風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

風の十六羅漢

2010年04月29日 | 詩集「風のことば」
Rakan


ひとりひとりの
誰かに似ている石の仏たち
きのうまで近くにいた
でも今日はいない


だれも知らない
過ぎ去った日のはるけさを
石の視界は
どこまで届いているのだろう


日没まで草をふんで
ボールを追った
十六人の不動の野手たち
いまも帰ってこない


だれも知らない
まだ来ない日のはるけさを
石のことばも
風のようにたよりない


そ知らぬ顔ばかり
草むらのボールも見捨てられている
みんなもう
羅漢になってしまったのか


(2008)


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