A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

分家も本家に負けずに元祖サドメル・トリビュートを・・・

2014-09-14 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Thanks To Thad / Monday Night Big Band Plays The Music Of The Thad Jones

有名な和菓子屋には、代々引き継がれている老舗の伝統の味や技がある。時流に乗って新しい商品開発をしても、そこの伝統的な名品を上回る新商品を生み出すのはなかなか難しい。
代が替わって、全く新しい領域にチャレンジすることもあるが、それがその店にとって吉とでるか凶とでるかは運と実力次第。仮に上手く行ったとしても、先代からの教えは守らねばならないことが多い。

老舗のバンドもある種似た所がある。先日来日したPreservation Hall Jazz Bandはこれまで伝統商品しか扱ってこなかったが、新しい領域にチャレンジ。悪くはないが新しさを求めるばかりに気を取られ、昔からの伝統の味付けだけは忘れないでほしいものだ。

ビッグバンドの世界もある種同じようなものだと思う。
今年もカウントベイシーオーケストラが来週来日する。ベイシー御大が亡くなってから、リーダーは何度も変わったが、昔のベイシーオーケストラの味を守り通している。今回もきっと本家ベイシーサウンドを堪能させてくれるであろう。エリントンオーケストラも然りである。

サドジョーンズ&メルルイスジャズオーケストラが生まれたのは1966年。そして、サドジョーンズがバンドを去った1978年で双頭バンドは12年間の活動の幕を閉じた。
残されたメルルイスはバンドを引き継いだが、それはメルルイスのオーケストラであった。一時は、サドジョーンズの譜面も封印したということは、一時全く別のオーケストラになったといってもいい。その後、譜面は解禁され、現在のバンガードジャズオーケストラに繋がる。
新装開店して一度メニューから外れた商品を、「昔懐かしいメニューが復活しています」といっているようだ。確かに、それなりの味はするが何か先代の作った物とは違うといった感じがしない訳ではない。特に、先代の味付けを実際に味わったことのある者にとっては。
という点で、サドメルのオーケストラはサドジョーンズが去った時点で幕を閉じたと言ってもいいだろう。

メルルイスの元を去ったサドジョーンズは、その後ヨーロッパに渡り「エクリプス」というビッグバンドを立ち上げる。サドメルのある部分は、メルルイスオーケストラに残されたが、実はサドメルの多くはそのままこのエクリプスに引き継がれた。
というのも、サドメルのオーケストラの中核を占めた、曲、アレンジ、そして指揮といったものはすべてといって程、サドジョーンズ自身によって提供されていた。その本人がバンドを替われば、そのままサドジョーンズに付いていくと見る方が自然だろう。

サドジョーンズは、コペンハーゲンを拠点として活動し、エクリプスや地元のバンドにも曲やアレンジを提供したが、実は、これらがサドジョーンズオーケストラの2代目という事になる。結局、メルルイスとは袂を分かって2つのバンドに分かれたことになる。

しかし、サドジョーンズ本人は1984年の暮れに再びアメリカに戻り、今度は古巣のカウントベイシーオーケストラのリーダーとなる。流石にベイシーバンドは看板を掛け替える訳にはいかず、サドジョーンズオーケストラはヨーロッパに置き去りにされた。
さらに、サドジョーンズ自身は直後に病気が悪化し1986年には再びヨーロッパに戻り、コペンハーゲンでこの世を去ってしまう。再びサドジョーンズオーケストラが生まれることは無かった。

ヨーロッパで作ったエクリプスというオーケストラは、アルバムも残されている。デンマークに活動拠点を置いていたが、ヨーロッパ各地のミュージシャンが集まっていて活動はヨーロッパ全体に広がっていた。

メンバーの一人にスウェーデンのテナーサックス奏者のJorgen Nilssonがいた。コペンハーゲンとは海峡を挟んで反対側のスウェーデンのMalmoから、ホバークラフト通勤でコペンハーゲンに渡り、エクリプスに参加していた。
そのNilssonがジョーンズの死後、1988年に今度は自分自身の地元スウェーデンのMalmo(マルメ)でサドジョーンズの意を引き継いだビッグバンドThe Monday Night Bigbandを立ち上げる。

このプロジェクトはとにかく継続的に演奏を続けることを目標に、そして元祖サドメルオーケストラを見習って毎週月曜日にライブを行う事になった。
首都のストックホルムならまだしも、このマルメは人口20万程度の一地方都市、果たしてどこまで続くかと思われたのだが・・・。

その後、対岸のコペンハーデンとの間を繋ぐ橋やトンネルができたことも幸いしたのだろう、人の行き来も増加し人口も増加し、街は活況を呈した。

その結果、どこまで続くか分からなかった「月曜日の夜のプロジェクト」も、10年間で430回のライブを開くまで徐々に人気が出て、地元だけでなく、ヨーロッパ中でコンサートを開き、テレビやラジオにも出演するほどまでになった。

まさに、バンガードオーケストラがしっかり本家を守っている一方で、分家もちゃんと独立していたという事になる。
となると、最後はやはり本家への挨拶と報告。1996年4月29日にヴィレッジヴァンガードの創設者マックスゴードンの未亡人のロレインゴードンからの招きもあり、バンドメンバー揃ってニューヨークのヴィレッジヴァンガードを訪れ、無事に、分家の演奏を本家の本拠地で行う事が出来た。

これで一区切りということもあったのだろう。その年の暮れにはサドジョーンズに捧げるこのアルバムが制作された。ジャケット写真もサドジョーンズの顔写真を使用し、トリビュートアルバムではあるが、本家のオーソライズを受けた公式版となった。

全編サドジョーンズゆかりの曲、歌物を含め、サドジョーンズの作曲、アレンジだが、中に2曲、初めてアルバムになったこのアルバムでしか聴けない曲がある。
ひとつは、組曲の3部作”Return Journey”。サドジョーンズがエクリプスのために作った曲で、これまで演奏は数多く行わたれたが、レコーディングの機会が無かった。5/4拍子のRitualが実に印象的だ。
そして、もう一曲は”Mean What You Say”。
これは、サドメルの初アルバムも入っている古い曲だが、実はこのアルバムのアレンジはVer2。
サドジョーンズは筆も早く、譜面の手直しも良く行ったと聞いた事がある。一方で、譜面の管理も悪かったと。したがって、今残されている譜面も本当のオリジナルかどうかは興味があるところだが、このVer,2はちょっとした手直しではなく、1980年に全面的に書き直された物だそうだ。
良く演奏はされていたそうだが、これもそれまでレコーディングされた事がなく、今回が初アルバム登場となった。きっと実際に演奏する方が聴けばすぐに分かるとは思うのだが、口ではなかなか説明できない。

サドジョーンズの曲を演奏するバンドは多い、しかし多くの場合アルバムやコンサートのプログラムの中の一部だけ。ビッグバンドの場合でも、アレンジを微妙に変える事が多い。
サドジョーンズのアレンジを引き継ぎ、これだけの演奏回数をこなしているバンドは他には無い。分家と言えども本家に負けない立派な跡継ぎに育っていた。

1. Crackdown          Thad Jones 7:17
2. Evil Man Blues 4:06
3. Return Journey       Thad Jones
Pt. 1: Return Journey 4:47
   Pt. 2: Ritual 8:33
  Pt. 3: Rejoice 4:49
4. Quietude       Thad Jones 5:33
5. Hallelujah, I Love Her So   Ray Charles 3:07
8. The Second Race       Thad Jones 5:29
9. Evol Deklaw Ni      Thad Jones 10:41
10. Mean What You Say     Thad Jones 9:52
11. Back Bone         Thad Jones 6:22

Monday Night Big Band

Anders Gustavsson (tp)
Fredrik Davidsson (tp)
Niklas Fredin (tp,vol)
John Perry (tp,vol)
Ola Åkerman (tb)
Peter Dahlgren (tb)
Ola Nordqvist (tb)
Bjrn Hängsel (btb)
Hakan Caesar (as,ss)
Ulf Halmström (as)
Karl-Martin Almqvist (ts)
Fredrik Carlquist (ts)
Ulf Fagerberg (bs)

Kriste Palmqvist (g)
Jan Lundgren (p)
Jan Karlsson (b)
Rasmus Kihberg (ds)
Ola Bothzen (per)

Jorgen Nilsson Conductor, Leader
Peter Schmidlin Executive Producer
Recording Engineer : Hans Larsson





THANKS TO THAD-PLAYS THE MUSIC OF T
クリエーター情報なし
TCB
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする