A DAY IN THE LIFE

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次世代テレビ放送はどうなるか? (8) 視聴者はどのようにしてテレビを見ているか

2011-08-17 | Weblog
今朝の大きなニュースは、googleによるモトローラの買収だ。先日、ネットワーク時代のデジタルは「大陸のデジタル」という話をしたが、いよいよ大陸同士の合体が始まった。Googleはソフト産業の雄だが、google自体が自分でコンテンツを持っている訳ではない。人のコンテンツを利用し易くする道具の提供が事業の核。これからはいよいよハード(デバイス)と合体して、生活者一人一人にとって最強かつ最も便利な「コンテナ」を提供しようということになる。最近ではこの大陸のことを「プラットフォーム」という言葉で表すのが一般的だが、誰が今までのレイヤ(事業領域)を越えてプラットフォームを制覇するかの競争の段階になった。一企業というよりは業界生き残りをかけた戦争の始まりだ。

さて、テレビ放送が誕生した時、生活者はどうやってテレビを見ていたかというと、まず「街頭テレビ」が始まりだった。テレビは最初庶民にとっては高嶺の花。一体何が映るかも分からない時、人を惹きつける分かりやすいコンテンツとそれを体験できる場が大事だった。ショールームとしては駅前の街頭は最適であった。そして、コンテンツはプロレスが大人気になり、これで普及に弾みをつけることができた。パブリックビューイングの走りともいえるが、街頭×プロレスは一緒に見ている人同士が感動を共有化できた効果も大きい。丁度団塊の世代が小学生になる頃、昭和30年前後の話だ。





テレビが家庭に入っていくと、それが置かれたのは家族団欒の中心の茶の間に。昭和30年頃はまだリビングという言葉も一般的では無かった。人気番組の放送時間に合わせて、家族はテレビの前に集まってくるという習慣も生まれた。テレビの視聴率調査の始まりも、このような視聴形態であり習慣を前提にしたものであった。

テレビ受像機はもちろんモノクロのブラウン管。今思えば映りの悪い小さな画面を食い入るように見ていたものだ。受像機の次の大きな転換点は、カラー放送の始まりとカラーテレビ受像機の普及だ。普及に弾みをつけたのは1964年東京オリンピック。しかし、テレビ放送が全面的にカラー化されるにはそれから10年以上かかる。それまでは、モノクロの番組とカラー番組の混在する期間が続いた。新聞のテレビ欄にもカラー放送の表示が付いていたが、テレビ欄を見ているとその時代のテレビの進化の状況が分かる。
いわゆるメカ物は技術の進化に合わせてどんどんバージョンアップされていくが、いつも悩ましいのは古い物が使えなくなってしまうことだ。多くの場合は「上位互換」は保証されるが、古い物は見捨てられる。このモノクロからカラーへの転換で特筆すべきは、古いモノクロテレビでもカラー放送が見ることができたこと。もちろん色はついてはいないが、新旧の仕様で「相互互換」が保証されたことは大きい。今回のデジタル放送への転換の施策とは大きな違いだ。

今回の「地デジ化」の大騒ぎも簡単なチューナーさえ付ければ、これまでのアナログテレビは使えるし、CATVなどの有線サービスでは当面デジ→アナ変換サービスを行っているので、実は新しいデジタル対応の受像機への買い替えは必要なかった。しかし、今回のデジタル放送への切替では、受像機の買い替えをしなければならないような世論が作られた。丁度、家電の救世主になるはずだった薄型テレビの販売に力を貸す形をとったのだろう。しかし、結果的にテレビ受像機ビジネスも各社大赤字、生活者もまだ使えるアナログテレビを大量にゴミにしてしまう結果に。生活者視点を忘れるとこのような事態になってしまうのは仕掛けた当事者は自業自得だが、生活者も少し賢くならなければならない。

さて、カラーテレビが普及すると、テレビはパーソナル化に向かった。一家に一台から一部屋に一台。さらに一人一台へ。さらには生活シーン毎に一台へ。これと共に、家族団欒といった生活習慣が消えて、家族が単なる同居人になっていってしまったのは皮肉なものだ。受像機のサイズも大きな高品質な映像を追求したハイエンドモデルから、ポータブルな小型テレビまで多種多様なテレビが視聴形態に合わせて選べるようになった。
そして、1990年代後半以降はパソコンやカーナビなどへのテレビチューナーの搭載が進み、デジタル放送時代になると携帯でもワンセグ放送が受信できるようになった。最近はスマホブーム、ますます便利に利用できる環境が揃ってきた。まさに、ユビキタス時代に対応した、いつでも、どこでもテレビを見ることが出来る「テレビ受像機の普及」の目的は成し遂げられた。

自分自身も現在リビングの大型プラズマ、ダイニングキッチンの小型の液晶、書斎のパソコン、携帯、カーナビ(これはまだチューナーを交換していないが)と5箇所の利用環境がある。テレビ放送側からすれば、昔からの大きな目標であった「テレビ視聴の環境がすべての生活シーンに拡大」されたことで、本来は業界全員がハッピーエンドになるはずであったのだが。実際には生活者の中では10年前頃から反対に「テレビ離れ」が起るという大誤算に遭遇してしまっている。この原因を順次解きほぐしてみよう。
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