江戸は神田の古名主の玄関先に持ち込まれる町内の騒動を解決しようと奮闘する
 やや頼りない跡とり息子、麻之助と彼の悪友、男前で女遊びが激しい清十郎、
 堅物の吉五郎の3人。彼らが携わった事件は・・・?
■感想 ☆☆☆
 昼行燈的主人公、麻之助が携わる色々な事件を縦糸に、彼の初恋を横糸に
 切なくしっとりと描き上げる。優等生だった彼がいきなり「遊び人」になった
 きっかけ、伝わらない、伝えられない想いとの決別の仕方。ラストで彼らが
 選択した未来は、周囲の人たちを誰一人傷つけることない暖かい選択で
 だからこそ、読み終えた後に切なく寂しい気持ちとなった。

16.ころころろ/畠中恵
■ストーリ
 摩訶不思議な妖怪たちに守られながら、今日も元気に寝込んでいる江戸有数の
 大店の若だんな、一太郎。ある朝起きると、目から光りが奪われていた。
 その理由は空前絶後のとばっちり?早くみんなで取り戻さないと!
 でも、一体誰が盗んじゃったの?「しゃばけ」シリーズ第8弾。
■感想 ☆☆☆*
 ある日いきなり目が見えなくなった若だんなに光を取り戻すまでの妖たちの
 活躍を描く連作短編集。今までですら、自分の将来に、自分の存在価値に
 不安を抱いていた若だんなは光を奪われたために、より一層、大きな不安に
 包まれる。そんな若だんなを助けようと奮闘する妖たち。かれらとの交流、
 信頼関係は、きっと日本人が古来から持ち続けた「見えないものとの共存」
 「見えなくてもいると信じていたものたちとの信頼関係」で、だから私は
 このシリーズを読むたびに懐かしい気持ちを味わうのだと思う。

17.トリックスターから、空へ/大田光
■内容
 オピニオンリーダーとしても注目を集める太田光が、戦争、憲法、教育、
 そして日本という国そのものに真っ向から挑む。
 「憲法九条を世界遺産に」の論点を広げ、さらに掘り下げた意欲作。
■感想 ☆☆☆☆
 普段、ニュースや新聞によるマスコミ報道を見て感じていた違和感を
 見事に言葉にしてくれて読みながら「そうそう!私が感じていた違和感も
 これに近いんだよ!」と手を取り合いたくなりました。現代日本は多くの
 課題、問題を抱えていて、日々、政治家の方々が責められているけれど
 マスコミがどれだけ今の日本が抱える問題に加担してきたか、問われるべき
 責任があるのではないか、そういったことを考えさせられる作品でした。
 
18.薔薇を拒む/近藤史恵
■ストーリ
 施設で育った内気な少年、博人は進学への援助を得るため、同い年の樋野と
 陸の孤島にある屋敷で働き始めた。整った容姿の樋野には壮絶な過去があり、
 博人も過去のある事件で心に傷を負っていた。ふたりは令嬢、小夜に恋心を
 抱くが、陰惨な事件で穏やかだった生活は一変する。それは悪意が渦巻く
 屋敷で始まる、悲劇の序章に過ぎなかった。
■感想 ☆☆*
 とても読みやすい文章でさくさくと読めた。が、「現在の日本」を舞台に
 陸の孤島やお屋敷での生活、というのはリアリティがなく、作り物っぽさ
 が強すぎて作品世界にいまひとつ入り込むことができなかった。
 小説、というよりはどこかゲームのあらすじのようなイメージ。
 それでも主人公たち3人の関係がどういった結末を迎えるのか気になって
 最後まで一気に読み終えた。
 
19.植物図鑑/有川浩
■ストーリ
 ある日、道ばたに落ちていた好みの男子。
 「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか?咬みません。
  躾のできたよい子です」「―あらやだ。けっこういい男」
 「名前は樹。樹木の樹って書いてイツキと読みます」
 楽しくて美味しい道草がやがて二人の恋になる。野に育つ草花に託して
 語られる恋愛小説。
■感想 ☆☆☆☆☆
 「植物図鑑読んで!すごいよー!」と興奮気味で教えられたこの作品。
 「なるほどね!本当にすんごいわ!!」と大興奮で読み終えました。
 読み終えた瞬間、道に落ちているオトコノコを拾いに夜の住宅街へ飛び出し
 たくなりました。少女漫画が大好きだったかつての乙女たちにはぜひとも
 手にとってもらいたい作品です。作者の有川さんによる「男の子に美少女が
 落ちてくるなら女の子にもイケメンが落ちてきて何が悪い!」という
 スタンスに心から共感し、一緒に叫びたい。その一方で、女性もここまで
 強くなったんだな、そして疲れている(癒しを求める?)女性が本当に
 多いんだな、と心の片隅でしみじみと思いました。
 「こんなことあるわけない」と思いつつ「こんなことがあっても
 いいんじゃない?いや、むしろあってほしい!二人には幸せになって
 ほしい!」と心から願いたくなる小説。
 
20.アンダーグラウンド/村上春樹
■内容
 1995年3月20日の朝、東京の地下で何が起こったのか。同年1月の
 阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄
 サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、
 62人の関係者にインタビューを重ねたノンフィクション。
■感想 ☆☆☆☆
 今もまだオウム真理教を巡る一連の事件については、分からないことが
 多い。「事実」として分かってはいても「理解できない」ことが多い。
 けれど、被害にあった方々の話を聞いて改めてこの事件は「理解できる」
 「できない」ではない、「やってはいけないこと」「許されてはいけない」
 ことなのだという思いを新たにした。当時、マスコミのあまりの騒ぎ具合に
 食傷気味で事実すらきちんと追っていなかったため、初めて知る事実も
 多く、冷静にまとめてくれた村上さんに感謝しながら読み終えた。

1月の読書

2011年03月07日 22時35分33秒 | 読書歴
昨年末から落ちている「読書」速度。特に小説からは遠ざかりがちです。
疲れてるのかな?キャパシティオーバー?

1.骸の爪
■ストーリ
 ホラー作家の道尾は、取材のために訪れた瑞祥房で口を開けて笑う千手観音と
 頭から血を流す仏像を見た。話を聞いた真備は、早速瑞祥房へ向かう。20年の
 時を超え彷徨う死者の怨念に真備が挑むシリーズ第2弾。
■感想 ☆☆*
 フィールドワークもの、うんちくものが割に好きなのにどうしてもこの世界観に
 入りきれません。やはりどうしても道尾さんが苦手な模様。もっとも年末から
 読書に対しての拒否反応が強いのでその(私のコンディションの悪さの)せいか
 とも思ったり。時間を置いてまた読み返したいと思います。


2.阿川佐和子の会えば道連れ(この人に会いたい5)
■内容
 「私、こんな正直に答えていいんでしょうか?」
 江國香織、カルロス・ゴーン、浜口京子、斎藤茂太、木佐彩子、岩城宏之、
 岸部一徳、平野レミ、野中広務、小倉昌男たち18名がアガワの舌に乗せられて
 爆笑・感涙の秘蔵エピソードを次々開陳していく。「週刊文春」連載対談の
 ベストセレクション第5弾。
■感想 ☆☆☆☆☆
 いつもながらその道の専門家と読者の間を分かりやすい言葉でにとっても楽しそうに
 とりもってくださる阿川さん。既に読んだことがあるにも関わらず
 また手に取りたくなるのは、ジャンルを選ばない多彩な顔ぶれのゲストの方々に
 対して気負うことなく自然体で接する彼女をまた見たくなるからだと思う。
 素直な言葉で自分の疑問をぶつける彼女を見ていると、円滑なコミュニケーションに
 「相手への好奇心」は必要不可欠なのだと納得させられる。
 阿川さんの持つ好奇心と親しみやすさを感じさせる語り口のおかげで
 テレビでよく拝見する方の新しい一面を知ることができ、そして今までまったく
 知らなかった経済界や政界の大物の功績をきちんと理解することができた。


3.姑獲鳥の夏/京極夏彦
■ストーリ
 二十箇月もの間、子供を身籠り続ける妊婦、彼女の夫は行方不明、同時期に
 発生した連続嬰児死亡事件、久遠寺家に代々伝わる「憑物筋の呪い」など、
 久遠寺家にまつわる事件に巻き込まれた小説家、関口。人の記憶を視ることが
 できる超能力探偵・榎木津礼二郎や警視庁の刑事・木場修太郎らも巻き込んだ
 この謎を解くべく、関口は「憑物落とし」の京極堂に助けを求める。
■感想 ☆☆☆☆
 年末から久々に京極シリーズを読み返し始めました。・・・トイレで。
 トイレで読み返すにはあまりに長大。シリーズ中最も短いこの作品ですら
 読み終えるまでに1ヶ月半かかりました。久々の京極堂は相も変わらず
 知的で冗長で不親切。でもこの寄り道の多さ、蘊蓄の多さがとてもいとおしい。
 主人公、関口君はまだまだまっとうです。まっとうな状態の1作目ですら
 読みながら「どう考えても彼を演じるのは永瀬さん(映画化の際に関口さんを
 演じた俳優さん)ではないよね。」としみじみ思いました。


4.いっちばん/畠中恵
■ストーリ
 兄の松之助が長崎屋を出て所帯を持ち、親友の栄吉は菓子作りの修業へ。
 病弱な若だんなは周囲の人たちの新たな出発に寂しそう。妖たちは若だんなを
 慰めようと、競って贈り物探しに出かけるが。長崎屋と商売がたきの品比べに、
 お雛をめぐる恋の鞘当て、果ては若だんなと大天狗の知恵比べ。
 さて勝負の行方は?「しゃばけ」シリーズ第7弾。
■感想 ☆☆☆*
 シリーズ第7弾は若だんなよりも若だんな周辺の人々に重点が置かれているため、
 若だんなの活躍は若干少なめ。それでも、体が弱いなりに自分にできることを
 諦めずに探し続ける若だんなが実に爽やか。脇役を主役に据えられるのは、
 シリーズものならではの安定感があってこそ。けれど、その安定した面白さが
 マンネリにつながらないところが畠中作品が愛されている理由だと思う。
 個人的には自分に自信が持てず厚化粧を施していたお雛さんが厚化粧から脱却し
 幸せを自分の手で掴めて心の底から安心した。

5.ゆめつげ/畠中恵
■ストーリ
 夢の中では見えざるものが見えるはず。小さな神社の神官兄弟、弓月と信行。
 しっかり者の弟に叱られてばかりの弓月には「夢告」の能力があった。
 しかしそれは全く役に立たないしろもの。ある日、ふたりは迷子捜しの依頼を
 礼金ほしさについ引き受けたが・・・。
■感想 ☆☆☆
 幕末の江戸が舞台。「倒幕」だの「尊王攘夷」だの色々な主義主張が横行し
 彼らの言い分のどれが正しいのか、日本はこれからどちらに向かうべきなのか
 まったく先が見えない不安定な時代の日本。「ゆめつげ」という特殊能力が
 あっても未来はわからない。何が正しいのかもわからない。結局は自分たちが
 信じる道を自分たちが信じるままに進むしかない。そう思わせられるラスト。
 主人公ふたりは「しゃばけ」シリーズを彷彿させるのほほん兄弟なのに
 不安な時代背景、政情が背景にあるため、「しゃばけ」シリーズとは異なる
 読後感が面白い。


6.約束された場所で/村上春樹
■内容
 癒しを求めた彼らはなぜ無差別殺人に行き着いたのか?
 オウム信者へのインタビューと河合隼雄氏との対話によって現代の闇に迫る。
■感想 ☆☆☆☆
 オウム真理教の信者によって引き起こされた地下鉄サリン事件。
 私は彼ら末端信者と自分との境界線を見つけられず、読みながら胸が苦しくなった。
 出会う順番が違っていたら、私がこの作品に登場していたかもしれない。
 そういった想いがどうしてもぬぐい去れない。地下鉄サリン事件は起こっては
 いけない事件だった。許されてはならない事件だし、何が起こったのか、
 なぜああいった事件が起きてしまったのかを丁寧に追う必要がある事件だとも思う。
 けれど、それとは異なるところで、この世の中に生きにくさを感じ、まじめに真理を
 追求し、何かを信じたいと願っていただけの信者たちが彼らの追求していたものと
 現実に引き起こされた事件の間に起きた乖離を理解できずに苦しむ姿に共感して
 しまう自分もいる。その一方で、彼らの言葉、生き方に対する違和感もやっぱり
 あって、それなのにこのもやもやを未だにきちんと言葉にできない。

7.ちんぷんかんぷん/畠中恵
■ストーリ
 江戸有数の大店の若だんな、一太郎は摩訶不思議な妖怪に守られながら、
 今日も元気に寝込む日々。しかし、日本橋を焼き尽くす大火に巻かれ、
 とうとう三途の川縁を彷徨う羽目に。「しゃばけ」シリーズ第6弾。

■感想 ☆☆☆☆
 シリーズものならではの醍醐味で、登場するキャラクターみんなに愛着があって
 みんなの幸せを願わずにはいられない幸せな物語。
 若だんなの三途の川縁冒険譚は大好きな鳴り家の登場頻度が高めで大満足。
 「はるがいくよ」はシリーズ中少し異色の切なさメインの話です。
 「生きるものは必ず死ぬ」という当たり前のことを当たり前に受け入れるのは
 死んでいくものではなく残されるものなのだ、と気付かされました。

8.ラッシュライフ/伊坂幸太郎
■ストーリ
 泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。
 女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は
 野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場。並走する四つの物語、交錯する
 十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の
 幕が、今あがる。
■感想 ☆☆☆☆*
 久々に読み返して、「こんなにおもしろかったっけ?」と興奮しました。
 おそらく1回目に読んだときの私はこの小説の面白さをまったく理解できて
 いなかったと思われます。ラストに向けて張り巡らされた伏線に大きな
 カタルシスを覚えました。


9.鷺と雪/北村薫
■ストーリ
 帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー。
 良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和11年2月、雪の朝。
 運命の響きが耳を撃つ。花村英子とそのおかかえ運転手ベッキーさんの
 ミステリー・シリーズ第三弾。
■感想 ☆☆☆☆
 一編一編は、いわゆる「日常の謎」。しかし、シリーズを貫く大きなテーマは
 昭和初期のあの時代、日本を、日本の小市民を飲み込んだ大きな時代の力は
 一体なんだったのか。不穏な時代の動きに気付きながらもいかんともしがたい
 無力な市井の人々。それでも「わたくしは、人間の善き知恵を信じます」と
 力強く語るヒロインがまぶしい。

ベタ褒められてません

2011年03月01日 23時01分37秒 | 日常生活
朝、部長が私の隣にやってきてニコニコしながら
「土曜日、顧問とゴルフに行ったんやけど、
 のりぞうくんたちのこと、ベタ褒めしとったよー。」
と報告してくださいました。

・・・ベタ褒め?
確かに私と後輩君は年末から顧問とお仕事させていただいていますし
色々と資料も作成してますけれど。

「ベタ褒めされるようなことは何ひとつしてないよねぇ?」
「はい・・・。なんかむしろ怖いですねぇ。」
「うん。私たち、顧問のお話を理解するのがやっとやもんね。
 全然、追いつけてないもんね。
 呆れられこそすれ、褒められることは絶対にないって断言できるよね。」
と、こそこそと(でも部長の目の前で堂々と)話した上で
部長に向き直って尋ねてみました。

顧問、私たちのことをどんなふうにベタ褒めされてました?

途端に言葉を濁す部長。
「う。うん。いや、ごめん。ベタ褒めはしてなかったかな。
 でも感心はしとったよ。分からないときにちゃんと聞きに来てくれるって。」



・・・そりゃまた、えっらい期待値が低い褒められ方のような。
いや、褒められてないのか。感心されたのか。
そこを感心されちゃいましたか。
私だっていちおーは社会人。
分からないときは確認ぐらいしますよー!
もとい。後輩に確認に向かわせるぐらいはしますよー!

というか!
細かく確認しなければいけないほど、顧問のお話を理解できていないんだもの。
だから不安で何度も確認しに行って(行かせて)るんだもんね。
大問題だよね。

と、問題の本質について、こそこそと(でも堂々と部長の目の前で)
後輩と共に確認しあいました。
問題の本質は掴めてるんだけどなー。
解決までの道のりは遠いなー。