万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌0537 言清く0475

2012年03月15日 | 万葉短歌

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万葉短歌0537 言清くの0475

言清く いともな言ひそ 一日だに
君いしなくは あへかたきかも  高田女王

0475     万葉短歌0537 ShuB447 2012-0315-man0537

□こときよく いともないひそ ひとひだに
 きみいしなくは あへかたきかも
○高田女王(たかたの おほきみ)=「前歌の作者門部王の兄高安王の娘。」講談社版『万葉集事典』には、「(高安之女) 長皇子の孫、高安王の女」。
【編者注】題詞原文は、「高田女王贈今城王歌六首」。その第一首。今城王(いまきの おほきみ)については第519歌参照。
【訓注】言(こと=事)。いとも(甚毛)。いし(伊之)。あへかたきかも(痛寸敢物)。


万葉短歌0536 意宇の海の0474

2012年03月14日 | 万葉短歌

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万葉短歌0536 意宇の海の0474

意宇の海の 潮干の潟の 片思に
思ひや行かむ 道の長手を  門部王

0474     万葉短歌0536 ShuB445 2012-0314-man0536

□おうのうみの しほひのかたの かたもひに
 おもひやゆかむ みちのながてを
○門部王(かどへの おほきみ)=第310歌参照。
【編者注】長い脚注によると、作者(長皇子の孫)は出雲守赴任中に管内の「娘子(をとめ)」を娶った。しばらく縁遠かったが、また「愛(いつく)しぶる心」、熱愛関係が戻って、帰任向都に際して娘子へ贈った歌。
【訓注】片思(かたもひ=片念)。思ひ(おもひ=思)。


万葉短歌0535 敷栲の0473

2012年03月13日 | 万葉短歌

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万葉短歌0535 敷栲の0473

敷栲の 手枕まかず 間置きて
年ぞ経にける 逢はなく思へば  安貴王

0473     万葉短歌0535 ShuB442 2012-0313-man0535

□しきたへの たまくらまかず あひだおきて
 としぞへにける あはなくおもへば
○安貴王(あきの おほきみ)=第306歌参照。
【編者注】第534歌(長歌)への反歌。作者は志貴皇子の孫(とされる)。「不敬之罪」に問われて「本郷(もとつくに)」に帰された。愛する妻「八上采女(やかみの うねめ)」を思うとたまらない、と作歌経緯が左注にある。
【訓注】逢はなく(あはなく=不相)。


万葉短歌0533 難波潟0472

2012年03月12日 | 万葉短歌

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万葉短歌0533 難波潟0472

難波潟 潮干のなごり 飽くまでに
人の見む子を 我れし羨しも  大伴宿奈麻呂

0472     万葉短歌0533 ShuB440 2012-0312-man0533

□なにはがた しほひのなごり あくまでに
 ひとのみむこを われしともしも
○大伴宿奈麻呂(おほともの すくなまろ)=第532歌参照。
【編者注】「大伴宿奈麻呂宿祢歌二首」の第二首。
【訓注】我れ(われ=吾)。羨し(ともし)。


万葉短歌0532 うちひさす0471

2012年03月11日 | 万葉短歌

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万葉短歌0532 うちひさす0471

うちひさす 宮に行く子を ま悲しみ
留むれば苦し 遣ればすべなし  大伴宿奈麻呂

0471     万葉短歌0532 ShuB440 2012-0311-man0532

□うちひさす みやにゆくこを まかなしみ
 とむればくるし やればすべなし
○大伴宿奈麻呂(おほともの すくなまろ)=題詞原文では「大伴宿奈麻呂宿祢」。「大伴安麻呂の第三子。異母妹の坂上郎女と結婚して、大嬢(おほいらつめ)と二嬢(おといらつめ)とを設けた。神亀五年(728)に他界したらしい。姓を名の下に書くのは敬称。」
【編者注】題詞原文は、「大伴宿奈麻呂宿祢歌二首」。その第一首。題詞脚注に、「佐保大納言卿之第三子也」。
【訓注】うちひさす(打日指)。遣ればすべなし(聴去者為便無)。


万葉短歌0531 梓弓0470

2012年03月10日 | 万葉短歌

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万葉短歌0531 梓弓0470

梓弓 爪引く夜音の 遠音にも
君が御幸を 聞かくしよしも  海上女王

0470     万葉短歌0531 ShuB437 2012-0310-man0531

□あづさゆみ つまびくよとの とほとにも
 きみがみゆきを きかくしよしも
○海上女王(うなかみの おほきみ)=「志貴皇子(1-51参照)の娘。養老七年(723)従四位下。翌神亀元年に従三位。」
【編者注】題詞原文は「海上女王奉和歌一首」、脚注に「志貴皇子之女也」。
【訓注】爪引く(つまびく=爪引)。夜音(よと)。遠音(とほと)。


万葉短歌0530 赤駒の0469

2012年03月09日 | 万葉短歌

万葉短歌0530 赤駒の0469

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万葉短歌0530 赤駒の0469

赤駒の 越ゆる馬柵の 標結ひし
妹が心は 疑ひもなし  聖武天皇

0469     万葉短歌0530 ShuB437 2012-0309-man0530

□あかごまの こゆるうませの しめゆひし
 いもがこころは うたがひもなし
○聖武天皇(しゃうむ てんわう)=題詞原文では単に「天皇」。「文武天皇の子。母は藤原不比等(ふぢはらの ふひと)の娘、藤原宮子(みやこ)。ここに単に<天皇>とあるのは、聖武朝を現在時点に置いたもので、巻四などがまとめられた時期が聖武朝であることを示している。」
【編者注】題詞原文は、「天皇賜海上女王御歌一首」、脚注に「寧楽宮即位天皇也」。海上女王(うなかみの おほきみ)については、次歌参照。
【編者注-旋頭歌(せどうか)】直前の第529歌は、「又大伴坂上郎女歌一首」と題する旋頭歌である。「旋頭歌とは、頭句(三句)を再び旋(めぐ)らす歌の意で、五七七を繰り返す六句よりなる歌をいう。」 集中に62首(16-3879 を含めて63首)。
【訓注】馬柵(うませ)。結ひ(ゆひ=緘)。心(こころ=情)。疑ひもなし(うたがひもなし=疑毛奈思)。


万葉短歌0528 千鳥鳴く0468

2012年03月08日 | 万葉短歌

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万葉短歌0528 千鳥鳴く0468

千鳥鳴く 佐保の川門の 瀬を広み
打橋渡す 汝が来と思へば  大伴郎女

0468     万葉短歌0528 ShuB431 2012-0308-man0528

□ちどりなく さほのかはとの せをひろみ
 うちはしわたす ながくとおもへば
○大伴郎女(おほともの いらつめ)=第380歌、第519歌参照。
【編者注】「大伴郎女和歌四首」の第四首。
【左注】原文六十字。大意は次のとおり。「大伴郎女は大伴安麻呂の娘で、穂積皇子と結婚してとても愛されていた。皇子の死後、藤原麻呂に求婚された。郎女は坂上の里に住んでいたから、坂上郎女とも呼ばれた。」
【訓注】千鳥(ちどり=千鳥)。汝(な=奈)。


万葉短歌0527 来むと言ふも0467

2012年03月07日 | 万葉短歌

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万葉短歌0527 来むと言ふも0467

来むと言ふも 来ぬ時あるを 来じと言ふを
来むとは待たじ 来じと言ふものを  大伴郎女

0467     万葉短歌0527 ShuB431 2012-0307-man0527

□こむといふも こぬときあるを こじといふを
 こむとはまたじ こじといふものを
○大伴郎女(おほともの いらつめ)=第380歌、第519歌参照。
【編者注】「大伴郎女和歌四首」の第三首。
【原文】「将来云毛 不来時有乎 不来云乎 将来常者不待 不来云物乎」


万葉短歌0526 千鳥鳴く0466

2012年03月06日 | 万葉短歌

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万葉短歌0526 千鳥鳴く0466

千鳥鳴く 佐保の川瀬の さざれ波
やむ時もなし 我が恋ふらくは  大伴郎女

0466     万葉短歌0526 ShuB431 2012-0306-man0526

□ちどりなく さほのかはせの さざれなみ
 やむときもなし あがこふらくは
○大伴郎女(おほともの いらつめ)=第380歌、第519歌参照。
【編者注】「大伴郎女和歌四首」の第二首。
【訓注】千鳥(ちどり=千鳥)。さざれ波(さざれなみ=小波)。我が(あが=吾)。


万葉短歌0525 佐保川の0465

2012年03月05日 | 万葉短歌

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万葉短歌0525 佐保川の0465

佐保川の 小石踏み渡り ぬばたまの
黒馬来る夜は 年にもあらぬか  大伴郎女

0465     万葉短歌0525 ShuB431 2012-0305-man0525

□さほがはの こいしふみわたり ぬばたまの
 くろまくるよは としにもあらぬか
○大伴郎女(おほともの いらつめ)=第380歌、第519歌参照。
【編者注】題詞原文は「大伴郎女和歌四首」。その第一首。
【訓注】ぬばたま(夜干玉)。


万葉短歌0524 むし衾0464

2012年03月04日 | 万葉短歌

万葉短歌0524 むし衾0464

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万葉短歌0524 むし衾0464

むし衾 なごやが下に 伏せれども
妹とし寝ねば 肌し寒しも  藤原麻呂

0464     万葉短歌0524 ShuB429 2012-0304-man0524

□むしぶすま なごやがしたに ふせれども
 いもとしねねば はだしさむしも
○藤原麻呂(ふぢはらの まろ)=第523歌参照。
【編者注】「京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首」の第三首。
【訓注】むし衾(むしぶすま=蒸被)。なごやが下に(なごやがしたに=奈胡也我下丹)。寝(ね=宿)。肌(はだ=肌)。寒(さむ=寒)。


万葉短歌0523 よく渡る0463

2012年03月03日 | 万葉短歌

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万葉短歌0523 よく渡る0463

よく渡る 人は年にも ありといふを
いつの間にぞも 我が恋ひにける  藤原麻呂

0463     万葉短歌0523 ShuB429 2012-0303-man0523

□よくわたる ひとはとしにも ありといふを
 いつのまにぞも あがこひにける
○藤原麻呂(ふぢはらの まろ)=第523歌参照。
【編者注】「京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首」の第二首。
【訓注】我が恋ひ(あがこひ=吾恋)。


万葉短歌0522 娘子らが0462

2012年03月02日 | 万葉短歌

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万葉短歌0522 娘子らが0462

娘子らが 玉櫛笥なる 玉櫛の
神さびけむも 妹に逢はずあれば  藤原麻呂

0462     万葉短歌0522 ShuB429 2012-0302-man0522

□をとめらが たまくしげなる たまくしの
 かむさびけむも いもにあはずあれば
○藤原麻呂(ふぢはらの まろ)=題詞原文には「京職(きゃうしき)藤原大夫」。「不比等の第四子で京家の祖。養老元年(717)従五位下。同五年六月、従四位上で左京職・右京職双方の大夫(長官)となる。天平九年(737)没。年四十三。<大夫>は四位・五位の官人への尊称。」
【編者注】題詞原文は、「京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首」。その第一首。また、題詞脚注原文に「卿諱曰麻呂也」。
【編者注-京職】依拠本の訓は「きゃうしき」、講談社版では「みさとづかさ」。令制の官職名。「京中の戸籍・租税・訴訟・交通などを掌る。左京職・右京食に分かれる。」
【訓注】娘子(をとめ=■嬬)[■=偏女、旁感]。


万葉短歌0521 庭に立つ0461

2012年03月01日 | 万葉短歌

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万葉短歌0521 庭に立つ0461

庭に立つ 麻手刈り干し 布曝す
東女を 忘れたまふな  常陸娘子

0461     万葉短歌0521 ShuB427 2012-0301-man0521

□にはにたつ あさでかりほし ぬのさらす
 あづまをみなを わすれたまふな
○常陸娘子(ひたちの をとめ)=「常陸の国の娘子、の意。遊行女婦[うかれめ]」。
【編者注】題詞原文は、「藤原宇合大夫(ふぢはらの うまかひの まへつきみ)遷任上京時常陸娘子贈歌一首」。
【編者注-藤原宇合】第72歌の作者、同所参照。
【訓注】東女(あづまをみな=東女)。