のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

ふたり/赤川次郎

2008年12月03日 23時09分45秒 | 読書歴
98.ふたり/赤川次郎

■感想 ☆☆☆☆
 私の中では「赤川次郎作品」というよりも「大林監督作品」として
 大好きなこの作品。石田ひかりさん主演のこの映画を見て感動した私は、
 映画のパンフレットなど買ったこともないのに、翌日、原作を買い求めて
 本屋を訪ねた思い出の作品だ。そのときに購入したこの本は、
 ソフトカバーの表紙に大島弓子さんの柔らかいイラストで
 セーラー服姿の姉妹が描かれている。そのイラストが原作の持つ
 雰囲気にしっとりと合っていて、お気に入り度に拍車をかけている。
 というわけで、久々の再読。

 愚図で不器用で要領が悪くてマイペースな妹と
 美人で賢くて何でもできてしっかり者の姉。
 寡黙で家族思いの父親と根っからの甘えん坊で
 父親としっかり者の姉に頼りきりの母親。
 両親にはわけ隔てなく愛されて育ったせいか
 妹はデキすぎる姉をひがむことなく、誇りに思い、
 姉も手のかかる妹を慈しんでいる理想的な家族。
 ところがある日、姉が不慮の事故で亡くなってしまい、
 絶妙のバランスを保っていた家族の関係は崩れてしまう。

 あらすじだけ聞くと、暗いお話のような印象を受けるけれど
 また実際に起こっている出来事は暗く大変な出来事ばかりなのだけれど
 それでも、残された妹の成長に焦点を当てて、読後に切なくもさわやかな
 気持ちを味あわせてくれる。
 妹の成長に不可欠なのが「死んだはずの姉」であり、
 姉が妹の心の中に、声だけの存在としてよみがえる、という
 ファンタジー要素を含んでいる。
 けれども、その手助けはあくまでも「メンタル的な」支えであり、
 妹が自分の力で成長し、姉の死を乗り越えて成長していく。
 おそらく、「姉の声」自体、ヒロインの折れそうになった心が求めた
 心の拠り所であり、「自身の声(想い)」なのだろうと思う。
 だからこそ、唐突に訪れる姉との二度目の別れは
 「思春期」とか「青春時代」といった後から考えて
 「大切に過ごせばよかった」「もっと満喫しておけばよかった」
 と思うような時期は、本人の意志に関わらず、唐突に終わりを告げ、
 「大人」へとなっていくのだと感じさせられ、寂しさと切なさを
 与えてくれるのだろう思う。

 赤川次郎さんらしいさらりとした文章だけれど
 底抜けに明るいわけではなく、アンチ赤川さん派にもお勧めしたい作品だ。


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