A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

50年目の節目で、新たなチャレンジをしたプリザベーションホールジャズバンド・・・

2014-08-01 | JAZZ LIFE
Preservation Hall Jazz Band・New Orleans

世の中何であっても発祥の地があり、それを信じる者や熱烈ファンは一生の内に一度はそこを訪れてみたい聖地となる。ジャズの場合は言わずと知れたニューオリンズ。自分もアメリカには過去プライベートでも仕事でも何度か行ったことがあるが、南部はテキサス、フロリダまで。ニューオリンズは残念ながらまだ行ったことがない。一度は訪れてみたい所だ。

そのニューオリンズの中でのジャズの聖地といえば、ジャズの伝統を今に引き継ぐプリザベーションホールであろう。昔ながらのニューオリンズのジャズの伝統が聴ける所、ここのハウスバンドPreservation Hall Jazz Band(PHJB)が先日来日した。




簡単な歴史はこちらで↓


このプリザベーションホールを巡り、ここを訪れる「おばあちゃんドラマー」のドキュメタリーを前に見た事を思い出した。


80歳を過ぎた昔駐留軍周りをしていたおばあちゃんドラマーが、プレー仲間でもあった亡き夫の遺影を抱いて孫に連れられてここを訪れ、飛び入りでTake The A Trainを演奏して喝采を浴びるという内容であったが、普段あまりこの手の番組に思い入れを感じない自分だが、これを見ながら思わず感動を共有化してしまった。プレーヤーにとっては、ここを訪れるだけなくここで一度演奏できたら本望であろう。

自分がこのグループのアルバムで持っていたのはこれ。今から40年近く前の録音。今回来日したバンドリーダー、ベン・ジャフィーの父親が現役メンバーであった時代の演奏だ。
ジャズが初めてレコードになったのは1917年のオリジナルディキシーランドジャスバンドの演奏。このバンドがレパートリーにしていたニューオリンズジャズではスタンダードのタイガーラグで始まる。内容は、古き良き時代を伝える正真正銘ニューオリンズジャズの演奏だ。
もちろん、今回の来日メンバーはこのレコードの時代とは一新されているが、元々トラッドジャズが好きであったので、今回は本家本元の演奏を期待してでかけてみたが・・。

勉強不足で、最近の活動状況を知らなかったが、此のバンドも昨年結成50周年を記念して、すべてオリジナル曲によるアルバムを出して、これがヒットしているようだ。そのために、本拠地での演奏だけでなく、全米のツアーに出るようになり今回の来日もその一環のようだ。
これで、来日メンバーの紹介を含めて現在の演奏を聴ける



改めてこのアルバムを見るとこちらのメンバーは1900年~1910年の生まれが殆ど。録音当時でも70歳を超えるメンバー達で、彼らはまさにジャズの創世記を自ら体験した面々である。
一方で、今回来日したメンバーは地元の代々ミュージシャンの家系を引き継いでいる者が多いが、すでに3世代、4世代目だそうだ。

伝統芸能では何でもそうかもしれないが、代々引き継がれる伝統を重んじるのはもちろんだが、時代の流れに応じて新たな物を採り入れていくことも大事だ。ニューオリンズ出身のウイントンマルサリスなどはそのようなスタンスで活動をしているリーダー格の一人だろう。
今回はプリザベーションホールを守る本家も4世代目になって、オリジナル曲のアルバム作りという新たな世界に飛び込んだということになる。もちろん演奏スタイルも伝統的なスタイルとは一味も二味も違っている。

4代目の変身という事で、先日の老舗「白元」の破綻のことをふと思い出した。しかし、これは先代からの教えを無視して突っ走った結果の破綻。PHJBのメンバーはけっしてそんなことにはならないと思うし、仮になったとしても、この映像を見るとニューオリンズの街全体がジャズの伝統を引き継いでいる様子が分かる。きっと次々と新たな後継者が現れてくるであろう。いかに伝統を引き継ぐのが大事かを思い知らされる。

この映像↓を見ると、ニューオリンズの街がジャズミュージアム。ますます行ってみたくなった。



そして、再びこのアルバムのライナーノーツを見ると、ニューオリンズジャズの定義のような物が書かれている。

「20世紀の始めニューオリンズに生まれた新しい音楽は、人々に楽しい時を与えるものであった。それはすぐに人々の共感を得て、あっと言う間に全米中に広まった。そして世界中に。その演奏スタイルにはそんなに種類がある訳ではなく、基本はビートを刻んで単にメロディーを奏でる事。ニューオリンズのミュージシャン達はルーズでリラックスしたビートを皆で一緒に生み出していく術を学んだ。踊りださないまでも、足でリズムを刻みださざるを得ない雰囲気を作り出した。時には催眠術にかけるようなこのリズムは特に意識しなくても自然に続いていくものだ。もう一つの特徴は、一人のミューシャンが目立とうとするのではなく、皆でお互いに高めあっていくこと。そしてソロがフィーチャーされる時、即興的なアンサンブルコーラスが実に自然な感じに絡み合うようになる。ハーモニーを皆で一緒に作っていくということは、バンド全体の力強さを生み出していくものだ。そして、このアンサンブルがどんどん積み重なってして、スリリングなクライマックスの波が押し寄せる。

ニューオリンズスタイルはメロディーがいつも明確だ。
メロディー自体は変わらないが、色々な楽器で暖かさがある歌声の様に様々な形で歌われる。あるトランぺッターは、それを「聴いている人皆にプリティにプレイすること」という。曲自体、ハーモニーが複雑になったり、アレンジが施されて曲がぼんやりしたものになることもない。ミュージシャンは、その人生と同じようにシンプルな中にこそ、その本当の素晴らしさの真髄があると思っている。決して、無理矢理熱狂させたりや叫び声を上げさせたりするものではない。その代わりに、リラックスした気分でダンスをしたりマーチングしたりするものだと。彼らミュージシャンの名刺には、”Misic for all occasionsと書かれていて、どんな所でも、その場に合わせた演奏ができるということだ。普段のパーティーやパレードだけでなく、教会の洗礼から葬式まで。」

多少長くなったが、引用したのは今回のPHJBの新たなオリジナルの演奏も、実はこの枠の中の音楽であることには違いが無いということを感じたからだ。

確かに、これがニューオリンズに生まれたジャズの起源でありDNAということだろう。新生PHJBがどんな演奏をしようとも、実はこの教えは守られている。会社経営も創業以来の社是や家訓というものが必ずあるものだ。これを忘れなければ4代目の破綻という事は起こらないような気がする。

1. Tiger Rag
2. Amen
3. Over In Gloryland
4. Good Blues
5. Bill Bailey
6. Joe Avery
7. His Eye Is On The Sparrow
8. Memories
9. Panama

Willie Humphrey (cl)
Percy G. Humphrey (tp)
Frank Demond (tb)
Narvin Henry Kimball (banjo)
James Edward “Sing” Miller (p)
Allan P. Jaffe (tuba)
Josia “Cie” Frazier (ds)

Amazonレビュー
Preservation Hall has been a New Orleans landmark since 1961, when it first began providing a regular stage for the city's traditional musicians. It quickly became the object of regular pilgrimages for traditional musicians and enthusiasts around the world. By the time this recording was made in 1976, the official band had coalesced around the Humphrey brothers, Percy on trumpet and Willie on clarinet, veterans already in their 70s. Their age shows only in their fidelity to the music's repertoire and instrumentation, with the band still using a banjo player, Narvin Kimball, and the younger tubaist Allan Jaffe in place of a string bass. In this vigorous traditional jazz, the band brings lifetimes of received musical wisdom to hymns like "Over in Gloryland" and Dixieland warhorses like "Bill Bailey." --Stuart Broomer




New Orleans 1
Preservation Hall Jazz Band
Sony

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