のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

百万の手/畠中恵

2008年03月18日 23時50分32秒 | 読書歴
27.百万の手/畠中恵
■ストーリ
 僕、音村夏貴はときどき過呼吸の発作を起こす14歳の少年。
 ある日、親友の正哉が目の前で焼死してしまった。悲しみにくれる
 僕の耳に、慣れ親しんだ声が聞こえてきた。死んだはずの正哉が
 携帯から語りかけてきたのだ!あの火事は不審火だったという正哉。
 真相を探るために僕は正哉と動き出す。

■感想 ☆☆☆☆
 ファンタジーテイストの始まり方をした本作だが、中盤以降は
 SFテイストに。そして社会派テイストの問題提起でラストを
 迎える。ひとつの作品で色々なテイストを楽しめる作品だった。

 大きなテーマは「クローン」。
 クローンについては、漠然と「反対」と思っていたが
 なぜ反対なのか、明確な理由を述べることができないでいた。
 それは、私が明確な理由を言えるほど、クローンについての
 知識を持っていなかったからだ。クローンについて、ほとんど
 知らなかったけれど「反対」と考えていた理由は、本能的な
 怖さなんだろうと思う。

 それぐらいの知識しかない私に、本作は具体的、かつ倫理的に
 クローンのデメリットを教えてくれた。「クローン」に対して
 抱いていた「怖さ」を明確な言葉で理解することができた。
 けれど、おそらく、「クローン」技術はいずれ、今よりも
 進歩していくだろう。世論の反対ぐらいでは、人間の好奇心や
 探究心を制御することなどできないだろうと思う。
 何より、私たちは欲望に弱い。利益には更に弱い。
 タイトルになっている「百万の手」は、主人公がクローンの
 生み出す利益について知った際にイメージした利益を求めて
 宙を掴む人間の姿かたちのことだ。利益を求めて闇をうごめく
 百万の手。その先にあるはずの顔は見えない。そんな百万の手
 の様子を私もまざまざと思い浮かべることができた。

 主人公や主人公を取り巻く登場人物はとても魅力的で、軽く
 読み進めることが出来る。それだけに、当初の予測を大きく
 裏切るほろ苦い結末が印象深い作品だった。


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