A DAY IN THE LIFE

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次世代テレビ放送はどうなるか? (5) 区域外再送信問題はCATVばかりではない

2011-08-07 | Weblog
CATV局が都市圏のキー局の放送を「区域外再送信」を始めたのは、都市圏近郊の都市から。そもそも、キー局の電波が届いている所であれば、電波事情が悪い環境で各家庭が苦労して観るよりCATVを利用して観ればよいというのは道理が合う。それに文句を言うのであれば、「県境を越えて電波を飛ばしてくるな」という話になりかねない。
今回のデジタルへの切替時もこれは基本的に「良」とした。しかし実際には、なし崩し的に各地域に拡大し、かなり遠隔地までそれが視聴者にとっての既得権になっている。中には、首都圏からの転勤族が多く、彼らのニーズが大きいという理由付けをしている所もあるようだ。それらの対応が今後問題になるが、6月にもいくつか「大臣裁定」が出たようである。

この「転勤族のニーズ」といえば、今日の国際化された時代では国内ばかりではない、海外の転勤者もかなりの数になる。そして、海外こそ日本のテレビが放送されているわけでなく、そこで日本のテレビ放送を見たいというニーズこそ根本的なニーズだ。
では、海外に向けて、区域外送信を行えばよいという話になるが、それはそう簡単な話しでではなかった。海外への放送波の配信となるとこれまでは衛星回線が必要になるし、NHKの国際放送を始めとして一部の番組が現地の日本語チャンネルに提供されているのが一般的だ。

しかし、ブロードバンド環境の整備より状況は一変した。極端な話、ブロードバンド上では誰かがやろうと思えば、それ程のお金をかけなくても高品質な放送番組を配信することは可能な時代になった。放送番組に関しては著作権法上かなりの制約があるが、個人の視聴に関しては基本的に何でもあり、複製(録画)も構わないというルール、視聴者にしてみれば既得権が長年運用されてきている。



そこに知恵者が法の隙間を突くようなサービスを始めた。世界何処からでもインターネット経由で機器の置いてある場所の放送を見ることができるソニーのロケーションフリーテレビのハウジングサービスを「まねきTV」が事業として始めた。要は、個人が自分のための「区域外再送信サービス」をやるための一括アウトソーシング請負業だ。理屈上はあくまでも個人が自分で自分のためにやる話なのでお咎めが無いのが通例である。放送局側は当然法的に争ったが勝ち目は無かった。これが、「区域外再送信問題」の突破口になるのではと、関係者はその行方に注目していた。

ところが、今年の1月にこの争いに最高裁が逆転判決を下した。細かい法解釈については門外漢なので細かいコメントを控えるが、要はいいがかり的な小さな根拠を探して、このネットを利用した送信は著作権法上違法という結論にした。此れまで通信と放送との争い事の主管は総務省、機器やコンテンツになると経済産業省も関係してきたが、この著作権となると文部科学省がこの問題の当事者として新たに登場した。

デジタルネットワーク時代のコンテンツ流通は間違いなく今までよりははるかに活発になる。その中で、著作権の考え方と法的な整備はかなり重要であり、先を見越した対応が世の中的には求められている。例えば、今回の話の主役であるテレビ番組と呼ばれる物の著作権はかなり昔のルールのまま最近まで運用されているために、時代のニーズに合わなくなっている。その為に、せっかくコンテンツとして優良な「放送番組」が死蔵されたままにあるのはあまり知られていない。再放送に関しての取り決め、テレビ放送以外への利用など、いわゆる時代が要請しているコンテンツのマルチユースに対しての対応がこれまで全く遅れているからだ。イギリスのBBCはかなり前から、この時代を迎えるにあたって、著作権の考え方をグローバルで見直し、整備したと聞いている。

実際に、Youtubeには過去のテレビ番組はかなりアップされている。多分これらはすべて違法であろう。しかし、これが現実なのだ。このような中で、今回の最高裁の決定はこの流れに全く逆行し、どうしても石器時代の遺物を守ろうという判断にしか思えない。
世の中のデジタル化&ネットワークの進化は一段とスピードを上げている。いま業界の話題はクラウドサービスだ。これが一般的になれば、企業であろうと個人であろうと、データ、コンテンツ、そしてそれを処理するアプリケーションを皆で共用するような形になっていく、勿論その中で権利、セキュリティー、プライバシーなど守らなければならないものは守られていくが、コンテンツ自体がネットワーク上を行き来するのは当たり前になる。まずは、ネットワーク上のコンテンツ流通を「是」とするところからスタートしないと物事は始まらない。それを著作権法上で否定するということは将来禍根を残すことは間違いない。テレビどころか、日本のコンテンツビジネスは終わりかもしれないというのもまんざら大げさではないかもしれない。

同様な意見は山ほどあるが、


「まねきTV事件」最高裁判決でクラウドも国内勢全滅の検索エンジンの二の舞か?


まねきTV最高裁判決についての補足

[著作権][時事]まねきTV事件最高裁判決のロジックを読み解く...試み


この判決を推す意見は誰がいるのだろうか。
デジタル&ネットワーク時代の著作権については、また別にじっくり語ってみよう。
コメント
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