のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

星影のワルツ/2006年日本

2007年07月02日 20時54分56秒 | 映画鑑賞
■星影のワルツ
■ストーリ
 浜松の実家に帰省した信人(山口英人)は、
 祖父・琢次(喜味こいし)のスナップをさりげなく収めていた。
 家族、友人たち(渥美英二、磯部弘康)との淡々とした日常を過
 ごしていた彼だったが、ある日、祖父の兄(吉井裕海)が
 突然自殺したという知らせが届く。写真家・若木信吾が、
 自身と祖父・琢次をモデルに、人生の哀歌を描いたドラマ。

■感想 ☆☆☆
 好きな漫才コンビを尋ねられたとき、数年前までは必ず
 「夢路いとし・喜味こいし」と答えていた。
 軽妙洒脱で品のある語り口。「分かる人」だけを相手にするのではなく
 できるだけ多くの人を楽しませようとする姿勢。家族だからこその
 そして長年コンビとして連れ添ってきたからこその温かみある突っ込み。
 そのどれもが好きだった。残念ながらいとしさんが2003年に亡くなり
 彼らの漫才活動は終了した。

 今回、こいしさんが映画主演と知り、どうしても行きたくなって鑑賞。
 寝不足の中のレイトショーだったため、うとうとしながらの
 鑑賞になってしまったが、それでも心に残る映画になった。

 監督はもともとが写真家さんであり、今回初の監督業となる若木信。
 彼は20年近く、祖父を写真に撮り続けており、祖父の写真を
 一冊にまとめた写真集も出している。
 そんな彼が「晩年寝たきりだった祖父ができなかったけれど、
 させてあげたかったこと」を映像にしたのが本作品だ。

 監督を投影したと思われる若者が祖父と、そして幼馴染と共に
 故郷での休暇を楽しむ。「楽しむ」というほど、能動的ではない。
 彼は故郷で祖父と、そして幼馴染と毎日を過ごすだけだ。
 けれども、彼は実に楽しそうに、幸せそうに
 祖父と、そして幼馴染と対峙する。
 会話が弾むわけでもない。特別な何かをするわけでもない。
 ぽつりぽつりと話しながら一緒に何かを眺めたり、家路についたりする。
 そんな生活へのいとおしさが画面全体から伝わってくる。

 一緒に酒を楽しんでいた兄が自殺してしまったおじいちゃんは
 人生についてぶっきらぼうに話す。
 「死ぬことはないんや。」
 「畑仕事やったり、お酒飲んだりしたら一日終わるんや。」

 私は今まで生きてきて、自殺をしようとしたことも
 自殺をしたいと思ったこともない。
 けれどもそれはこのおじいちゃんのように確固とした自分があったり
 精神的な強さや信じられるものがあったりするからではなく
 ただ単に運がよかっただけに過ぎない。
 運よくそんなに辛いことに遭遇しなかっただけ。
 運よく周囲の人に恵まれただけ。
 辛いことがあっても、目の前にあるしなければいけないことから
 眼をそらさずに誠実にこなしていくこと。
 これはおそらくそんなに難しいことではなく
 誰にでもできることだからこそ、
 着実にやり遂げることが意外と難しいのではないのかと思う。
 人は無意識に「特別」を望んでしまうから。
 「日常」よりも「非日常」に眼を向けてしまうから。
 平凡と思える人生を楽しそうに誇り高く生きていける人
 そして、そういった人生の中で自分に自信が持てている人こそ
 本当に強い人なんだろうと思った。

 おじいちゃんのぶっきらぼうな語り口と
 孫への溢れんばかりの愛情、そしてその孫に対して胸を張って誇れる
 自分の人生に対する自信。
 暖かくて強くてゆるぎない感情が映画の底辺を貫いている。
 こいしさんのアップの表情と
 「たいしたもんだろ」と孫に対して語りかける口調が忘れられない。
 見終わった後に思い返せば思い返すほど
 しみじみとした気持ちが蘇ってくる。
 もう一度、きちんと見直したい作品だ。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
好きな漫才師 (生駒山のいも男爵)
2007-07-03 01:57:22
昭和ノイル・コイル
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お返事☆ (のりぞう)
2007-07-04 21:44:17
■いも男爵さん
 ワタクシ、のいる・こいる師匠は苦手なのよねー。
 今、何かと話題の中田カウス・ボタン師匠たちも好きなんだけどなー。
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