のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

少女の器/灰谷健次郎

2008年09月15日 11時25分33秒 | 読書歴
66.少女の器/灰谷健次郎
■ストーリ
 両親が離婚し、母親と二人暮らしの少女・絣。未だに恋愛関係の
 もめごとが絶えない母親に対して、絣は時に大人顔負けの鋭い
 批評を口にする。しかし、その言葉の裏には、人一倍傷つきやすい
 心が隠されているのだった。そんな絣のことを優しく見守る父、
 自らのひたむきな生き方で絣を導いてくれるボーイフレンド。
 様々な人たちに囲まれて成長する絣の姿をしなやかに描く。

■感想 ☆☆☆*
 灰谷作品の中では「兎の眼」や「太陽の子」といった作品たちほど
 ぐいぐいと引っ張られるようなストーリ性はない。
 けれども、なぜか、ふと気がつくと読み返してしまう作品。
 ヒロイン絣の強気で容赦のない人間観察能力や、それゆえに
 周囲を繊細に見守り、様子を伺う小動物的なしぐさがかっこよく
 かわいらしく、そして、ちょっぴり切ない。
 歯に衣着せぬような態度で母親にも厳しい言葉を投げかけ、
 衝突を繰り返してばかりいる絣。同姓だからこそ、母親には
 コントロールきかず、自分の思いをすべてぶつけてしまう絣の
 姿に共感しながら読み終えた。

 作品の半分以上がヒロイン絣と絣の両親、そして絣の中学に
 転校してきた少年との会話で繰り広げられる。その会話が
 リズミカルなために、とても読みやすいが、するすると読んでいると
 不意に心にささる鋭い言葉に出くわすことができる。
 そういった視点が灰谷作品の魅力なのだと思う。


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