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のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

陰日向に咲く/2008年日本

2010年09月09日 00時45分57秒 | 映画鑑賞
22.陰日向に咲く/2008年日本
□監督:平川雄一朗
□原作:劇団ひとり
□出演
 岡田准一、宮崎あおい、伊藤淳史、平山あや、緒川たまき、西田敏行
 塚本高史、本田博太郎、根岸季衣、堀部圭亮、平岩紙、三浦友和

□ストーリ
 みんな不器用で、冴えなくて、カッコ悪くて、けれども愛おしくて
 抱きしめたくなる。スポットの当たらない、日陰者のような道をいく
 人々のやるせない日々と再生を描いた物語。
 登場するのは、借金まみれの観光バス運転手に売れないアイドル、
 売れない芸人、アキバ系アイドルオタクに風変わりなストリッパー、
 そして浮浪者。思うようにならない人生に戸惑いながら、
 それでもどうにか歩いていく彼らの人生が交錯し・・・。

□感想 ☆☆☆*
 ストーリ中盤で張られた伏線が終盤に向けて見事に回収されていく。
 そのカタルシスを味わうことができる作品。
 人によっては「出来過ぎている」「かえってうそくさい」という感想を
 抱く人もいるかもしれないけれど、私はそのつながりを楽しむことが
 できたし、暖かいなと感じた。
 みんなどこかでつながっている。人はどうしようもなく世界と関わり合って
 生きている。だから、誰かのちょっとした一言が誰かに影響してしまうし、
 知らないうちに人を傷つけてしまうこともある。神社でのふとした出会いが
 人の人生を変えてしまうこともある。そんな関わりに疲れてしまうことも
 あるけれど、それでも私たちは誰かと関わり合って生きていきたい、と
 望んでしまうんだろうな、誰かと共に人生を歩きたいと思ってしまうんだろうな。
 と素直に納得できる作品だった。

 とにかく主役の岡田さん、宮崎さんの演技が素敵。表情だけで、
 切なさとか、やるせなさとか、寂しさ、いらだちを見事に表していました。
 どう頑張っても、どうあがいても、どうにもならないことが人生にはある。
 自分の未来も生き方も、自分だけでどうにかできるわけではない。
 だけど、それでも、自分の足できちんと立って、自分の目で前を見据えて
 一歩を踏み出していかなきゃいけないんだよね、と思わせてくれる
 ふたりでした。弱いんだけど、強い。強いはずなのに、もろい。
 そういうところが本当に「いるよねー。」というふたりでした。
 そしてそして、三浦さん。もうさすがの存在感。彼の表情も大好きです。

 悔しいけれど、ほんの少し泣いてしまいました。くっそう。

書道ガールズ/2010年日本

2010年06月15日 23時28分11秒 | 映画鑑賞
21.書道ガールズ -わたしたちの甲子園-
■監督:猪股隆一
■脚本:永田優子
■出演
 成海璃子、桜庭ななみ、山下リオ、高畑充希、小島藤子、
 金子ノブアキ、おかもとはじめ、朝加真由美、宮崎美子、織本順吉

■ストーリ
 不況の影響で活気を失っていた日本一の紙の町・愛媛県四国中央市。
 どんどんさびゆく大好きな町。そんな町の元気を取り戻そうと書道部の
 高校生が立ち上がった。彼女たちが取り組むのは書道パフォーマンス。
 部員たちの不協和音や周囲の大人たちの反対など様々な困難が起こる中、
 町おこしのためにひたむきにがんばる姿と熱意がやがて大きな動きと
 なり、大人たちの心に、町全体に活力を呼び起こす。

■感想 ☆☆☆☆☆☆
 あまりに感動しすぎて、なかなか感想を言葉にまとめられなかった
 この作品。久しぶりに映画館で見た映画ということもあって
 非常に思い出深い作品となりました。
 見たのは約1ヶ月前ですが、今もこの映画のことを思い返すと
 胸が熱くなる。感動で胸がふるえる。そういう素敵な映画でした。

 もっとも、感動が大きかったのは、私の故郷も、
 今まさにさびれ行こうとしている町だからかもしれない。
 少しずつ閉店が増えていくシャッター商店街。
 小売店の数が減り、チェーン店が新たに入ってはつぶれていく商店街。
 街を襲う高齢化。どれもこれも他人事とは思えない現象ばかり。
 変わり行くふるさとを、寂しく、なおかつ腹立たしく見つめる
 ヒロインたちの姿に共感しっぱなしの2時間となった。

 ただ、私と彼女たちが異なるのは「寂しいけど、しょうがない」
 という気持ちで町の変化を済ませなかったこと。
 「しょうがない」とあきらめるのではなく、
 「私たちの町のことだから。」と立ち上がったこと。胸が熱くなった。

 がむしゃらに、一生懸命に取り組む。
 その姿勢が周囲に及ぼす力の大きさをしっかりと認めつつ
 その一生懸命さに飲み込まれないことの大切さも丁寧に描く。
 楽しむこと、自然体で過ごすこと、心にゆとりを持つことの大切さ。
 そのゆとりがパフォーマンス書道ならではの、「全員で」
 ひとつの書を作り上げていく感覚に必要となってくる。
 書道パフォーマンスは、チームメンバで呼吸をあわせて
 様々な言葉(詩や歌詞)をひとつの作品に作り上げていく書道だ。
 つまり、自分の筆使いだけでなく、周囲が書きあげるスピード、
 文字の大きさ、勢いを見て作品を調整していく必要がある。
 だからこそ、「自分のことだけ」ではなく、「みんなで作る」
 「みんなで作り上げる」過程ひとつひとつが「町おこし」と
 非常に似ているように感じたのだと思う。

 みんなの想いが結集したクライマックスの書道パフォーマンスは
 とても感動的。ヒロインたちひとりひとりも眩しいぐらいに輝いて
 いる映画でした。

トリック劇場版3/2010年日本

2010年06月12日 00時08分37秒 | 映画鑑賞
20.劇場版トリック - 霊能者バトルロイヤルー

■監督:堤幸彦
■ストーリ
 自称・売れっ子マジシャンの山田奈緒子(仲間)と、プライドが高い
 石頭の物理学者・上田次郎(阿部)が、さまざまな超常現象の謎に迫る姿を
 コミカルに描いたミステリー。山田と上田は、とある山村で開催される
 最強の霊能力者を決めるための「霊能力者バトルロイヤル」に巻き込まれていく。

■出演
 仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、野際陽子、佐藤健、夏帆、
 片瀬那奈、戸田恵子、藤木直人、ガッツ石松、

■感想 ☆☆☆
 大好きだった深夜ドラマ「トリック」ですが、あれよあれよという間に
 人気が出てしまい、ゴールデンに進出するわ、映画まで作られるわ
 映画の続編も出ちゃうわ、とメジャー作品に成長してしまいました。
 天邪鬼気味の私は、ゴールデン2作目あたりから見たり見なかったり
 映画館にまで見に行かないものの、テレビに登場するときは必ず見たり
 と「トリック大好きー!!」という関係から、「好きなのよー。
 好きなんだけど、でもねー。」というつかず離れずの関係へ徐々に
 シフトチェンジ。

 しかしながら今回は、テレビCMにて
 「泣きましたー。まさかトリックでこんなに感動するなんて!」
 という女性のコメントに好奇心を刺激され、久々の映画鑑賞。
 ・・・まんまとCMに騙されました。
 涙なんて1滴も出ませんでした。感動?なにそれ?食べられるの?
 というぐらい、感動とは程遠い作品でした。

 トリック大好きです。
 山田と上田のコンビも、矢部刑事も大好き。
 トリックならでは、の後味の悪い結末や
 シリアスな場面をなんともシニカルな視点で捉えるところも大好き。
 それなのに、今回の映画を見終わってしばらくは、
 後味の悪さに呆然としました。

 感動して、泣く?一体、どこに感動のツボが?
 と、CMに出演していたお姉さんに思わず詰め寄りそうになりました。
 もっとも、感動はまったくしませんでしたが、
 ある登場人物の悲惨さ、救われなさ、失ったものの大きさに
 深く深く落ち込みました。
 どーゆーことだー!!
 と憤りっぱなしでしたが、しばらくして少し落ち着いてから
 「そうだった。これこそがトリックだった!」
 と思い出しました。

 それにしても、トリック10周年とは、感慨深い・・・。
 トリックは劇場版になろうと、10周年だろうと、トリックのままです。
 いたるところに散りばめられた小ネタに大笑いしました。
 出演者陣の豪華さにもびっくり。まさか藤木さんがあんな役で
 出演されようとは。まさかショーグン様まで出演されようとは。
 現代劇でショーグン様にお会いできようとは。感無量です。

セックス・アンド・ザ・シティ/2008年アメリカ

2010年06月06日 09時52分28秒 | 映画鑑賞
19.セックス・アンド・ザ・シティ/2008年アメリカ

■ストーリ
 ドラマ版の4年後。
■出演
 サラ・ジェシカ・パーカー:キャリー・ブラッドショー
 キム・キャトラル:サマンサ・ジョーンズ
 クリスティン・デイヴィス:シャーロット・ヨーク
 シンシア・ニクソン:ミランダ・ホップス
 クリス・ノース:ミスター・ビッグ
 デヴィッド・エイゲンバーグ:スティーブ・ブレディ
 エヴァン・ハンドラー:ハリー・ゴールデンブラット
 ジェニファー・ハドソン:ルイーズ
■感想 ☆☆☆☆
 ドラマ版は見たことありません。アメリカのドラマは長くて長くて。
 何シーズンか前のあらすじを忘れてしまうこともしばしば。
 え?!もうあの人とは別れてたんだっけ?!と驚くことが多く
 話に途中でついていけなくなってしまうのです。

 とはいえ、このドラマを見ていないのは、単にテレビ放送されている
 時間帯がよく分からず、第1シーズンの第1回を見逃してしまったから、なのですが。
 そろそろ、DVDレンタルを活用したいなぁ。他にも見たい映画があるし。
 と思いつつ、なにせテレビっ子。時間の余裕が見つけられません。

 閑話休題。
 そんなこんなでドラマの評判を知ってはいたものの、
 映画でようやく出会えたセックス・アンド・ザ・シティ。
 面白かった!!
 聞いていたほど、どぎつい描写や台詞はなく、そこは少し肩透かしでしたが
 女性同士の友情がかっこよく楽しく描かれていました。
 年を重ねてもこういうに女友達との関係を築いていきたい、と
 純粋にあこがれました。
 年を重ねているからこそできる心の余裕とか
 年を重ねていても若かりし頃とまったく変わらないドタバタとか
 あぁ。分かるなぁ・・・と共感できることしばしば。

 変に若作りをし続けるのではなく
 今の年齢に見合ったドレス、見合った恋愛観、
 見合った女友達との友情を模索し、本音にしたがって生きようとする
 女性陣が爽快な映画でした。

 あぁ。本当にドラマ版見たいなー。
 ・・・NHKでは、放映ないだろうなぁ。

天使のくれた時間/2000年アメリカ

2010年05月21日 10時59分50秒 | 映画鑑賞
18.天使のくれた時間/2000年アメリカ

■監督:ブレット・ラトナー
■脚本:デヴィッド・ダイアモンド、デヴィッド・ウェイスマン
■出演
 ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ、ドン・チードル

■ストーリ
 優雅な独身生活を謳歌していたビジネスマンが昔の恋人との
 「もうひとつの人生」を体験することで本当の幸せに目覚める。
 成功を夢見て恋人ケイトと別れてロンドンへ旅立ったジャック。
 13年後の今、ジャックは大手金融会社の社長として、優雅な
 独身生活を満喫していた。クリスマス・イブに昔の恋人、
 ケイトから電話があったが、かけ直さなかったジャック。
 その翌日、目覚めたジャックはケイトと我が子2人に囲まれていた。

■感想 ☆☆☆*
 アクションものの多いニコラス・ケイジですが、本来、彼は
 こういったヒューマン系、コメディ系がよく似合う役者さんだと
 思うのです。かっこよく動き回ってドンパチしているニコラスより
 垂れ下がった眉を更に下げて困った顔をしているニコラスのほうが
 私は断然、大好きです。

 というわけで、この映画のニコラスは大好き。
 愛らしく困り、あたふたとバタバタと走り回り、理不尽な現実に
 怒り続けている彼がキュートにチャーミングに描かれています。
 「家庭なんて」と思っている彼が次第に家族の暖かさや
 昔の恋人だった彼女に対して愛しさを感じ始めるところは
 丁寧に作りこまれていて、安心して楽しめます。

 ティア・レオーニ演じる「妻」もとてもキュートで
 生活感はあるものの「つかれきった主婦」ではなく、
 結婚して子どもを産んでも信念を持って働き続けている様子が
 かっこよく、ジャックが改めて彼女に魅力を感じ始めるのも納得。
 何より、ちびっこちゃん!
 唯一、パパがいつものパパと違うことを見抜くキーパーソン。
 聡明さと愛らしさをあわせもってキュートに長女を演じています。
 徐々に家族に対して愛情を抱き始めるジャックのことも
 しっかりと見ていて、「おかえり。パパ。」と彼を迎え入れます。
 その「おかえり。パパ。」という台詞の愛らしさと、
 ジャックを見つめる表情のかわいらしさに胸をぎゅっと掴まれました。

 ただ、「愛する人の傍にいて、見守ること」の幸せと
 「好きな仕事をバリバリして、認められる、もちろんお金も
 入ってくる」幸せ、このふたつの幸せが「よいこと」と「悪いこと」に
 振り分けられていて、そこにはなんとなく違和感を抱いてしまいました。

 もちろん、愛する人のために過ごすことはとても幸せなことだけれど
 それが「正解」というわけではない。
 「愛する人」も「キャリア」も両方、求めていいんじゃないかな
 と思うのです。

 だから、私は、ジャックが「誰かを愛すること」「大切な人と
 一緒に過ごすこと」の幸せに気付いた上で、今の仕事やキャリアを
 大切にしたまま、新しく愛する人を見つけて欲しかったな。

 と、思う私は心の貧しい人なのかな。うーん。

バッファロー’66/1988年アメリカ

2010年05月21日 10時16分16秒 | 映画鑑賞
17.バッファロー’66/1988年アメリカ

■監督・音楽:ヴィンセント・ギャロ
■脚本:ヴィンセント・ギャロ、アリソン・バグノール、クリス・ハンレイ
■出演
 ヴィンセント・ギャロ、クリスティーナ・リッチ

■ストーリ
 5年の刑期を終え、刑務所から釈放されたビリーは、ニューヨーク州
 バッファローの実家に戻ろうするが、両親には刑務所にいたことは
 話しておらず、電話で「政府の仕事で遠くまで行っていた」と偽り、
 さらに勢いで「女房を連れて帰る」と嘘を並べてしまう。
 女房どころかガールフレンドもいないビリーは、トイレを借りた
 建物の中のダンス教室でレッスン中だった少女レイラを拉致し、
 自分の妻のふりをするよう強要する。最初は反抗していたレイラも、
 共に過ごすうちにビリーの孤独を理解し、次第に愛情を抱きはじめる。
 しかしビリーは実家に戻るだけでなく、バッファローにある目的があった。

■感想
 ずっとずっと見たかった映画。
 深夜にテレビで放映されていたものを録画し、ようやく見れました。
 評判どおりの素敵な映画で大満足。オープニングの映像から
 スタイリッシュで、「あ!この映画、絶対に好き!」と確信しました。

 脚本、音楽、カメラワークと統一された世界観で構築されている
 この映画。その世界観に確固とした信念が感じられる。
 そのブレのない潔い姿勢がこの映画を一種、独特のものにしたのだと思う。
 その世界観に特に貢献しているのがキャスティング。
 主役のビリーを演じるヴィンセント・ギャロと、ビリーに拉致される
 レイラを演じるクリスティーナ・リッチ。このふたりなしでは
 この映画は、この映画たりえなかったと思う。

 冒頭、刑務所を出たばかりのビリーはトイレを探し、もぞもぞと
 しながら町を走り回る。そのかっこ悪さがこれまでの彼を髣髴と
 させる。必死に悪ぶって見せるけれど、決して悪ではなく、
 悪にいいように扱われる、利用されるほうの人間。
 自分が思い描いている自分と、現実の自分がうまくリンクしない人間。
 その焦燥感と苛立ちを抱き続けるビリーをヴィンセント・ギャロが
 表情で見事に演じていた。特にホテルの風呂場の場面は印象的。
 風呂場で細い体を小さくたたみ、体操座りで浴槽に入り
 「何をやってもうまくいかないんだ」と涙を流す彼は、
 彼の持つ孤独を見事に表現していて、どこか守ってあげなきゃ
 という気持ちにさせられた。エキセントリックなだけではない
 彼の魅力が十分に伝わってくる。 

 けれど、なんといってもすばらしいのはレイラ演じるクリスティーナ・リッチ。
 彼女のまだまだあどけない表情と官能的で豊満な肉体。
 なのに感じさせるのは性的な魅力ではなく、純粋な母性。
 ビリーに拉致されたにも関わらず彼の孤独を理解し、彼を心配し、
 見守り続ける。ホテルの風呂場で泣いた後のビリーを
 そっと抱きしめる彼女のその繊細な抱きしめ方が彼女の本質を
 端的にあらわしていたと思う。

 どこか不器用で人を信じられないビリーは、自分が拉致したにも関わらず
 誰かと一緒に過ごすこと、女性に身をゆだねることができない。
 女性にどう接していいのかすら分からず、苛立つ彼を
 レイラはあたたかい表情で見守り続ける。

 映画は中盤以降もどこか物悲しさと破滅的な世界観をにおわせる。
 しかし、ラストは全体の世界観を覆すハッピーエンド。
 好きな人がいること、好きな人に愛されていること、
 それらを実感し、幸せそうにうかれるヴィンセント・ギャロが愛しい。 

神童/2007年日本

2010年05月04日 22時12分01秒 | 映画鑑賞
16.神童/2007年日本

■監督:萩生田宏治
■脚本:向井康介
■主題歌:リプルソング/原田郁子
■出演
 成海璃子、松山ケンイチ、貫地谷しほり、キムラ緑子
 吉田日出子、手塚理美、柄本明

■ストーリ
 幼い頃から「神童」と呼ばれていたピアノの天才少女、うた。
 彼女は指を保護するために球技を禁止され、常に手袋を着用する生活を
 強いられていた。しかし大人の期待の中、「自分は本当にピアノが
 好きなのか」悩むうた。ひょんなことから知り合った音大を目指す
 浪人生ワオにピアノを教えるようになり・・・。

■感想 ☆☆*
 原作は有名な漫画らしいこの作品。とにかく説明が排除されており
 静かに淡々と、ワオとうたの交流を追い続ける。そのため、
 設定(前提)自体がよく分からず、見終わった後、原作を
 読みたくなってしまった。
 ただ、「説明がないからおもしろくない」「話がわからない」わけではなく
 説明がないなりに、話の筋はなんとなく見えるし、なんとなく分かるから
 こそ、原作を読みたいと思わせてくれる。そんな魅力が作品世界のなかに
 ちりばめられている映画だった。

 成海さんの大人びた風貌と演技力のため「神童」という設定が
 まったくうそ臭くなく、同級生の中で浮いてしまっている彼女の
 孤独がよく伝わってきた。また、そんな彼女の天才ぶりが目障りで、
 ついついつっかっかっていってしまうけれど、どこか彼女の魅力から
 目が離せない、彼女が気になって仕方がない同級生の男の子が
 かわいらしく、共感できる存在だった。

 音楽と向き合えずに悩み続けるうた。
 音楽と向き合いたいのに、自分の実力が追いつかないワオ。
 ふたりの相反する悩みと、音楽でつながる彼女たちの恋とも
 友情ともつかないつながりが見ていて切ない。

 「音楽は生きるためにあるんだ。」
 と力強く言うワオと、耳が聞こえなくなりながらも
 「私自身が音楽だから。」と音と向き合おうとするうた。
 彼女たちのこれからは見えない。自分の中にある音楽への愛情に
 気付けたうただが、彼女がこれからもプロとしてやっていける
 保障はどこにもない中、映画は終わりを迎える。

 それでも、彼女たちは音楽を愛し続けるだろうし、
 音楽から離れることはないだろう。清清しくそう思える映画だった。

パコと魔法の絵本/2008年日本

2010年05月04日 21時29分22秒 | 映画鑑賞
15.パコと魔法の絵本/2008年日本

■監督:中島哲也
■キャスト
 役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡、土屋アンナ、國村隼、上川隆也
 阿部サダヲ、小池栄子、劇団ひとり、山内圭哉、加瀬亮、木村カエラ

■あらすじ
 変人ばかりが集まる病院の嫌われ者、偏屈で「クソジジイ」と呼ばれていた
 大貫は、ある日パコという少女と出会う。パコは事故で両親を失い、
 彼女だけが奇跡的に助かった少女。しかし、彼女は事故の後遺症で
 たった1日しか記憶を保てない記憶障害を持っていた。
 今日起こった出来事は、明日になれば全て忘れてしまう。
 そんなパコと接するうちに大貫は、パコのために、病院の皆に頭を下げ、
 パコの愛読する絵本の演劇をしたいと入院患者たちに協力を求める。

■感想 ☆☆☆☆
 中島監督ならでは、のポップでカラフルな映像の嵐。
 そのカラフルな映像とスピーディな展開が私を無理なく「御伽噺」の
 世界へ連れて行ってくれた。
 オーバーアクションな演技、奇抜な衣装とメイク、めまぐるしく
 現れるCG。どれもこれもが過剰だけれど、この過剰さが作りあげる
 世界がややありがちな「泣ける」物語を、唯一無二の「泣ける」だけでは
 終わらない個性的な作品にしてくれているように感じた。

 アヤカ・ウィルソンの無垢な笑顔とかわいらしい声にこちらまで
 笑顔になる。彼女の笑顔と演技があったからこそ、
 意地悪じじいだった大貫の豹変振りを説得できたのではないかと思う。
 アベサダヲと上川さん、國村さんは舞台人らしい演技力で、
 奇妙奇天烈な自分たちの役柄を力技で演じ、小池さん、土屋さんは
 「女優」や「女性」、「モデル」といった枠組に縛られることなく、
 自分たちの役柄を強烈に痛快に演じていた。その壊れっぷり
 突き抜けっぷりがとにかく爽快だ。

 そして、役所さん。
 前半のクライマックスで彼が医者に
 「涙はどうやったら止まるんだ?」
 と質問しながら大泣きし続ける場面は圧巻。

 悲しいときは涙が止まるまで泣き続ける。
 悲しみと向き合わない限り、悲しみから逃れることはできない。

 大げさすぎるほど過剰な演出の中で、映画を貫くメッセージは
 ひっそりと訴えられる。その声高に伝えられないメッセージが
 心に残る映画だった。

ヤッターマン

2010年04月29日 10時01分03秒 | 映画鑑賞
14.ヤッターマン

■2009年公開・日本
■監督: 三池崇史
■出演
 櫻井翔、福田沙紀、生瀬勝久、ケンドーコバヤシ
 岡本杏理、阿部サダヲ、深田恭子

■ストーリ
 4つ揃うと願いが叶うという伝説のドクロストーンを巡って、
 いつものように週に一度の戦いを繰り広げるヤッターマンと、
 自称「泥棒の神様」ドクロベエ率いるドロンボー一味。
 考古学者の海江田博士が発見したドクロストーンのひとつを
 娘の翔子に託したまま姿を消してしまう。行方不明になった
 父の捜索を翔子から依頼されたヤッターマンたちは、ドロンボー達と
 激戦を繰り広げる。

■感想 ☆☆☆☆
 おもしろかった!この一言に尽きます。
 難しいことなんて考えず、楽しく、愉快に笑って2時間を過ごしました。
 原作「ヤッターマン」を少しでも見たことがある人であれば
 更に楽しめるのではないかと。
 あぁ!こんなところでも原作へのオマージュが!
 と発見を楽しみながら見ていました。

 原作「ヤッターマン」ならではのゆるくて「昭和」のにおいがする
 テンポで畳み掛けられるコメディ。このゆったりとした時間の流れが
 世代を問わず、家族全員で見れる作品に仕立て上げているのだと
 思います。
 すごくふざけた作品なのに、そのふざけた部分を真剣に丁寧に
 作り上げているからこそ、面白いんだろうな。
 特にドロンボー一味は3人共に魅力的。
 映画版では、原作より真剣に「恋愛」部分を加味してあって、
 ドロンジョがヤッターマンに募らせる想いとか、
 ヤッターマンに惹かれていくドロンジョを切なく見つめ続ける
 ボヤッキーとか、そのふたりの感情の流れをきちんと分かっていて
 慮りながら見守るトンズラーとか、とにかく3人の切なく優しい
 気持ちが印象的でした。原作も憎めない三人組ですが、
 原作以上に憎めない、思わず応援したくなるドロンボー一味となっています。
 特に生瀬さん演じるボヤッキーは秀逸。
 本来はそんなに似ていないはずなのに、姿かたち、しゃべり方、
 すべてが原作そのままです。そして、原作そのままにも関わらず、
 演じ方、キャラクターで原作より数倍、切なく共感できる
 キャラクターになっています。

 それにしても、美しいのが舞台美術。セットもマシーンも
 どれも作りこまれていて、ヤッターマンの世界観が確立していました。
 あぁ、こういう「信念」を感じる映画、大好きだなー。

ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史

2010年04月29日 09時37分08秒 | 映画鑑賞
13.ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史
■2009年公開 日本
■監督:腰繁男
■脚本:真保裕一
■出演者
 水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一
 香里奈、アヤカ・ウィルソン、チュートリアル、大塚明夫
■ストーリ
 超空間の事故で、のび太の部屋の畳とロップルの宇宙船の倉庫が
 つながった。宇宙の惑星、コーヤコーヤ星を遊び場にしたのび太は、
 ロップルやチャミーと共に楽しい日々を過ごす。
 しかし、コーヤコーヤ星の鉱石「ガルタイト」の独占を企む大企業
 ガルタイト鉱業がコーヤコーヤ星に移住しはじめた開拓住民の
 追い出しを画策していた。執拗な脅迫や嫌がらせにあう住民たち。
 のび太らは、ロップルたちの生活を守るため、ガルタイト鉱業に戦いを挑む。

■感想 ☆☆☆
 毎年、見てしまうドラえもん映画です。
 さすがに映画館には行かないものの、新作公開時に必ずテレビ放送
 してくれる昨年のドラえもん映画は、私の毎年恒例の楽しみ。
 今回も1981年版のリメイク。しかし、私は初見でした。

 いつものことながら、映画になると正義感を増し、勇気を出して
 悪に挑むのびたくんやジャイアンたちがかっこよくて素敵です。
 映画シリーズを見ていると、のびたくんは、少し弱虫だったり
 少し怠け者だったりするけれど、基本的にはとてもやさしくて
 心を開いた相手、仲良くなった人のこととのつながりを大切に
 する人なんだな、と思うのです。出会いを途切れさせない。
 その優しさが魅力だな、と思いました。

 ただ、今回の映画は、のびたくんたちよりもゲストのほうがメイン。
 ゲストをめぐる「家族愛」や「開拓」に重点がおかれていたため
 私がいつも楽しみにしているのびたくんとジャイアンたちの
 友情はあまり描かれておらず、肩透かしを食ってしまいました。

 でも、やっぱり好きです。
 ドラえもんものびたもジャイアンも。
 幼馴染という存在や、「小学生」という年頃の子達の姿や
 「新」となっていても、やはりどこか昭和を思わせる
 懐かしい風景が心を暖かくしてくれます。
 私はドラえもんで描かれる世界が好きなんだなー、
 と映画を見るたびに実感します。
 来年の映画も楽しみ。