A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

日本の伝統的な曲でNewportのジャズファンを魅了したのは・・・・

2014-09-12 | MY FAVORITE ALBUM

Sharps & Flats in Newport

先日、Akira Tana率いる”Otomowa”を紹介した。
日本の曲をジャズで演奏して地元ではファンを掴んでいるようだが・・・

1967年、沈滞気味だったビッグバンドが活況を呈してきた年だ。
前年編成されたサド・ジョーンズ&メルルイスオーケストラ以外にも、バディーリッチ、ドンエリス、デュークピアソンなどのビッグバンドも続々と産声を上げていった。もちろん、ベイシー、エリントン、ハーマンといった老舗のオーケストラも復活の兆しを見せてきた年だ。

当時のジャズフェスティバルの中心といえばニューポートジャズフェスティバル。
この檜舞台にも、常連のベイシーに交じって、バディーリッチ、ドンエリスといった新興グループも出演した。
それに負けじと、ハーマンのオーケストラや、ライオネルハンプトンもリユニオンバンドと称して久々にフルバンド編成で出演を果たしフェスティバルの取りを務めた。

この1967年のニューポートにもう一つビッグバンドが出演した。日本の誇る原信夫とジャープス&フラッツであった。
フェスティバル3日目の7月2日の午後のステージ、ヴァイブプレーヤーが勢ぞろいしたVibe workshopに続いての、午後のステージのラストで登場。

当然、当時アメリカでは無名のバンド、プログラムには、

From Tokyo, Japan The Sharps and Flats and 18piece orchestra under the direction of Nobuo Hara

と記されていた、名前だけでは通じず注釈が必要だったようだ。
聴衆達も、有名プレーヤーに交じって登場した、遠く東洋からやってきたビッグバンドが一体どんな演奏をするのか興味津々であったろう。

シャープにとっても初のアメリカ遠征であった。今では、ニューヨークまでの直行便があるが、当時は西海岸でさえ直行便がまだない時代、ニューヨークに行くだけでもまだ大変な時代。さらに、ニューポートの会場は、ニューヨークのダウンタウンからは遠く離れ、ボストンに近いロードアイランドのニューポート。ベイシーオーケストラが、マイアミとドンボ帰りをしたのとは大違いで、何日も前に現地入りし、初舞台に向けて入念な準備がなされた.
舞台に上がる前はかなり緊張をしていたようだが、リハーサルを聴いた関係者からは確かな手応えを感じていたようで、自信満々のステージを迎えたそうだ。

ジャープが現地で演奏したのは、すべて日本の曲。
サクラ・サクラ
梅ヶ枝の手洗鉢
腰天楽
ソーラン節
箱根八里
ソー・タイアード
阿波踊り

終わった時には、スタンディングオベーションの大喝采だったそうだ。

日本の古き良き曲を素材として前田憲男、山屋清、小川敏彦といった新進気鋭のアレンジャーがビッグバンドサウンドに仕立て上げ、さらに曲によって山本邦山の尺八を加えてプログラムを作り上げている。

このアルバムは、ライブではなく、この6曲にみだれ、古都を加えてスタジオで収録されたもの。会場の熱気は味わえないが、会場を沸かした演奏の素晴らしさを再現している。アレンジの演奏の完成度に、やはり尺八の音色というのも日本の心を訴える何かを持っているのだろう。

ニューポートの舞台で、アメリカのバンドも何か新しい試みをしようと立ち上がり始めた時期に、皆が取り上げる手垢のついたスタンダード曲を日本のバンドがやっただけでは何も感銘を与えることはできなかったと思う。このような大胆なプレゼンテーションがあっての評判であり、これがきっかけになって、その後の日本のジャズの認知、興隆にもつながったのではないか。

実際にどのような評判だったかをもう少し知りたいと思い、当時のスイングジャーナルを繰ってみた、67年9月号に載っていたが、大好評であったレポートに加え、初の海外遠征での珍道中ぶりも楽しく記事になっていた。

そして、ジャープの面々から見た他のオーケストラの感想も。
バディーリッチのバンドが凄いのはリッチだけ。バンドの演奏は決して自分達も負けない。ドンエリスの返拍子のドライブ感は格別、ステージでは拍子当てクイズをやっていたとか、ジョーヘンダーソンのリハーサルを見たけど初見の楽譜を読むのもおぼつかなかったのが、練習を重ねる度に音が変わってくる。日本の場合は最初からそこそこ良い音を出すのに、その後それ以上良くならないのは何故?、
とか彼らが生で聴いた感想が語られている。

ちなみに、シャープも現地に入って練習をし始めたら突然日本でやっていた時と音が変わり始めたとか。アメリカの空気がそれを可能にするのかもしれない。

この9月号の特集はこの年の7月17日に急死したジョンコルトレーンの追悼記事。確かに、このコルトレーンの死を境にビッグバンドだけでなく、ジャズ界も大きく変貌を遂げていった

1. さくらさくら
2. 越天楽
3. 箱根馬子唄
4. みだれ
5. ソーラン節
6. 梅ヶ枝の手洗鉢
7. 古都
8. ソー・タイアード
9. 阿波踊り

原 信夫 (Leader,ts)
森川 周三・福島 照之・佐波 博・篠原 国利 (tp)
谷山 忠男・鈴木 弘・宗清 洋・越智 治夫 (tb)
前川 元・谷口 和典・鈴木 孝二・森川 信幸 (sax)
小川 俊彦 (p)
野口 武義 (g)
竹内 弘 (b)
中村 吉夫 (ds)
山下 邦山 (尺八)



ニューポートのシャープス・アンド・フラッツ
原信夫とシャープス&フラッツ
日本コロムビア
コメント
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