今回、国旗掲揚条例の審査にあたり、想定質問、討論を準備しました。実際の質疑、討論は、この通りではありませんでしたが、参考までに。
【想定質問】
(基本的認識)
質問
本会議場などに日の丸を掲揚している自治体議会が、どのくらいありますか。
質問
提案者は、日の丸についてどのような歴史認識を持っていますか。保守系議員と公明党議員、それぞれに答弁を求めます。
質問
「日の丸を敬愛し誇りに思うこと………」と提案理由の説明がありました。その真意をうかがいます。
(条例制定についての疑義)
質問
国旗国歌法は、第1条で「国旗は、日章旗とする」と規定しているに過ぎず、尊重義務規定はありません。また、個人の内心に立ち入ってまで日の丸掲揚を強制するものではないことが、政府答弁や附帯決議で明確にされています。
しかし、条例案は、日の丸掲揚を義務付けており、国旗国歌法の趣旨を逸脱しています。このことについて、見解を求めます。
質問
ところで、意見書や決議については、これまで、各派代表者会議の全会一致を原則としてきました。しかし、日の丸掲揚については、各派代表者会議、議会運営員会、議会改革検討委員会で、ほとんど議論されず、突如、議員提案されました。本来、議会内の重要事項は、議会、議員の総意で決めるべきです。また、全国の自治体議会で、条例化に踏み切った事例は5議会に過ぎません(ホームページで確認分)。
条例化してまで、日の丸を議場に掲揚する理由や必要性があるのかどうか、(掲揚しなければ不都合があるのかどうか、)お答えください。
あわせて、この時期に条例化を提案した理由についてもお答えください。
○国旗国歌法は、日の丸掲揚を強制するものではない。条例は、国旗国歌法の趣旨を逸脱している。
○条例化の根拠として、国旗国歌法を挙げることは甚だ不適当である。
○日の丸を議場に掲揚する必要性はない。
(条例制定による悪影響)
質問
条例制定の法的効果について、見解を求めます。また、条例制定が市政運営(特に教育行政)に及ぼす影響について、どのように考えていますか。
○条例が及ぼす影響は、議会内にとどまらない。教育現場への政治介入につながる。
質問
思想・良心の自由は、憲法で保障された基本的人権です。日の丸に対する市民(日本人に限らない)の心情について、提案者はどのように認識していますか。
また、議場に日の丸を掲揚することは、思想・良心の自由と相容れないと考えますが、見解を求めます。
○日の丸を掲揚することと、国を愛することはイコールではない。
○日の丸に対する考え方によって、愛国心があるかどうか決めつけることは間違っている。
○オリンピックなど世界的舞台でシンボルとして日の丸を掲揚することと、議場で日の丸を掲揚することは、全く意味が違う。
質問
条例案はただ1条だけで規則もありません。掲揚するかどうかや掲揚方法、時期については全く分かりません。このことについて、見解を求めます。
(市旗を掲げる意義)
質問
市旗を掲揚する意義について、うかがいます。
【国旗等掲揚条例反対討論】
国旗等掲揚条例に断固反対の立場から討論します。
議員の条例提案権は地方自治法で認められた権利です。地方分権、地域主権の進展が求められる中で、自治立法権の拡充の立場で、議員が積極的に条例を提案していくことに異を唱えるつもりはありません。
しかし、今回の条例制定の提案にはいくつもの疑問があります。
まず、あまりにも突然の提案でした。
過去の議事録を調べたところ、議会改革検討委員会では、検討事項に挙がったことがありませんでした。議会運営委員会で協議されたこともありませんでした。
各派代表者会議では、8月27日に江政クラブが提案し、その場でまとまらず持ち帰りとなりました。9月13日、議長が改めてこの件を諮りましたが、全会一致には至りませんでした。本来ならば、その時点でこの件が解決したはずです。
それにもかかわらず、どうして条例提案したのでしょうか。
私の日の丸に対する感情は、提案者のそれとは全く相いれないでしょう。しかし、国旗国歌法が現に施行されたことを否定するつもりはありません。また、主権国家が国旗国歌を持つことはきわめて重要だと認識しています。
ですから、議場に日の丸を掲揚することについて、議論することはやぶさかではありませんでした。「どうせ各派代表者会議に諮っても、反対されて、いつまでたっても日の丸が掲げられない。だから、条例で押し切るしかない」と考えるのは、あまりにも乱暴なことです。この問題は、非常に重い課題ですから、まず議員全員に議論を呼びかけるべきでした。その上で、条例を出すなら、話としては理解します。
確かに、全国各地の自治体議会で、日の丸が掲げられていることは承知しています。しかし、議会運営のあり方は、議会で決めるという基本原則のもとで、各派代表者会議や議会運営委員会などで議論しています。社民党や共産党などが反対して全会一致でない場合が多いでしょうが、議会のルールを尊重した対応がされています。
わずか数時間で、日の丸の取り扱いを自分の意に沿ったかたちで決めようというのは、まことに酷な話です。市民に対する説明責任を果たし得ません。
今回の提案は、江南市議会の諸先輩が築き上げてきた良きルール(各派代表者会議は全会一致を原則とすること)を、さらに、議会制民主主義を根底から覆す暴挙であると言わざるを得ません。
今回の提案は、新たな条例制定です。しかし、国旗掲揚条例を制定しているのは、全国約800市議会のうち、わずか5市議会に過ぎません。全国的にも、きわめて特異なケースです。
今回、条文はただ1条のみであり、議場における国旗と市旗の取り扱いを規定しているだけ、と思われるかもしれません。しかし、条例は、憲法で制度的に保障されたものであり、市にとっての最高法規です。ですから、行政運営と市民生活全般に及ぼす影響は極めて大きいのです。
1999年8月、当時の小渕内閣のもとで国旗国歌法が成立しました。当時の国民世論で反対論・慎重論が多く、また、国民的議論が深まらない中で、衆参両院合わせてわずか16日間の審議しかされませんでした。第1条で「国旗は日章旗とする」、第2条で「国歌は君が代とする」とだけ規定したシンプルな内容です。
もちろん、日の丸を尊重したり、掲揚を強制したりする規定は、一切ありません。そのことは、政府答弁や付帯決議で再三確認されています。つまり、公的機関が公の場でシンボルとして使うということ以上に、何も特別なことをする必要はありません。
それにもかかわらず、日の丸を「掲揚する」と条例で押し付けることは、憲法が保障する基本的人権(思想・良心の自由、表現の自由)を侵害することにつながりかねません。
今回の条例制定により、それを盾にして、市民に有形無形の圧力がかかることが懸念されます。
ですから、議場に日の丸を掲揚することは、日の丸に対して否定的な考えを持つ議員や市民は、議場から離脱することができないわけですから、内心の自由を脅かすことになります。
日の丸に対する市民の評価は、依然として分かれています。議場に日の丸が掲揚されると、必然的に、公的機関や公共スペースにおける日の丸の取り扱いに話が及びます。特に、公立小中学校においては、これまで自主的な取り扱いに委ねられてきましたが、今後、教育現場に無用の混乱を持ち込み、教育への政治介入が懸念されます。条例制定によって、国旗国歌法制定時に生じた様々な問題と同様のことが、江南市でも起きる恐れがあります。
日の丸を押し付けない、さまざまな考えを尊重するという国旗国歌法の趣旨を著しく逸脱して条例で定める、その責任を感じていただきたいものです。市民や社会に与える影響を考えていただきたいものです。
もとより、国旗掲揚条例は、自治体のあり方、その議会のあり方、国に対する基本的な姿勢を決めることになりかねません。市民からの要望がなく、また市民からヒアリングやパブリックコメントを求めることもなく、さらに、議会でまともに議論することなく議決することは、民主政治の観点から断じて容認することはできません。
条例を白紙撤回し、民主的手続きを踏むことを求め、討論を終わります。