A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ミュージシャンにとって人生の有終の美を飾る一枚とは・・・・

2013-06-05 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
End Play / Seldon Powell

人の人生は山有り谷あり色々ある。前に向かって進む時、いくつかの岐路がありその選択に左右されることもある。人生も後半に差し掛かると、先を見ることよりも後を振り返ることが多くなり、楽しい思い出、辛い思い出の中に後悔もあり、感謝もあり、感激もある。他人の目から見ると波乱万丈の人生に見え、あるいは平穏無事に過ごしたように見えても、本人にとっては思い出の詰まった毎日であったはずだ。

ジャズプレーヤーの世界も、ソリストとして脚光を浴び、リーダーになり、作曲をしたりアレンジをしたり、あるいはプロデュースをしたり表舞台を歩き続ける者もいる。来月来日するクインシージョーンズなどはその筆頭だろう。
一方で、表舞台に先頭に立って出ることは少なくとも、一プレーヤーとして第一線で最後まで人生を全うする者もいる。どちらが幸せかは、それぞれの人の価値観も違うので何ともえいないが、最後までジャズに打ち込めたという達成感はどちらも同じであろう。

セルドンパウエルというテナー吹きがいた。自分が彼を知ったのはサドメルのメンバーとして参加していた時だ。まだ自分がジャズの世界の右も左も分からない時、初めて生を聴いたときよくスイングするプレーが印象的だった。

このパウエルなどは、生涯一プレーヤーの代表格だろう。スイング時代の終わりから演奏を始め、バップムーブメントの時こそリーダーアルバムも出した。その後はビッグバンドやスタジオの仕事がメインになった。譜面を読むのがやたらに強い、マルチリードのプレーヤーはスタジオワークには最適だったのかもしれない。サドメルに加入していたのもそんな時代だ。
時代が変わってプレーする音楽は、R&B、ラテン、フュージョン、何でもこなしていった。クレジットのあるアルバムだけでも600枚以上。無い物を加えたら軽く1000枚を超えるであろう。セルドンパウエルにとっては、この一枚一枚、一曲一曲が人生そのものだ。

リーダーアルバムは1973年を最後に無い、しかしテナープレーヤーとして休むことなくプレーを続けていたパウエルが、晩年に一枚のアルバムを残している。タイトルは”End Play”。
昔からの仲間と一緒に、場所はニューヨークのBirdland。1993年のことであった。
ファンに囲まれたプレーは、日々のスタジオワークとは異なり、仲間達との気軽なセッション。きっといつもの日々とは違った表情でのプレーが目に浮かぶ。これがジャズの楽しみでもある。パウエルが主役だが、クラークテリーが主役を引き立たせるリード役だ。テリーの素晴らしさは、ビッグバンドでもコンボでも、自分がリーダーでなくとも全体を楽しくさせることだ。

このアルバムが収録されてから4年後、70歳までもうすぐという時にパウエルはこの世を去る。まだまだ若いといえば若い。しかし、十分に人生を楽しんだともいえる年齢だ。結果的にはこのアルバムは、彼が元気な内に仲間に囲まれての生前葬だったのかもしれない。
ファーストアルバムというのは、誰もがそれを目標にして作られるので、自分の人生の中で上り調子の時のひとつの通過点。
しかし、ラストレコーディングはそれを意識して作られることは少ない。このパウエルのアルバムは、ソロプレーヤーとしてのパウエルの最後の思い出を残せて、本人にとっても友人にとっても、そしてファンにとっても貴重な一枚だ。
丁度、パウエルがこのアルバムを残した年と自分も同じ年回り。気心の知れた仲間と何か思い出を作っておきたいものだ。自分の“End Play”として相応しいことを。

1. Hackensack        Thelonious Monk 7:06
2. Body and Soul Frank  Eyton / Johnny Green / Edward Heyman / Robert Sour 9:24
3. Push and Pull       Seldon Powell 8:03
4. Just In Time Betty     Comden / Adolph Green / Jule Styne 7:32
5. Park and Ride       Seldon Powell 4:29
6. Ow!            Dizzy Gillespie 8:30
7. Flintstones         Joseph Barbara / Hoyt Curtim / William Hanna 6:03
8. Sel's IdeaSeldon      Powell 9:06
9. Straight No Chaser     Thelonious Monk 8:20


Seldon Powell (ts)
Clark Terry (tp,fh)
Barry Harris (p)
Bob Cranshaw (b)
Mickey Roker (ds)

Alan Bates Executive Producer
Mark Morganelli Producer
Malcolm Addey Engineer
Mickey Roker Drums

Recorded live at Birdland, New York City on 23&24 June 1993



End Play
Seldon Powell/td>
Candid Records
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