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1982年連載 生活空間再考5「土地は商品ではない」 市街化調整区域であっても土地が商品化されると市街化が進む

2016年06月28日 | studywork

1982 生活空間再考5 「土地は商品ではない」 建築とまちづくり誌

 関東平野の田園を走っているとき、宅地が続いたり、農地が広がったり、平地林がこんもりしたりする風景を見ても、どこから市街化区域でどこが市街化調整区域かは見分けつかない。というか、ふだんは市街化区域か市街化調整区域かは気にもとめることもない。
 久しぶりに同じ道を走っていて、宅地化が進み、まるで違った道を走っているような感じになって驚かされたことは少なくない。
 計画的に市街化の整備を進める市街化区域、市街化を抑制し無秩序なスプロールを抑える市街化調整区域の線引きがあるはずだが、市街化の波が調整区域に侵出しているのはなぜか?。
 30数年前、そんな疑問を感じて川口市の市街化区域に位置する農村と、すぐ近くの旧浦和市=現さいたま市の市街化調整区域に位置する農村の土地利用変化を調べ、農家の聞き取りを行った。
 
 その結果、旧浦和市のDは市街化調整区域内であるにもかかわらず、市街化が抑えられていないということ、川口市のSでは営農を希望する人が50%も住んでいるにもかかわらず、市街化を促進する地域に指定され、現実に市街化が進行していることが分かった。
 もし線引きによる区分を是とした上で、計画的に市街化を進めようとする都市の論理の立場に立てば、Dでは市街化調整区域を至急はずすべしとなる。一方、Sは市街化を抑え営農環境を保全するため直ちに調整区域とするべしとなる。
 さらには、Sに市街化調整区域をかけたとしてもDの如く市街化の進むことがあり得るならば、線引きによって市街化を制御することはかなり難しいことになる。

 土地利用変化をみると、特徴的なパターンとして、①田畑→(場合によっては造成→)宅地、②田→休耕→造成→宅地、③沼・崖→造成→宅地 の三種をあげることができる。
 
 ところが、Dに隣り合うTでは都市的交通網や業務用施設が無いため、宅地化が広がらず、営農環境が保全されている。そのTでも道路や業務施設などの開発がなされると、それがきっかけになりDと同じような市街化が進行すると考えられる。

 S・D・Tの市街化の様態の差異は、目に見える形をとっているか、目に見えにくい形をとっているかの差異であって、都市の論理≒商品としての土地に変質し得る状況にあることでは同じといえる。
 農家層の営農意欲を尊重し、伝統的な農村景観を保全していくためには、ムラの論理による、農地を資源としての土地とみる視点が欠かせないのである。

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