■ストーリ
妻を亡くした絵描きさんが、偶然辿りついた村。ちょっぴり怖くて、
あたたかい。見知らぬ人が懐かしい。
そこは生者と死者がめぐり逢う場所だった。静かな時の流れが
心を癒す掌篇小説集。
■感想 ☆☆☆☆☆
表紙の絵のやわらかさ、桃色の優しさに心惹かれて手に取った一冊。
表紙だけでなく、小説自体も柔らかく優しく、まるで春の靄に
包まれているような印象を受けた。
登場人物の声や川のせせらぎ、柔らかく降る雨の音などが
実際に聞こえてくるような幸福な瞬間を何度も味わえた。
時代設定も村の場所もすべて特定されていないものの、
おそらく今よりもう少し前。まだ戦争のことが「過去」ではなく、
少し前の痛みとして残っている時代。
「村」という言葉がぴったりのまだまだのどかな場所に迷い込んだ
画家はそこで様々な人に、動物に、そして人でも動物でもない
「何か」に出会い、この世の神秘について思いを馳せる。
静かに季節が変わり、人工的なものなどどこにも見えない空間の中では
「神秘」や「不思議」や「動物との意思疎通」がごくごく
当たり前に行われ、そのことに何の違和感も抱かせない。
「不思議な出来事」や「懐かしい風景」に、時にぎゅっと胸を掴まれ
穏やかに暮らす人々との会話に、画家だけではなく読んでいる私までが
ふと人生について思いを馳せてしまう。
その「日常の中でふと非日常なことに想いを馳せる時間」がもたらす
幸福を存分に味わえる。
登場人物たちの会話は日常生活のごくごく普通の会話にも関わらず、
ユーモアと示唆に富んでおり、私たちを楽しませ、
そして考えさせてくれる。
特に英語教師ノートンとの会話は印象的だ。
この世に存在している「魂」の神秘について。
「死ぬ」ことは哀しいことなのか。
死んだ人の魂は「消失」することはなく、
自分たちを見守っていてくれると「分かっている」にも関わらず、
なぜ自分はこんなにも別れが悲しいのか。
宗教がかってはいるものの、易しくたどたどしい日本語で
繰り広げられる彼の考えは深く私の胸に染みこんできた。
帯の言葉は「命の源を知ればさみしくなんかないんだよ」。
時間が「残された人」を癒してくれる。
けれども、命について、死について思いをはせることによって
悲しみを風化させるのではなく、乗り越えること、
自分を納得させることも必要なのだと思う。
「残された人」は死んだ人を忘れるのではなく
死んだ人の思い出とともに生きていくのだ。
そういう天寿を全うした「死」に対して、肯定的な
捉え方が優しく伝わってきた。
そして、小学生らしくない言葉遣いのチサノ。
彼女の繰り広げる人生訓のような言葉の数々には
くすりと笑わされ、なんとなしに愉快な気持ちになる。
そして、同時に屁理屈を思う存分こねることができた
ちびっこ時代の幸福やとてつもなく長かった一日の終わりの
夕暮れの郷愁を思い出してセンチメンタルな気持ちになる。
最後の1ページを読み終えるのがこんなにも寂しい小説に
久々に出会えた。
妻を亡くした絵描きさんが、偶然辿りついた村。ちょっぴり怖くて、
あたたかい。見知らぬ人が懐かしい。
そこは生者と死者がめぐり逢う場所だった。静かな時の流れが
心を癒す掌篇小説集。
■感想 ☆☆☆☆☆
表紙の絵のやわらかさ、桃色の優しさに心惹かれて手に取った一冊。
表紙だけでなく、小説自体も柔らかく優しく、まるで春の靄に
包まれているような印象を受けた。
登場人物の声や川のせせらぎ、柔らかく降る雨の音などが
実際に聞こえてくるような幸福な瞬間を何度も味わえた。
時代設定も村の場所もすべて特定されていないものの、
おそらく今よりもう少し前。まだ戦争のことが「過去」ではなく、
少し前の痛みとして残っている時代。
「村」という言葉がぴったりのまだまだのどかな場所に迷い込んだ
画家はそこで様々な人に、動物に、そして人でも動物でもない
「何か」に出会い、この世の神秘について思いを馳せる。
静かに季節が変わり、人工的なものなどどこにも見えない空間の中では
「神秘」や「不思議」や「動物との意思疎通」がごくごく
当たり前に行われ、そのことに何の違和感も抱かせない。
「不思議な出来事」や「懐かしい風景」に、時にぎゅっと胸を掴まれ
穏やかに暮らす人々との会話に、画家だけではなく読んでいる私までが
ふと人生について思いを馳せてしまう。
その「日常の中でふと非日常なことに想いを馳せる時間」がもたらす
幸福を存分に味わえる。
登場人物たちの会話は日常生活のごくごく普通の会話にも関わらず、
ユーモアと示唆に富んでおり、私たちを楽しませ、
そして考えさせてくれる。
特に英語教師ノートンとの会話は印象的だ。
この世に存在している「魂」の神秘について。
「死ぬ」ことは哀しいことなのか。
死んだ人の魂は「消失」することはなく、
自分たちを見守っていてくれると「分かっている」にも関わらず、
なぜ自分はこんなにも別れが悲しいのか。
宗教がかってはいるものの、易しくたどたどしい日本語で
繰り広げられる彼の考えは深く私の胸に染みこんできた。
帯の言葉は「命の源を知ればさみしくなんかないんだよ」。
時間が「残された人」を癒してくれる。
けれども、命について、死について思いをはせることによって
悲しみを風化させるのではなく、乗り越えること、
自分を納得させることも必要なのだと思う。
「残された人」は死んだ人を忘れるのではなく
死んだ人の思い出とともに生きていくのだ。
そういう天寿を全うした「死」に対して、肯定的な
捉え方が優しく伝わってきた。
そして、小学生らしくない言葉遣いのチサノ。
彼女の繰り広げる人生訓のような言葉の数々には
くすりと笑わされ、なんとなしに愉快な気持ちになる。
そして、同時に屁理屈を思う存分こねることができた
ちびっこ時代の幸福やとてつもなく長かった一日の終わりの
夕暮れの郷愁を思い出してセンチメンタルな気持ちになる。
最後の1ページを読み終えるのがこんなにも寂しい小説に
久々に出会えた。
何ページか前に戻ったりしてみる小説ってあるねー。
その昔、ツルモク独身寮(漫画)の最終話は
さみしくて泣きながら読んだ・・なんかちがうか(笑)
いや、まさにその感覚(笑)
感覚はあってます(笑)
でも、ツルモクについてはワタクシなんかより
ぜひレオと語り合ってね。
ワタクシにはついていけない世界だわー。