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次世代テレビ放送はどうなるか? (10) 「テレビ放送離れ」なのか「テレビコンテンツ離れ」なのか

2011-08-28 | Weblog
今後のテレビ放送がどうなるかを考える前に、今巷で言われている「テレビ離れ」なる現象を整理しておきたい。自分なりには整理されているつもりであるが、客観データで確認しておこう。

まずは、テレビ業界の当事者である、NHK放送文化研究所の2010年の生活時間調査から。確かに90%の人が視聴するテレビは国民のメディアの王者の地位は変わっていない。しかし、全くテレビを視ない人が確実に増えてきており全体の10%に達している。一方で、5時間以上テレビを視る人も増えているので平均視聴時間は変わらないということになる。統計数字の見誤りやすい点だ。若者のテレビ離れを象徴するように20代の女性のテレビ離れが大きく、5年前と比較して行為者率(要はテレビを視ている人)が大きく減少している。特に平日は男性と同様80%を切った。この層では2割の人がテレビを見ていないということだ。今後は全体ではなく2つの2極化したグループ別に数字を見ることも必要だ。

メディア接触全体では、10%程度の聴取者を持つラジオが減、ファンはやはり高齢者。そして新聞が大幅減。数字を見て改めて驚いたのが新聞の状況だ。全体で行為率は40%前後。4割の人しか新聞を見ていないということは宅配もどんどん減っているのだろう。自分の感覚では勤め人にとって新聞は不可欠だと思っていたが、勤め人でも40%以下とは。かえって無職のほうが高い。20代においてはもはや男女共に10%以下。マスメディアとしては完全に終わっている。

一方で、インターネットは全体で20%位だが、20代、30代では30%以上。さらに接触時間は2時間近くになっている。他のデータであったが、メディアの接触時間は1日平均して6時間程度。1日24時間の限界があるので、余程の暇人でないとこれ以上の時間を割くわけにはいかない。最近のデータでは移動中のモバイルの接触時間が割り込んできていて全体の時間を若干増やしているが、インターネットがこれだけ増えると当然割を食うのは他の既存メディアだ。雑誌、新聞はすでに駆逐されているが、いよいよ本丸のテレビへの影響だ。これも、他の調査データで見たが、インターネット利用者のテレビ接触頻度及び時間は極端に少ない。テレビ離れが一番顕著に現れるのはこの辺りの層からであろう。
他のメディアでは、ビデオ、HDD、DVDが増えている。ビデオ、HDDということはこれには当然テレビの録画視聴が含まれる。尚且つ、この録画視聴の場合は「ながら視聴」が少ないという結果も出ている。やはり集中して見るテレビコンテンツもあるということだ。

NHKの調査では、インターネット利用の中に仕事での利用と、メールでの利用は含まれていない。これも他の調査データによると、通常の検索、ショッピング、ブログの他に動画検索サービス(YouTube、ニコニコ動画など)であろう)の割合が急拡大しているとあった。若者の利用の間では、この動画サービスで見逃したテレビ番組や話題のテレビのシーンを見るのが流行っているとか。最近では他の動画サービスも増えているので、直近で調査をすればインターネットで動画サービスを利用している割合はかなり高くなってきているはずだ。

そこで、統計の取り方に疑問が沸く。現行の区分はあくまでも昔のメディア区分のまま、さらにはサービス分類もこれまでの区分を使って統計データを作成している。過去との比較や時系列データには必要だが、実態を果たして表しているのか。テレビのリアルタイム放送の視聴時間は減っているが、録画や動画サービスを含めて、若者の放送コンテンツを見ている時間は減ってはいないのかもしれない。今後はオンディマンドサービスが普及すればなお更である。

一日の中で電子メールの対応にとられる時間も多いが昔であれば手紙を書いたり、電話をしていた時間だ。仕事では報告書を作ったり、会議をしていた時間がメールに向かっている時間だ。生活時間調査もメディア接触時間ではなく、動画、音楽(音声)視聴、文書閲覧などの区分にした方がいいかもしれない。それが本当のコンテンツ接触時間だ。メディアはそれを見聞きするための道具であり何を利用するかは生活者にとっては何でもいい。そろそろ、メディア接触からコンテンツ接触に概念を変えなければ。そうすれば、生活者がコンテンツ離れを起こしているのかどうかは分かると思うのだが。
「テレビ放送離れ」を起こしているのであれば影響はテレビ広告の問題だが、「テレビコンテンツ離れ」を起こしているのであれば事態は深刻だ。
最近、こんな記事が目に留まった。

テレビ界、視聴率至上主義の愚昧:月尾嘉男(東京大学名誉教授)



日本では、両者が同時に起っていてお互い足を引っ張っているから問題なのだ。
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