のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

鉄コン筋クリート/松本大洋

2006年06月25日 22時22分44秒 | 読書歴
■ストーリ
 宝町に住む少年、シロとクロはネコと呼ばれ、他の町でも
 恐れられる存在。学校にも通わず、暴力で金を奪い取る
 荒んだ生活を繰り返していた。そんな中、宝町に
 「子供の城」という不思議なビルができた。昔からあったものが
 どんどん消えていく。いつものことと気にしてはいないつもりの
 クロだったが、シロはどうやら町が変わっていくことに
 気づいているようだった。

■感想 ☆☆☆
 男性漫画の絵柄が苦手だ。トーンを使わずに筆で緻密に
 書かれる背景。その緻密な画面構成が胸に迫りすぎて
 苦手なのだ。まして暴力が話に絡みすぎると、俄然
 読むスピードが遅くなってしまう。
 そういうわけで同期から借りた漫画にも関わらず、
 熟成期間を設けてしまった。

 が、「GOGOモンスター」があまりに面白かったため
 「鉄コン筋クリート」にも興味がわき、ようやく手に取った。
 そしてそのままノンストップで読み終えた。

 光と影、そして「古いもの」と「新しいもの」が混在する街は
 そのまま現代の日本だ。私たちが失いつつあるもの、そして
 新しく得ようとするもの、直面しつつあるものが
 漫画の中に再現されている。

 光があるから影が存在する。
 影が存在するから光が存在感を発揮する。
 どちらか一方がなくなると、その存在価値を失ってしまう。
 その危ういバランスの上に成り立つふたつの関係が痛々しい。
 シロを守るために自分の手を汚すクロ。
 そしてシロを守れないかもしれない、と涙を流すクロ。
 シロのためにシロを手放し、ひとりで生きる決意をするクロ。
 徐々に壊れていくクロ。

 一方、シロはその純粋な心でクロのすべてを包み込む。
 クロの悲しみも虚無感もすべてを受け入れ、クロにないものは
 自分が持っているから大丈夫だ、と言い放つシロ。
 クロが自分を失って壊れていく様を遠く離れていても
 分かってしまうシロ。
 クロが最後の一線を越えようとするとき、初めて
 クロを求めて泣き叫ぶシロ。

 クロとシロ。光と闇。
 それは、単体では存在できない関係、そして、
 お互いにお互いを必要とする関係なのだ。
 
 クロはすんでのところで闇にとりこまれず、こちらの世界に
 とどまる。けれども自分の手に闇の痕跡は残る。
 私たちは常に覚えていなければいけない。
 自分の中に常に闇があることを。
 簡単に闇の世界に転ぶことができることを。

 街は変わっていく。いくら古い町が気に入っていても
 新しいものは常に入ってくる。
 けれど、どんなに変わっても世界には光があふれている。
 こちらの世界に私たちをひきとめる「何か」はずっと存在する。
 そのことも覚えて、私たちは街を、街にすむ住民を愛し続けたい。


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