風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

風のあかり(精霊流し)

2010年04月29日 | 詩集「風のことば」
Tourou1


夏の終り
ひとびとは小さな舟に火をともし
山深い夜の川を
すこしだけ明るくする


冷たく澄んだ水を飲み
あふれる流れを浴びて生きた
名もない魂が火となって
ふたたび水に帰る


死んだ人との幾夜か
語る言葉もなかったけれど
ともされた火に
光の言葉がみえた


生を明らめ死を明らむ
つぎつぎと火は
わずかな瀬を照らしながら
無明の闇へと消えていく


すべての火が
花火とともに昇天し
ふたたび夜の川がもどると
人々はまた明かりの方へと帰ってゆく



(2008)


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