A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

偶然生まれたドイツでのセッションだが、これがソロ活動のきっかけになったのかも・・・

2014-09-28 | PEPPER ADAMS
Twelfth & Pingree / Pepper Adams Quartet

1975年のサドメルのオーケストラは、もはや毎週月曜日ヴィレッジバンガードに出演するリハーサルバンドではなく、レギュラーオーケストラとして世界中をツアーするオーケストラになっていた。
1月にシカゴから始まり、ニューヨークに戻ってきたのは3月。各地での演奏もクラブ出演というよりは大きなホールや学校でのコンサートが増えていた。ニューヨークに戻ったのは暖かくなった3月の末。

しばらくサドメルの仕事はオフとなったが、アダムスはオフの間は、古巣のスタンケントンオーケストラに飛び入り参加したり、ディジーガレスピーのビッグバンドに加わってクラブ出演をしたり、相変わらずオフも精力的に活動して、次のツアーに備えていた。
一時回数が多かったスタジオワークは、サドメル自身のレコーディング参加以外この年は全くなく、ひたすらライブでの演奏に注力していた。

当初、サドメルの次のツアーは、ヨーロッパで6月から始まる予定であった。このツアーは、ヨーロッパからアメリカに一度帰るが、アメリカツアーの後はニューヨークには戻らずそのまま日本に向かい、日本では11月末まで一ケ月近く全国津々浦々を廻るという超ハードスケジュールだった。

メンバー達の多くはニューヨークでオフであったが、ベースのジョージムラーツの所に、以前ハウスベーシストを務めていたミュンヘンのドミシルのオーナーから出演依頼があった。
ツアー前、特にニューヨークでGigに参加する予定もなかったムラーツは、同僚のピアノのウォルターノーリスを誘って、一足先にヨーロッパに旅立った。2週間のクラブ出演とミュンヘンで一週間のオフを過ごして本隊の到着を待つ予定であった。

ドミシルのステージは2人のDUOで務めていたが、そこにツアー開始の予定が延びたとの連絡がリーダーから入る。さてどうしようかと困った2人に、ドミシルのオーナーが助け舟を出してくれた。そのままクラブへの出演を2週間延期してくれることになって2人は一安心。

折角のオーナーの好意に対して、「同じメンバー、演目では」という配慮が2人に働いたのだろう、ムラーツはニューヨークにまだいたペッパーアダムスに電話を入れた。「こういう事情だけど、もし時間がとれればミュンヘンに早く来ないかと。もし来れるのであれば、ドラムを加えたカルテットでやりたいのだけど・・・」ど。

アダムスはもちろん2つ返事でOKを出し、ニューヨークの仕事を片付け早速ミュンヘンに飛んだ。

ドラムにビリーブルックスを加えたカルテットで7月25日から8月13日までの3週間の出演がブッキングされた。アダムスがドイツに来るのであればという事で、地元Enjaのオーナー、Matthias Winckelmannは別のレコーディングを目論んだが、これは残念ながら組み合わせようとしたメンバーに断られ実現せず。クラブでのライブがスタートしたが、カルテットの演奏を聴いて、結局、今やっているライブをそのままレコーディングしようという結論になった。

ところが、今度はドミシルのオーナーが、ライブ録音をするなら一発録音であればOKと条件を出す。お客さん第一で、レコーディングということでの同じ曲の録り直しが続くのだけは勘弁願いたいということで、結局一日だけの一発勝負で折り合いがついた。

最後にもう一つ難関が生じた。ドラムのビリーブックスがスケジュールの調整がつかず最後の4日間が出演できなくなり、最終日の録音にも参加できずという事になる。
急遽ドラムが南アフリカ出身のMakaya Ntshokoが加わる事になってやっと本番を迎えることができた。

自然の流れで偶然セッティングされ、決してアダムスが念入りに仕込んだセッティングでは無かったが、単なるジャムセッションではないグループが連日同じクラブへ出演し演奏することになった。結果的にアダムスの思い通りの演奏になったのだろう。アダムスの研究家ゲイリーカーナーもこのアルバムをアダムスのリーダーアルバムの一枚として認めている。

このような経緯で生まれたのが、このアルバムとなる。
同じ日のセッションは「ジュリアン」というアルバムもあり、その続編になっているが、それぞれ当初の方針通りの一発勝負。こちらがセカンドステージの模様ということになった。
そして、このアルバムがアダムスにとっては14枚目のリーダーアルバムとなった。

ワンホーンということもあり、入念にアレンジが施されている訳ではなく、各自のアドリブが前面に出た演奏となっている。いかにも、クラブのライブといった感じの演奏だ。
曲は、アダムスのオリジナルが2曲。アルバムタイトルは、アダムスがデトロイト時代出演していた、クラブのあった住所。ブルージーな曲と演奏は当時を思い出してか。ボサノバ調のBossa Nouveauは良く演奏しているが軽快な曲で好きな曲だ。



サドジョーンズの名曲A Child Is Bornもやっているが、ムラーツのソロ、アドリブから始まりあの美しいメロディーは後から出てくるせいか印象が薄かった。ネットにある別の演奏の方がお気に入りだ
ドナルドバードと一緒にやっていた頃は、コンボ編成でも何らかのアレンジが施され、演奏自体もファンキーな曲が多かったが、ここではすっかりプレースタイルも変っている。たまたまのチャンスに恵まれたセッションであったが、サドメルを辞めた後の、ソロイストとしての活動の原点になった演奏のように思える。

1. Twelfth & Pingree        Pepper Adams 9:45
2. A Child Is Born          Thad Jones 8:26
3. Well You Needn'T        Thelonius Monk 9:27
4. Bossa Nouveau          Pepper Adams 9:36

Pepper Adams (bs)
Walter Norris (p)
George Mraz (b)
Makaya Ntshoko (ds)

Produced by Matthias Winckelmann & Horst Weber
Recorded live at The Domicile, Munich on August 13, 1975

トゥウェルフス・アンド・ピングリー[紙ジャケット仕様/限定生産]
Pepper Adams
Pヴァイン・レコード
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