のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎

2007年07月02日 21時07分26秒 | 読書歴
■アヒルと鴨のコインロッカー
■ストーリ
 引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の
 長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に
 本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的はたった一冊の
 広辞苑。そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか
 僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまった。

■感想 ☆☆☆☆
 今年の始め、2月頃に一度読んだものの、あまりに読後感が辛く
 そのまま感想を書けずにいた。文庫化されたものを購入し、再読。
 やはり読後は辛い。言葉にできないようなやりきれなさに襲われる。

 起こるはずもない奇跡と起こってほしいと願ってしまった奇跡、
 そして、ささやかながらも2年という歳月を超えて起こった奇跡。
 何かが少し変わっていれば、と祈るような気持ちでページをめくり続けた。

 物語は2年前と現在が交互に語られる。
 ペット殺し事件に巻き込まれた女性琴美と
 隣人から書店襲撃に誘われた大学生、椎名。
 2年前があるからこそ、現在の事件が起こる。
 その背景は徐々に明かされていく。
 「現在」しか知らない椎名が淡々と経験するひとつひとつの出来事は
 2年前の事件にいたるまでの過程と照らし合わせると、
 きちんと意味を持っていて、その両方を知っている河崎が
 どんな気持ちで過ごしているのだろうと思うと
 読み終わった後にまた切なくなる。

 奇跡は起こらないけれど、河崎も琴美がバイトをしていた
 ペットショップの店長も、事件を境として確実に変わる。
 そういった変化と最後の最後に起きた小さな奇跡が
 ほんの少しだけやりきれなさから私を救い出してくれた。


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