風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

ナオキの相対性理論

2017年05月20日 | 「新エッセイ集2017」

ナオキという、小学4年生の孫がいる。
学校でのあれこれを、よく母親に話すという。その話をまた母親から聞く。なかなか面白い。
先日、相対性理論のことを口にしたら、クラスの誰も知らなかったと言う。
え? 相対性理論? ぼくは耳を疑った。そんなことを知っている小学生がいたら、このじじが教えてもらいたいものだ。もしかして、きみは天才か秀才か。なんでそんな言葉を知っているのかと、驚いた。
光速? 重力? そんな言葉を耳にするだけで、ぼくはアレルギーを起こしてしまう人間なんだよ。そんな難問をこちらにふられてはかなわないと、とてもびびった。

話の続きを聞いていると、どうやら彼は相対性理論という言葉を知っているだけのようだった。それも漫画の本で知ったという。相対性理論という言葉の格好よさにショックを受け、しっかり言葉だけを自分のものにしてしまったようだ。
なにかしら格好いいものが道に落ちていた。それを拾ってポケットに入れた。それの使い道までは考えなかった。そんなところだろうか。
そんな淡白さは、やはり遺伝かもしれない。もう一歩さらに踏み込む探究心があれば、すこしはノーベル賞にも近づけるのではないか。まあ仕方ないけど。
おかげで相対性理論の追及の矛先が、こちらに向いてくることがなくて助かった。ぼくは早速、その漫画の本を探してみようかと考えている。

また別のときには、ぼくらはなんで生きてるんやろ、というのが話題になったという。
ああ、またまた難問。それが小学4年生の話題かい? じじにも答えられそうにない。じじはこれまで生きてきたのではなく、ただ生かされてきたのだ。のんべんだらりと生きてしまったのだ。そんな質問、頼むからこっちに振ったりしないでくれよ。パス、パス。スリーパス。
だが、彼らには簡単に結論が出たらしい。
いちばん誰もが納得した答えは、死なないために生きている、ということだったという。なあ〜んだ。

そうか、なるほどな。みんな動物のようにしっかり生きてるわけだ。
何のために生きているかなどと考えるときは、きっと生きることが嫌になっているときなんだ。死なないために生きるという、ただ単純に、生きる力が弱くなっているということなんだろう。
そういえば大人だって、サプリやビタミン剤を飲みながら、死なないように必死で走りながら生きてるじゃないか。生きることは死ぬことよりも難しい、とも言うけれどね。

また話は変わる。
ナオキには特に親しい友達がふたりいるという。色が黒くて体格のいいハーフのタロー君と、普通の子のヒロ君。
10年後、3人はやーやーと手を振りながら再会するという、3人だけの未来の筋書きができているらしい。そのとき、タロー君はプロ野球選手、ヒロ君はリストラされたサラリーマン、ナオキは世界的なテニスプレーヤー(えっ、まじ?)。
タロー君は足も速いし体力も群を抜いているから、プロのアスリートも夢ではないという。
だが、ナオキの場合は本人も信じがたいミスキャスト。徒競走はびり、スイミングスクールの進級も超スロー。ただ、両親のテニスに付き合わされ、ときどきラケットだけは振り回している。そんな実績だけで、タロー君に世界的と認められてしまったようだ。

可哀相なのはリストラされるヒロ君。父親は郵便局員で、超安泰なサラリーマン家庭に育っている。いじめられっ子でも虚弱な子でもないらしい。なぜ彼がリストラされるのか不思議だが、そこは少年たちの世界。
この3人の間には、ボケとツッコミではないけれど、なにかお笑い的な設定でもあるのかもしれない。お笑いや漫画の世界では、負け組もまたヒーローであったりするのだ。筋書きの先には、どんでん返しも仕組まれていたりして。

人生は筋書きのないドラマ、とも言われる。
少年たちよ、10年はあっという間だよ。少年老い易く学成り難し 一寸の光陰軽んずべからず、なのだ。じじはつくづく軽んじたことを後悔している。
光陰矢の如し、ともいうが、光と同じ速さで光を見ようとしたアインシュタインは、矢のような光陰をどうやって捉えたんだろうね。



コメント (3)    この記事についてブログを書く
« ニセアカシアの花が咲くころ | トップ | インディアンの森 »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (テクテク)
2017-05-22 10:56:42
yoyoさん、こんにつわ。

私も今まで何度か、よく似たことを考えた事があります。
(人間って何だろう、何の為にいるんだろう)

でも、何の答えも出ず、訳が分からなくなっていました。
私は本らしきものは苦手で読まないです(^-^;
yoyoさんの書いたものは、
2回か3回に分けて読むんですよ(^-^;

呆れないでくださいね。
返信する
Unknown (テクテク)
2017-05-22 10:59:32
ひぇ~~~ッ!(◎_◎;)

こんにつわ。になってしまいましたm(__)m
ごめんなさい。
返信する
こんにつわ! (yo-yo)
2017-05-22 20:33:45
テクテクさん、こんにつわ。

これ、新語大賞いけそうですね。
今日(こんにち)と本日(ほんじつ)が合体したようで、
ある意味、とても丁寧な言葉とも言えそう。
言葉の真実って、
どこに転がっているか分かりませんね。
パソコンやスマホの誤変換も、
けっこう楽しかったりしますもんね。

返信する

「新エッセイ集2017」」カテゴリの最新記事